サニーデイの「挑戦」的な側面
Title:もっといいね!
Musician:サニーデイ・サービス
新メンバー大工原幹雄が加入後、再び3人組バンドとなったサニーデイ・サービス。今年3月には、新生サニーデイとしての第1弾アルバム「いいね!」がリリースされました。それから約8か月、新進気鋭のミュージシャンたちが参加したリミックスアルバムが完成しました。tofubeatsや田島ハルコ、Young-G、岸田繁といった様々なミュージシャンたちが、「いいね!」+シングル曲「雨が降りそう」を、それぞれの解釈によりカバーしています。
そんな直近のオリジナルアルバム「いいね!」は、新生サニーデイの第1歩にふさわしく、いわば初期サニーデイに回帰したようなシンプルなポップアルバムに仕上がっていました。一方、ここ最近のサニーデイの流れとしては、特に前々作「the CITY」が顕著だったように、曽我部恵一の様々な音楽的な挑戦を感じらさせる刺激的なアルバムが多くリリースされました。そんな中リリースされた今回の「いいね!」のリミックス盤。その前々作「the CITY」もその後にリミックスアルバム「the SEA」がリリースされていたので、それと同じ流れといっていいかもしれません。また、「いいね!」ではちょっと果たせなかった音楽的な挑戦を、今回のリミックスアルバムで果たした、といえるのかもしれません。
そんな今回のリミックスアルバム、様々なミュージシャンたちがそれぞれの個性を発揮しているため、非常にバラエティーに富んだ作風に仕上がっています。ノイジーなサウンドと強いビートのエレクトロチューン「春の風」のHiro"BINGO"Watanabe Remixからスタート。田島ハルコのリミックスによるトランシーな「コンビニのコーヒー」、tofubeatsらしい洒落たエレクトロリミックス「エントリピー・ラブ」など、まずはエレクトロアレンジの楽曲が目立ちます。
そんな雰囲気がガラリと変わるのが「春の風」のどついたるねんRemix。かなりヘヴィーでパンキッシュなバンドサウンドをバックとしたロックアレンジに仕上がっており、序盤のHiro"BINGO"Watanabeのリミックスとの違いも際立ち、同じ曲でありつつ、アレンジによってガラリと雰囲気が変わるあたり、非常にユニークに感じます。さらにこの「春の風」はHi,how are you?によるカバーも収録されているのですが、こちらはアコギ1本でのカバーで、これまたグッと雰囲気が変わります。ここらへんの聴き比べも楽しいところです。
終盤は「センチメンタル」のインダストリアルなリミックスが耳を惹くのですが、今回のアルバムで一番秀逸さを感じたのは「日傘をさして」の曽我部瑚夏によるカバー。清涼感がある魅力的な女性ボーカリストが、アコギ1本で静かに弾き語るカバーになっているのですが、ちょっとかすれたような彼女のボーカルに、原曲の切ないメロディーがピッタリマッチした絶妙なカバーに仕上がっています。ちなみに曽我部瑚夏という女性ボーカリスト、今回はじめてその名前を知ったのですが、別に曽我部恵一と血縁はないみたいです・・・最初、娘かと思った(って、そんな年の娘がいるのか知りませんが)。
そしてラストは「雨が降りそう」の岸田繁によるリミックス。様々な音をサンプリングしつつ、実験的なエレクトロサウンドになっており、これはこれで岸田繁がくるりや自身のソロではなかなか演れないスタイルでのリミックスに挑戦していました。
エレクトロサウンドを主軸にしつつも全体的な音楽性はバラバラ。ただ、様々なミュージシャンによるサニーデイの曲の様々な解釈が非常に楽しいアルバムでした。今後は、こういう形でオリジナルと、その後のリミックスというスタイルが続いていくのでしょうか。ちなみに12月25日には曽我部恵一のニューアルバムのリリースも予定しているとか。そちらも楽しみです!
評価:★★★★★
サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love
Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY
the SEA
サニーデイ・サービスBEST 1995-2018
いいね!
ほかに聴いたアルバム
NEW!/the telephones
2015年に活動を休止したthe telephonesが、このたび活動を再開。そして約5年ぶりにリリースされたニューアルバムが本作です。「NEW!」というタイトルからして、新生the telephonesというイメージなのでしょうか。ただ、楽曲的には以前と変わらず、シンセのサウンドにバンドサウンドが加わり、パンキッシュな楽曲を陽気に聴かせるというスタイルは変わらず。一本調子的な部分もあるのですが、楽曲によってはメランコリックなメロディーラインを聴かせ、メロディーセンスの良さも感じる部分も。復活した彼らが、今後どのような活動を見せてくれるのか、楽しみです。
評価:★★★★
the telephones 過去の作品
DANCE FLOOR MONSTER
A.B.C.D.e.p.
Oh My Telephones!!! e.p.
We Love Telephones!!!
100% DISCO HITS! SUMMER PACK
Rock Kingdom
D.E.N.W.A.e.p.
Laugh,Cry,Sing...And Dance!!!
SUPER HIGH TENSION!!!
BEST HIT the telephones
Bye Bye Hello
Chameleon/End of the World
2013年により世界展開に向けて活動をはじめたSEKAI NO OWARI。今回紹介するEnd of the World(=世界の終わり)は、そのミュージシャン名通り、セカオワの世界展開の際に名乗っているバンド名。このたびようやくEnd of the World名義でのデビューアルバムがリリースされました。ただ、楽曲的にはセカオワの曲というよりは、完全な世界展開仕様。その結果、欧米のSSW系ポップスでよくありがちな、R&B的な要素も入った今どきのポップスになっており、セカオワ的な個性は皆無。ポップスとしての出来はメロディーにしろサウンドにしろ決して悪くなく、というよりもむしろよく出来ているくらいなのですが、ただ、こういうポップスを聴くんなら、エド・シーランやBruno Marsで十分だよなぁ、と思ってしまうようなありふれたポップスになっていました。これで無理に世界進出する必要性ある?
評価:★★★
SEKAI NO OWARI 過去の作品
EARTH
ENTERTAINMENT
Tree
Lip
Eye
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