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2020年12月27日 (日)

自由度の高い音楽性

Title:KIRINJI 20132020
Musician:KIRINJI

もともと堀込高樹、泰行兄弟によるユニットだったキリンジ。長らくこの2人で活動を続け、人気を得ていた彼らですが、堀込泰行脱退という衝撃のニュースが飛び込んできたのが2013年。そしてまさかのバンド化。いままで2人組ユニットだったKIRINJIがメンバー5人を加えて6人組バンドになる、と知った時はかなり驚きました。それから7年。アルバムもコンスタントにリリースし、バンドとしてすっかり軌道に乗った彼ら。しかし、さらに突如、バンド終了を宣言したのが、いまからちょうど1年くらい前の今年1月。2020年いっぱいでバンドとしてのKIRINJIは終了し、来年からは、堀込高樹を中心とした流動的なメンバーによる変動的な「音楽集団」として活動するとか。まさかの変態を遂げ続けています。

本作はそんなKIRINJIのバンド時代の7年間をまとめたベストアルバム。今回のこのアルバムであらためてKIRINJIのバンドとしての活動を振り返ると、あらためてバンドKIRINJIの音楽性の自由度の高さに、あらためて気が付かされます。新生KIRINJIの第1弾アルバム「11」の1曲目となる、まさにKIRINJIの出発点ともいえる「進水式」からアルバムはスタートするのですが、この曲自体は、堀込高樹がメロウなボーカルで歌い上げる、2人組KIRINJIの音楽性をそのまま引き継いだようなミディアムテンポのシティポップ。これはまず、新生KIRINJIとしてのご挨拶程度といった感じなのでしょう。ただグッと変わるのが2曲目「雲吞ガール」。かなりユーモラスな歌詞も印象的なのですが、何よりも耳を惹くのがエレクトロサウンドの軽快なポップという点。メロディーラインや、妙に角ばったような言葉の使い方は、まさに昔ながらの堀込高樹なのですが、軽快なシンセポップというスタイルは、まさに新生KIRINJIにふさわしい、新しい音楽性といえるでしょう。

その後も「futigive」は、以前のキリンジ風のポップスなのですが、ボーカルを女性にすることで、グッと雰囲気が異なりますし、ホーンセッションも入って賑やかなサウンドでスケール感を増した「真夏のサーガ」などは、まさにバンドならではといった感じでしょうか。「The Great Journey」はRHYMESTERが参加し、HIP HOPチューンに。むしろKIRINJIというよりはRHYMESTER色が強い作品になっていますし、「Mr.BOOGIE MAN」は軽快なガールズポップと、かつてのキリンジのイメージからすると、かなりかけ離れた雰囲気のポップスに仕上がっています。

さらにエレクトロなダンスチューン「AIの逃避行」や鎮座DOPENESSが参加したHIP HOPチューン「Almond Eyes」、さらにはディスコ風のダンスチューン「『あの娘は誰?』とか言わせたい」など、後半は比較的エレクトロサウンドのナンバーが増えてくるのですが、実に自由度の高い音楽をきままに楽しんでいる姿を、バンドKIRINJIからは感じることが出来ます。

ただ、非常に自由度の高い音楽性ゆえに、聴いていくと、あることをひとつ、感じざるを得ません。それは

「これって、バンドじゃなくてもよくない??」

ということ。おそらく、メンバーそれぞれが音楽的アイディアを出し合っているからこそ、これだけバリエーション富んだアルバムに仕上がっているのでしょうし、それがバンドであることの意義といえば意義なのかもしれません。ただ、バンドとして音を出し合って、同じ方向性の一体感のある音を作り上げる、といった意味では、このベスト盤、特にここ最近のエレクトロ路線に関しては「バンドらしさ」ということをあまり感じません。このベスト盤を聴くと、そんなKIRINJIの方向性がよりクリアになっていたように感じます。

そしてだからこそ、堀込高樹は7年というバンドの活動に幕を下ろして、「音楽集団」という形で第3期KIRINJIをスタートさせるのではないでしょうか。おそらく、決まったメンバーのいないこれからのKIRINJIの音楽性は、さらに広がっていくようにも感じますし、おそらくそれが堀込高樹の狙いなのでしょう。今回のベスト盤を聴くと、堀込高樹の今、目指している方向性の意味が、強くわかるような気がします。そして、逆にKIRINJIがバンドから堀込高樹を中心とした「音楽集団」に変化することにより、音楽性がどのように発展されるのか、非常に楽しみになってきます。第2期KIRINJIの集大成であると同時に、第3期KIRINJIを占う、そして新たな挑戦が楽しみになってくる、そんなベスト盤でした。

評価:★★★★★

キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11
ネオ
愛をあるだけ、すべて
Melancholy Mellow-甘い憂鬱-19982002
Melancholy Mellow II -甘い憂鬱- 20032013
cherish

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