« ベテラン勢が目立つ | トップページ | 新型コロナに翻弄された1年を総括 »

2020年12月11日 (金)

ブルハの偉大さをより感じるベスト盤

Title:ALL TIME MEMORIALS II
Musician:THE BLUE HEARTS

1980年代後半から1990年代前半に活躍し、その当時の若者に絶大な支持を得たのみならず、音楽シーンにも絶大な影響を与え、ある意味、今の日本のパンクシーンの始祖的な存在ともいえる「伝説のバンド」THE BLUE HEARTS。今なお多くのファンを獲得し、数多くのミュージシャンへの影響を与え続ける彼ら。ただ、解散後もことあることにベスト盤がリリースされ続けており、正直若干食傷気味な部分もあるのですが・・・結成35周年を記念して新たなベスト盤がリリースされました。

ただ、今回のアルバムは、30周年の時にリリースされた「ALL TIME MEMORIALS~SUPER SELECTED SONGS~」に続くという形態のベストアルバム。また、25周年の時にリリースされた「ALL TIME SINGLES~SUPER PREMIUM BEST~」の再発と同時リリースという形になっております。そういうこともあり、彼らのシングル曲や代表曲などはそちらにゆずり、今回のベスト盤にセレクトされている曲は、どちらかというと知る人ぞ知る・・・というには知名度が高すぎるのですが、どちらかというと代表曲の次に聴くべき、セカンドベスト的なセレクションとなっています。

しかし、そんな楽曲が収録されているがゆえに、「これは!」とリスナーによっては代表曲以上に強いインパクトを受けるような曲も少なくありません。まず特に歌詞に関して非常に印象を受ける曲が数多く並びます。まずアルバムの冒頭に並ぶのが「パンクロック」。パンクロックを「やさしいから好き」と語るこの歌詞は、パンク=反逆の音楽と受け取るようなリスナー層にはある意味、衝撃的な歌詞になっています。ただ、ある意味、逆説的にパンクロックの本質をとらえてるとも言える本作は、非常に強いインパクトをリスナーに与えています。

「ラインを越えて」の歌詞も、すっかりアラフォーになった今だからこそかなり突き刺さる歌詞。「夕刊フジを読みながら/老いぼれてくのはゴメンだ」という固有名詞を上げた歌詞もかなりストレートなのですが、「机の前に座り/計画を練るだけで/一歩も動かないで/老いぼれてくのはゴメンだ」という歌詞もグサッと来る「大人」も多いのではないでしょうか。そんな彼ら、特にヒロト&マーシーはその後、ハイロウズ、ザ・クロマニヨンズの活動を経て現在に至るのはご存じの通り。彼らはすっかり「大人」になっても動くことは止めず今に至っています。歌詞の世界に至っては、このころよりもさらにシンプルになって今に至っているわけで・・・今の彼らの書く歌詞に比べると、ブルーハーツの歌詞はある意味、情報過多とも感じてしまうあたりに、シンプルを追求し、さらに歌詞の精鋭化を続けている彼らの今に対する驚きも感じてしまいます。

もう1点、今回のベスト盤を聴いて強く感じた点があります。それは彼らの演奏する楽曲のバリエーションの多さ。どうしても代表曲を並べたベスト盤だと、いかにもブルーハーツらしい、といった印象を受けるパンクロックがメインになってしまうのでしょうが、本作の収録曲を聴くと、ブルーハーツが決してパンク一本調子のバンドではなく、むしろ深い音楽性を感じさせるバンドであることに気が付きます。例えば「レストラン」はスカのリズムを取り入れていますし、「ながれもの」はカントリー、「真夜中のテレフォン」はモータウンからの影響を強く感じますし、「闘う男」のイントロはもろストーンズが入っています。こちらに関しても、最近になればなるほどシンプルなパンクロックがメインになってくるのですが、その実、彼ら、というかヒロト&マーシーには深い音楽的素養を感じられる点がこのベスト盤ではより明確になっていました。ここらへんが、並みのパンクロックバンドと彼らが大きく異なる点なのでしょう。

そんな訳で、代表曲こそありませんが、こちらのアルバムもブルーハーツというバンドをよく知るためには是非とも聴いておくべきベスト盤であることは間違いありません。むしろ誰もが知っている代表曲を並べたベスト盤以上に、このバンドの偉大さをより感じることが出来るアルバムと言えるかもしれません。とはいえ、ヒロト&マーシーはいつまでもブルハに留まらず、今なお歩み続けています。このベスト盤を聴いたら、次はクロマニヨンズのアルバムも、是非。

評価:★★★★★

THE BLUE HEARTS 過去の作品
ALL TIME SINGLES~SUPER PREMIUM BEST
THE BLUE HEARTS 30th ANNIVERSARY ALL TIME MEMORIALS ~SUPER SELECTED SONGS~

|

« ベテラン勢が目立つ | トップページ | 新型コロナに翻弄された1年を総括 »

アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ベテラン勢が目立つ | トップページ | 新型コロナに翻弄された1年を総括 »