« 二村定一の業績を深く紹介 | トップページ | コロナ禍の中で「愛」を歌う »

2021年1月25日 (月)

戦前のB級レコードの世界

Title:夜店レコード 禁断の戦前ジャズ音楽篇 1930~1937

ここでも何度も紹介している戦前SP盤の復刻専門レーベル、ぐらもくらぶ。毎回ユニークかつ興味深い企画で私たちを楽しませてくれますが、今回もなかなかユニークな企画で埋もれた戦前SP盤の発掘を行ってくれました。今回の企画は「夜店レコード」と言われる、戦前の二流三流のマイナーレーベルのSP盤を復刻した企画。戦前は、大都市でもいわゆる「夜店」が立ち並び、そんな夜店でレコードが売られていたとか。いわゆる二流三流のマイナーレーベルは通常の流通チャンネルではなく、ちょっと怪しげな「夜店」で当時の流行歌を模倣したようなレコードを売っていたそうで、そのようなレコードを当時から「夜店レコード」と一部では呼ばれていたそうです。以前にもぐらもくらぶでは、このような「夜店レコード」を集めた企画「へたジャズ! 昭和戦前インチキバンド1929-1940」としてリリースしまいたが、本作はその第2弾となります。

さて、そんなまさにB級なレコードを集めた企画なだけあって、決して誰もが聴いていて戦前ジャズの世界に楽しめる作品が並んでいる、といったような企画ではありません。1曲目は雨宮豊/日本フタミジャズバンド名義となる「モン・パリ」からスタートするのですが、いきなりボーカルは不安定で、どこか怪しげな匂いがプンプン漂ってくるような曲からスタートし、まさに「夜店レコード」の世界をよくも悪くも体感できる楽曲からスタート。後半の「シボニー」なども、思いっきり反響しまくっている演奏に、録音状態の粗悪さを感じさせるなど、決して聴きやすい音源ではないものの、この「夜店レコード」の録音状況を彷彿させるような作品になっています。

他には「谷間の灯」は、東海林太郎の「谷間のともしび」のヒットから、同曲を模倣した、まさにB級感あふれる企画ですし、3曲目の「ダイナー」も、ディック・ミネのヒット曲「ダイナー」をそのままパクった曲だそうで、ここらへんも、いかにも二流三流のマイナーレーベルが、正規の流通ルートとは異なるルートで販売したレコードらしい、粗悪感あふれる企画になっていて、今となってはなかなかユニーク。ただ、当時、ヒット曲と間違えて買ってしまった人は苦笑いしてしまったんだろうなぁ(人によっては怒り出す人も?)なんて想像してしまいます。

ただ一方、全体的には、録音状況などでB級感あふれる部分は頻出しているものの、歌にしても演奏にしても「酷い」といった感じではなく、「コロナードの月」などは伸びやかな女性ボーカルで優雅に聴かせてくれますし、「青空」のしんみり郷愁感あふれるボーカルも見事。さらに、今となっては到底発売できそうもないタイトルである「浮気バンザイ」などは、編曲に日本を代表する音楽家、服部良一が参加しており、発売されているレコード会社は二流三流ではあるものの、参加しているミュージシャンが必ずしも二流三流とは限らない、という点が意外な魅力だったりします。

正直なところ、決して「誰でも聴きやすい」コンピレーションではありませんし、当時のヒット曲の模倣・・・という話は、元となるヒット曲をある程度知らないとわからない部分もあり、そういう意味では「戦前SP盤の初心者向け」企画ではないかもしれません。ただ、以前紹介した「へたジャズ!」と同様、良くも悪くも奥深い戦前ジャズの世界が楽しめるという意味では非常に魅力的な好企画であり、さすがぐらもくらぶといった感じでしょうか。怪しげも魅力的なB級ジャズの世界が楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

|

« 二村定一の業績を深く紹介 | トップページ | コロナ禍の中で「愛」を歌う »

アルバムレビュー(邦楽)2021年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 二村定一の業績を深く紹介 | トップページ | コロナ禍の中で「愛」を歌う »