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2020年12月29日 (火)

伝説のロックバンドの初のベスト盤

Title:The White Stripes Greatest Hits
Musician:The White Stripes

ロックンロールリバイバルの代表的なバンドとして2001年頃から話題となり、2003年にリリースされたアルバム「Elephant」が大ヒット。一躍人気バンドの仲間入りを果たしたジャック・ホワイトとメグ・ホワイトの「姉妹」バンド、The White Stripes。その後も2005年に「Get Behind Me Satan」、2007年に「Icky Thump」とアルバムをリリース。いずれも大ヒットを記録しただけではなく、グラミー賞を受賞するなど、大活躍をつづけましたが、2011年、人気絶頂の最中に突然解散してしまいました。

そんな彼らが活動を終えてから約9年。彼らのベストアルバムがリリースされました。ちょっと意外な点なのですが、ベストアルバムのリリースは本作が初。彼らの解散から9年の月日が流れましたが、いまだに「伝説的」なバンドとして語られることも少なくない彼ら。全26曲入り80分弱というボリュームのベスト盤ですが、CDでは1枚でのリリースですし、The White Stripes初心者にとっても、最初に手に取るアルバムとしては最適な1枚ではないでしょうか。

そして今回のベスト盤は、これが初のThe White Stripesというリスナーにもピッタリな構成に仕上がっていました。まず1曲目は彼らのデビューシングルであり、アルバム未収録となっている「Let's Shake Hands」からスタートするのですが、最初の1音、ギャンとなるギターの音がまず震えるほどカッコいい!それから奏でられるサウンドは、ノイジーなギターと力強いドラムスのみが鳴り響くサウンドなのですが、非常に力強いグルーヴ感を作り出しており、ギター+ドラムスというシンプルな構成であることが信じられないほど。デビュー作でありつつ、既にThe White Stripesとしてのスタイルが完成していたんだな、と驚かされる楽曲になっています。

前半は、続く「The Big Three Killed My Baby」「Fell In Love Wiht a Girl」「Hello Operator」などなど、ギターサウンドとドラムスだけで力強いサウンドを作り出すガレージロックという、The White Stripesのコアな部分を表に出しているロックチューンが並びます。このシンプルなサウンドながら大迫力のグルーヴを作り出している楽曲は、ロック好きなら心が震えるほどカッコよさを感じる楽曲ではないでしょうか。今回、久しぶりにThe White Stripesの曲を聴いたのですが、自分が覚えていた以上に素晴らしい曲の連続に思わず聴き入ってしまいました。

一方、中盤以降は、そんな「ロック」な側面だけではない彼らの魅力を感じさせる曲が並んでいます。まず今回のアルバムであらためて感じたのは、意外ともいえるメロディーラインの良さ。ギターを爪弾きながらメランコリックなメロを聴かせる「We're Going to Be Friends」や、泣きメロとも言っていいようなメロディーラインが魅力的な「Jolene」など(こちらはカバー曲ですが)、メロディーの良さを聴かせる曲も少なくないことに再認識させられました。こちらもカバーになるのですが、「Conquest」に至っては、こぶしを利かせたボーカルで哀愁感たっぷりに聴かせており、「え・・・演歌?」なんてことを感じてしまう部分もあったりして(笑)。

また、必ずしもギター+ドラムスのみというシンプルな構成のガレージロックだけに拘ることなく、中盤以降はバラエティーに富んだ作風の曲を聴かせてくれています。「The Denial Twist」ではピアノやシェイカーなどもサウンドに加えて、彼らにしてみれば賑やかなサウンドを聴かせてくれますし、「Hotel Yorba」ではアコギを軽快にかきならすフォーキーな作風に仕上げています。「My Doorbell」もピアノを軽快に聴かせる、ロックというよりも「ポップ」に近い作風が魅力的。バラエティー富んだ作風を楽しむことが出来ました。

そしてラストは彼らの代表作ともいえる「Seven Nation Army」で締めくくるあたりもにくいところ。こちらも彼らの王道ともいえるガレージナンバーを最後に配して、最後はあらためてThe White Stripesはカッコいい!と感じながらアルバムを締めくくるあたりも、なかなかよく出来たアルバム構成に感じます。

The White Stripesの魅力を存分に感じることが出来るベスト盤。楽曲の構成も凝ったものを感じるし、初心者が最初の1枚として聴くにもピッタリではないでしょうか。あらためて彼らの存在が唯一無二であることを感じさせました。もし、彼らの音にまだ触れたことがないのなら、是非とも聴いてみてください。ロック好きならば間違いなくはまるでしょう。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Live in Maui/JIMI HENDRIX

映画「レインボウ・ブリッジ」撮影のため、1970年7月30日にハワイ・マウイ島で行われたライブの模様を収録したライブ盤。いままでブートレグの形で流通していましたが、このたびはじめて、公式アルバムでのリリースとなりました。映画「レインボウ・ブリッジ」の方は、かなり悪評の高い映画のようですが、ライブアルバムの方は、ジミヘンのギターがこれでもかというほどさく裂する、迫力満点の内容に。終始、テンションの高いパフォーマンスを楽しむことが出来ます。「ロックを聴いたなぁ」という満足度の非常に高いアルバムになっていました。

評価:★★★★★

Jimi Hendrix 過去の作品
VALLEYS OF NEPTUNE
People,Hell And Angels
MIAMI POP FESTIVAL(THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE)
BOTH SIDES OF THE SKY

Odin's Raven Magic/Sigur Ros

現在、事実上、活動休止中となっているアイスランドのロックバンド、Sigur Rosの今回のアルバムは、彼らにオーケストラ・プロジェクトによるアルバム。もともと、2002年のレイキャビク・アーツ・フェスティバルで演奏されたもので、今回のアルバムは同じく2002年にパリのラ・グランデ・ハレ・ド・ラ・ヴィレットで行われた、レイキャビクのスコラ・カントルム(聖歌学校)とパリ国立高等音楽学校のオーケストラとの共演公演の模様を収録したライブ録音となっています。全編、荘厳なオーケストラアレンジが繰り広げられる美しいアルバムで、メランコリックに歌い上げるオペラ的なボーカルも印象的。この手のロックバンド、ポップミュージシャンによるオーケストラアレンジのアルバムというのは珍しくなく、そういう意味での目新しさはありませんし、サウンド的にもSigur Rosらしい実験性は少なかったのですが、ただ、聴いていて美しいサウンドに圧倒される、そんなアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

Sigur Ros 過去の作品
Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)
valtari(ヴァルタリ~遠い鼓動)
KVEIKUR

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