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2020年12月 6日 (日)

自由さを感じる新進気鋭のSSW

Title:縫層
Musician:君島大空

今回紹介するのは、最近話題となっている新進気鋭の男性シンガーソングライター、君島大空のEP。以前、ここでも紹介したオンラインのライブフェス「森、道、市場をお茶の間で」ではじめて彼のことを知り、それ以降、気になる存在だったのですが、このたびEP盤がリリースされ、はじめて彼の音源に触れてみました。

ちょっと奇妙なタイトルは「ほうそう」と読むそうで、「内省のいつも雨が降っている場所、ひらかれた空の手前にある雲のようなもの、声や顔の塊、同音異義の包装や疱瘡という言葉の投影される場所、人がひとりの中で編み、勝手に育っていってしまう不安や喜びの渦を指す造語」だそうです。といっても、この説明だけだと何を言っているのか微妙に意味不明なのですが・・・。

その「森、道、市場をお茶の間で」ではアコギのアルペジオのみのシンプルなサウンドに、ハイトーンボイスで聴かせるボーカルが強い印象に残りました。まず今回、はじめて音源を聴いたのですが、まず感じたのは、非常に今時な感じのシンガーソングライターだな、という印象でした。

基本的にハイトーンボイスでポップで美しいメロディーラインを聴かせるというスタイルはオンラインライブで感じた印象と大きくは変わりません。ただ、今時の、と感じたのは音の使い方の自由さでした。1曲目「旅」はほぼボーカルのみで静かに聴かせるスタイルなのですが、続く「傘の中の手」ではピアノの音色にエレクトロサウンドを取り入れ、明るいポップソングに仕上げつつもサウンドにはアバンギャルドさも感じます。かと思えば「笑止」ではノイジーなギターサウンドが登場したり、「散瞳」ではむしろソフトロックといった様相のサウンドに仕上げつつ、途中からアバンギャルドなサウンドを入れてきています。

「火傷に雨」では非常に爽やかな歌を聴かせつつも、歪んだギターをヘヴィーに聴かせるサウンドとのアンバランスさがユニークですし、タイトルチューン「縫層」も様々な音を取り入れて、非常に自由なサウンドづくりを感じます。ラストの「花曇」もアコギでしんみり聴かせつつ、その中に歪んだギターノイズを放り込むなど、アバンギャルドさを感じさせる曲風が印象に残ります。

このポップでメロディアスな歌を主軸にしつつも、様々な音を取り入れ分厚く仕上げ、アバンギャルドさを感じるサウンドにまとめているのですが、このサウンドの使い方の自由さに、今時のミュージシャンっぽさを感じます。良い意味でのこだわりのなさといった感じでしょうか、次の展開が全く見えてこないサウンドは実にユニーク。にもかかわらず、しんみりとしっかり聴かせる清涼感ある歌が流れているというアンバランスさもユニークに感じました。

様々なミュージシャンへの楽曲提供なども行い、徐々に知名度も上がってきているようですが、今後、さらに注目を集めそうな予感のあるミュージシャン。その実力は間違いないと思います。これからも楽しみになってくるEP盤。次にリリースされるであろうフルアルバムも楽しみになってきます。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

period/清水翔太

前作「WHITE」以来、約2年半ぶりとなる新作となる5曲入りのミニアルバム。ここ数作、R&B/HIP HOP路線を突き進めた作品が続いていますが、本作も基本的にその路線を踏襲した作品。これはこれでポップスとして出来は悪くないとは思うのですが、ただ、以前から感じているのですが、清水翔太らしさがあまり出ておらず、よくありがちなR&Bに終始しているような印象が・・・。前作から2年半というインターバルにも関わらずミニアルバムという点も、やはりスランプ気味なのかなぁ。

評価:★★★

清水翔太 過去の作品
Umbrella
Journey
COLORS
NATURALLY
MELODY
ENCORE
ALL SINGLES BEST
PROUD
FLY
WHITE

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