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2020年12月15日 (火)

相変わらずの脱力感

Title:25周年ベスト
Musician:栗コーダーカルテット

ヨシタケシンスケのかわいらしいジャケットが目を惹く本作は、リコーダーやピアニカなどの楽器で脱力感あるほんわかしたインスト曲を奏でるグループ、栗コーダーカルテットの結成25周年を記念してリリースされたベスト盤。今回は(通常盤は)2枚組のアルバムとなっており、Disc1が彼らのオリジナル曲、Disc2がカバー曲となっています。

「25周年ベスト」というシンプルなタイトルになっていますが、(下の「過去の作品」を見てもわかるかもしれませんが)彼ら、約5年毎にベスト盤をリリースしており、タイトルも同じ。10年前には「15周年ベスト」、5年前には「20周年ベスト」というタイトルでベスト盤をリリースしています。そういう意味では、ベテランミュージシャンによくありがちな「何作目のベストだよ?」的なアルバムとも言えるかもしれませんが、彼らが非常にユニークなのは、今回のベスト盤、過去の2枚のベスト盤と曲かぶりがほとんどありません。実は、過去の「15周年ベスト」と「20周年ベスト」も収録曲が大きく異なっており、そういう意味では彼らのアルバム、「ベスト」と名の付くアルバムだけ追っていけば、彼らの活動を網羅できる、と言えるのかもしれません。

ベスト盤でありながら曲かぶりがほとんどない・・・というのは、彼らの曲、シングルという形態でのリリースがほとんどなく、「代表曲」と言えるような曲が少ないという理由もあるのでしょう。また、彼らの活動は、栗コーダー名義のアルバムのみならず、サントラ盤やコンピレーションアルバムの参加、メンバーの楽曲提供など様々な形で多岐にわたっているため、そういった曲をピックアップするだけで曲かぶりがなくなる、という理由もあるのでしょう。また、アルバムに収録されている曲に「ハズレ」がなく、どれもベスト盤として収録できるだけのクオリティーを持っている、とも言えるのかもしれません。

実際、Disc1のオリジナル曲は、どの曲も聴いていてほっこりするような暖かさを感じさせるインストナンバーが並んでいます。リコーダーをベースにピアニカやウクレレ、パーカッションなど、アコースティックで素朴な楽器で演奏される彼らの曲は哀愁感もたっぷり。ただ、シンプルな楽器で演奏されつつも、「青空節」のような民謡風の作品やら「サーイ・ナームライ ~その流れはいつも優しい~」のようなちょっとエキゾチックな作品やら「キョロちゃんWALK-突撃!!」のようなマーチ調で賑やかな作品やらバラエティー豊富。幅広い音楽性とその演奏スキルに彼らの実力を感じさせます。

そしてやはり魅力的なのがDisc2のカバー。誰もが知っているような洋楽邦楽の有名曲、スタンダードナンバーをアコースティックな楽器によって脱力感たっぷりに演奏しています。冒頭を飾るアコースティックな「東風」も楽曲の持つメロディーラインの魅力が前に押し出されてた曲になっていますし、あの「カーマは気まぐれ」が驚きの郷愁感たっぷりのナンバーに仕上がっているのは驚くべき感も。意外性あるカバーといえば、話題となったアニメ「ポプテピピック」のテーマ曲「POP TEAM EPIC」のカバー。なるほど、彼らの手にかかると、こういう風にカバーされるのか・・・とうならせられるカバーになっています。そしてユニークなのが、かの「ボヘミアン・ラプソディ―」のカバー。重厚なサウンドの原曲に対して、アコースティックなサウンドを様々組み合わせて、非常にユニークなカバーに仕上がっていました。

栗コーダーカルテットの魅力がたっぷりと感じれるアルバム。上にも書いた通り、彼らの活動は多岐に及ぶため、栗コーダー名義のアルバムを聴くだけではなかなかフォローできないのですが、それだけに、こういう形のベスト盤で彼らの多気に及ぶ活動をフォローできるのはうれしい限りです。ただ一方、「ベスト盤」ですが、彼らの曲でおそらくかなりよく知られているであろう「ピタゴラスイッチのテーマ」や、昔、「やる気のないダースベイダーのテーマ」として話題となった「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」は本作では未収録。ここらへんは過去のベスト盤をあさるしかないでしょうね。ただ、これが彼らを知るための最初の1枚としても最適。脱力感たっぷりの暖かいポップソングが存分に楽しめます。

評価:★★★★★

栗コーダーカルテット 過去の作品
15周年ベスト
夏から秋へ渡る橋
渋栗(川口義之with栗コーダーカルテット&渋さ知らズオーケストラ)

遠くの友達
生渋栗(川口義之with栗コーダーカルテット&渋さ知らズオーケストラ)
羊どろぼう
ウクレレ栗コーダー2~UNIVERSAL 100th Anniversary~
あの歌 この歌
20周年ベスト
ひろコーダー☆栗コーダー(谷山浩子と栗コーダーカルテット)
KURICORDER QUARTET ON AIR NHK RECORDINGS
平凡


ほかに聴いたアルバム

愛を知らずに魔法は使えない/マカロニえんぴつ

現在、人気上昇中でブレイク最右翼とも目されているポップバンド、マカロニえんぴつの最新作は全6曲入りのミニアルバム。うち冒頭の「生きるをする」及びラストの「mother」は、テレビ東京系アニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」のオープニング及びエンディングで、タイトルもドラクエを意識したタイトルになっています。そろそろヒゲダン並みの大ブレイクも期待される彼らですが、ただ今回のアルバム、前作、グッとよくなった良質なメロディーが後ろに下がってしまい、バンドサウンドが目立つような構成に。そのサウンドも正直言っていまひとつ大味で、面白みはありません。変に「売り」を狙った結果、平凡なJ-POPバンドに成り下がったような、そんな印象を受けてしまいました。前作「hope」が、今の彼らの勢いを表すような傑作だっただけに非常に残念。ちょっとプロダクションを間違えちゃったなぁ、と感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★

マカロニえんぴつ 過去の作品
season
hope

eye/HUSKING BEE

コロナ禍で活動自粛中だった期間に書き溜めた曲からセレクトしたという、HUSKING BEE10枚目となるフルバム。前半はアップテンポでパンキッシュな側面が表に出たような楽曲が、後半はメロディーラインの良さが表に出たような楽曲が並ぶアルバム。英語詞と日本語詞のバランスも良く、いい意味でベテランらしい安定感のあるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

HUSKING BEE 過去の作品
Suolo
Stay In Touch
Lacrima
ALL TIME BEST 1994-2019

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