コロナ禍という時代を反映
Title:こもりうた
Musician:チャラン・ポ・ランタン
チャラン:ポ・ランタンの新作は全8曲入りの新曲に、ボーナストラック2曲を加えたミニアルバム。まずは、このジャケット写真にドキリとさせられる人も多いのではないでしょうか。マスクにフェイスシールドをつけたそのスタイルは、コロナ禍の今という時代を象徴させるスタイル。今の時代、おなじみともいえるスタイルなのですが、ここまでストレートに、コロナ禍の象徴ともいえるマスク姿とフェイスシールドを前に出したジャケットもはじめてかもしれません。
そんな今回の作品は、コロナ禍での自粛期間中に「8週連続宅録配信シングル」としてリリースされた楽曲を収録された曲。まさにコロナ禍という状況により、自粛を余儀なくされた中で制作された作品なだけに、非常にこのコロナ禍の時代を反映された曲になっています。1曲目の「空が晴れたら」などはまさにその象徴。
「空が晴れたらどこに行こうかな
あのお店はその時やってるかな」
「しばらく会うのは
やめておくよ
誰かの苦しむ
顔を見たくないよ」
(「空が晴れたら」より 作詞 小春)
この曲がリリースされたのは5月27日という、非常事態宣言解除直後の時期。おそらく曲が作成されたのが非常事態宣言の最中だったのでしょう。アコーディオン1本のみというシンプルなアレンジも宅録ならではといった感じなのですが、非常に悲しいメロディーラインも、非常事態宣言下の空気を彷彿とさせます。そしてこの歌詞。まさにコロナ禍という時代を反映させた楽曲となっています。
その後も
「独りの部屋から抜け出して
あなたに逢える日がくるの」
(「透明な恋」より 作詞 小春)
と非常事態宣言明けを状況を彷彿とさせる「透明な恋」や、こちらも7月9日リリースですので、徐々に様々な活動が再開される中での状況が彷彿とさせられる「新宿で映画を観る」など、おそらく何年か先にこのアルバムを聴いたら、「ああ、こういう時代だったな」ということを強く感じさせられるような曲が並んでいます。
ただ一方、コロナ禍という憂鬱な状況を反映してか、楽曲の雰囲気といては比較的暗く、悲しげな曲が多く、そういう意味ではちょっと憂鬱な雰囲気を感じてしまうアルバムに。「おとなの螺旋階段マーチ」などは比較的アップテンポでコミカルなのですが、こういったチャラン・ポ・ランタンらしいコミカルさを感じる曲は少なめ。アレンジ的にも宅録ということもありシンプルで、なおかつ比較的チープな作品が多く、そういう歌詞のみならずメロディーやサウンドの面も、時代を反映させた曲になっています。
本編ラストの「あの丘の向こう」も
「さあ 行こう 知らない世界へ」
「思い出はポケットにあるから
また会えるその日まで
私は泣かない」
(「あの丘の向こう」より 作詞 小春)
と、前向きな歌詞でありつつ、どこかこのコロナの状況が終わっていないことを彷彿とさせるような歌詞で締めくくられています。
正直言うと、時代を反映しすぎている部分もあり、いつものチャラン・ポ・ランタンの作品のように、何も考えずに楽曲を楽しむ・・・というにはちょっと重い面もあるアルバムだったようにも感じます。ただ、シンプルなサウンドで今の時代をストレートに反映した作品を作ってくるあたりは、彼女たちらしいとも言えるのかもしれません。前述のとおり、何年かしたら、「こんな時代もあったね」と懐かしく感じて聴いてしまいそうな作品。まあ、1日も早く、このアルバムを聴きながら「コロナの頃は大変だったね」と笑い飛ばせるような日が来ることを切に願っているのですが・・・。
評価:★★★★
チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏
トリトメモナシ
ミラージュ・コラージュ
過去レクション
ドロン・ド・ロンド
いい過去どり
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