18歳未満お断り?
Title:ブルーフィルム-Revival-
Musician:cali≠gari
いや~いきなりドギツイ18禁的なジャケットで申し訳ありません。今回紹介するアルバムは、もともとcali≠gariが2000年にリリースしていた通称「エロアルバム」というアルバム。もともと、現在のボーカリスト石井秀仁が加入直後にリリースされたアルバムで、インディーズでの当初リリース時に完売。翌年には2ndプレスもリリースされたものの、こちらも現在では廃盤となり入手困難。そんな中、今回は新曲に新たなカバー曲を追加した全10曲入りのアルバムとしてリニューアル。すべて新録という、かなりの力の入れようの新作となっています。
オリジナル盤リリース時はオリジナルコンドームが購入特典として付いてきたという、とことん「エロ」路線を突き進んだ本作。楽曲もここで堂々と書くのもはばかられるような(笑)エロエロの楽曲が続きます。そんな未成年お断りの下ネタ満載のアルバムなのですが、これがビックリするほどカッコいい楽曲の連続になっています。まず1曲目は今回あらたに収録されたカバー曲。イタリアのDJユニットSPANKERSが2000年にリリースして大ヒットを記録した「Sex On The Beach」のカバーなのですが、原曲のおバカなパーティーチューンの雰囲気が一転。ヘヴィーなギターサウンドでゴリゴリと攻めてくる、ヘヴィーなパンクナンバーに早変わり。これ、原曲よりカッコよくない?と思ってしまう、cali≠gari流の名カバーに仕上がっています。
オリジナル版では冒頭を飾っていた「エロトピア」もヘヴィーなギターリフをバックに、妖艶でエロチックな雰囲気を醸し出しつつ、ヘヴィーなロックナンバーになっています。さらに続く「ミルクセヰキ」は軽快なスカ調のナンバー。タイトルは間違いなくダブルミーニングなんでしょう。ミルクを男性のあれに例える手法は、戦前のブルースナンバーでもよく見られる手法なのである意味、お決まりともいえる歌詞。ただリズミカルなスカのリズムが楽しいロックナンバーに仕上がっています。
その後もジャジーなアレンジを加えて妖艶に聴かせる「真空回廊」、バンドサウンドにシンセの音色を加えてメランコリックに聴かせる「原色エレガント」、ノイジーでサイケなアレンジでドリーミーに聴かせる「さかしま」など、それぞれバリエーションある作風ながらもcali≠gariの音楽性の広さを感じさせる楽曲に仕上がっており、「エロアルバム」というギミックを用いつつ、その実、アルバムの内容としては彼らのバンドとしての実力を存分に発揮した楽曲が並んでいます。
今回、新曲として収録された「デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!」もかなりインパクトの強いポップなナンバーに。ポップで軽快なギターロックのナンバーになっており、絶妙に加わるファンキーなリズムも楽しいナンバー。90年代のJ-POPの雰囲気も感じられる楽曲になっており、岡村靖幸あたりが好きなら気にいるかも?ある種のなつかしさも感じました。タイトル通りの爽やかに仕上げつつも、エロい歌詞も非常にユニークです。
ラストを飾るタイトルチューン「ブルーフィルム」もまた、パンキッシュで賑やかなバンドサウンドも楽しい、メロディーは至ってポップなギターロックナンバー。メロディーラインは爽やかにまとめつつ、どこか切なく、メランコリックさを歌詞も妙に耳に残る楽曲に仕上がっています。
また、実験的で非常にユニークだったのがインストナンバー「音セックス2020」で、様々な音をサンプリングし、それを絡み合わせることで音でセックスを表現したようなナンバー。これもまたエロネタながらも、かなりサウンドとして挑戦的な楽曲となっており、非常に楽しくも、同時に彼らの挑戦にうならせるような楽曲になっていました。
「エロ」というある種の飛び道具を用いつつ、楽曲としてはかなり凝った名曲がそろっている非常にカッコいいアルバムになっていた本作。cali≠gariのバンドとしての実力を存分に発揮したアルバムになっています。「エロ」というギミックを用いたからこそ、バンドとしての自由度が高まった結果、より傑作がリリースされ、ということかもしれません。ジャケット写真で引いてしまった方でも是非聴いてほしい傑作アルバム。ロックのアルバムとして文句なしにカッコいい1枚でした。
評価:★★★★★
cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界
≠
11
12
13
この雨に撃たれて
ほかに聴いたアルバム
はじまっていく たかまっていく E.P./サンボマスター
サンボマスターの新作は、タイアップ付の新曲2曲とライブ音源3曲からなる5曲入りのEP盤。タイトルチューンである「はじまっていく たかまっていく」はラップ的な要素も入れて意欲的な部分もあったりするものの、全体的にシャウトもサウンドも抑えめ。2曲ともタイアップを意識したようなポップ寄りの曲になっており、サンボマスターとしての魅力は薄め。ライブ音源の方も、パンクな彼らを前面に押し出した、といった感じではなく、全体的に「売り」を意識したようなアルバムになっていたのはちょっと残念でした。
評価:★★★
サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
サンボマスターとキミ
YES
Walking On Fire/GLIM SPANKY
GLIM SPANKYの最新作は、ギターサウンドといよりもバンド全体としてダイナミックな作風に聴かせている点が特徴的。デビュー当初の60年代的なルーツ志向から、前作で感じたもうちょっと時代が下ったハードロック色という方向性は今回のアルバムもそのまま。非常に力強いサウンドがインパクトになっています。同じルーツロック志向ながらも微妙にスタンスを変えつつ活動を続ける彼女たち。このハードロック路線をさらに先鋭化していくのでしょうか?
評価:★★★★
GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC
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