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2021年1月 3日 (日)

大物然とした新作

Title:SOUNDTRACKS
Musician:Mr.Children

これが20枚目となるMr.Childrenの約2年2ヶ月ぶりのニューアルバム。前作「重力と呼吸」は、初の単独セルフプロデュース作となり、比較的シンプルなサウンドの作風に仕上がっていました。一方、今回の作品は、全編海外レコーディングを実施。プロデューサー/エンジニアとして、サム・スミスの作品などを手影てきたスティーヴ・フィッツモーリスを起用し、彼との共同プロデュース作となっています。

コロナ禍の中で、おそらくしばらくはなかなか出来なくなるであろう全面海外レコーディングで、かつグラミー賞経験もあるプロデューサーと共同プロデュースという、この制作過程にはいかにも「大物」らしさを感じる作品になっています。その結果、アルバムとしては良くも悪くも非常に「大物然」とした作品に仕上がっていたような印象を受けました。

まず今回アルバムで特徴的だったのは、シンプルなアレンジだった前作とは一転、ストリングスを入れた作品が目立つスケール感ある作品になっていたという点でしょう。冒頭を飾る「DANCING SHOES」に続く「Brand new planet」でもストリングスが目立ちますし、MVも作成され、アルバムの代表曲とも言える「Documentary film」もピアノにストリングスが重なる美しいアレンジ。ドラえもん映画の主題歌になった先行シングル「Birthday」も鮮やかなストリングスが軸となった曲調になっています。

今回のストリングスアレンジは、ビョークやジャミロクワイなどのアレンジを手掛けたサイモン・ヘイルが担当しています。海外レコーディングで、かつ手練手管のアレンジャーがストリングスアレンジを担当、ということもあって、ストリングスのサウンドは、まずは非常に抜けがいい。透明感のあるサウンドに仕上がっており、その実力を感じさせます。

ただ一方、正直、どんな曲でもストリングスを入れて安易に盛り上げてくる構成というのは、以前、彼らのプロデューサーだった小林武史がよく使った手法。ストリングスとバンドアレンジを融合させる手法は、楽曲にスケール感を持たせる手法としてはJ-POPでは手あかのついた方法であり、個人的にはここまでストリングスを入れる必要性があったのかな?と感じてしまいました。

加えて今回のアルバムを通して聴くと、「地味」という印象を抱いてしまいました。地味という印象は前作「重力と呼吸」でも感じたのですが、以前に比べてフックの利いた楽曲が少なくなり、いい意味で言えばミスチル風のメロが完全に確立された一方、全体的に「いつも通りのミスチル」といった感じを抱いてしまいます。「地味」だから必ずしも駄作というわけではないのですが、全体として地味と印象が否めない楽曲の中、分厚いストリングスアレンジを入れると、妙に仰々しさの印象だけ残ってしまう点が否めませんでした。

1曲1曲は決して悪いわけではありません。ドラマ主題歌にもなった「turn over?」などはこのアルバムの中では比較的シンプルなアレンジの、彼ららしいシンプルなポップソングで、こういう素朴な曲も書ける、という一種のアピールのようなものも感じますし、「Birthday」なども伸びやかなストリングスアレンジも含めて、ミスチルらしさを感じる、ある意味、ドラえもんの映画主題歌らしい爽やかさを感じる楽曲に仕上がっています。

しかし、正直言って、いままでミスチルの全オリジナルアルバムを聴いている私ですが、いままでの作品の中で、ワースト・・・とまでは言わないまでも1、2を争う、ピンと来ないアルバムでした。無理に大物然としてストリングスなどを入れてスケール感を出したものの、肝心のメロディーがそれについていっていないようにも感じます。もちろん決して悪いアルバムではないとは思うし、ミスチルらしい魅力も要所要所で感じらる点は間違いないと思うのですが・・・個人的にはもうちょっとシンプルなアレンジの方がミスチルの良さが生きるように思うんだけどなぁ。ちょっと残念な1枚でした。

評価:★★★★

Mr.Children 過去の作品
SUPERMARKET FANTASY
SENSE
Mr.Children 2001-2005<micro>
Mr.Children 2005-2010<macro>

[(an imitation) blood orange]
REFLECTION
重力と呼吸

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アルバムレビュー(邦楽)2021年」カテゴリの記事

コメント

ゆういちさん、こんばんは。そして、明けましておめでとうございます。本年もこのサイトを楽しみに見させていただきますね!

さてミスチルの新作ですが、ゆういちさん的にはなんか物足りない感じですか・・・でもなんかわかる気がします。これがもし無名の新人バンドの作品だったら「スゲーいいバンドが出てきたな」って思えるんですが、ミスチルの新作って言われると・・・まあでもそれだけミスチルに期待しているっていうことですよね。
あと、これは個人的な思いですが、ここ最近の桜井さんの発言が少し大げさなのが気になります。前作の時は「これを聴いた若手バンドが音楽をやめるくらいの作品」と言っていましたし、今作も「もうこれ以上の作品は作れそうにない」と言っていましたし。もう少し肩の力を抜いて作品と向き合ってもいい気がするのですが・・・(もちろん毎回命を削って楽曲を生み出してくれる桜井さんには敬意しかありませんが)。

投稿: 通りすがりの読者 | 2021年1月 4日 (月) 00時33分

>通りすがりの読者さん
本年もよろしくお願いします。
まあ、ちょっと変に大物然としすぎている感があります。桜井さんの発言からするとちょっと気負いすぎているんでしょうか。もうちょっとシンプルなアレンジの方が、彼らの曲の良さが生かせるように思うのですが。

投稿: ゆういち | 2021年2月 2日 (火) 00時02分

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