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2021年1月31日 (日)

コロナ禍の中でのメッセージ

Title:ハビタブル・ゾーン
Musician:ソウル・フラワー・ユニオン

約2年ぶりとなるソウル・フラワー・ユニオンのニューアルバム。ここ数作、オリジナルアルバムの間の間隔が4年程度開くことが多く、そういう意味ではこれだけ短いスパンでオリジナルアルバムがリリースされることが久しぶりのような感もあります。ただ、今の状況として、言うまでもなくコロナ禍の中、経済状況も苦しい中、やはり社会的に弱い立場の人たちにしわ寄せが襲うことの多い現在。そんな中で彼らが、そのメッセージを発するべくアルバムをリリースするのは当然のことと言えるかもしれません。

今回のアルバムタイトルになっている「ハビタブル・ゾーン」とは、天文学用語での生物の生存可能領域のこと。具体的には主たる恒星から一定程度離れ、水が液体の状態になる位置のことを指し示す用語のことで、転じて今回のアルバムのテーマである「自尊心を取り戻す」「ありのままに生きることの復権」を象徴する言葉として使用しているようです。

特に今回のコロナ禍の中での生きづらさを描写するような歌詞も目立ち、タイトルそのままコロナ禍の中での生きづらさを象徴する「ロックダウン・ブルース」で歌われる

「石つぶてが 墓標を打つ
『ムラの掟を忘れるな』いつも」
(「ロックダウン・ブルース」より 作詞 中川敬)

なんていう歌詞や、「オオイヌフグリ」

「ロックダウンして ムラ人が 背教者を嗅ぎ回る」
(「オオイヌフグリ」より 作詞 中川敬)

などという歌詞は、特に現在のコロナ禍の中で、コロナ感染者を自己責任とみなして、石を投げつけるような日本の状況を象徴するような歌詞になっています。そんな苦しい状況の中でも

「子どもたちがゆく 自由へのしるべ
魂のありか 未来への道」
(「魂のありか~オール・パワー・トゥ・ザ・ピープル」より 作詞 中川敬)

「夜を使い果たそう 音楽が舞い戻る
漆黒の空に 光が溢れてゆく」
(「夜を使い果たそう」より 作詞 中川敬)

未来への希望を歌うのが、実にソウル・フラワー・ユニオンらしく、また、今回のコロナ禍の中で伝えたい、彼らのメッセージを言えるかもしれません。

さて、そんなメッセージを高らかに歌い上げる彼らの新譜。彼らの前作「バタフライ・アフェクツ」は、ソウル・フラワー・ユニオン結成時からのワールドミュージック色が薄れ、前身バンドニューエスト・モデル時代を彷彿とさせるような、骨太のロックサウンドが特徴的なアルバムになっていました。今回のアルバムに関しても、比較的、骨太なロックサウンドが目立つアルバムになっていました。1曲目のタイトルチューン「ハビタブル・ゾーン」からして、非常に力強いドラムスのリズムからスタートし、ストリングスも入った分厚いロックサウンドが特徴的。その後も「ストレンジャー・イン・ワンダーランド」「ロックダウン・ブルース」などと分厚いバンドサウンドをゴリゴリと押し出したロック色の強い楽曲が並び、ここらへんは前作「バタフライ・アフェクツ」からの延長線上のようにも感じます。

ただ一方で、「ラン・ダイナモ・ラン」などは祝祭色を感じるサウンドには、トラッド色を感じますし、続く「川のない橋」もレゲエ調のリズムを取り入れたミディアムチューンに。そこらへんは「バタフライ・アフェクツ」以前の彼らの要素も強く感じます。また、今回のアルバムでもっとも印象に残るのが「ダンスは抵抗」。ホーンセッションも入って陽気な、彼ららしいダンスチューン。こちらも基本的にはロック色がベースになっているのですが、ライブでも思いっきり盛り上がりそうな彼ららしい楽曲になっており、トラッド的な要素も垣間見れる、彼らの新たなライブ定番曲誕生のようにも思います。

前作「バタフライ・エフェクツ」の方向転換には少々戸惑いもあったのですが、今回のアルバムは、前作で提示したニューエスト回帰路線に、ソウルフラワー時代のトラッド路線が加味された、サウンド的にもソウルフラワーらしい新たな一歩を踏み出した感のある作品になっていました。全体的にバンド色の強い分厚いサウンドが魅力的な楽曲が多いのですが、コロナ禍の中でリモートで作成された曲も多いらしく、ただリモートで人と人とのつながりが希薄になる中で、逆にバンドとしての一体感を覚えるような作品を作ってくるあたりも、ソウルフラワーらしさを感じさせます。またもや登場したソウル・フラワー・ユニオンの新たな代表作。2020年の年間ベストクラスのアルバムでした。

評価:★★★★★

ソウル・フラワー・ユニオン 過去の作品
満月の夕~90's シングルズ
カンテ・ディアスポラ
アーリー・ソウル・フラワー・シングルズ(ニューエスト・モデル&メスカリン・ドライブ)
エグザイル・オン・メイン・ビーチ
キャンプ・バンゲア
キセキの渚
踊れ!踊らされる前に
アンダーグラウンド・レイルロード
バタフライ・アフェクツ


ほかに聴いたアルバム

山崎×CM/山崎まさよし

Yamasakicm

山崎まさよしの楽曲のうち、CMタイアップ曲をまつめた配信限定のアルバム。以前、映画で使用された曲を集めたアルバムがリリースされましたので、その第2弾といった感じでしょうか。正直、代表曲を網羅する訳でもなく、若干微妙なコンピレーション・・・といった印象も受けるのですが、ただCMで使われた彼の曲は、ワウワウギターでソウルテイストあふれる「月明かりに照らされて」やファンキーな「ガムシャラバタフライ」など、彼の楽曲の黒い側面が前に出てきたような曲が多く、素直にかっこよさを感じさせます。例のごとく、「One more time,One more chance」も収録されているのですが、彼のブラックな側面の魅力に触れられる、最適なコンピになっていました。最近、若干不調気味に感じる彼ですが、久々に山崎まさよしはやはりいいなぁ、と感じた作品でした。

評価:★★★★★

山崎まさよし 過去の作品
COVER ALL-YO!
COVER ALL-HO!

IN MY HOUSE
HOBO'S MUSIC
Concert at SUNTORY HALL
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[STANDARDS]
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[SOLO ACOUSTICS]

FLOWERS
HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~
ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~
UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 2005-2015~
FM802 LIVE CLASSICS

LIFE
山崎×映画
Quarter
ONE DAY

SOLIDARITY/KEMURI

結成25周年を迎えたKEMURIのニューアルバム。軽快なスカパンクの路線は以前から変わらず、ベテランとしての安定感があります。一方で、スカパンクを軸に、よりヘヴィーな曲があったり、一方ではよりポップに振れた曲があったりと、意外とバラエティーもあり、最後まで一気に楽しめるアルバム。目新しさはありませんが、安定的に楽しめるアルバムでした。

ただしかし、結成25周年ということもあって、公式サイトのメンバー写真とか見ると、みんないい歳になったなぁ、という印象を受けます。ちなみに本作、CDのリリースは限定生産の豪華版のみで、ほかはストリーミングとダウンロードでの販売のみ。amazonのレビュートップに「ダウンロードだけではなく通常盤のCDをリリースしてくれ」という意見が載っているところを見ると、ファン層もメンバーにあわせて「おじさん」になったっているんだなぁ、というちょっと複雑な気持ちになったりして・・・。

評価:★★★★

KEMURI 過去の作品
ALIVE Live Tracks from The Last Tour "our PMA 1995-2007"
RAMPANT
SKA BRAVO
F
FREEDOMOSH
【Ko-Ou-Doku-Mai】

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