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2020年12月18日 (金)

新生スマパンの第2弾だが。

Title:CYR
Musician:The Smashing Pumpkins

2005年の再結成後、断続的な活動が続くThe Smashing Pumpkins。しかし前作「SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.」リリース時にはオリジナルメンバーのジェームス・イハとジミー・チェンバレンがバンドに復帰。4人中3人がオリジナルメンバーという、胸をはって「これぞスマパンだ」と言える体制でのニューアルバムリリースとなりました。それで調子に乗ったのでしょうか、今回のアルバムは前作から約2年という、ここ最近の彼らにとってみては比較的短いスパンでのニューアルバムリリース。2005年の再結成以降、メンバーが入れ替わりが続きましたが、今回は2作連続、同一のメンバーによるアルバムとなっています。

もともとメランコリックなメロディーラインが大きな魅力の彼らですが、今回のアルバムに関して言っても、そのメロディーラインの良さが非常に魅力的な作品に仕上がっていました。先行シングルでもあった1曲目を飾る「The Colour Of Love」は疾走感リズムに、女性コーラスも上手く絡んだメランコリックなメロディーがまずは耳を惹き、アルバムへの期待感を否応なくたかめますし、タイトルチューンでもある「Cyr」もダンサナブルな打ち込みが耳を惹きつつ、ちょっと物憂いげなメロディーが非常に魅力的な楽曲に仕上がっています。「Wrath」の胸をかきむしりたくなるようなメランコリックなメロディーも魅力的。ラストの「Minerva」こそ爽やかなメロディーラインで締めくくり、アルバム全体の後味を爽快なものとしていますが、アルバム全体としては、実にスマパンらしさを感じる、メランコリーあふれるメロディーの曲が並びます。そういう意味では、メロディーラインのタイプとしては多少、似たようなタイプの曲が多いのですが、それでもアルバム1枚、ダレることなく聴かせてしまうのは、そのビリー・コーガンのメロディーメイカーとしての才能が光っている、と言えるのではないでしょうか。

ただその一方、今回のアルバム、サウンドの側面では少々厳しい感のある作品に仕上がっていました。せっかくオリジナルメンバーが多く参画した今回のアルバムなのですが、サウンドは全面、シンセを中心とした作風になっています。正直、コロナ禍の中でのアルバムなので、バンドメンバーが集まれなかったのか・・・とも思ったのですが、そうではないようで・・・。「Wyttch」のようなダイナミックなバンドサウンドが心地よいような楽曲はありますし、ほかにも「Purple Blood」などヘヴィーなギターサウンドを押し出したような作品もあるのですが、あまりバンドとしての妙味が出ている曲は少なかったように思います。

また、このシンセのサウンドも、どうにもチープさを感じてしまう点が否めず・・・。挑戦的なエレクトロサウンドを聴かせるといった感じでもなく、なぜバンドメンバーがそろっているのに、これだけシンセに拘るのか、いまひとつ不明。「Save Your Tears」のような、分厚いシンセの音色で心地よく聴かせてくれる曲もあるにはあるのですが、ただ、全体的には、これならバンドサウンドを主軸にした方がよかったのでは?と思うような曲が大半でした。

スマパンの、というよりもビリー・コーガンのワンマン色も目立ってしまったようなアルバムで、ひょっとしたらバンドで演るよりもソロで演った方が気楽でよかった、ということでしょうか?そう考えると、現メンバーでのアルバムもこれが最後になってしまう・・・だったら嫌だなぁ。メロディーにはビリーの才を感じさせるアルバムなのですが、全体的にはもうちょっとバンドとしてのアルバムを聴きたかった、そう感じてしまう作品でした。

評価:★★★★

The Smashing Pumpkins 過去の作品
Teargarden by Kaleidyscope
OCEANIA
(邦題 オセアニア~海洋の彼方)
Monuments to an Elegy
SHINY AND OH SO BRIGHT,VOL.1/LP:NO PAST.NO FUTURE.NO SUN.


ほかに聴いたアルバム

Delta Tour EP/Mumford&Sons

2018年にリリースされたアルバム「Delta」のリリースに伴うライブツアーの模様を収録したミニアルバム。「Delta」は非常にダイナミックでスケール感を覚えるアルバムでしたが、本作もそんなアルバムをそのまま体現化した、スケール感あふれるライブの模様を感じることが出来ます。というか「Delta」のようなアルバムは、このような大人数で大規模なライブだからこそ映えるのでしょう。コロナ禍でなかなかこれだけ大規模なライブの実施も難しい現在ですが、早くこのようなスケール感あふれるライブを何の気兼ねなく実施できる日が来ればよいのですが。

評価:★★★★

Mumford&Sons 過去の作品
Sigh No More
Babel
Wilder Mind
Delta

Trans Am/The Network

いきなり登場の謎のバンドですが・・・GREEN DAYのメンバーを中心に結成された覆面バンド。2003年に1枚アルバムをリリースしているのですが、この度復活。12月にアルバムがリリースされたのですが、本作はそれに先立ちリリースされたEPとなります。楽曲はとても懐かしさを感じるニューウェーヴ風の楽曲4曲が収録。80年代の匂いを感じさせる楽曲は、懐かしさと同時にどこか新しさも。12月にリリースされたアルバムも近いうちにチェックする予定ですが、こちらも楽しみです。

評価:★★★★★

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