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2021年1月10日 (日)

なつかしさも感じるシティポップの王道的アルバム

Title:Talio
Musician:流線形/一十三十一

女性シンガーソングライター、一十三十一と、プロデューサーとしても活躍するクニモンド瀧口のソロプロジェクト、流線形がタッグを組んでリリースしたニューアルバム。どちらもシティポップのミュージシャンとして活躍を続ける2人ですが、今回のジャケットも実に「シティポップ」的。かの大瀧詠一「A LONG VACATION」のジャケットも手掛けたイラストレイター永井博が手掛けており、まさに「シティポップ」の王道を行くようなジャケットになっています。

今回のアルバムは純粋なオリジナルアルバムではなく、NHKドラマ「タリオ 復讐代行の2人」のサウンドトラックとしてのリリースされたアルバムとなっています。そのため、基本的にはインスト曲がメインで、歌モノはドラマ主題歌を含む4曲のみ。曲の長さが1分に満たないジングル的な曲も収録されており、いかにもサントラ的な楽曲構成になっています。

ただ、普通サントラというと、楽曲の断片的なフレーズだけが連続しており、1枚のアルバムとして楽しむには少々厳しいような内容になっている曲が多いのに対して、このアルバムは、インストがメインとなるシティポップのアルバムとして、ドラマを見ていなくても十二分に楽しめるアルバムになっていました。

基本的に、1~2分程度の長さに劇伴音楽についても、ドラマから切り離して単独のインスト曲として魅力的な曲ばかり。それも、懐かしさを感じるシティポップの王道を行くようなポップチューンとして耳を惹く楽曲が並びます。例えばタイトル通りのメインテーマ曲である「タリオのテーマ」も、まさにいかにもシティポップ然としたサックスのメロディーラインとエレピのサウンドがある種のベタさを感じるがゆえに耳を惹きますし、「復讐と冷静の間に」もジャジーな音色に軽快なリズムが魅力的なインストチューン。最後を締めくくる「黒岩のテーマ」もムーディーなサックスの演奏が印象に残るナンバーとなっています。

中盤には「恋愛小説」「真実のテーマ~Focus~」「エデンの惑星」のように、一十三十一によるスキャットが入る楽曲もありますが、こちらも爽快な彼女のボーカルが魅力的。楽曲に爽やかな印象を与えています。

そして4曲収録されている歌モノの楽曲が、またシティポップの王道を行くような魅力的なポップチューンに仕上がっていました。まず「金曜日のヴィーナス」「嘘つき手品」ではボーカルに堀込泰行を迎えた楽曲。「金曜日のヴィーナス」はキリンジを彷彿とさせる、堀込泰行のボーカルがピッタリマッチした軽快なポップスとなっていますし、「嘘つき手品」は一十三十一とのデゥオでメロウな歌を魅力的に聴かせてくれています。

一方、一十三十一ボーカルによる「蜃・気・楼」は彼女のハイトーンボイスを軽やかに披露するダンスチューン。さらに番組のエンディングテーマ「悲しいくらいのダイヤモンド」も疾走感ある軽快なポップチューンが魅力的。80年代あたりのユーミンを彷彿とさせる、懐かしさを感じるナンバーとなっています。

ある意味、楽曲的には懐かしさを感じる王道のシティポップチューンの連続であるため、決して「目新しさ」を感じる訳ではありません。ただ、懐かしさを感じるシティポップチューンは、非常に洒落ており耳なじみあり、かつ、若い世代にとっては一回りして新しさすら感じるサウンドですらあるのではないでしょうか。ドラマは見ていないのですが、「復讐代行の2人」というサブタイトルからは想像できないようなオシャレな雰囲気に、どうドラマと噛み合うのか、逆に気になってしまうほど・・・。聴いていてワクワクするような軽快なシティポップが並ぶ傑作アルバム。シティポップ好きには文句なしにお勧めしたい1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

STARDUST REVUE「楽園音楽祭 2019 大阪城音楽堂」/スターダストレビュー

スタレビが毎年夏に開催している野外ライブ「楽園音楽祭」。その恒例のライブの2019年版を収録したライブアルバム。ライブバンドとして定評のある彼らなだけに、素晴らしいライブ音源を聴かせてくれている・・・のですが、以前リリースした「楽園音楽祭」の2018年版と比べると、全体的に無難というか、さほど聴きどころはなく、卒なくこなしている感も強くなってしまっている印象も。やはりライブは「生」で体験しないと、その魅力は味わいきれないといった感じでしょうか。はやくコロナが落ち着いて、何の憂いなく、ライブに足を運びたいのですが。

評価:★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
還暦少年
STARDUST REVUE 楽園音楽祭 2018 in モリコロパーク
スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」
年中模索

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