« 2021年1月 | トップページ | 2021年3月 »

2021年2月

2021年2月28日 (日)

「一発屋」の匂いも漂うが・・・

Title:すっからかん
Musician:瑛人

昨年、突如大ヒットを記録した男性シンガーソングライター、瑛人の「香水」。もともとリリースされたのは2019年4月だったのですが、TikTokなどで徐々に話題となり、昨年一気にブレイク。「ドルチェ&ガッバーナ」という具体的な固有名称が登場してくる点でも話題となりました。さらにこの曲は、メジャーどころかインディーレーベルからのリリースでもなく、完全な「自主制作」による楽曲で、それが最終的には紅白出場まで決める大ヒットまでつながったという点でも話題となりました。

ただ一方で、正直言ってしまうと「香水」でのヒットのインパクトが強すぎて、「一発屋」の雰囲気が漂っているのも否定できません。「香水」以降も配信オンリーで5枚のシングルをリリースしているものの、どの曲もヒットチャートの上位には入ってきていませんし、このアルバムも発売日の都合もあったものの、ビルボードで最高位9位、オリコンでは11位止まりと、「香水」のヒットと比べると、かなり厳しい結果となってしまっています。

私も正直言うと、「香水」のイメージが強すぎたので、アルバム単位ではあまり期待してしませんでした。ただ、アルバムを聴いてみた結果としては「思ったよりはよかった」というのが正直な感想です。まず楽曲的には、「香水」のイメージから大きく変わるものはありません。基本的にアコースティックギターでしんみり聴かせるミディアムチューンのナンバーがメイン。固有名詞も飛び出すような具体的な描写が印象的だった「香水」と同様、具体的な舞台や物語が用意されているような歌詞の世界の曲が並びます。

ほかにも隣の部屋の女の子に片思いしている「僕はバカ」や、既に結婚してしまった昔の恋人を思い出している「カルマ」なども、「香水」と同様、かなり具体的な恋愛心理の描写があり、聴いていて胸がズキッと痛くなるような歌詞が印象的。歌詞の内容もリアリティーある描写となっていて、ちょっと女々しい歌詞の内容も含めて、個人的には結構嫌いではありません。

また、ある意味一番驚いたのが「ハッピーになれよ」で、この曲、酒癖の悪いDV気質の父親の下でも家族について歌った、「香水」のイメージからするとかなりヘヴィーなナンバー。実体験だとしたら、かなりヘヴィーな内容で、聴いていて、失恋の歌とは別の意味で切なくなってくるようなナンバー。「香水」のようなラブソングのシンガーだとイメージすると、かなり意外性を感じる方も少なくないのではないでしょうか。

ただ、ここらへんの歌詞は意外と魅力的だったのですが、それでもアルバム全体を聴いた印象としては「これは一発屋になりそうだ・・・」と思ってしまったのが正直な感想でした。その理由としてはいくつかありますが、まず、メロディーの面でもサウンドの面でもインパクトが弱い点。それなりにわかりやすいフレーズを聴かせてくれるのですが、似たようなタイプの曲が多く、全体としては印象は薄めになってしまいます。また、歌詞にしてもメロディーラインにしてもサウンドにしても、「愚直」といった印象を受けるような、無難な作風に仕上げており(前述の「ハッピーになれよ」のような例外はありますが)、インパクトの弱さの大きな要因に感じます。

そして、それらの事項を含めて、結果として「一発屋」感が強い最大の理由としては、瑛人としての個性がほとんど感じられない点でしょう。はっきり言うと、ここで収録されている曲は、彼でしか歌えない、といった曲はありませんし、彼にしかもっていない特色をあげろ、と言われると、言葉につまってしまいます。ここに収録されている曲を聴いて感じる満足度は、同じ男性シンガーソングライターとして、例えば斉藤和義だとか、秦基博だとかを聴けば事足りてしまう、といって間違いではありません。斉藤和義とか、秦基博じゃだめなんだ、瑛人じゃなくては!といった感触は、残念ながらこのアルバムからは感じられませんでした。

「香水」があれだけヒットを出しただけに、今後についてそう簡単に困ることはないのかもしれませんが、率直に、次のヒットは厳しいだろうなぁ、と感じてしまうアルバムでした。ただ、決して悪いアルバムではないので、「香水」が気に入った人や、アコースティック系のSSWが好きな方なら聴いて損のないアルバムだとは思います。「香水」の次にも注目したいのですが、どうなるのでしょうか?

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

廻廻奇譚 / 蒼のワルツ /Eve

動画投稿サイトへの歌唱動画投稿や、ボカロPとしても活躍していた男性シンガーソングライターによるミニアルバム。彼のアルバムを聴くのは「おとぎ」「Smile」に続き3作目ですが、ボーカルスタイルとして落ち着きが増し、マイナーコード主体のアップテンポチューンという、ネット発ミュージシャンによくありがちなタイプの楽曲から、もうちょっと落ち着いて聴かせる楽曲が増えた印象。曲名はいかにも自意識過剰系のネット発という印象は否めないのですが、全体としてはいい意味でポピュラリティーが増した印象。ポスト米津玄師になれるか?

評価:★★★★

Eve 過去の作品
おとぎ
Smile

| | コメント (0)

2021年2月27日 (土)

ダイナミックなサウンドが心地よい

Title:Chants de femmes des Asturies
Musician:MUGA

今回も2020年のベストアルバムの後追いで聴いた1枚。本作は、Musici Magazine誌ワールドミュージック部門で9位を獲得したアルバム。スペインの北西部、アストゥリアス州の女性シンガー、クララ・ディアス・マルケスと、同じくスペインはブルターニュ地方のヴァイオリニスト、トマス・フェルダーとギタリストのマルタン・シャプロンによる3人組のユニット。そこに4人のゲストを迎えて作成されたのが本作だそうです。

ジャンル的にはヨーロッパトラッドということになるのでしょう。まず耳に飛び込んでくるのは、クララの力強いボーカル。ちょっとしゃがれた渋みのあるボーカルながらも声量がありパワフルなボーカルが強い魅力。うなるようにこぶしを利かせた節回しと、伸びやかなボーカルが耳を惹きます。ケルト民謡も彷彿とさせるようなメランコリックさと、勇壮さを感じさせる彼女のボーカルが、まずこのバンドの大きな魅力となっています。

そして、このボーカルと同じくらい惹かれたのが、非常にパワフルで力強いバンドサウンドでした。アルバムの冒頭「Anada de Viodo」は、いきなりヘヴィーでノイジーなギターサウンドからスタート。さらにバスドラの力強いリズムと、分厚いバイオリンの音色が重なり、ダイナミックな楽曲に仕上がっていました。続く「Ramu la Madalena de Tresmonte」も、まずは飛び込んでくるヘヴィーなギターとドラムスの音色に、ヨーロッパトラッド以上にロック的な要素を感じさせます。その後入ってくる、エキゾチックなフィドルの音色と、クララののびやかなボーカルが加わることにより、ロック的なダイナミズムさとトラッド的なエキゾチックな雰囲気が混ざり合う、独特の音楽性を醸し出していました。

その後も「Los Titos de Benllera」に至っては、ハードロックか、メタルじゃないか?というほどのヘヴィーなギターリフを前面に押し出していますし、ラストの「El Corri-Corri」もサイケデリック的な要素を感じさせるサウンドが魅力的。最初から最後まで、ある種「ロック的」と言えるダイナミックなバンドサウンドが大きな魅力となっているアルバムに仕上がっています。

そしてそんなパワフルなバンドサウンドに正面から対峙するクララのボーカルと、トマスのヴァイオリンの音色がまたパワフルかつスリリング。ゲストを加えたメンバーそれぞれが、真正面からそれぞれの音をぶつけ合い、そしてひとつのサウンドに昇華していく、ある種のすさまじさを感じる作品になっており、彼らの奏でる歌やサウンドに終始圧巻される作品でした。

ヨーロッパトラッドが好きならもちろんのこと、この作品、なにげに実はロックリスナーが楽しめるアルバムなのでは?とも感じるようなダイナミックな作品。聴き終わった後に、すさまじいものを聴いたと、しばし茫然としてしまうようなアルバムでした。こういうバンド、ライブで聴いたらすごいことになるんだろうなぁ・・・コロナ禍が終わったら、是非一度、日本にも来てほしいなぁ・・・。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ManifestaSITI2020/Dato Siti Nurhaliza

こちらも2020年ベストアルバムの後追い。Music Magazine誌ワールドミュージック部門で、こちらは7位となったアルバム。マレーシアを代表する女性シンガーによる新作。哀愁感たっぷりに歌い上げる楽曲が並ぶ作品で、まさに「大衆歌手」といったイメージがピッタリくるようなアルバム。メロディーや節回しには歌謡曲的な部分も強く感じられ、日本人にとっても耳なじみやすい作品だと思います。確かにマレーシアを代表するような大物然とした雰囲気が漂ってくるアルバム。いい意味で、日本とマレーシア、同じアジアなんだなぁ、とも感じた作品でした。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2021年2月26日 (金)

アフロビートにあか抜けたシティポップが?

Title:Everybody Get Agenda
Musician:Bantu

今回紹介するアルバムも、2020年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらもMusic Magazine誌ワールドミュージック部門で8位にランクインしたアルバムとなります。このBantuというバンドは、もともとドイツでラッパーとして活躍していたナイジェリア系ドイツ人、Ade Bantuを中心とした13人組のアフロビートのバンド。今はナイジェリアに戻り、Bantuを率いて活躍。本作は、その中でリリースされた1枚ということになります。

そんな彼らのアルバムですが、まずは陽気なアフロビートの楽曲がとても楽しいアルバムとなっています。まさに1曲目「Animal Collective」はアフロビートの王道ともいうべき作品になっており、陽気なホーンセッションも加わったアップテンポのビートがとにかく楽しい楽曲。続く「Disrupt the Programme」も同じく、疾走感あるアフロビートなナンバーになっており、序盤からテンションがあがっていきます。

その後もハイテンポなアフロビートながらもメランコリックなメロが印象に残る「Me,Myself and I」や、アフロビートの創始者、フェラ・クティの息子で、自身もアフロビートのミュージシャンとして活躍するシェウン・クティが参加した「Yeye Theory」など、最後までハイテンションなビートに心が躍るアフロビートの楽曲が続いていきます。

ただ、本作の大きな特徴として、アフロビートのリズムが大きなインパクトとなっている一方で、妙にあか抜けたサウンドやメロディーラインが要所要所に顔をのぞかせる点が印象に残ります。「Water Cemetery」などもメロウなメロディーラインに、ラップを取り入れたHIP HOP的な要素を感じさせますし、「Cash and Carry」「Killers&Looters」などはジャジーなサウンドが随所に顔をのぞかせます。まあ、後ろの2曲については、同じくアフリカ音楽であるハイライフの影響を大きく受けている、といった感じではあるのですが。

さらにサウンド的に「あか抜けた」ものを感じさせるのが終盤の2曲で、「Man Know Man」は女性ボーカルによるメロウな曲調とフュージョン風のギターサウンドが印象的、「Big Lie」も男性ボーカルののびやかで爽やかなメロディーラインが印象に残る楽曲で、どちらもジャズ、ソウルの要素を入れた都会的なポップチューンとなっており、ジャンル的にはむしろ「シティポップ」とカテゴライズされそうな音楽。アフロビートの印象からするとかなりあか抜けた感じのするサウンドになっているのですが、トライバルな要素の強いアフロビートの作品との対比が非常にユニークさを感じさせるアルバムになっていました。

ここらへんは、もともとAde Bantuがドイツのベルリンで活躍していたミュージシャンだから、ということも大きいのでしょうか。ここらへんの西洋的な部分とアフリカ的な部分の対比が非常にユニークかつ上手く機能している傑作アルバムになっていたと思います。アフロビートが好きな方はもちろん、シティポップが好きな方にも惹かれる部分があるアルバムではないでしょうか。トライバルなビートとシティポップ的なサウンド、どちらも心地よく楽しめた傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Whole Lotta Red/Playboi Carti

アメリカはアトランタ出身の人気上昇中のラッパー、Playboi Cartiによる3枚目のアルバム。本作では自身初となるBillboardチャート1位を獲得するなど、大きな注目を集めています。サウンド的にはいまだに流行が続くトラップのアルバムなのですが、一般にトラップとしてイメージされるようなダウナーでメランコリックな雰囲気というよりは軽快なポップといった感じ。そのため、ポップな耳でも聴きやすいアルバムとなっており、確かにこれは売れそうなアルバムだなぁ、ということを実感できる作品になっていました。

評価:★★★★★

Woman Of Steel/Yemi Alade

本作も2020年ベストアルバムの後追い。Music Magazine誌ワールドミュージック部門で6位を獲得したアルバム。ナイジェリアで人気の女性シンガーによるアルバム。楽曲としては、アフリカ音楽というよりもむしろラテンの色合いの強いアルバムで、メランコリックなフレーズが印象に残る作品。伸びやかなボーカルで聴かせる作品もありますが、基本的にはリズミカルな明るいナンバーが目立つアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2021年2月25日 (木)

K-POPが1位2位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位2位と韓国の男性アイドル勢が並びました。

まず1位初登場は男性アイドルグループNCTからの派生グループ、NCT127のミニアルバム「LOVEHOLIC」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数26位。オリコンでは初動売上13万3千枚で1位初登場。前作「Awaken」の5万3千枚(4位)からアップしています。

2位には同じく韓国の男性アイドルグループBTS「BE」が先週の41位からランクアップ。11週ぶりにベスト10返り咲きとなりました。これは2月19日に「BE」の別バージョン「BE(Essential Edition)」がリリースされた影響。今回の別バージョンのリリースは「ファンへの恩返しを込めて」というオフィシャルなアナウンスがありますが、本当にファンのことを思っているのなら、ほぼ同じ内容のアルバムを少しだけ内容を変えて何度も買わせるような、こういう商法は取らないと思うんですけどね。ちなみに今週オリコンでも9万5千枚を売り上げて、2位にランクアップしています。

3位初登場はTeam.Luna「THE IDOLM@STER SHINY COLORS COLORFUL FE@THERS -Luna-」。CD販売数4位、PCによるCD読取数7位ながらもダウンロード数で2位を記録し、総合順位ではベスト3入り。アイドル育成シミュレーションブラウザゲーム「アイドルマスター シャイニーカラーズ」に登場する架空のアイドルを、「Stella」「Luna」「Sol」の3チームに分けて、主に参加アイドルのソロ曲を収録したアルバム。オリコンでは初動売上1万2千枚で4位初登場。同シリーズの前作Team.Stella「THE IDOLM@STER SHINY COLORS COLORFUL FE@THERS-Stella-」の1万1千枚(7位)からアップ。

続いて4位以下の初登場盤ですが、7位に「ファイアーエンブレム 風花雪月 オリジナル・サウンドトラック」が初登場。Nintendo Switch用ゲームソフト「ファイアーエンブレム 風花雪月」のサントラ盤。CD販売数5位、PCによるCD読取数13位で、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。

今週の初登場盤は以上。続いて今週のロングヒット盤ですが、先週、配信開始によりベスト10に返り咲いたMr.Children「SOUNDTRACKS」は今週8位から6位にランクアップ。ダウンロード数は6位から今週、ついに1位を獲得し、その強さを見せつける結果となりました。これで通算9週目のベスト10ヒットとなっています。

一方、米津玄師「STRAY SHEEP」は今週14位にダウン。ベスト10返り咲きは2週で終わり、ベスト10記録は通算25週でストップです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2021年2月24日 (水)

2週連続ジャニーズ系が1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に続き、2週連続でジャニーズ系が1位獲得です。

まず1位初登場はジャニーズ系アイドルグループSixTONES「僕が僕じゃないみたいだ」が獲得。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位獲得。ラジオオンエア数2位、You Tube再生回数21位で総合順位も1位に。オリコン週間シングルランキングでも初動売上43万枚で1位初登場。前作「NEW ERA」の44万6千枚(1位)からダウンしています。

一方2位は秋元康系。瀬戸内を拠点に活動するアイドルグループSTU48「独り言を語るくらいなら」がランクイン。CD販売数2位、PCによるCD読取数16位、Twitterつぶやき数41位。オリコンでは初動売上17万5千枚で2位初登場。前作「思い出せる恋をしよう」の16万3千枚(1位)から若干のアップ。

そして3位には先週2位の優里「ドライフラワー」がワンランクダウン。ストリーミング数及びカラオケ歌唱回数の1位、You Tube再生回数3位はそれぞれ先週と同順位をキープ。これで14週連続のベスト10ヒット&4週連続のベスト3ヒットとなりました。ちなみに同曲とはデッドヒートを繰り広げているAdo「うっせぇわ」は今週4位にランクダウン。とはいえ、今週もこの2曲が並ぶチャートとなっています。

続いて4位以下の初登場曲では、7位に星野源「創造」がランクイン。ダウンロード数及びラジオオンエア数1位、ストリーミング数38位、Twitterつぶやき数8位、You Tube再生回数14位で、総合順位はこの位置に。「スーパーマリオブラザーズ」35周年記念CMのCMソングなのですが、要所要所にスーパーマリオの効果音やBMGなどを取り入れた楽曲となっていて、スーパーマリオや任天堂へのリスペクト精神あふれる曲として大きな話題となっています。にもかかわらず楽曲的には、洋楽の昨今のポピュラーミュージックと地つなぎのようなクオリティー高いポップソングに仕上げており、星野源の才能が光る作品になっています。こういう曲がもっとロングヒットを記録してくれると面白いのですが、さてさて。

そして4位以下のロングヒット曲ですが、まずBTS「Dynamite」は4位から5位にワンランクダウン。You Tube再生回数2位、ストリーミング数3位は先週から変わらず。ダウンロード数は7位から10位にダウン。これで27週連続のベスト10ヒットとなりますが、徐々に下落傾向が続いています。

YOASOBI「夜に駆ける」も5位から6位にワンランクダウン。ストリーミング数4位は先週から変わりませんが、You Tube再生回数は4位から5位にダウン。こちらもベスト10ヒットを44週に伸ばしていますが、下落傾向が続きます。一方、「怪物」は今週10位までダウンしたものの、YOASOBIは今週も2曲同時ランクインとなります。

そしてLiSA「炎」は6位から8位にランクダウン。ダウンロード数は6位から11位、ストリーミング数が6位から7位、You Tube再生回数は6位から7位とダウン。これでベスト10ヒットは18週連続に伸ばしましたが、そろそろ後がなくなってきました。もうひとふんばりはあるか?

一方、先週で8週連続ベスト10入りを果たしていたEve「廻廻奇譚」は残念ながら今週11位にダウン。このまま上位に食い込んでロングヒットを続けるか?と思いきや、思ったほどは伸びませんでした・・・。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2021年2月23日 (火)

14年目の彼ら

Title:MUD SHAKES
Musician:ザ・クロマニヨンズ

結成以来、ほぼ毎年、1枚ずつアルバムをリリースし続けているクロマニヨンズ。コロナ禍の中の2020年も例年と同様に、約1年2か月ぶりに新作をリリース。通算14枚目のオリジナルアルバムとなるのが本作です。通算14作目ということは、クロマニヨンズとしても結成14年目。ブルーハーツもハイロウズも結成10年で活動を終了している訳で、ヒロト&マーシーにとっても、バンド活動を14年も継続するというのはクロマニヨンズが初のケース。もともと、ブルハもハイロウズも10年程度でバンドを畳んだのは、10年活動を続けると、やはりマンネリ状態に陥るからな訳で、一方でクロマニヨンズとして14年も活動が続いているのは、14年続けても、まだバンドとして新たな可能性を感じるからこそバンド活動が続いているのでしょう。

もっとも、この14枚目のオリジナルアルバムにしても決していままでの彼らになかった新鮮なジャンルに挑戦している・・・という感じではありません。今回のアルバムも彼らが演っている音楽は愚直にロックンロール。ただ、14年目を迎える彼らは、というよりも、すでにブルハとしての活動から、30年以上バンドを演り続けているヒロト&マーシーのコンビによる音楽は、まさにプロフェッショナルとして最高峰とも言える領域に達している感のあるアルバムとなっています。

彼らがたどり着いた「最高峰とも言える領域」として、一言で言ってしまえば非常にシンプルなロックンロール。メンバー4人による絶妙なアンサンブルのバンドサウンドを貫いており、そういう意味ではブルハ以来、ロックバンドとしてのスタイルに大きな変化はないといえるかもしれません。バンドサウンドもそうですが、歌詞の世界もシンプルそのもの。今回も「ドンパンロック」やら「空き家」やら「新人」やら、およそ楽曲のタイトルとは思えないようなタイトルの、シンプルな歌詞の世界が繰り広げられています。ただ、そんな中でもクロマニヨンズとしての主張を感じさせる曲もあり、特に今回のアルバムの1曲目「VIVA!自由!!」がそれ。歌詞の内容はタイトル通りの自由賛歌なのですが、コロナ禍の中で、外出や人と会うのが制限され、活動の自由が奪われている今。まさにそのコロナに対する彼らのメッセージとも言えるのが本作であるように感じました。

また、シンプルなロックンロールの中で、様々なタイプの曲調が収録されているのも大きな特徴。「暴動チャイル(BO CHILE)」はタイトルから想像されるようなボ・ディドリー・ビートの曲ですし、「ドンパンロック」は昔ながらもギターポップ調の楽曲。「妖怪山エレキ」はモータウンビートが特徴的な軽快なナンバーですし、ラストの「かまわないでくださいブルース」もゴスペルを取り入れた楽曲。ここらへんの、特にルーツ志向の音楽性は、ブルハからの活動を含めてすっかりベテランとなったヒロト&マーシーだからこそ聴かせてくれる音楽性とも言えるでしょうし、彼らの実力を存分に感じさせる方向性とも言えるかもしれません。

バンドとしてより一層の深化を遂げた本作。ヒロト&マーシーはバンドとして15年目という未知の領域に進んでいくわけですが、まだまだクロマニヨンズとしての深化を期待できそうな、そんな傑作アルバムだったと思います。クロマニヨンズにしか作りえないクロマニヨンズらしい、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー
PUNCH
ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020


ほかに聴いたアルバム

Passport&Garcon DX/Moment Joon

まさに2020年を代表するアルバムとなったMoment Joonの「Passport&Garcon」。2020年の私的ベストアルバム1位に選んだことは先日紹介した通りなのですが、なんとその後、同作にゲストを追加。さらに新曲を加えてリメイクされたアルバムがリリースされました。時代を反映させすぎたアルバムゆえに、今から聴くと、歌詞の一部がすでに古くなってしまっている感もあるのですが、新曲では、本編でとらえられなかったコロナ禍での日本の状態についても収録。同作を今の時代にアップデートされた作品になっています。ただ、今聴いても、このアルバムが伝えたい本質的なメッセージの強烈さは変わっておらず、やはり2020年を代表する傑作だったと再認識させられました。

評価:★★★★★

Moment Joon 過去の作品
Passport&Garcon

THE BOOK/YOASOBI

「夜に駆ける」が大ヒットを記録し、一躍注目を集めたボカロPのAyaseと、シンガーソングライターのikuraの2人によって結成されたユニット。歌詞の方向性としては、現実世界にどこかなじめないような2人が未来をつかもうとする姿を描いた歌詞といった感じでしょうか。「文学的」と称する向きもあるのですが、個人的には「いかにも」な言葉の羅列というイメージも強く感じてしまいます。Twitterで某音楽ライターが、サウンドのチープさを指摘し、一部で賛否両論となったのですが、確かに良くも悪くもサウンドはかなりチープ。ここらへんは良くも悪くもこだわりのなさも感じ、彼らが自分の楽曲の中で、どこに焦点を当てているかも逆の意味で明確になっているようにも感じます。いかにも意味ありげな歌詞の世界観も含めて、自分が中高生だったらもうちょっとはまっていたかも、といった感のあるバンド。もうちょっと楽曲的にバリエーションが増えればおもしろいとは思うのですが。

評価:★★★

| | コメント (0)

2021年2月22日 (月)

実験的だがポップでユーモアも

Title:Figures
Musician:Aksak Maboul

今日紹介するのも、2020年ベストアルバムを後追いした1枚。今回はMusic Magazine誌ロック(ヨーロッパほか)部門で1位を獲得した作品。「アクサク・マブール」と読むこのバンドは、1977年にマーク・オランデルとヴィンセント・ケニスによって結成されたベルギーのプログレッシブ・ロック・バンド。1977年と80年に2枚のアルバムをリリースしたものの、その後、活動を休止。2010年には再結成を果たし、ヴェロニク・ヴィンセント&アクサク・マブール名義で2枚のアルバムをリリース。そして「アクサク・マブール」名義では、実に1980年のアルバムから約40年ぶりとなるニューアルバムが本作となります。

今回、「ロック(ヨーロッパほか)部門」で1位を獲得したのが本作を聴くきっかけなのですが、アクサス・マブールというバンドは、実は音源を聴くのはもちろん、その名前を聞くのも今回がはじめて。前提となる彼らへの知識が全くない状況で今回のアルバムを聴いてみたのですが、2枚組約1時間15分、様々な「音」を取り込んだバラエティー富んだ内容に、一気に魅了された作品になっていました。

まずイントロ的な1曲目に続いてスタートする「C'est Charles」は打ち込みがメインとなるリズミカルなナンバー。なのですが、そのリズムは細かいハイハットの連続音は、まさに最近はやりのトラップからの影響を感じさせるナンバー。結成が1977年という超ベテランバンドにも関わらず、どこか今どきを感じさせるサウンドにまずは驚かされます。

かと思えば「Histoires de fous」はエレクトロピアノのナンバーがメランコリックで、若干レトロ的な雰囲気を感じさせる楽曲に。フランス語のボーカルも、哀愁感にピッタリとマッチ。そんな楽曲があるかと思えば「Formerly Known As Defile」はピアノやベル、打ち込みのリズムなどが軽快で楽しいおもちゃ箱のようなポップな楽曲。そのようにバラエティー豊かにアルバムは進行していきます。

Disc2になってもエレクトロな打ち込みでテンポよくリズムを聴かせつつ、その中に男女の会話を組み込んでどこかユーモラスな「Dramuscule」、インターリュード的な曲ながらもメタリックなサウンドが不気味な雰囲気を醸し出す「Excerpt from Uccellini」、ピアノやギターをアバンギャルドに聴かせる「Un certain M.」などなど、様々な作風の曲が展開されていきます。

特にDisc2は1分程度の作品に様々なアイディアを詰め込んだ「実験」的な曲も多く、そういう意味でもいかにもプログレ・バンド然とした要素も感じさせます。ただ、全体的には実験的な作品にもどこかポップやユーモラスな要素を詰め込んでおり、アルバム全体としては決して難解といったイメージはありません。むしろDisc2でも「Fatrasie pulverisee」は男女デゥオのフレンチポップとなっておりメロディアスで聴きやすさすら感じさせますし、ラストを飾る「Tout a une fin」も8分にも及ぶ曲になっており、サウンドには挑戦的な要素も感じさせるのですが、ポップでメロディアスな歌がしっかりと流れており、むしろ非常にポピュラリティーのある聴きやすさを感じさせます。

実験的な作風ながらもポップでユーモラスなサウンドを最後まで楽しむことが出来る傑作アルバム。大ベテランバンドで40年ぶりの新作ということですが、古さは全く感じる。逆に今風のサウンドすら感じさせる点も驚きすら感じます。今回彼らの音源はもちろん、名前もはじめて聞いたのですが、まだまだ私の知らない素晴らしいバンドはたくさんいるということですね。昔のアルバムもさかのぼって聴きたくなった、そんな傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Siti of Unguja(Romance Revolution on Zanzibar)/Siti Muharam

アフリカ東海岸のインド洋上のある諸島、ザンジバル。そのザンジバルの女性シンガー、Siti Muharamのデビューアルバム。本作も2020年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚で、本作がMusic Magazine誌ワールドミュージック部門で1位に輝いた作品。位置づけ的には「アフリカの音楽」となるのですが、シタールが鳴り響き、こぶしを効かせたボーカルを聴かせるスタイルは、むしろインド音楽の影響を強く受けた作品。ただ一方ではアラブ系の音楽やアフリカ系の音楽の要素も混じっており、独特の音楽性を聴かせてくれます。どこか妖艶な雰囲気も魅力的。アフリカの音楽の幅広さを感じさせる1枚でした。

評価:★★★★

Bom Mesmo E Estar Debaixo D'Agua/Luedji Luna

本作も2020年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。本作は、Music Magazine誌ブラジルミュージック部門で1位を獲得した作品。サンパウロを拠点に活動しているアフリカ系の女性シンガーによる作品で、ムーディーでジャジーな作風ながらも、一方ではアフリカ音楽からの流れを感じさせるトライバルなサウンドや、ラテン的な要素も感じさせる音楽で、まさにワールドワイドな音楽性を楽しめる作品になっています。ブラジル音楽といっても、その奥にある音楽性の深さを感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2021年2月21日 (日)

ハイライフの魅力を現在に伝える

Title:Alewa
Musician:Santrofi

今回紹介するアルバムも、2020年のベストアルバムとして取り上げられた作品のうち、未聴のアルバムを後追いで聴いたアルバム。今回もMUSIC MAGAZINE誌ワールドミュージック部門。今回は第5位にランクインしたアルバムです。19世紀に登場し、ガーナやナイジェリアなどに広がった、アフリカ音楽と西洋音楽を融合させた音楽、ハイライフ。今回紹介するSantrofiというバンドは、そんなハイライフを現在によみがえらせたガーナのバンドだそうです。

ハイライフという音楽自体は、このサイトでも何度か紹介したことがあります。ただ、いままで「ハイライフ」として紹介したアルバムは、ベテランミュージシャンや過去の音源のアンソロジー的な作品。しかし今回のアルバムは、ガーナの若手バンドで、まさに現在進行形の「ハイライフ」を奏でるバンド。イメージ的には、一昔前に流行ったジャンルのようですが、このアルバムを聴くと、今なお、しっかりと音楽のジャンルとして通用することがはっきりとします。

もともとハイライフという音楽は西洋音楽とアフリカ音楽の融合というのが大きな特徴のようですが、彼らの作品に関しては、その傾向がかなり顕著な内容となっています。1曲目「Kokrokoo」は、コールアンドレスポンスによる合唱とパーカッションのみという、まさにアフリカの音楽をそのまま収録したような内容に。続く「Alewa(Black and White)」はホーンセッションも入り、ジャズの要素も強く、いかにもハイライフといったイメージの曲なのですが、まだトライバルな雰囲気も強く感じる曲になっています。

しかし、続く「Kwaa kwaa」はギターサウンドがソウルテイストの作風になっていますし、ある意味タイトルそのまま「Africa」はアフロビート的なリズムが楽しめる反面、ギターに関しては、かなりロックのテイストの強く作品になっており、まさにアフリカ音楽と西洋のポピュラーミュージックの融合という作品に仕上がっています。

さらに彼らの音楽的な要素の幅広さはそれだけにとどまりません。「Odo maba」は陽気なラテンテイストのサウンドにジャズを融合させたような、心地よいポップチューンに。「Konongo kaya」も哀愁感たっぷりのサウンドはラテンの要素を感じさせます。もともとハイライフにはルンバやカリプソなどラテン音楽的な要素を強く感じる特徴があるのですが、まさにそんなラテンフレーバーを強く感じさせる心地よいポップソングに。そこに加わるポリリズムやコールアンドレスポンスなどのアフリカ的な要素が心地よく、まさにハイライフの魅力を現在に伝えているといっても間違いない作品が並びます。

そしてラストを飾る「Mobo」は非常にブルージーな作品に。ギターの音色もブルースの影響を感じさせますし、しんみりと歌い上げるボーカルもまさにブルース。このブルースとの融合というのは、個人的にはあまりハイライフとしてのイメージは強くないのですが、ただ、最後までしっかりとアフリカ音楽と西洋音楽の融合というハイライフの特徴をしっかりと踏まえた作品にまとめあげていました。

そんなまさにハイライフの魅力を現在に伝えた今回のアルバム。アフリカ的なトライバルな魅力と、洗練された西洋音楽のポピュラリティーを同時に感じるという、非常に優れた作品になっており、意外とポップな作風がゆえに、普段、ワールドミュージックに聴きなれていない方にもおすすめできる作品だったかもしれません。ベストアルバムの上位にランクインしてくるのも納得の傑作アルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Un Canto Por Mexico,Vol.1/Natalia Lafourcade

本作も2020年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。Music Magazine誌の、こちらはラテン部門で1位を獲得したアルバム。メキシコのシンガーソングライターによるアルバムだそうですが、ラテン調の作品ながらもポップでメロディアス。爽快で心地よいナンバーが並んでおり、日本人にとっても耳なじみやすい、いい意味でわかりやすいメロディーラインと、美しい彼女のボーカルが実に魅力的なナンバー。どこか感じさせるノスタルジックな雰囲気も実に魅力的な傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

What To Look For In Summer/Belle and Sebastian

コロナ禍により、ライブツアーやレコーディングが白紙になってしまったベルセバが、その代わりとしてリリースされたライブアルバム。2019年のワールドツアーからベストアクトを収録した2枚組のアルバムになっているのですが、彼ららしくメロディアスなポップチューンが並ぶ作品で、ライブならではの多幸感を作品から強く感じることの出来るアルバムに。ベルセバのベスト的な感覚でも楽しめるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Belle and Sebastian 過去の作品
Write About Love(ライト・アバウト・ラヴ~愛の手紙~)
Girls in Peacetime Want To Dance
How To Solve Our Human Problems
Days of The Bagnold Summer

| | コメント (0)

2021年2月20日 (土)

郷愁感あるサウンドは日本的??

Title:The Dancing Devils Of Djibouti
Musician:Groupe RTD

今回紹介するのも、ここ最近続いている、2020年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。今回もMUSIC MAGAZINE誌ワールドミュージック部門第3位にランクインしていたアルバム。日本にはちょっとなじみのない国かもしれませんが・・・エチオピアの北東、ソマリアにも隣接しているアフリカの国、ジブチ共和国。彼ら、Groupe RTDは、その国営ラジオ局のオフィシャルバンド。国営ラジオ局の厳しい制限に従ってわずか3日間で録音されたそうで、ジブチ初の外国向けのレコーディングアルバムとなるそうです。

これが初の外国向け、ということからもわかるように、いままでジブチの音楽というのはほとんど知られていませんでした。そんな中リリースされた本作は非常に貴重な音源とも言えるのですが、内容的にも非常に陽気な雰囲気で楽しい作品が並ぶ傑作に仕上がっていました。ちょっとアラビアテイストの混じった、エキゾチックな香り漂う「Buuraha U Dheer」に、同じく郷愁感漂うホーンの音色が印象的な「Raga Kaan Ka'Eegtow」など、隣国エチオピアの音楽では、日本での演歌に通じるような郷愁感ただようメロディーラインの曲が大きな特徴なのですが、本作もそんな郷愁感漂う作品が目立ちます。続く「Kuusha Caarey」なども、そんな郷愁感漂うメロが印象的ですし、「Raani」もどこか日本民謡的。こぶしの利いたボーカルには日本人の琴線に触れる部分も?

本作の紹介文には、「ジャズ、レゲエ、ダブ、ボリウッドなどの音楽スタイルを取り入れた」という記載があります。実際、「Suuban」などレゲエ的な要素も感じますし、ホーンセッションの軽快なリズムにジャズ的な要素も垣間見れます。また陽気でアップテンポなエキゾチックなサウンドはまさにボリウッドといった感じでしょうか。あまり知られていない地域の音楽ながらも、非常に様々なジャンルからの音楽を取り込んだ豊かな音楽的土壌を感じさせます。

ただ、それ以上に、前述した通り、どこか日本の民謡にも通じるような、日本人の琴線に触れそうなサウンドやメロディーが顔をのぞかせるのが、私たちにとっては大きな魅力ではないでしょうか。「Halkaasad Hhigi Magtiisa」のこぶしの利いたボーカルなど、まさに民謡的ですし、「liso Daymo」の横ノリのリズムも、どこかなじみを感じてしまいます。もちろん日本の音楽が影響を与えた・・・なんてことは思わないのですが、ひょっとしたらどこかつながっている部分があるのでは?なんて想像力をたくましくしてしまいます。

録音状態としてはフィールドレコーディング的な作品もあったり、サウンド的にはチープな部分があったりと、いろいろと泥臭さを感じる部分もあるのも大きな魅力のひとつ。粗いサウンドがゆえに、現場の息遣いを感じさせる作品になっているようにも感じました。まだまだ世界には魅力的な音楽がたくさんあるんですね!日本では知られざるジブチの音楽を聴いて、あらためてそう感じた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2021年2月19日 (金)

勢いが止まらない!

Title:Loveless Love
Musician:曽我部恵一

曽我部恵一の勢いが止まりません!2016年にリリースされたサニーデイ・サービスの傑作「DANCE TO YOU」以降、サニーデイでも積極的な活動を続ける曽我部恵一。2019年はサニーデイの活動はなかったものの、ソロとして「ヘブン」、「There is no place like Tokyo today!」と同時に2作もリリース。さらに2020年はサニーデイで新作「いいね!」をリリースしたかと思えば、さらに年末ギリギリに配信限定でリリースしてきたのが本作。まさに多作な状況が続いています。

普通、この手の「多作」な状況が続くと、楽曲としての出来は今一つになってきていまうケースが少なくありません。しかし、どうも曽我部恵一の場合はそうではないようで、サニーデイの作品は傑作続きですし、さらにその合間にリリースされるソロ作についてもはずれがありません。もうすっかりベテランの域に達している彼ですが、まさに今、ミュージシャンとして脂ののった状態である、ということは間違いないでしょう。

さらに特徴的なのが、アルバムとしてのベクトルが比較的明確で、いい意味で聴きやすさを感じるサニーデイの作品と比べて、曽我部恵一ソロの作品は、彼が演りたいことを自由に演っている感の強いアルバムに仕上がっているという点。おそらく、サニーデイとしても以前は比較的演りたい作品を演っていた部分はあるのですが、そうしてリリースされたアルバム「the City」が賛否両論だった影響もあるのでしょう(私は傑作だと思いますが)、その後リリースされたソロ作「ヘブン」「There is no place like Tokyo today!」は彼が演りたい音楽を演りたいように演ったソロ作となっていました。

そして今回のアルバムについても、まさにそんな曽我部恵一が演りたい音楽だけどサニーデイとしては発表できなかった楽曲が収録されたアルバムになっているように感じました。ジャンル的にはバラバラ感が強く、1曲目の「Cello Song」はエレクトロ色の強い楽曲ですし、「ただ一度」はサイケ感もあるバンドサウンドが特徴的。さらに「冬のドライブ」ではゆらゆら帝国か?と思うような、空間を生かしたシンプルでサイケなバンドサウンドの楽曲に仕上がっています。

比較的、サイケ感の強い楽曲にちょっとビックリする序盤から一転、「どっか」はアコギで聴かせるフォーキーな作品に。「永久ミント機関」は爽快なシティポップ風の作品になっていますし、「ブルーミント」はアコギで静かに聴かせるポップチューンに。ここらへんはサニーデイな曽我部が好きな人にも気に入りそうなポップチューンになっています。

その後は、音頭風のサウンドにダビーな処理を加えた「戦争反対音頭」や、幻想的なサウンドが特徴的な「満月ライン」など、本当にどの曲もバラバラと言えるようなサウンドが特徴的。彼がサニーデイとしては演れなかった、あるいは演りそこねたような楽曲が次々と登場していきます。そのため、アルバム全体としてはちょっと統一感のないような感じもしないではないのですが、それ以上に1曲1曲、非常に凝った作品が続き、メロディーラインにもインパクトがあり、何よりも勢いがあります。結果、アルバム全体としては曽我部恵一の勢いを感じさせる傑作アルバムに仕上がっていました。

また、もうひとつ特徴的なのがその歌詞の世界で、一言でいえば、日常と社会を交差するような歌詞が特徴的。「冬のドライブ」や「どっか」のような、日常に立脚したような歌詞が特徴的なのですが、「冬のドライブ」では「動物もウイルスもみな同じ」というコロナ禍を彷彿したような一説が登場したり、アルバムの中では「戦争反対音頭」なんていう社会派的な曲もあったりします。そして一番特徴的なのが「Sometimes In Tokyo City」で、東京の今の風景を描いたような歌詞なのですが、その中でも社会派的な視点も登場してきたりしています。よくよく考えれば、「日常的な歌詞」と「社会派な歌詞」というのは、それぞれ別々・・・と考えがちなのですが、間違いなく日常というのは社会の中で成り立っている訳で、そういう意味では両者は本来、切り離せられないものなのかもしれません。今回の曽我部恵一のアルバムでは、そんな「日常」と「社会」が交差する場所を描いたような歌詞が印象に残ります。

既に紹介した2020年年間ベストアルバムでも10位にランクインさせたように、間違いなく、2020年を代表する傑作アルバムだった本作。サニーデイの「いいね!」も傑作でしたが、個人的には本作の方が、より曽我部恵一の本質に迫った傑作アルバムだったように感じます。これだけ多作でありながら、このクオリティーを維持し続けるあたりに驚愕してしまうのですが、2021年もまだまだ彼の勢いは止まらなそう。これからの活躍も楽しみです!

評価:★★★★★

曽我部恵一 過去の作品
キラキラ!(曽我部恵一BAND)
ハピネス!(曽我部恵一BAND)
ソカバンのみんなのロック!(曽我部恵一BAND)
Sings
けいちゃん
LIVE LOVE
トーキョー・コーリング(曽我部恵一BAND)
曽我部恵一 BEST 2001-2013
My Friend Keiichi
ヘブン
There is no place like Tokyo today!
The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-
純情LIVE(曽我部恵一と真黒毛ぼっくす)

| | コメント (0)

2021年2月18日 (木)

初のベスト盤が1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

初のベスト盤が見事1位獲得です。

今週1位を獲得したのは、SEKAI NO OWARI「SEKAI NO OWARI 2010-2019」。デビューからちょうど11年目の2021年2月10日にリリースされた、バンド初となるベストアルバム。CD販売数1位、ダウンロード数及びPCによるCD読取数4位で、総合順位1位獲得となりました。「デビュー11年目」というのは非常に中途半端な区切りのように思うのですが、もともとは昨年5月にリリース予定だったものがコロナ禍で延期になった影響のようです。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万9千枚で1位初登場。直近作はEnd of the World名義でリリースした「Chameleon」で、同作の初動1万8千枚(6位)よりはアップ。ただし、SEKAI NO OWARi名義でリリースされた直近のオリジナルアルバム「LIP」「EYE」(2枚同時リリース)の初動7万7千枚(1位)、7万5千枚(2位)からはダウンしています。

2位はYou Tubeへの動画投稿などから人気を集めたずっと真夜中でいいのにの2枚目となるフルアルバム「ぐされ」が獲得。CD販売数及びダウンロード数2位、PCによるCD読取数5位。オリコンでは初動売上4万4千枚で2位初登場。直近のミニアルバム「朗らかな皮膚とて不服」の2万7千枚(2位)からアップ。フルアルバムとしての前作「潜潜話」の2万7千枚(5位)からもアップしています。

3位にはmillennium parade「THE MILLENNIUM PARADE」がランクイン。King Gnuのメインライターでもある常田大希によるソロプロプロジェクトによるデビューアルバム。ダウンロード数では見事1位を獲得。CD販売数3位、PCによるCD読取数9位で総合順位は3位になりました。オリコンでも初動売上4万2千枚で3位初登場です。

続いて4位以下の初登場組ですが、まず4位に狼バンドMAN WITH A MISSIONのミニアルバム「ONE WISH e.p.」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数12位。オリコンでは初動売上2万6千枚で4位初登場。直近作はベスト盤の「MAN WITH A"BEST"MISSION」で、同作の初動7万1千枚(2位)よりダウンしています。

6位初登場は松浦果南(諏訪ななか)from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Matsuura Kanan First Solo Concert Album~さかなかなんだか?~」。アニメキャラによるアイドルプロジェクトラブライブ!サンシャイン!!から登場したアイドルグループAqoursのメンバーによるソロアルバム。CD販売数5位、ダウンロード数20位、PCによるCD読取数82位で、総合順位は6位に。オリコンでは初動売上1万3千枚で5位初登場。

初登場最後は7位にランクインしたTWO-MIX「TWO-MIX 25th Anniversary ALL TIME BEST」。おそらくアラフォー世代あたりには懐かしくも感じられる、声優の高山みなみと作詞家の永野椎菜によるユニットで、いわば声優系ミュージシャンの走りのような存在。90年代後半に一世を風靡したものの、2000年代あたりからは活動が断続的に。2009年以降は活動がストップし、一時的な再始動はあったものの、事実上、解散状態に。ただ、結成25周年を迎えたということでリリースされたオールタイムベストが本作。CD販売数6位、PCによるCD読取数28位で、総合順位でもベスト10入りとなりました。オリコンでも初動売上9千枚で6位初登場。彼女たちのアルバムがベスト10入りするのは、1998年のアルバム「DREAM TACTIX」以来、22年5ヶ月ぶりになるそうです。

そしてロングヒット盤としては米津玄師「STRAY SHEEP」が先週からワンランクダウンの9位に。先週、ベスト10に返り咲きましたが、2週連続でベスト10入りとなりました。これで通算25週目のベスト10ヒットとなります。

さらに今週、ベスト10返り咲き組としてMr.Children「SOUNDTRACKS」が先週の18位からランクアップし、4週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。これは集計対象週にダウンロードが解禁となった影響で、ダウンロード数で6位にランクインし、見事ベスト10返り咲きを果たしました。

今週のHot Albumは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2021年2月17日 (水)

2位から8位が先週と変わらず

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位は、まずジャニーズ系が獲得しています。

1位初登場は関ジャニ∞「キミトミタイセカイ」が獲得。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ラジオオンエア数87位、Twitterつぶやき数5位、You Tube再生回数33位。フジテレビ系ドラマ「知ってるワイフ」主題歌となるスケール感あるバラードナンバー。オリコン週間シングルランキングでは初動売上21万7千枚で1位獲得。前作「Re:LIVE」の32万5千枚(1位)からダウンしています。

さて、2位以下の紹介ですが、実は今週、2位から8位までが先週と全く同じという、先週と比べてトップが入れ替わっただけという非常に動きのないチャートとなっています。

2位優里「ドライフラワー」。ストリーミング数及びカラオケ歌唱回数1位、You Tube再生回数3位は先週から同順位をキープ。ダウンロード数は2位から3位にダウン。これで13週連続のベスト10ヒット&3週連続のベスト3ヒットに。「ミュージックステーション」出演により、さらに知名度を伸ばした彼。まだまだロングヒットは続きそう。

3位Ado「うっせぇわ」。ダウンロード数、You Tube再生回数の1位は先週から変わらず。ストリーミング数が3位から2位へとじわりと順位を伸ばしています。またベスト10ヒットは5週目とロングヒットには至っていないものの、今後、「ドライフラワー」とのデッドヒートが予想されそう。

4位BTS「Dynamite」。You Tube再生回数2位、ダウンロード数7位は先週と変わらず。ストリーミング数は「うっせぇわ」と入れ替わる形で3位にダウン。これで26週連続のベスト10ヒット。徐々に下落傾向とはいえ、根強い人気が続きます。

5位も根強い人気のYOASOBI「夜に駆ける」。ストリーミング数及びYou Tube再生回数4位は先週から変わらず。これで43週連続のベスト10ヒットに。ちなみに「怪物」も先週と変わらず7位をキープし、今週も2曲同時ランクインとなっています。

6位LiSA「炎」。You Tube再生回数5位は先週と変わらないものの、ダウンロード数及びストリーミング数がいずれも5位から6位と若干ダウン。少しずつ下落傾向となっています。これで17週連続のベスト10ヒット。

そして8位にEve「廻廻奇譚」が先週と変わらず同順位をキープ。これで1月4日付チャートから8週連続のベスト10ヒットとなり、ロングヒット曲の仲間入りです。ただ、8週連続でベスト10入りしているものの、最高位は7位という、ほかの強力曲に阻まれて、なかなか上位をうかがえない状況が続いています。ただ、「Dynamite」、「夜に駆ける」、「炎」は失速気味ではあるため、そろそろ入れ替わりもあるかもしれません。

そんな感じでロングヒットがズラリと並んだ今週のチャートでしたが、1位に加えてもう1曲初登場がありました。それが10位にランクインしたAwesome City Club「勿忘」。Awesome City Clubは当サイトでもアルバムリリース毎に紹介しているバンドですが、男女デゥオによるシティポップバンド。有村架純と菅田将暉が主演をつとめ、メンバーのPORINが本人役でも出演する映画「花束みたいな恋をした」のインスパイア・ソングとして注目を集め、先週の20位からランクアップ。ストリーミング数8位、ラジオオンエア数2位など上位につけて、総合順位で見事ベスト10入りしてきました。ダウンロード数27位、You Tube再生回数21位とこちらはまだ順位は低めですが、こちらもそれぞれ先週の55位及び46位から大幅ランクアップ。ここがピークとなるか、来週、さらに順位を伸ばすか注目されます。来週、さらなるランクアップとなれば、新たなロングヒット曲誕生の予感も。

一方、先週までロングヒットを続けていた菅田将暉「虹」は今週、ついに11位にダウン。ベスト10下位ながらも根強い人気を見せていましたが、ベスト10ヒットは連続14週でとりあえずはストップ。ストリーミング数及びYou Tube再生回数は今週も10位でしたので、まだベスト10返り咲きの可能性はありますが、とりあえずはベスト10ヒットは一度ストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2021年2月16日 (火)

音楽好きが「聴いておくべき曲」をカバー

Title:ベルカント号のSONGBOOKⅠ
Musician:ムジカ・ピッコリーノ

Title:ベルカント号のSONGBOOKⅡ
Musician:ムジカ・ピッコリーノ

特に子育て世代の方には、いまさら言うまでもない話かもしれませんが、「子供向け」ながらも大人もうならせるような非常に優れた番組が少なくないのがNHK教育。現在、毎週金曜日に放送させている子供向けの音楽教育番組「ムジカ・ピッコリーノ」も、「子供向け」の番組ながらも、大人から見てもあなどれない、優れた音楽番組となっています。今回紹介するアルバムは、2018年以降に放送された第6シリーズ、第7シリーズで取り上げられた楽曲を収録した作品となっているのですが、番組を見ていなくても、音楽が好きならアルバムだけでもチェックしてみて損のないカバーアルバムに仕上がっています。

番組の内容としては、音楽をなくした仮想空間の「ムジカ・ムンド」にさまよう「モンストロ」という怪獣を音楽の力で救出するというストーリー。「モンストロ」はそれぞれ、楽曲の記憶を有していて、ベルカント号のメンバーが、「モンストロ」が断片的に提示する楽曲の記憶をヒントに、その楽曲を演奏することにより「モンストロ」を救出するというストーリーとなっています。

まず、この楽曲を演奏するベルカント号のメンバー、ハッチェル楽団の構成員があなどれません。ボーカルは、あのOKAMOTO'Sのボーカル、オカモトショウ。ギターにはペトローズのメンバーで、東京事変にも「浮雲」の名前で参加している長岡亮介が参加。そのほか、藤原さくらなども参加しており、このメンバーによるカバーアルバム、というだけで聴く価値を感じる方も少なくないのではないでしょうか。

さらに素晴らしいのがカバーしている楽曲の数々。基本的に「音楽教育番組」ということなのですが、音楽が好きならば、まずはチェックしておくべきなスタンダードナンバーが数多く収録されています。それもジャンル的にはロックやポップスからスタートし、J-POPや演歌、アイドル歌謡曲にテクノポップ、ボサノヴァ、ラテン、クラシックに日本の民謡や、沖縄民謡まで網羅。それも「音楽の教科書」的な昔からの「唱歌」的な曲ではなく、音楽的な評価が高いポピュラーミュージックがずらりとならびます。

そもそも「SONGBOOKⅠ」の冒頭を飾る曲からして、くるりの「ばらの花」。さらにThe Whoの「My Generation」が続いたかと思えば、ガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム」、山口百恵の「プレイバックPartⅡ」に、なんとオアシスの「ワンダーウォール」まで登場。その後もRIP SLYMEに水前寺清子にニュー・オーダーの「ブルーマンデー」まで登場。古今東西、ポピュラーミュージックとして聴いておくべきスタンダードナンバーが並びます。

「SONGBOOKⅡ」にしても、はっぴいえんどの「風をあつめて」からスタート。YMOの「TECHNOPOLIS」や嘉納昌吉の「ハイサイおじさん」、レッド・ツェッペリンの「イミグラント・ソング」ではおなじみのヘヴィーなギターリフとボーカルの咆哮もしっかりとカバーしていますし、さらにはボサノヴァの名曲、アントニオ・カルロス・ジョビン「Agua De Beber」やラテンのスタンダードナンバー、Gipsy Kingsの「ボラーレ」まで網羅しています。

さらにはポピュラーミュージックの枠組みを飛び越えて、クロード・ドビュッシーの「アラベスク第1番」やベートーベンの「交響曲第9番」もしっかりとカバー。サティの「ジムノペディ第1番」では、日常会話に重ねることにより「家具の音楽」というサティのコンセプトをしっかりと体現化しています。あえて言えば、ソウルやブルース、海外のHIP HOPといったジャンルの選曲がないのが残念なのですが、それを差し引いても、まさに音楽が好きなら、このアルバムを参考に原曲をめぐってみるもの楽しいのでは?と思わせるような選曲になっています。

カバーとしては、あくまでも子供向けの音楽教育番組という立て付けのため、原曲に沿った卒のないカバーに仕上げており、この「卒がない」という点でも、参加メンバーの実力を感じさせます。ボーカルのオカモトショウも、OKAMOTO'Sで聴く時には、ボーカルの線の細さが気になっていたのですが、本作では、癖のないボーカルスタイルに徹しており、くるりの「ばらの花」とか、オアシスの「ワンダーウォール」とか、意外と原曲にもマッチした歌を聴かせてくれており、ボーカリストとしての実力を再認識しました。

変にわけわからない合唱課題曲を歌わされるよりも、このアルバムを小学校の音楽の教科書として用いた方が、よっぽど音楽の楽しさ、おもしろさを体現できるのでは?そう感じさせるカバーアルバム。音楽好きにとっても、音楽好きとして「聴くべき曲」を網羅的に楽しめるという意味でも非常に優れた選曲の作品だったと思います。いや、あらためてEテレ、あなどれません。聴いていておもわずその内容にうならされてしまったアルバムでした。

評価:どちらも★★★★★


ほかに聴いたアルバム

くのいち/775

こちらも2020年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。MUSIC MAGAZINE誌レゲエ部門で1位を獲得したアルバム。大阪・岸和田出身のレゲエシンガー。全5曲入りのミニアルバムなのですが、最後の「友達のうた」など典型的なのですが、仲間や地元について歌った曲がメイン。良くも悪くも下町のヤンキー的な価値観の作風になっています。サウンドはシンプルな横ノリのリズムでポップで聴きやすいスタイル。ただ、そんな中で「Bon buri」は、大麻を思いっきり肯定し礼賛する1曲になっており、賛否はともかく、今の日本でよく商業ベースで(インディーズですが)リリースできたなぁ・・・と感心する作品になっています。この1曲だけでかなりインパクトのある作品になっていました。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2021年2月15日 (月)

一気に駆け抜けるビート

Title:Example
Musician:Sulaimon Alao Adekunle Malaika

今回紹介するのも2020年の各種メディアでのベストアルバムを後追いで聴いた1枚。今回はMUSIC MAGAZINE誌の年間ベストアルバム、ワールドミュージック部門で2位にランクインしたSulaimon Alao Adekunle Malaikaによるアルバム。KS1 Malaikaという名前でも知られるナイジェリアのフジという音楽を奏でるミュージシャンだそうです。

この「フジ」という日本人にもなじみのある名称が付された音楽は、ナイジェリアで人気のダンスミュージックのジャンルで、もともとはラマダンの断食シーズンにおいて、夜明け前に人々を起こすために演奏された音楽のジャンル、アジサーリから生まれた音楽だそうです。この「フジ」という名前は、紛うことなく日本の「富士山」に由来しているとか。もっとも、音楽的に日本の音楽が影響を受けている、という訳ではなく、シキル・アインデ・バリスターというナイジェリアで人気のミュージシャンが、「空港で日本一高い富士山を宣伝するポスターを見て思いついた」そうで、決して日本の音楽に由来するものではないものの、日本の「富士山」から名前を拝借しているあたり、日本人にとってはちょっとうれしく感じてしまうかもしれません。

さて、そんな今回のアルバムですが、作品としては「O Se Oju Je je」という曲と「Awa Eda Ti Oba Olorun Da」という20分を超える曲が2曲並ぶだけのアルバムになっています。基本的に、その2曲とも、陽気なダンスチューンというスタイルであり、どちらもフジの楽曲であり、スタイル的には大きく変わるものではありません。

スタートして最初に耳に飛び込んでくるのは、非常にチープな打ち込みのサウンド。ある意味、「粗削り」ともいえるサウンドはいかにもアフリカ的なのですが、このサウンドが妙に印象に残ります。そして、そのあとに一気に飛び込んでくるのが、パーカッションの疾走感あふれるビート。そこにコールアンドレスポンスを基調としたボーカルがのり、リスナーを一気に狂乱の渦に巻き込むような、そんなサウンドが展開されます。

この疾走感あふれるパーカッションのグルーヴが延々と20分以上続いていくわけですから、踊りながら聴いたら間違いなくトリップできそう。これが「夜明けにみんなを起こすための音楽」だとしたら、いきなり朝一からとんでもないほとハイテンションとなるわけで、アフリカ人のアグレッシブさに驚かされます。

そんなトリップ感あふれるビートが続いていく中、非常に気持ちよいのが途中で妙にあか抜けたホーンセッションやギターの音色が入ったり、妙にあか抜けたメロディアスなフレーズが飛び込んでくる点。ただただハイテンションで続いていくビートの中でのちょうどよい清涼感となって、アルバムの中でのちょうどよい「抜け」の要素となっています。ある意味、トライバルなビートやコールアンドレスポンスと、妙にあか抜けたメロディやホーンセッションの音色のバランスが絶妙で、最後まで全くだれることなく楽しめる大きな要因になっているように感じます。

そんな訳で、アルバムの中で大きな変化があるわけではないものの、全40分強の内容を一気に楽しむことが出来るアルバム。これ、ライブで聴いたら本当にトリップできて気持ちいいだろうなぁ・・・と感じてしまいます。ベストアルバムとして高い評価を受けるのも納得の1枚。ジャンルが「フジ」なだけにフジロックや富士山の麓で聴きたい??

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

No Fun Mondays/Billie Joe Armstrong

以前、Norah Jonesとの共作という形でのリリースはあったものの、純粋なソロとしては本作がデビュー作となります、ご存じGREEN DAYのボーカリストによるソロ作。とはいえ、本作もソロのオリジナルではなく、彼が過去に影響を受けた楽曲をカバーしたカバーアルバム。このコロナ禍でライブツアーが中止となり自宅待機を余儀なくされた影響で作成されたアルバムのようです。GREEN DAYのファンなら大喜びしそうなポップな曲調の楽曲ばかりで、そんな曲をいずれもメロディアスパンクなアレンジで仕上げている、非常にご機嫌なアルバム。彼の音楽的な原点がよくわかる、陽気なカバーアルバムとなっています。コロナ禍の副産物的な作品と言えるのですが、次はこれをライブ会場で聴ける日を願いたいです。

評価:★★★★★

on the tender spot of every calloused moment/Ambrose Akinmusire

本作も、2020年ベストアルバムとして選定されたアルバムのうち聴き逃していた作品を後追いで聴いた作品。本作はMusic Magazine誌ジャズ部門で1位を獲得したアルバム。現代ジャズ界で注目を集めるトランぺッターによる作品で、本作は2021年グラミー賞の最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム部門にノミネートされているそうです。フリーキーなサウンドも垣間見せるものの、基本的にはメロウでしんみり聴かせる、思ったよりもオーソドックスな「ジャジー」と表現されるようなサウンド。いい意味で聴きやすさを感じるアルバムでした。

評価:★★★★

Billie Joe Armstrong 過去の作品
Foreverly(BILLIE JOE+NORAH)

| | コメント (0)

2021年2月14日 (日)

海外で活躍する日本人SSWの話題作

Title:Sawayama
Musician:Rina Sawayama

「海外で活躍する日本人」というネタは、日本人にとっては大好きなネタで、特にメディアではよくこの手のネタは取り上げられたりします。ただ、得てして日本の芸能界に対する「忖度」が働くことが多々あり、日本の著名な芸能人が、ちょっと海外で取り上げられたりすると「世界の〇〇」と過剰にもてはやしたりする一方、日本では無名な芸能人が海外で活躍しても、なぜか日本国内ではほとんど取り上げられない、というケースが少なくないように思います。

今回紹介するRina Sawayamaもそんな海外で活躍するものの、日本ではあまり取り上げられていない「芸能人」の一人。もともと新潟出身で、父親の転勤をきっかけで4歳の時にロンドンに移住。日本出身イギリス育ちという出自を持つ彼女ですが、現在はイギリスを拠点に、シンガーソングライターとして活躍しています。残念ながら、まだ売上的にはブレイクという状況ではないのですが、音楽的な評価は非常に高く、NMEの2020年ベストアルバムで7位、ガーディアン誌のベストアルバムでは3位など、数多くの海外メディアの2020年のベストアルバムの上位に軒並みランクインするなど、間違いなく「2020年を代表するアルバム」の1枚となっています。

ただ、残念ながら日本では本作についてあまり大きく取り上げられることはありません。一応、「ロッキンオン」の年間ベストで18位にランクインしているものの、このアルバム自体、さほど大きく取り上げられた印象はありません。私も2020年のベストアルバムとしてメディアに取り上げられたアルバムのうち、聴き逃していたアルバムの1枚として遅ればせながら聴いてみただけに、人のことは言えないのかもしれませんが・・・。

そんな本作ですが、音楽的にはR&Bの影響を強く受けた軽快なポップス。本人は自分の音楽についてマライア・キャリーやジャスティン・ティンバーレイクの名前をあげたりするのですが、確かに基本的には「今どきのR&Bポップ」という印象を受けるアルバムとなっています。ただその一方、J-POPからの影響を非常に強く感じる作品にもなっています。実際、彼女自身はイギリス育ちとはいえ、もともとは日本人学校に通っていたそうで、数多くのJ-POPに触れてきたそうです。特に宇多田ヒカルの「First Love」や椎名林檎の「勝訴ストリップ」は最も大きな影響を受けたアルバムとして名前をあげるなど、間違いなく彼女の楽曲には邦楽の「血」が流れています。

特に顕著なのが「Paradisin'」で、わかりやくかつキャッチーなインパクトのあるサビを持つ楽曲構造は、あまり洋楽では見られないパターンで、典型的なJ-POP的な楽曲構成。日本人にとっても、非常になじみやすい曲調になっています。さらに顕著なのは、最後の「Tokyo Takeover」。途中、日本語詞のフレーズが登場するのですが、ここがもろ椎名林檎。「新宿のゴールデン街」なんていう、ちょっと椎名林檎すぎて露骨な固有名詞まで登場しており、椎名林檎からの影響がわかりやすく体現化された曲になっています。

さらに「STFU!」のようなメタリックなサウンドだったり、「Comme des Garcons(Like The Boys)」のようなエレクトロチューンが入ったり、「Who's Gonna Save U Now?」のようなニューウェーヴ風な曲が入ったりと、いい意味でこだわりのない、雑食的な音楽性もJ-POP的と言えるかもしれません。

また影響を公言するミュージシャンとして、洋楽勢でもマライア・キャリーやカーディガンズなど、日本人好みのミュージシャンをあげているあたりも特徴的で、キャッチーでわかりやすいメロディーラインといい、「日本人好みの洋楽」というイメージを強く持ちます。彼女の音楽は日本人的には非常になじみのある曲調とも言えるのですが、ひょっとしたら海外では、J-POP的な部分も含めて、彼女みたいなタイプの楽曲が、逆に新鮮に感じられているのかもしれません。

ちなみに彼女自身、「日本的」な部分を押し出しており、前述の「Tokyo Takeover」の中の日本語詞もそうですし、「Akasaka Sad」「Tokyo Love Hotel」なんて曲もありますし、「XS」の冒頭では、日本民謡的なこぶしが入ってきていますし、ここらへんの日本的な要素も、海外ではエキゾチックなものとして受けているのかもしれません。

アルバムとしては日本人受けしそうな内容ですし、日本でも間違いなく人気が出そうな1枚。彼女自身、以前日本でも「情熱大陸」で取り上げられたこともあるだけに、「完全無視」という状況ではないものの、海外での高い評価と反比例して、やはりあまり取り上げられることが少ない現状。ただ、これで「グラミー賞」とか受賞してしまったら、手のひらを返したように「海外で活躍する日本人」としてチヤホヤされるんだろうなぁ。ま、そんなうがった考えも思い浮かんでしまうのですが、本作が傑作なのは間違いありません。今のうちに、日本でも大ヒットするといいんですが・・・。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2021年2月13日 (土)

2020年という年をあらわした連作

Title:Untitled(Black is)
Musician:SAULT

2020年は新型コロナウイルスの蔓延が世界中を覆いつくし、非常に「暗い」1年となってしまいました。しかし、昨年大きな話題となったニュースはコロナ禍だけではありません。それと並ぶように大きな話題になったのが白人警官による黒人への暴力に端を発するBlack Lives Matter運動でした。主にアメリカで大きな流れとなったのですが、一方、日本でも大きな話題となりました。

今回紹介するのは、そんなBlack Lives Matterに呼応する形でリリースされたアルバム。ミュージシャンであるSAULTは、2019年に「5」「7」という匿名性の強いアルバムがリリースされ、ロンドンで一気に話題となったバンド、SAULT。正体不明の謎のバンドとして話題となり、ミュージシャンの名前からして「ソー」もしくは「ソールト」という異なる呼ばれ方をしているそうです。

今回のアルバムを聴いたきっかけは、こちらのサイトで2020年各種メディアのベストアルバムとして上位にランクインしてきていることを知ったから。リアルタイムでは聴き逃してしまったため、後追いでチェックしてみたアルバムなのですが・・・まずBlack Lives Matterに呼応するアルバムというメッセージ性関係なく、非常にカッコいいアルバムに仕上がっていました。

アルバムとしては、ソウルやファンクをベースに、ダブ、ロックやゴスペル、HIP HOPやアフリカ音楽の要素まで取り入れた、非常に黒い、グルーヴィーなサウンドを聴かせてくれています。特に「Don't Shoot Guns Down」ではトライバルなリズムを取り入れてきたり、「Bow」ではコールアンドレスポンスにトライバルなサウンドと、アフリカ的な楽曲を展開しています。

また一方では「Black」のような、トラップ的なリズムを取り入れたループするサウンドで、HIP HOP的な曲もあったりと、今風なサウンドも感じられまず。かと思えば一方では「Wildfires」「Sorry Ain't Enough」のように、レトロでムーディーなソウルチューンがあったり、さらにラストの「Pray up Stay up」も60年代のソウルを彷彿とさせるような魅力的なポップチューンだったりと、アルバム全体としてはどちらかというとレトロな要素が強く、どこかエロチックさも感じるサウンドが強い魅力に感じました。

ただ、おそらく何よりもこのアルバムで主張したいのは、Black Lives Matterに対応するメッセージでしょう。ジャケット写真からしてつきあげられた拳という印象的なものですが、アルバムの1曲目「Out the Lies」から、まず「Black is safety...」という語りからスタートするあたり、かなりストレートなメッセージ性を感じさせます。さらに「Don't Shoot Guns Down」では"Don't shoot,guns down.Racist policeman"というワードがストレートに綴られていますし、途中の「Us」でも"I beleieve the magic of blackness"というメッセージからスタートしていたりと、非常に伝わりやすい、わかりやすいメッセージ性が魅力的。この手のメッセージアルバムは、非英語圏の私たちには伝わりにくい部分があるのですが、本作は、あえてアフリカ色を出したサウンドと合わせて、私たちにもしっかりとメッセージが伝わってくるアルバムになっていました。

そして、そんな彼らが2020年にもう1枚リリースしたアルバムがこちら。

Title:Untitled(Rise)
Musician:SAULT

本作も、80年代的な明るさを感じさせる「Strong」や60年代のR&B的な「Fearless」など、やはりレトロな雰囲気が魅力的。今回もソウルやファンク、ジャズなどの要素を強く感じさせるアルバムになっています。ただ、同じ「Untilted」ですが、「Black is...」とその方向性は大きく異なります。メッセージ性が強く、そのメッセージゆえに影の要素を感じさせる「Black is...」と比べると、本作は、明らかに「陽」の要素を強く感じさせるアルバムになっています。3曲目に配置された「Rise」では、やはり語りが入るのですが、そのメッセージがいきなり"Good morning"からスタートするあたりも、明らかに明るさを感じさせるアルバムになっています。

その後も、彼ら流のディスコチューンともいえる「I Just Want to Dance」や、レトロなソウルチューンながらも清涼感あるボーカルが心地よい「Son Shine」、こちらもトライバルでアフリカ的ながらも、非常に明るさを感じさる「The Beginning&The End」など、全体的にちょっと懐かしさを感じさせつつ、明るい楽曲が並びます。

ただ、単純な明るさだけではなく、後半「No Black Violins in London」など微妙に不穏な空気を感じさせる語りが入っていますし、続く「Scary Times」"Hearing gunshots in the streets every nights"と、不穏な現状がそこには綴られています。間違いなく「Black is...」と呼応する形で作られた本作は、ある意味、「Black is...」の向こう側にある明るさを歌いつつ、一方ではその不穏さから、差別問題が単純に解決されるものではないという事実も物語っているように感じました。

とはいえ、ラストの「Little Boy」は女性ボーカルによる明るいポップチューンに仕上がっており、爽快な印象でアルバムは幕を下ろします。「Black is...」と「Rise」が対になっているアルバムということを考えると、非常に暗い雰囲気からアルバムがスタートし、「Rise」で祝祭色が強くなるものの、最後ではやはり不穏な現実を垣間見せ、しかしラストは明るい希望を感じさせつつアルバムは終わる…非常に印象的な構成になっていたように感じます。

メッセージ的にもサウンド的にも非常に優れたアルバムで、これは確かに各種媒体で絶賛を集めるのは納得の傑作アルバム。2020年を間違いなく代表する作品だったと思います。2020年がどういう年だったか、という時に、まずは紹介されそうな作品とも言えるでしょう。今回、彼らについては実ははじめて知ったのですが、そのサウンドにもメッセージにも一気に惹きつけられました。

評価:どちらも★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Weird!/YUNGBLUD

イギリスの新人ミュージシャンの登竜門とも言える「BBC Sound of 2020」の3位にランクインし注目を集めたシンガーソングライター、ドミニク・リチャード・ハリソンことYUNGBLUDの2枚目となるアルバム。ボーカリストとしては端正な声の持ち主で、比較的聴きやすいポップソングというイメージが強く、楽曲的にもハードロックやミスクチャー風の曲から、軽快なギターロックやよりポップテイストの強い曲までバリエーション豊か…というよりも、良くも悪くも「器用」というイメージを抱きます。まだ日本での知名度はさほど高くありませんが、日本でも、もっと広い層に人気が出そうな予感のあるミュージシャンです。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2021年2月12日 (金)

より彼らしい歌詞が魅力的

Title:Nonocular violet
Musician:山中さわお

現在、事実上の活動休止状態となっているロックバンドthe pillows。しかし、the pillowsのボーカリストであり、メインライターである山中さわおは、むしろthe pillows活動休止中の今、かなり積極的な活動が目立っています。5月にはソロアルバム「ELPIS」をリリース。さらに8月にはミニアルバム「ロックンロールはいらない」をリリースし、さらに11月には本作をリリース。もともと、今年はソロ活動が中心となることが予定されており、さらにコロナ禍の中でライブ活動もままならない状況だから新曲をたくさん書いていた、というのが大きな理由のようです。

「ELPIS」「ロックンロールはいらない」が通販限定でのリリースとなったため、ある意味、もっともプロモーションされ、もっとも目立った形でのリリースとなったのが本作。実は私自身、前2作が通販限定ということもあったため未チェックとなっており、ソロ作としては久しぶりに聴く形でのアルバムとなりました。

山中さわおのソロアルバムと言えば、最初の2作「退屈な男」「DISCHARGE」は楽曲的にもthe pillowsとは一線を画するような楽曲が並ぶ、ある意味、ソロ作らしいアルバムになっていました。一方で3作目の「破壊的イノヴェーション」はthe pillowsが活動休止中にリリースされたアルバムということもあってか、比較的、the pillowsと同じベクトルを向いたアルバムになっていました。

そして今回のニューアルバム、the pillowsが事実上の活動休止中だから、ということもあるのでしょうか、いままでのアルバムの中でもっともthe pillowsのサウンドに近いアルバムという印象を受けました。基本的にthe pillowsと同様の、テンポ良いオルタナ系ギターロックを奏でるバンドサウンド色の強い作品がメイン。1曲目のタイトルチューン「Nonocular violet」の楽曲の入り方なんかは、もろthe pillowsといった感じですし、「Old fogy」の出だしのギターリフなんかも、the pillowsらしい…というよりも山中さわお節といった方がいいんでしょうね。

オルタナ系のギターロックメインの中に「オルタナティブ・ロマンチスト」のようなリズミカルなロックンロールチューンが入っていたり、「V.I.P.」のような、よりヘヴィーなサウンドを聴かせる曲が入っていたり、さらにラストの「Vegetable」のような英語詞の楽曲が入っていたりする構成も、the pillowsのアルバムと同じような楽曲構成になっています。

いままで、the pillowsの曲と比べると、山中さわおの曲はインパクトを抑えめに仕上げていたような印象を受けましたが、今回のアルバムで言えば「サナトリウムの長い午後」のような、the pillowsのシングル曲としてリリースしても違和感のないようなフックの効いた曲も収録されており、そういう意味でもソロアルバムとしての力の入りようも感じます。

それだけに、これ、the pillowsとしてリリースしてもよかったのでは?なんて思ったり思わなかったりするのですが、一方で、孤独の中での人との絆を歌うような、山中さわおの色を、the pillowsの曲よりも強く感じます。

「笑われたってかまわないぜ
キミとの再会も叶うだろう」
(「Nonocular violet」より 作詞 山中さわお)

「はみだし者が二人で
はしゃいでた
自由だったな」
(「POP UP RUNAWAYS」より 作詞 山中さわお)

みたいな歌詞は、実に彼らしいと言えるでしょう。そして一方、その向こうにある希望を力強く歌っているのも特徴的で、

「輝く未来はきっと 目には見えない花を
育て続ける僕らに手招きしてるって
絵本のような夢はいつ覚める」
(「Nonocular violet」より 作詞 山中さわお)

「行こうぜ 心を奪い返しに行こう
秘策も武器もない それでいい
失うモノもない」
(「サナトリウムの長い午後」より 作詞 山中さわお)

なんて、どこか寂しげな要素を帯びつつも、希望を歌う歌詞に彼らしさも強く感じます。

そんな訳で、the pillowsが活動していない穴を埋めるかのような、山中さわおらしい作品が収録されたアルバムで、the pillowsファンも間違いなく気に入りそうなアルバムに仕上がっていました。個人的にも、いままでの彼のソロ作の中で一番のお気に入り。昨年リリースした残りの2作、未チェックだったのですが、やはり聴いてみようかなぁ・・・。でも、2021年は、the pillowsの活動再開も期待したいのですが。

評価:★★★★★

山中さわお 過去の作品
DISCHARGE
退屈な男
破壊的イノヴェーション


ほかに聴いたアルバム

Face to Face/雨のパレード

昨年1月にアルバム「BORDERLESS」をリリースしたばかりの雨のパレードですが、なんと12月にもう1枚アルバムをリリース。どうも山中さわおのソロと同様に、コロナ禍の影響でライブツアーがなくなったため、曲を書き始めた影響のようです。ファンとしてはうれしい話で、コロナ禍の副産物と言えるのかもしれません。楽曲的には、いつもの彼らと同様、AOR、シティポップ的な要素を中心に、エレクトロ、ファンク、ロックなどの要素を取り入れた楽曲。全体的にはメロウでスタイリッシュな、気だるい雰囲気の曲が多く、ウェットさはいままで以上。いままで、音楽的な偏差値の高さと反してインパクトの弱さが気になっていたのですが、いままでのアルバムの中では一番印象に残ったかもしれません。もうちょっとコアになる曲があればおもしろくなると思うのですが。

評価:★★★★

雨のパレード 過去の作品
Change your pops
Reason of Black Color
BORDERLESS

新小岩/ZORN

正直、BillboardのHot Albumsでこのアルバムがいきなり1位を獲得したのには驚きました。以前は般若主宰の昭和レコードに所属していたものの2019年に脱退。本作は脱退後初となる9枚目のオリジナルアルバム。「新小岩」という地名をタイトルにした通り、彼の出身地である新小岩での生活をつづったようなラップが特徴的。今どきなトラップの要素をふんだんにいれつつ、地元での仲間たちとの生活をラップしています。貧乏なアンダーグラウンド的な生活の実態を描く、といった社会派的な要素はないため、いわゆる「下町のヤンキー」然とした生活スタイルには全く共感できないのですが、ダウナーでメランコリックな雰囲気を漂わせたラップは確かに魅力的。まだまだこれからも注目を集めそうなラッパーです。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2021年2月11日 (木)

コロナ禍だからこそライブ盤か?

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位は人気バンドのライブ盤が見事1位獲得。

今週1位はTHE YELLOW MONKEYのライブ盤「Live Loud」が1位を獲得。CD販売数1位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数7位で総合順位1位獲得となりました。2019年12月のナゴヤドーム、そしてコロナ直前、昨年2月の京セラドームでのライブ、そして昨年11月にキャパを制限した上で実施した東京ドームライブの模様を収録したライブアルバムとなっています。通常、ライブ盤というのはオリジナルアルバムほど売上が伸びないのですが、他に強力盤がなかったということもあるのでしょうが、見事1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上2万7千枚で1位初登場。直近のオリジナルアルバム「9999」の8万1千枚(3位)からはダウンしています。

2位はロックバンドSUPER BEAVER「アイラヴユー」が獲得。2009年から2011年にかけて一度エピックレコードでメジャーデビューしたものの、その時はヒットに恵まれず、一度インディーに戻ったものの、その後人気を獲得。このたびソニーミュージックからメジャー再デビューとなり、本作がメジャー再デビュー第1弾のアルバムとなります。CD販売数2位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数10位。オリコンでは初動売上2万枚で2位初登場。前作「歓声前夜」の1万5千枚(10位)からアップしています。

3位には、女性アイドルグループBiSHのメンバー、アイナ・ジ・エンドによるソロデビューアルバム「THE END」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数21位。オリコンでは初動売上1万3千枚で3位初登場。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず5位に韓国の女性アイドルグループMAMAMOO「TRAVEL -Japan Edition-」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数12位。オリコンでは初動売上8千枚で4位初登場。前作「reality in BLACK」の1千枚(27位)よりアップしています。

10位にはボカロP出身の男性シンガーソングライター、須田景凪「Billow」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数11位、PCによるCD読取数54位。前作「porte」がEPだったので、メジャーデビュー後初となるフルアルバムとなります。オリコンでは初動売上5千枚で7位初登場。前作「porte」の7千枚(7位)よりダウンしています。

今週の初登場盤は以上でしたが、一方今週、ベスト10返り咲き組も1枚。米津玄師「STRAY SHEEP」が先週の11位から8位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。ただ、CD販売数は17位から16位に若干のアップ。ダウンロード数は6位キープと、相対的に強力な新譜がなかったため、相対的にベスト10に浮上してきた形での返り咲きとなっています。これで通算24週目のベスト10ヒットとなりました。

一方で先週10位にランクインし、ベスト10返り咲きを果たした宮本浩次「ROMANCE」は今週は11位にダウン。通算ベスト10記録は9週でとりあえずはストップ。ただ、CD販売数は8位にランクインしており、オリコンでも6位にランクインしているため、まだ来週以降、返り咲きの可能性もありそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2021年2月10日 (水)

2位3位は先週と変わらず

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き秋元康系グループが1位獲得となりました。

1位はSKE48「恋落ちフラグ」。名古屋を拠点に活動するAKB48の姉妹グループ。約1年1か月ぶりとなるニューシングルで、CD販売数1位、ラジオオンエア数76位、PCによるCD読取数14位、Twitterつぶやき数16位。オリコン週間シングルランキングでも初動売上19万枚で1位初登場。ただ、1年前の前作「ソーユートコあるよね?」の初動売上28万9千枚から大幅に減少。先週の乃木坂46もそうですが、秋元康系アイドルグループのCD売上の下落傾向が目立ちます。

そして2位は優里「ドライフラワー」が先週から変わらず2位をキープ。ダウンロード数2位、ストリーミング数1位、You Tube再生回数3位は先週から変わらず。これで12週連続のベスト10ヒットとなり、ベスト3ヒットも2週目。ロングヒットを続けています。

さらに3位も先週と変わらずAdo「うっせぇわ」。ダウンロード数及びYou Tube再生回数1位は先週から変わらず。ストリーミング数は4位から3位にアップしています。こちらはまだベスト10入り4週目ですが、昨年末の「夜に駆ける」と「香水」と同様、この2曲が今後、デッドヒートを繰り広げそう。比較的万人受けしそうなバラード vs ネット初の若者向けヒットという構図も「夜に駆ける」と「香水」の対比と同じ。現状、「ドライフラワー」が一歩リードしていますが、今後どう展開していくのか、注目です。

続いて4位以下ですが、今週は初登場曲がゼロ。4位以下のロングヒット曲が並びます。まず4位には、一時期ほどの勢いはなくなったものの、しぶとい人気が続くBTS「Dynamite」がワンランクアップ。ストリーミング数及びYou Tube再生回数は先週と変わらず2位をキープ。ただダウンロード数は5位から7位にダウンしています。これでベスト10ヒットは25週連続となりました。

5位も先週6位のYOASOBI「夜に駆ける」がワンランクアップ。こちらもしぶとい人気が続きます。ただ、You Tube再生回数こそ4位をキープしたものの、ダウンロード数は6位から11位、ストリーミング数も3位から4位にダウン。これで42週連続のベスト10ヒットとなりましたが、下落傾向は続いています。一方「怪物」は先週の8位から7位にワンランクアップ。YOASOBIは今週も2曲同時ランクインとなっています。

LiSA「炎」も先週の7位から6位にワンランクアップ。今週でベスト10ヒットは連続16週に。ただ、こちらもストリーミング数及びYou Tube再生回数の5位は先週から変わらないものの、ダウンロード数は3位から5位と若干のダウンとなっています。

一方、土俵際でしぶとい粘りを見せているのが菅田将暉「虹」。今週は先週の10位から9位にワンランクアップ。これで14週連続のベスト10ヒットとなっています。ストリーミング数10位、You Tube再生回数11位は先週から変わらず。ダウンロード数が17位から15位と地味にランクアップしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2021年2月 9日 (火)

ちょっと懐かしいポップソングが魅力的

Title:Future Nostalgia
Musician:Dua Lipa

今回聴いたアルバムも、2020年に各種媒体でベストアルバムとされている中で、聴き逃したアルバムを後追いで聴いた1枚。今回は、主要メディアのベスト盤を集計し、トップ50リストを作成した、というニュースを参考に、ベスト10のうち、まだ聴いていないアルバムをチェックしました。1位のFiona Appleから4位のTalor Swiftまでは既にチェックして、ここのサイトでも紹介していますので、今回聴いたのは5位にランクインしたDua Lipaの「Future Nostalgia」。イギリスのシンガーソングライターによる2枚目のアルバムとなります。

2015年のデビュー後、2016年には新人ミュージシャンの登竜門ともいえるSound of 2016にノミネート。2018年にはグラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされるなど、デビュー当初から高い評価を集めているシンガー。2枚目となる本作も、本国イギリスでチャート1位を記録したほか、アメリカでも最高位4位を記録。その他、各国で大ヒットを記録し、その人気を確固たるものとしています。

そんな彼女のアルバムですが、確かに、これはヒットを記録するだろうなぁ、という感想を抱く、聴いていて素直に心地よいポップチューンの並ぶアルバムになっています。1曲目はタイトルチューンの「Future Nostalgia」という曲からスタートするのですが、そのタイトルチューンそのまま。ちょっとメランコリックさもある軽快なエレクトロポップなのですが、イメージとしては90年代あたりのR&Bポップを彷彿とさせるナンバー。途中、ラップが入ってくるスタイルなどは、もうちょっと今どき寄りなのですが、聴いていて、懐かしさを感じるようなポップチューンが非常に耳障りの良さを感じます。

その後の曲も、どこか80年代や90年代初頭あたりの雰囲気を感じさせるポップチューンが並びます。力強いボーカルでロック調となっている「Physical」なんかは、まさにPVがMTVあたりに流れて、そのバックに流れてピッタリ来るような・・・まさに80年代的な匂いを感じる楽曲になっています。

特に懐かしさを感じるのは、哀愁感漂うメロがもろ80年代なダンスチューン「Love Again」。ほどよく入るストリングスも、あの時代の空気を感じさせますし、続く「Break My Heart」もリズミカルでメランコリックなナンバーなのですが、打ち込みのサウンドもどこかチープさも感じ、80年代っぽさを感じさせます。

メロディーラインもフックが効いていて、いい意味で非常に聴きやすさを感じさせますし、懐かしいメロディーラインが耳なじみやすく、ちょっと聴くつもりがついつい聴き進めてしまうような、広い層に支持されそうな、ポピュラリティーを持ったポップチューンが並びます。また、もちろん単純な80年代90年代の真似といった感じではなく、「Levitating」などは最近話題のラッパーDaBabyが参加するなど、単純な懐古趣味といった感じでもありません。そのため、懐かしさを感じるサウンドやメロディーながらも、古臭さはほとんど感じられず、しっかりと「今の音」として響いてくるアルバムになっています。

彼女、例によって日本ではまだまだ知名度が高くありません。ただ、これだけポピュラリティーある楽曲を書いて、メロディーラインも非常にわかりやすいものですから、日本でも十分ヒットが狙えそうな感もあります。というより、日本でこれだけ注目されていないことが不思議になるような、日本人の耳にもなじみやすい、ポップで楽しいアルバムになっていました。ま、もっとも私もこれがはじめて聴いた彼女のアルバムなんですけどね。これからさらに注目を集めそうな、そんな予感のある傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2021年2月 8日 (月)

解散前のラストアルバム!

Title:神々のアルバム
Musician:グループ魂

2020年の年末、突然ショッキングなニュースが飛び込んできました。2020年12月末を持って、グループ魂解散!ご存じの通り、今や脚本家として大活躍を続ける宮藤官九郎や、俳優として引っ張りだこの阿部サダヲなど、劇団大人計画の俳優が中心として活躍するグループ魂。結成から25周年を迎え、俳優が片手間に活動を続けるバンド・・・という枠を超え、すっかり人気バンドの仲間入りを果たした彼らですが、惜しまれつつ、昨年末に解散。本作は、その解散前直前にリリースされたアルバムとなります。

途中、ライブアルバムや、メンバーの港カヲルこと皆川猿時のソロアルバムのリリースなどがありつつ、純粋なオリジナルアルバムとしては約5年ぶりという久々のリリースとなります。メンバーそれぞれ俳優といて、八面六臂の活躍を続けており、それだけにやはりグループ魂としては、なかなか音楽制作の時間が取れなかったんだろうなぁ、ということを感じます。

今回のアルバムは全19トラックのうち5トラックはコントなので、楽曲としては全14曲入り。その作品的にはいつも通りのグループ魂です。特に序盤は、基本的に以前の作品の続編、焼き直し的な作品が続く展開。峯田和伸作曲が話題の「モテる努力をしないとモテないゾーン」は「モテる努力をしないでモテたい節」の続編的な作品ですし、「Over 50めんどくさい」は「Over 30 do The 魂」の20年後といった作品。さらに「ケーシー高峰」はおなじみ人名タイトル路線の曲ですし、さらにコントの「助演男優賞」は、「中村屋」コントの新作となっています。

特にこの序盤の曲は、先行シングルともなっている「もうすっかりNO FUTURE!」を含めて、メンバーの多くが50歳を迎えた彼らの、アラフィフになってしまったことの悲哀を歌ったような内容になっています。とはいえ、年を取ったことによる自虐的な内容が特徴的とはいえ、年を取ったことを笑いとばす・・・というよりも、本音としてはあまり年を取ったことをマイナスだとは考えていないような妙に明るく、ある意味「若さ」すら感じさせる歌詞になっています。年を取ったことを自虐的に歌われると、逆にもうひと世代下の私にとっては、年を取ることが嫌になってきて、暗い気持ちになってしまうのですが、彼らの年齢ネタは、そういう意味で聴いていて暗い気持ちになることはありません。

一方、後半は「新ネタ」の曲が並びますが、今回のアルバムの特徴として、前半の曲もそうなのですが、非常にロックバンドとしての色が強く出た作品になっていたように感じます。どの曲も分厚いバンドサウンドをしっかりと聴かせる、比較的シンプルでストレートなロックチューンがメイン。以前リリースした新録のベスト盤「グループ魂のGOLDDEN BETTER」では、過去の作品が、よりバンド色が強い状態で生まれ変わっていましたが、本作はそのベスト盤同様、ここ最近の彼らのロックバンドとしてのこだわりを感じさせるアレンジに仕上がっていました。

その「新ネタ」の曲は、これもアラフィフの年齢ネタの「昼も蕎麦だった」や、正直、男性じゃなければ何を歌っているのか意味不明な「マジックミラー Go!Go!」(何のことかわからない紳士淑女のみなさんは「マジックミラー号」でググろう!)。さらに「痛風だけど恋愛したい」は、こちらも年齢ネタながら、曲調も含めて完全にサンボマスターのパロディーという、非常にユニークなネタ曲に。ただ、この曲などはしっかりとサンボマスターのパロディーになっているのは、グループ魂がバンドとしてしっかりとした実力を持っているから、と言えるでしょう。そういう意味ではロックバンドらしいネタと言えるのかもしれません。

ただ、ネタも含めて、頭をからっぽにして楽しめる曲なのは間違いないのですが、ネタの出来としては正直、前作「20名」や、その前の「1!2!3!4!」の方がよかったかなぁ、というのが正直な感想。やはり年齢ネタに偏りすぎな感じもしましたし、また「Mr.ハラスメント」など、なんでも「ハラスメント」になる現代の風潮を皮肉っているのですが、アラフィフのおじさんがそういうネタをするあたりは、ちょっと微妙な印象も受けてしまいました・・・。そういう点はちょっとマイナスポイントだったように感じます。

そんな訳で、解散前ラストアルバム。これで最後だと思うと・・・・・・・・・と言いたいところなのですが、まあもうみなさんご存じだとは思うのですが、2022年の元旦に再結成及び復活ライブが予定されており、この「解散」自体、実はネタというオチ(笑)。彼ららしいといえば非常に彼ららしいですね。メンバー全員多忙なだけに、次のオリジナルがいつになるのかわからないのですが、これからもまだまだ私たちを楽しませてくれそうです。

評価:★★★★

グループ魂 過去の作品
ぱつんぱつん
1!2!3!4!
実録!グループ魂全国ツアー「客vs俺!どっちがスケベか競争して来たど!15番勝負」
グループ魂のGOLDEN BETTER~ベスト盤じゃないです、そんないいもんじゃないです、でも、ぜんぶ録り直しましたがいかがですか?~
20名
実録! グループ魂の納涼ゆかた祭り 東京仙台大阪福岡の隠し録り

| | コメント (0)

2021年2月 7日 (日)

圧巻のサウンドが幻想を切り裂く

Title:狂(KLUE)
Musician:GEZAN

年が明け、様々な媒体で「2020年ベストアルバム」が発表される中、毎年、各種メディアでベストアルバムに選定されたアルバムの中で、まだ聴いていなかったアルバムを後追いでチェックしているのですが、今回紹介するアルバムはそんなアルバムの1枚。MUSIC MAGAZINE誌の「ロック[日本]部門」で1位に選定されたアルバム。インディーロックバンド、GEZANの5枚目となるニューアルバムです。

楽曲的にはサイケデリックなサウンドでグルーヴィーなバンドサウンドを聴かせるスタイルのバンド。基本的にはボーカルが入るスタイルなのですが、歌というよりもあくまでも「サウンド」を聴かせるスタイルとなっています。アンダーグラウンド的な匂いをプンプンと立ち込めさせる音が特徴的で、もともと大阪出身で、その後、葛生拠点を東京に移したそうですが、昔、「関西ゼロ世代」と言われた大阪のアンダーグラウンド的なバンド、あふりらんぽやオシリペンペンズあたりに連なるような印象を受けるバンドと言えるかもしれません。

その1曲目、タイトルチューンとも言える「狂」では不気味でダヴィーなサウンドの中で、淡々とした「語り」が展開されるのですが、「簡潔に言えば、この不協和音は毒として血をめぐり骨を溶かし、借り物の原理を破壊する/シティポップが象徴してたポカポカした幻想にいまだに酔ってたい君にはお勧めできねぇ/今ならまだ間に合う/停止ボタンを押し、この声を拒絶せよ」とかなり挑発的な語りからスタートします。

そんな挑発からスタートするこの作品は、まさにその「シティポップ」的な爽快さからは対局にあるような、非常に不気味かつヘヴィーなサウンドが展開していきます。今回の作品ではエンジニアにダブ・エンジニアとして知ら得る内田直之を起用。2曲目「EXTACY」なども、まさにサイケでダヴィーなサウンドが渦巻くサウンドが耳に襲い掛かってきます。その後も「訓告」なども分厚いサイケデリックでダヴィーなサウンドが特徴的になっています。

そのほかの作品にしても、圧巻的なサウンドが耳をつんざく曲が並んでおり、サイケ、ダブ、ハードロック、パンクなどといった要素を自在に取り入れる音楽性も魅力的。疾走感あるバンドサウンドでパンキッシュな「AGEHA」、力強いドラムスをベースとする分厚いサウンドの中で、アジテーショナルな叫びを繰り広げる「赤曜日」、ギターノイズの中にトライバルなリズムが強烈に切り裂く「Free Refugees」など、1曲1曲が聴いていてズシリと響いてくる曲ばかりで、確かに爽快なシティポップの幻想に酔いしれるリスナーには強烈すぎる毒を展開しています。

そんな曲の中に挟まれる「歌モノ」の楽曲も妙なインパクトを醸し出しています。正直なところマヒトゥ・ザ・ピーポーのボーカルはハイトーンで、サウンドに比べると声量が弱く、楽曲の中では弱点になっている部分も否定できません。ただ、そこで歌われる歌詞の内容は、現在の社会を厳しく描写しており、そこもまた大きなインパクトに。特に「東京」では

新しい差別が
人を殺した朝

国に帰れと叫ぶ 悲しい響きが起こしたシュプレヒコール
肌の色違い探し血まなこの似たもの同士のface
(「東京」より 作詞 マヒトゥ・ザ・ピーポー)

今の東京の、という以上に日本の悲しい現実を容赦ないまでにストレートに描写していっています。

サウンドは、サイケデリックなサウンドといい、どちらかというと少々「懐かしさ」を感じさせるようなサウンドで、今どきの音とは少々かけ離れたサウンドかもしれません。ただ、歌詞の世界といい、間違いなく現在の日本を鋭く切り裂いていますし、そのサウンドの凶暴さは、2020年の今でも間違いなく健在。聴けば聴くほどその強烈なサウンドに圧巻され、魅了される傑作アルバムだったと思います。間違いなく2020年の年間ベストクラスのアルバム。彼らのアルバムを聴くのは、本作がはじめてなのですが、終始圧巻させられたアルバムでした。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2021年2月 6日 (土)

2020年年間ベストアルバム(邦楽編)その2

昨日に引き続き、2020年私的年間ベストアルバムの邦楽編。今回は5位から1位までの紹介です。

5位 ハビタブルゾーン/ソウルフラワーユニオン

聴いた当時の感想はこちら

毎回、その時代時代の社会現象に対応するアルバムをリリースし続けるソウルフラワーユニオン。今回のアルバムも、まさにコロナ禍の中、社会状況が厳しいからこそ抑圧されがちな弱者に対する力強いメッセージを載せたアルバムとなっています。前作「バタフライ・エフェクツ」では、ニューエストモデル期を彷彿とさせるようなロック回帰な作品を見せたのですが、今回のアルバムは、前作の方向性に、いままでのソウルフラワーユニオンの特色だったトラッド色を加味。大ベテランの彼らがここに来て、新たな一歩を踏み出すような傑作に仕上がっていました。

位 ボイコット/amazarashi

聴いた当時の感想はこちら

「令和二年、雨天決行」に続き、2作目となるベストアルバム入り!上期ベストアルバムでも紹介したのですが、デビュー当初は「中二病」的なイメージの強かった彼らもここ最近ではすっかり地に足をついたような歌詞を聴かせてくれるようになり、間違いなくミュージシャンとしての成長を感じさせます。本作でも都会の中での地方出身者の孤独を綴る歌詞は強いインパクト。もともと青森出身という秋田ひろむの出自を強く反映されたアルバムになっています。個人的にはもっと評価されていいバンドだと思うのですが。

3位 狂(KLUE)/GEZAN

こちらはアルバムレビューでは未紹介の1枚。サイケ、ダブ、ハードロック、パンクなどをごちゃまぜにした圧巻のサウンドがリスナーの耳に襲いかかる1枚。サウンド的には、むしろ70年代、60年代的な雰囲気を感じる懐かしさも感じつつ、アンダーグランド的なヤバさも覚える作品。一方で歌詞の世界は、現在社会の病理を鋭く切り取るような歌詞が展開され、歌詞の世界でもサウンドの世界でもリスナーの心をダイレクトにつかみ取る、衝撃的な作品に仕上がっています。まさに「圧巻」という一言がふさわしい傑作アルバムです。

2位 STRAY SHEEP/米津玄師

聴いた当時の感想はこちら

2020年最も売れたアルバムが、年間ベストクラスの傑作というこの幸せな事実!今、もっとも話題かつ人気のミュージシャン米津玄師のニューアルバム。ここ最近のオリジナルアルバムも、ミュージシャンとしての脂がのっていることを感じさせる勢いのある作品が続いていましたが、まさにその頂点とも言えるような傑作アルバム。いままで若干、過剰気味だったサウンドがそぎ落とされ、よりタイトとなったサウンドに大きな成長を感じつつ、一方で社会から疎外された人たちの視点という、初期の彼の歌詞のスタイルはそのまま。ミュージシャンとして大きな進歩を感じさせる文句なしの傑作アルバムでした。

1位 Passport&Garcon/Moment Joon

聴いた当時の感想はこちら

本作を聴いた段階で「暫定1位」と称した本作が、結果として年間ランキングでも文句なしの1位。作品的にあまりに時代性をキャッチしすぎたがゆえに、コロナ禍の前にリリースされた本作は、今聴くと、既に古いとすら感じさせる表現もあるのですが、ただ本作で訴えたい、日本人の中にある外国人に対する差別的精神は、残念ながら今なお全く変化はありません。コロナ禍の中で国境を閉ざす国が多くなってきた中、彼が訴えるナショナリズムは今後さらに酷くなる可能性もあるでしょう。そういう意味でも間違いなく2020年を代表する1枚です。

ほかのベスト盤候補は・・・

oar/角銅真実
202020/斉藤和義
THE KEBABS/THE KEBABS
ROCK/ベッド・イン
いいね!/サニーデイ・サービス
Triptych/Shohei Takagi Parallela Botanica
ストリーミング、CD、レコード/ゲスの極み乙女。
民謡クンビエロ(フロム・トーキョー・トゥ・ボドタ)/民謡クルセイダーズ&フレンテ・クンビエロ
THE THIRD SUMMER OF LOVE/ラブリーサマーちゃん
ROVO/ROVO
You need the Tank-top/ヤバイTシャツ屋さん
23歳/KAN

非常に数多くの傑作がリリースされた洋楽と比べると、逆の意味で10枚を選ぶのに迷った感もあるのですが、それでもベスト10入りした10枚は文句なしの傑作アルバムになっていました。なによりも、コロナ禍に襲われ、社会の状況が大きく変化した2020年の現状を大きく反映したアルバムが並んだ、「今の時代」を反映した、まさにポピュラーミュージックらしいベストアルバムと言えるのではないでしょうか。

そんな訳で、今年のベスト10をあらためて振り替えると

1位 Passport&Garcon/Moment Joon
2位 STRAY SHEEP/米津玄師
3位 狂(KLUE)/GEZAN
4位 ボイコット/amazarashi
5位 ハビタブルゾーン/ソウルフラワーユニオン
6位 操/岡村靖幸
7位 令和二年、雨天決行/amazarashi
8位 Devil/ビッケブランカ
9位 oar/角銅真実
10位 Loveless Love/曽我部恵一

今年はコロナもおさまり、もっと明るいアルバムが並ぶ1年であってほしいのですが…

ちなみに過去のベストアルバムは

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 年間1  上半期
2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
2017年 年間1  上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期
2020年 上半期

| | コメント (0)

2021年2月 5日 (金)

2020年年間ベストアルバム(邦楽編)その1

2020年の私的ベストアルバム。今日から2日間は邦楽編です。

10位 Loveless Love/曽我部恵一

こちらはアルバムレビュー未紹介。12月25日に配信リリースされたアルバムですので、ギリギリ2020年に間に合ったアルバムと言えるでしょう。今年はサニーデイサービスとしても傑作「いいね!」をリリースしましたが、ソロとしても文句なしの傑作をリリースしてきました。フォーキーな楽曲からエレクトロチューン、ロックな楽曲にシティポップと、ありとあらゆる作風の曲が詰め込まれている点はソロらしい自由さを感じつつ、日常を切り取りながらも、同時に社会へとつながっているような歌詞の世界も魅力的。ここ最近、サニーデイもソロも充実した作品が続いていますが、そんな彼の勢いを反映した傑作アルバムになっていました。

9位 oar/角銅真実

聴いた当時の感想はこちら

今年、最も話題となったシンガーソングライターの一人。ウィスパー気味のボーカルがリスナーを惹きつけるアルバムで、オリジナル作はもちろんなのですが、なによりも傑作だったのがFishmansの「いかれたBaby」のカバー。メロディーラインの良さという楽曲のコアの部分を、彼女のボーカルで見事に引き出した名カバーに仕上がっています。決して派手なアルバムではありませんが、彼女のボーカルの良さがしっかり生かされた、実に良質なポップスの名盤となっています。

8位 Devil/ビッケブランカ

聴いた当時の感想はこちら

上期のベストアルバムでも書いたのですが、2020年、曲単位でもっともはまった1曲が、本作にも収録されている「Ca Va?」。フランス語で「元気?」を意味する単語をタイトルとした曲なのですが、その発音を生かした非常にユーモラスなポップチューンとなっており、You Tubeで公開しているMVも何度も見るほどはまってしまいました。毎回、個人的に壺にはまりまくる美しいメロディーラインの軽快なポップを聴かせてくれるのですが、本作もその美メロは健在。文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。

7位 令和二年、雨天決行/amazarashi

聴いた当時の感想はこちら

コロナ禍に襲われた2020年は、数多くのミュージシャンがそんな現状を歌ったアルバムを作成しましたが、そんな中でもっともダイレクトに綴ったのがamazarashiの本作ではないでしょうか。今年は傑作アルバム「ボイコット」をリリースしたばかりの彼ら。田舎出身者が都会に出てきて感じる孤独を綴った前作に続く本作も、コロナ禍の中で孤独に苦しむ人たちへのメッセージとして伝わってくる作品となっています。何年か経った後「こんなこともあったね」と思い出すような、そんなアルバムになっていてほしいのですが。

6位 操/岡村靖幸

聴いた当時の感想はこちら

本格復帰2作目となるオリジナルアルバム。一時期のスランプ状態が嘘のように、今が全盛期では?と思わせるような勢いあるアルバムが続いています。本作でも、かつての80年代の岡村ちゃんを彷彿とさせるような楽曲を聴かせつつ、一方ではDAOKOとのコラボのような、しっかり現在のミュージックシーンにも軸足を置いた楽曲づくりを行っています。まだまだこの勢いは続きそう。これからの活躍も楽しみになってくる傑作でした。

そんな訳で、明日は5位から1位の紹介です!

| | コメント (0)

2021年2月 4日 (木)

ネット発シンガーが1位2位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先々週のジャニーズ、先週のK-POPに続き、今週はネット発シンガーが上位に並びました。

まず1位初登場はころん「アスター」。You Tubeやツイキャスなどで活動する6人組グループすとぷりのメンバーによるソロ作。アルバムとしては本作がデビュー作となります。CD販売数1位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数7位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上9万3千枚で1位に初登場しています。

2位もネット発のグループ、ヨルシカ「創作」がランクイン。ボカロPとして活動していたn-bunaを中心としたユニットによる初のEP盤。CD販売数4位ながらもダウンロード数2位、PCによるCD読取数12位で、総合順位は2位に。ネット発のミュージシャンでも、「アイドル」として売っているミュージシャンはネット発なのにダウンロード数が伸びないのですが、本作は配信主導のヒットとなっています。オリコンでは初動売上2万3千枚で4位初登場。

3位は東海地方初の男性アイドルグループBOYS AND MENの10周年を記念してリリースされたオリジナルアルバム「BOYMEN the Universe」がランクイン。つんく♂がトータルプロデュースを手掛けるアルバムとなっていますが、リード曲が「どえりゃあJUMP!」と、いかにもなタイトルに名古屋出身者としては苦笑いしか出ません・・・。つんく♂にしてはセンスが悪いタイトルだなぁ(苦笑)。初動売上3万枚は直近のベストアルバム「ボイメン・ザ・ベスト」の7万2千枚(2位)からダウン。オリジナルアルバムの前作「友ありて・・・」の7万7千枚(1位)からも大きくダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に韓国の男性アイドルグループSUPER JUNIOR「Star」がランクイン。CD販売数は3位ながらも、ダウンロード数29位、PCによるCD読取数52位で総合順位はこの位置に留まりました。オリコンでは初動売上2万1千枚で5位初登場。直近のミニアルバム「I Think U」の4万3千枚(2位)よりダウン。オリジナルアルバムとしては前作「Hero」の10万2千枚(2位)からは大きくダウンしています。

6位に元関ジャニ∞の錦戸亮のソロ2作目「Note」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数12位、PCによるCD読取数23位。オリコンでは初動売上3万1千枚で2位初登場。前作「NO MAD」の初動7万6千枚(3位)より大きくダウンという厳しい結果となっています。

7位には韓国の男性アイドルグループTREASURE「THE FIRST STEP:TREASURE EFFECT」がランクイン。本作がデビュー作となります。もともと1月11日に韓国盤がリリース。先々週のチャートでは、その影響でダウンロード数で4位にランクインしました。日本盤は3月31日にリリースが予定されています。通常、Hot Albumsでは輸入盤はCD販売数にランクインされないはずなのですが・・・今週、CD販売数で6位にランクインし、総合順位7位とベスト10入り。なぜでしょう??

さらに今週、ベスト10返り咲きも1枚。宮本浩次「ROMANCE」が先週の14位からランクアップし、10位にランクイン。2週ぶりにベスト10返り咲きとなり、通算9週目のベスト10ヒットとなっています。異例のロングヒットとなっている本作。ただ、これに味をしめ、一時期の徳永英明のような「カバー歌手」にはならないでほしいのですが・・・。

今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2021年2月 3日 (水)

次のロングヒット候補が続々上位へ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位は、まずは秋元康系グループが1位獲得です。

1位は乃木坂46「僕は僕を好きになる」が先週の34位からCDリリースに合わせてランクアップしています。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ダウンロード数16位、ストリーミング数68位、ラジオオンエア数5位、Twitterつぶやき数4位、You Tube再生回数49位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上58万9千枚で前作「しあわせの保護色」の初動95万4千枚から大きくダウンしています。

今週、1位こそ秋元康系のアイドルグループでしたが、2位3位には、2021年を代表するヒット曲になりそうな予感のある曲がグッとランキングをあげてきています。まず2位は優里「ドライフラワー」。1月11日付チャートで4位にランクアップしましたが、その後、BTSやYOASOBIに阻まれ、なかなかベスト3入りを果たせませんでしたが、今週、ダウンロード数が9位から2位、You Tube再生回数も4位から3位にアップ。ストリーミング数は2週連続1位を獲得し、ついにベスト3入りを果たしています。1月28日の日テレ系「スッキリ」に出演し、地上波ではじめてうたったことも影響しているのでしょうか。これで11週連続のベスト10ヒットとなりましたが、この記録がどこまで伸びるのか、注目です。

3位にはAdo「うっせぇわ」が先週の6位からランクアップ。ベスト10入り3週目にして一気にベスト3入りを果たしました。ストリーミング数が5位から4位、You Tube再生回数も2位から1位にアップ。ダウンロード数も先週の1位から変わらず。自意識をこじらせたティーンエイジャーによる社会への反発ソングというスタイルは、昔からよくあるヒット曲のパターンで、逆に「健全性」を感じてしまい、アラフォー世代のおじさんとしては、ほほえましさすら感じてしまいます(誉め言葉ですよ、念のため)。万人受けしそうな「ドライフラワー」に比べるとターゲットがティーンエイジャーあたりに限られ、かつ癖もあるためどこまでのロングヒットになるかはわかりませんが、こちらも2021年を代表するヒット曲になりそうな予感もします。

次に4位以下の紹介ですが、今週は残念ながら初登場曲はゼロ。一方、ロングヒット曲の活躍が目立ちました。

まずBTS「Dynatmite」が先週の3位からランクダウンし、5位に。8週連続1位をキープしてきたYou Tube再生回数は、「うっせぇわ」に譲る形で2位に。ただ、ストリーミング数は先週と変わらず2位をキープしているほか、ダウンロード数は7位から5位にアップ。ベスト10ヒットは24週連続となりましたが、まだ根強い人気がありそうです。

YOASOBI「夜に駆ける」も2位から6位にダウン。ストリーミング数は3位を維持しているものの、ダウンロード数は5位から6位、You Tube再生回数も3位から4位にダウン。若干の下落傾向となっています。これでベスト10ヒットは41週連続に。また、先週ランクアップしてきた「アンコール」は8位から11位にダウンしてしまいましたが、「怪物」は今週もワンランクダウンで8位に。今週もベスト10圏内にYOASOBIの曲が2曲ランクインする形となりました。

LiSA「炎」は5位から7位にダウン。下落傾向が続いています。ただ、ストリーミング数こそ4位から5位にダウンしたものの、ダウンロード数は3位、You Tube再生回数は5位をキープ。これで15週連続のベスト10ヒットとなりますが、もうちょっとヒットは続きそうです。

土俵際の踏ん張りを見せたのが菅田将暉「虹」。先週と変わらず10位をキープ。ベスト10ヒットを13週連続に伸ばしています。CD販売数は31位から49位、ダウンロード数は14位から17位とランクを落としている一方、ストリーミング数は10位をキープ。You Tube再生回数は14位から11位にアップしており、根強い人気を感じさせる結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2021年2月 2日 (火)

2020年年間ベストアルバム(洋楽編)その2

昨日に引き続き、年間私的ベストアルバム洋楽編の第2弾。今日は5位から1位までの紹介です。

5位 The Slow Rush/Tame Impala

聴いた当時の感想はこちら

前作「Currents」も大きな評判を得たオーストラリアのミュージシャン、ケヴィン・パーカーによるソロプロジェクト、Tame Impalaの新作。上半期ベスト5でも書いたのですが、ドリーミーなサウンドが非常に心地よく、AORのテイストも感じさせるサウンドも人なつっこさを感じさせる傑作アルバムに仕上がっていました。久々のニューアルバムとなりましたが、前作以上の傑作アルバムに仕上がっていました。

4位 Fake It Flowers/beabadoobee

聴いた当時の感想はこちら

イギリスの新人ミュージシャンの登竜門である「Sound of 2020」にノミネート。本作もナショナルチャートで8位を記録するなど、昨年、大きな話題を呼んだシンガーソングライターのデビュー作です。日本でいえば、the brilliant greenを彷彿とさせるような、キュートなボーカルとポップなメロディーライン、そしてストレートな90年代風のオルタナ系ギターロックのサウンドが心地よく、もともと、スマパンやソニックユース、マイブラからの影響を公言している彼女ですが、その影響を顕著に出しつつ、彼女のキュートさを加味した心地よいポップチューンに仕上がっています。まだまだこれから、どんどんと注目があがっていきそうな、そんな予感のする傑作でした。

3位 folklore/Taylor Swift

聴いた当時の感想はこちら

9位の「evermore」に続き、2枚目のランクイン!7月にサプライズリリースされた本作は、The Nationalのアーロン・デスナーが参加。コロナ禍の中で外出もままならない中で作成された本作は、比較的シンプルでアコースティックな作風となっているものの、いままでの作品とは異なり、インディーロックの色合いが強くなったアルバムとなっています。いままでの彼女とは一風異なる、幻想的なサウンドも心地よく、そして何よりも、シンプルなサウンドゆえに、彼女のボーカリストとしての表現力の魅力がグッと増した作品に。シンプルなだけに、彼女の実力を非常に強く感じることが出来た、間違いなく彼女の代表作となる傑作アルバムでした。

2位 Untitled(Black is...)/SAULT

こちらも7位の「Untitled(Rise)」に続く2枚目のランクイン。こちらもアルバムレビューでは未紹介になるのですが、イギリスのソウル/ファンクバンド、SAULTの作品。「Untitled(Rise)」の紹介でも軽く触れたのですが、2020年に発生した大きな社会的運動のひとつ、BLACK LIVES MATTERに呼応してリリースされた作品で、こぶしを突き上げたジャケットも印象的。ソウルやファンクの要素を取り入れつつ、レトロな雰囲気が漂うサウンドが魅力的なのですが、非英語圏のリスナーにも伝わりやすいシンプルな英語のメッセージも胸に響いてくる作品。間違いなく、2020年を代表するアルバムと言えるでしょう。

そして・・・

1位 Melee/Dogleg

聴いた当時の感想はこちら

上半期1位の作品が、年間ベストアルバムでも1位獲得!アメリカデトロイトの4人組ロックバンド。上半期ベストアルバムでも書いたのですが、どこかシューゲイザーからの影響を感じさせるサウンドに疾走感のあるギターロック、そしてポップなメロディーラインが心地よく、個人的にかなり壺にはまった作品に、かなりはまってしまいました!eastern youthやNUMBER GIRLあたりに通じるようなサウンドがあり、日本でも多くの方が気に入りそうなサウンド。これから注目度も高まりそうなアルバムで、これからの活躍が楽しみです!

そんな訳で、ベスト10をあらためて振り返ると・・・

1位 Melee/Dogleg
2位 Untitled(Black is...)/SAULT
3位 folklore/Taylor Swift
4位 Fake It Flowers/beabadoobee
5位 The Slow Rush/Tame Impala
6位 RINGO DEATHSTARR/Ringo Deathstarr
7位 Untitled(Rise)/SAULT
8位 MORDECHAI/Khruangbin
9位 evermore/Taylor Swift
10位 ULTRA MONO/IDLES

まず感じるのは、ここに来て、非常にロック系の勢いが目立つという点でした。ベスト10のうちでも1位Dogled、4位beabadoobee、6位Ringo Deathstarr、10位IDLESと、比較的ストレートなギターロック勢の活躍が目立ちますし、そのほか、各種メディアで上位に入ってくるアルバムの中でもロック勢が目立ったような印象を受けます。ロック好きとしてはやはりこの傾向は素直にうれしいところ。HIP HOP系に押されてここ最近勢いのなかったロックですが、ここに来て盛り返してくるのでしょうか?

ほかのベストアルバム候補としては・・・

Hotspot/PET SHOP BOYS
Set My Heart On Fire Immediately/Perfume Genius
Rough And Rowdy Ways/Bob Dylan
Punisher/Phoebe Bridgers
A Hero's Death/Fontatines D.C.
Songs For The General Public/The Lemon Twigs
Mama,You Can Bet!/JYOTI
Shore/Fleet Foxes
Song Machine:Season One-Strange Timez/Gorillaz
LIVE/Angle Bat Dawid
Miss Anthropocene/Grimes
R.Y.C./Mura Masa
EVERY BAD/Porridge Radio
It Is What It Is/Thundercat
Fetch The Bolt Cutters/Fiona Apple
græ/Moses Sumney
Notes On A Conditional Form(邦題 仮定形に関する注釈)/The1975
RTJ4/Run the Jewels
Future Nostalgia/Dua Lipa
SAWAYAMA/Rina Sawayama

上半期は「良作は多かったもののどんぐりの背比べ的な」と書いたのですが、年間を通じてみると、今年はベスト盤の選定に悩むくらいの傑作が多い1年だったように思います。どんぐりの背比べと書いてしまうとネガティブな表現なのですが、「ほかのベストアルバム候補」もいずれもベスト10に入ってきても不思議ではない傑作揃い。コロナ禍の中で、ライブ活動が制限されて、かなり厳しい状況に置かれた2020年でしたが、そんな状況に反するかのように、傑作アルバムを数多くのミュージシャンが生み出してきた、そんな1年でした。

2007年 年間
2008年 年間 上半期
2009年 年間 上半期
2010年 年間 上半期
2011年 年間 上半期
2012年 年間 上半期
2013年 年間 上半期
2014年 年間 上半期
2015年 年間 上半期
2016年 年間 上半期
2017年 年間 上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期
2020年 上半期

| | コメント (0)

2021年2月 1日 (月)

2020年年間ベストアルバム(洋楽編)その1

毎年恒例、年間私的ベストアルバムの紹介。本日から洋楽編2回、邦楽編2回にわけて、4回にわたって掲載する予定です。まず洋楽の10位から6位まで

10位 ULTRA MONO/IDLES

聴いた当時の感想はこちら

このジャケット写真が、妙に笑えてきて印象に残るようなアルバムですが・・・イギリスのポストロックバンドによる最新作。前作「Joy as an Act of Resistance.」も2018年の年間ベストアルバム3位に選出するなど非常に気に入ったアルバムだったのですが、それに続く本作も傑作アルバムに。ヘヴィーなバンドサウンドにシャウト気味のボーカルながらも、メロは意外とポップという構成が気持ちよく、聴いた後にいい意味で「ロックを聴いた」という満足感が得られるバンド。前作以降、グッと注目度も増したようで、日本でも知名度が上がってきています。これからが非常に楽しみです。

9位 evermore/Taylor Swift

聴いた当時の感想はこちら

2020年は新型コロナウイルス蔓延の影響でライブイベントが軒並み中止。それで暇となった影響もあるのでしょうか、「意外な新譜」のリリースも相次ぎました。Taylor Swiftのまさかの年間2枚目となるアルバムリリースとなった本作もそんな1枚。7月にリリースされたアルバム「folklore」も傑作でしたが、それに続く本作も、文句なしの傑作アルバムでした。というよりも、この2枚のアルバムで、彼女が立ちステージが、間違いなく一段高いものに上がったような印象が。ポップなメロディーラインが非常に素晴らしく、彼女の実力をあらためて感じさせる作品でした。

8位 MORDECHAI/Khruangbin

聴いた当時の感想はこちら

2018年に来日した際、出演したフジロックでのステージも話題を呼んだ、アメリカはテキサス出身の3人組バンド。「タイ式ファンクグループ」と紹介される彼らのグルーヴ感は一種独特で、80年代のフィーリーサウンドを取り入れつつ、一方では60年代的なレトロさを合わせつつ、エキゾチックな雰囲気のグルーヴ感を醸し出しています。ループするサウンドに軽いトリップ感を覚えつつ、ねっちりとまとわりつくようなサウンドが非常に魅力的。コロナ禍が明けたら、是非ともライブで見てみたい、そう強く感じさせるアルバムでした。

7位 Untitled(Rise)/SAULT

本作は現時点ではアルバムレビューで未紹介となるアルバムです。2019年にリリースされた「5」「7」という2枚のアルバムが評判を呼んだイギリスのバンド、SAULTの作品。バンドのプロフィールが正式に明かされてらず、「謎のバンド」とも言われる彼らが、2020年にリリースした2枚の連作のうちの1枚。2020年に大きな話題となったBLACK LIVES MATTERに呼応してリリースされたもう1枚のアルバム「Untitled(Black is...)」と対となる本作は、ソウルやファンクをベースとしたサウンドで、未来への明るさを感じる全体的に明るい内容になっています。「Untitled(Black is...)」と合わせて2020年をまさに象徴するアルバムになっていました。

6位 RINGO DEATHSTARR/Ringo Deathstarr

聴いた当時の感想はこちら

いままで紹介してきたアルバムは、いずれも2020年を代表するアルバムとして高い評価を得ていたアルバムなのですが、一方、本作はある意味、完全に自分の趣味かもしれません(笑)。上期ベストアルバムでも紹介しましたが、シューゲイザーへの憧憬をこれでもかというほど体現化したアルバム。シューゲイザーの影響を受けたバンドは今でも少なくありませんが、そんな中でも、これほどストレートにシューゲイザーのサウンドを体現化しているのは彼らくらいかも。聴いていて素直にとても心地よいアルバムでした。ちなみに1曲目のタイトルが「Nagoya」なのも高評価の要因かも。

そんな訳で、6位から10位までの紹介。明日は5位から1位まで一気に紹介します!

| | コメント (0)

« 2021年1月 | トップページ | 2021年3月 »