バンドの区切りとしてのベスト盤
Title:Czecho No Republic 2010-2020
Musician:Czecho No Republic
2020年に結成10周年を迎えたCzecho No Republicの、初となるベストアルバム。ここ数年の彼らは、まず2019年に男女ツインボーカルの武井優心とタカハシマイが結婚を発表し、公私ともにパートナーとなった一方、シンセサイザーの八木類が脱退。さらにはメジャーレーベルからインディーレーベルへの移籍も行い、その環境も大きく変化しました。現在、最新作となるオリジナルアルバム「DOOR」は、シンセを全面的に取り入れて、ニューウェーヴ色の強かったいままでの作品から一転、アコースティックな作風にチェンジし、バンドとしても大きな変化を遂げたアルバムになっていました。
そんなバンドとしても大きな区切りを迎えた彼らですが、本作は、「オールタイムベスト」という触れ込みにはなっているものの、実際には、今回のインディー(再)移籍前の作品を集めたベストアルバム。彼らのメジャー時代(日本コロムビア、TRAID)時代の作品と、メジャーデビューする前のインディー時代の作品が収録されたアルバムになっています。
Czecho No Republicのアルバムは、以前からここでも何度か紹介していますので、彼らの音楽的特徴については以前も書いているのですが、大きな特徴としては2点あって、まず1点目が、上にも書いた通り、武井優心とタカハシマイのツインボーカル。よくありがちな、どちらかがメインボーカルを取って、もう一方は補助的な役割、という感じではなく、どちらもほぼ対等にボーカルを取り、また、声色の違いをしっかりと楽曲に生かしているような曲に仕上げています。
もう1点目が、軽快なエレクトロサウンド。基本的にシンセのサウンドを生かしたニューウェーブ色の強いポップソングが特徴的で、80年代の色合いも強いサウンドがどこか懐かしさと、さらにエレクトロサウンドでありながらも、どこか暖かみすら感じる楽曲が大きな魅力となっています。
そんな2つのサウンド的な特徴を主軸としつつ、バリエーションある楽曲を展開しており、「Firework」や「Oh Yeah!!!!!!!」のような、シンセサウンドを前面に押し出したトランシーなダンスチューンから、「Forever Summer」のようなシティポップのナンバー、「Hi Ho」のようなピアノで軽快に聴かせるポップチューンや「1人のワルツ」のような、タイトル通り3拍子でフォーキーな色合いも強い楽曲など、バラエティー富んだ作品を聴かせてくれています。
実際、以前聴いたオリジナルアルバムでも傑作が少なくなく、そういう意味でも非常に魅力的なグループなのは間違いないのですが・・・ただ、正直言ってしまうと、今回のベスト盤、ちょっと聴いていてダレてしまう部分も少なくありませんでした。その要因としては、まず良くも悪くもボリュームがありすぎる点。全39曲2時間半強。かなりギッシリとつまった内容になっており、さすがに通しで聴いていて疲れてしまう部分もありました。そして、それだけのボリュームの内容を聴いていて疲れてしまうもう最大の理由だと思うのですが、楽曲のインパクトがちょっと弱い部分があったかな、という要因。いや、結構インパクトのある曲は少なくはありません。例えば祝祭色の強い「Amazing Parade」などはサビのフレーズがしっかりと頭にこびりついてしまっていますし、SKY-HIをゲストに迎えた「タイムトラベリング」なども疾走感あるポップなメロディーがインパクトを持っていました。
ただ、それでも39曲も並べてしまうと、相対的に楽曲のインパクトが薄くなってしまったように思います。これが1枚のみ20曲弱のベスト盤だったら、間違いなくお勧めできる傑作アルバムに仕上がっていたとは思うのですが、良くも悪くも詰め込みすぎてしまったかなぁ、というのが正直な印象。そういう意味でも惜しいベスト盤だったようにも感じます。
さて、このベスト盤でバンドとして一つの区切りがついて新たな一歩に歩み始めた彼ら。シンセサイザーを担当したメンバーの脱退により音楽性が変化してしまったため、今後の行方が気になるところなのですが・・・今後、さらなる成長を遂げるのか、それとも・・・今後の彼らの活躍に期待したいところです。
評価:★★★★
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