郷愁感たっぷりのサウンドが魅力的
Title:Re:New Acoustic Life
Musician:OAU
BRAHMANのメンバー4人を中心として結成され、BRAHMANのサイドバンド的な要素の位置づけも強いバンド、OAU。もともとは、「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」という名前で2005年に結成。その後も継続的に活動を続けてきましたが、2019年にバンド名を略称であった「OAU」に変更し、今に至っています。本作は、そんな彼らの結成15周年を記念してリリースされた初のベストアルバム。彼らの15年の歩みが全17曲74分という長さに凝縮され、OAUの歩みを知ることが出来る作品に仕上がっています。
さて、そんな彼らの作品は、一言でいえば郷愁感あふれるメロディーラインが心に響いてくる楽曲ということになります。基本的に、この郷愁感あふれるメロというのは、今回収録された17曲全曲に共通する方向性。そういう意味では、この説明文だけ読んでいると、似たようなタイプの曲が並んでいる、という印象を受けてしまうかもしれません。確かに、似たようなタイプの曲が目立つという点は決して否定はできませんが、ただ一言「郷愁感あふれる」といっても、実にバラエティー豊かなメロディーを聴かせてくれるのが彼らの大きな魅力だったりします。
まずこのベスト盤を聴いて、大きな括りとして感じたのは、洋楽的な要素の強い楽曲と、逆に和風な、私たちにとって、まさに懐かしさを強く感じる楽曲。具体的に言うと、カントリー風の「Thank You」やアイリッシュトラッド風の「Dissonant Melody」、フォーキーな「Change」など、英語詞の曲に関しては、強い洋楽テイストを感じます。ただ、こちらも「洋楽」と一括りに出来るような音楽性ではなく、ここでも書いたように、カントリー、アイリッシュトラッド、フォークなど、様々な音楽的要素を感じられます。
一方で和の要素が強いのが主に日本語詞の曲。「朝焼けの歌」も強い郷愁感を覚えますし、さらに印象に残るのが「帰り道」。メロディーラインはもちろんのこと、アコーディオンの音色が印象的なサウンドも胸にグッとくるものがありますし、なによりも懐かしさがあふれてくるような歌詞の世界も魅力的。非常に心に来る楽曲に仕上がっています。
郷愁感あふれる楽曲と一言で言っても、まさに洋楽風、和風、さらにはフォーク、カントリー、トラッドなどなど、様々な音楽的な要素を内包した楽曲が続いているため、全17曲、最後まで飽きが来ることはありません。BRAHMANといえば、ハードコアバンドということで、分厚いハードなサウンドが目立つのですが、一方で、ハードコアの中に民族音楽を取り入れた独特な音楽性が高い評価を呼んでいます。一方、OAUは、そのBRAHMANが本来持っていた、多様な音楽性やメロディーラインの良さをさらに抽出し、アコースティックなサウンドの中で響かせることにより、よりはっきりとわかりやすい形で提示したバンドと言えるのではないでしょうか。今回のベスト盤では、そんなOAUの魅力がよりはっきりとわかりやすい形で表にあらわれた、そんなアルバムになっていました。
ベスト盤リリースにより、活動に一つの区切りをつけた彼らですが、おそらくこれからもBRAHMANと並行して、コンスタントな活動は続きそう。これからの活躍も非常に楽しみです。
評価:★★★★★
OAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND) 過去の作品
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OAU
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