« 「残酷な天使のテーゼ」が頭の中で流れ続けています・・・。 | トップページ | 大きな壁を乗り越えた傑作 »

2020年11月29日 (日)

「平成最後のロックバンド」

Title:心の中の怪獣たちよ
Musician:突然少年

最近、急速に注目を集めているロックバンド、突然少年。「平成最後のロックバンド」という呼び名もあるようですが、2018年、2019年と2年連続でフジロックに出演するなど、一気に注目を集めているため、その名前を聴いたことある方も少なくないのではないでしょうか。2019年には初のフルアルバム「Thank you my Friend and my Family」をリリース。本作は、それに続く2枚目のフルアルバムとなります。

「突然少年」という名前も、どこかNUMBER GIRLあたりを彷彿とさせる語感なのですが(ナンバガなら「少女」か・・・)、タイプ的には何気にスマートな感もあるナンバガとは異なり、泥臭さも感じる、「王道」とも言えるスタイルのロック。眼鏡をかけているボーカルという点こそナンバガと共通項はあるのですが、上半身裸といういで立ちにも泥臭さを感じますし、ボーカルのシャウトが主導の正統派なパンクロック系のサウンドは、サンボマスターあたりに近いものも感じます。もっとも、サンボマスターほどブラックミュージックからの影響は感じませんし、ハイトーンボーカルという点では、フラワーカンパニーズに近いということも言えるかもしれません。

そんな訳で、彼らの奏でるバンドサウンドは、正統派の、力強いバンドサウンドを練り響かせるパンクロック。「ボール」「アンラッキーヤングメン」あたりは、そんな彼らのスタイルの中心を行くようなサウンドと言えるかもしれません。「台風一過」のようなミディアムチューンで聴かせるナンバーや、ラストを飾る「フロムアンダーグラウンド」など、もうちょっとオルタナ系のギターロック寄りの楽曲もあったりしますし、「雨の日」あたりは、まさにNUMBER GIRLの影響を感じるようなギターサウンドを聴けたりもするのですが、基本的にはパンク系のギターロックで一気に突っ走るタイプのアルバム。全9曲42分という長さなので、似たようなタイプの曲で突っ走るには、長さ的にもちょうどよいという印象を受けます。

また、自分の平凡さに悩みもがくような歌詞も印象的。

「8番ライト 俺
誰にも期待はされていないけど
ホームラン一発狙っていく」
(「ボール」より 作詞 戸田源一郎)

「あぁなんとなく過ぎていく日々の中で
オレは生きている
なんとかなるさと いつも思っています」
(「100年後」より 作詞 戸田源一郎)

など、自分の平凡さを受け入れつつ、どこかその中でもがいて生きていこうとする姿を感じ取れる歌詞に共感を覚える方も多いように思います。

また、ラストの「フロムアンダーグラウンド」などは、まさにこのコロナ禍の中で、ライブを行うこともままならないようなライブハウスに対するエールを送るような楽曲になっています。コロナの前に書かれた歌詞なのか、それともコロナを踏まえて書かれた歌詞なのかは不明なのですが、ただ、今の時代のアルバムで歌うにはピッタリの1曲となっていました。

ただ一方では、もう一歩、ひねりやもっと強い個性も欲しかったかな、とも思います。特にサウンド面には一発聴くだけで、これが突然少年の音だ!というほどのサウンドの個性は残念ながら出せていなかったように感じます。歌詞にしても方向性は良いのですが、一度聴くだけで忘れられなくなるようなキラーフレーズには残念ながら出会えませんでした。

そういう点では、傑作というにはちょっと惜しい1枚だったように思います。ただ、まだまだ話題になって間もない彼ら。今後の成長も期待できそう。これからが楽しみなロックバンド。ライブも評判がいいみたいなので、コロナが落ち着いたら、足を運びたいなぁ。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

この気持ちもいつか忘れる/THE BACK HORN

本作は、「君の膵臓をたべたい」が話題となった小説家、住野よると、THE BACK HORNとの共同プロジェクトにより生み出された小説「この気持ちもいつか忘れる」の内容に沿った形での5曲入りのミニアルバム。本作のCDが付いた小説が販売されていますが、一方で配信ではTHE BACK HORNの作品単独で聴くことが出来、今回私が聴いたのはこちら。小説については未読です。

本作の方は、5曲入りといってもうち1曲はインターリュードになっているので、実質的には4曲入りのアルバム。小説とリンク、といっても基本的にはいつものTHE BACK HORNらしい作品。ヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドに悲しげなメランコリックなメロディーラインがインパクトを持った作品が続いています。これで小説を読んでみたい・・・とまでは正直思わなかったのですが、THE BACK HORNとしての期待にはしっかりと応えているような作品でした。

評価:★★★★

THE BACK HORN 過去の作品
BEST
パルス
アサイラム
リヴスコール
暁のファンファーレ
運命開花
BEST OF BACK HORN II
情景泥棒
ALL INDIES THE BACK HORN
カルペ・ディエム

どうにかなる日々/クリープハイプ

劇場アニメ「どうにかなる日々」の主題歌及び劇伴音楽を収録したオリジナルサウンドトラック。1曲目の主題歌「モノマネ」以外は基本的に劇中で使われたインスト曲。「モノマネ」は、日常を描写した恋人の切ないやり取りを描いた歌詞が印象的ですが、メロはいまひとつフックが弱く、ちょっと印象が弱くなっているのが残念。全体的には短いフレーズの連続なので、基本的にはアニメのファンか、クリープハイプのファン向けといった感じでしょうか。おそらく次のアルバムで「モノマネ」が収録されると思うので、ファン以外はそれを待てばいいような感じも。

評価:★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
泣きたくなるほど嬉しい日々に

|

« 「残酷な天使のテーゼ」が頭の中で流れ続けています・・・。 | トップページ | 大きな壁を乗り越えた傑作 »

アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「残酷な天使のテーゼ」が頭の中で流れ続けています・・・。 | トップページ | 大きな壁を乗り越えた傑作 »