いつもながらのシンプルなポップアルバム
Title:Love Goes
Musician:Sam Smith
約3年ぶりとなったサム・スミスのニューアルバムは、今回の新型コロナの影響を大きく受けてしまうアルバムになってしまいました。もともとは「To Die For」というタイトルで5月1日にリリースされることが決定された本作。しかしコロナ禍の最中ということで5月のリリースは延期に。さらに「To Die For」というタイトルがコロナ禍の中では不謹慎ということになり、タイトルも「Love Goes」に変更。10月30日にようやくニューアルバムのリリースとなりました。
そんなコロナ騒動に思いっきり巻き込まれてしまった今回のアルバムですが、そんな中でリリースされた先行シングルはバラードシンガーのイメージが強い彼にしては、比較的テンポのよいダンサナブルなシングル曲が続いていたということでも話題になりました。事実、本作に収録されている「Diamonds」やBurna Boyをゲストに迎えた「My Oasis」などは確かにリズミカルなナンバーですし、タイトルそのまま「Dance('Til You Love Someone Elese)」や「Dancing with a Stranger」のようなエレクトロダンスチューンも収録されています。そういう意味ではいままでの彼のアルバムに比べると、比較的ダンサナブルな楽曲も収録されているアルバムと言えるかもしれません。
ただ正直なところアルバム全体としてはダンスチューンも目立つバリエーションのある作品というよりは、いつものサム・スミスと同様、ミディアムチューン中心に美しいメロディーラインを聴かせる作品というイメージで大きな変化はありませんでした。アルバムもアカペラのバラードソング「Young」からスタートしますし、前半は前述の先行配信曲や「Another One」や「So Serious」のようなテンポよくメロディアスな曲が並ぶのですが、そんな曲も基本的には伸びやかなサム・スミスのボーカルが主軸となっており、彼のいままでのイメージから大きな変化はありません。
さらに後半にはスケール感あるバラードナンバー「Kids Again」やストリングスも入ってダイナミックに歌い上げるバラード「Fire on Fire」など、彼らしいバラードナンバーが続きます。そんな中でも特にインパクトがあるのがタイトルチューンでもある「Love Goes」。メランコリックなメロディーラインにファルセットも入って美しく聴かせる彼のボーカル、さらに途中ホーンセッションも入ってスケール感を覚えるサウンドも見事で、タイトルチューンらしいアルバムの中での主軸となっている楽曲に仕上がっています。
そんな訳でいままでの彼の楽曲と大きな相違はなく、サウンドは比較的シンプル。バリエーションもダンスチューンが耳を惹くものの、バラエティー豊富な、というよりはあくまでも歌を聴かせるスタイルという点に大きな変化はありません。ただ、それでも最後まで飽きることなくしっかりと聴かせることが出来るのは、いままでの彼の楽曲同様、美しいメロディーラインと美しいボーカルが際立っているからでしょう。まただからこそシンプルなサウンドでも十分勝負できるだけのクオリティーを維持しているのでしょう。今回のアルバムも、そんな彼の魅力が満載の傑作アルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★★
Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All
ほかに聴いたアルバム
The Power Of The One/Bootsy Collins
Pファンクのメンバーであり、ファンク界隈では最も著名なベーシストのひとりBootsy Collins。70歳近い今となっても、Pファンクのノリと全く変わらない精力的な音楽活動を続けていますが、本作は約3年ぶりとなるニューアルバム。基本的にはいつも通り、終始ご機嫌なファンクチューンが並んでいる作品に。大いなるマンネリといえばマンネリなのですが、最初から最後まで続くファンキーなリズムに聴いていてご機嫌になってくる、とても心地よさを感じるアルバムでした。
評価:★★★★
Bootsy Collins 過去の作品
THA FUNK CAPITAL OF THE WORLD
World Wide Funk
Positions/Ariana Grande
アメリカのシンガーソングライター、アリアナ・グランデのニューアルバム。基本的に楽曲は彼女ののびやか美しい歌声を主軸に据えた、清涼感あってメロディアスなポップチューンが並んでいます。ただ、そのキュートなルックスとは裏腹に・・・というと怒られてしまいそうですが・・・メッセージ性を込めた作品が特徴的で、タイトルチューンの「Positions」は女性大統領に扮したPVも話題になり、女性の社会的な立ち位置をメッセージに込めたといわれていますし、1曲目を飾る「Shut up」も今の時代にリリースされると、トランプ大統領に向けたメッセージソングにすら感じます。そういうメッセージ性を楽曲の中にさらりと取り入れつつ、全体的にはキュートなポップチューンにまとめあげている点に彼女の実力を感じさせる、そんな作品でした。
評価:★★★★
Ariana Grande 過去の作品
My Everything
The Best
Sweetener
thank u,next
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