大きな壁を乗り越えた傑作
Title:2020
Musician:a flood of circle
以前から、アルバム毎にこのサイトでも紹介してきた4人組ガレージロックバンドa flood of circle。ただ、アルバム毎に出来不出来の差が大きく、傑作アルバムが誕生した!と思ったら、次の作品は凡作だったり・・・と正直、なかなかバンドとして波に乗り切れない感も否定できません。本作は、そんな彼らの約1年半ぶりとなるニューアルバム。10枚目となるフルアルバムで、タイトルはもちろん今年をあらわした数字。ちなみに「ニーゼロニーゼロ」と読むそうです。
そんなアルバムによって差の大きい彼らの最新作なだけに期待半分、不安半分で聴き始めた本作なのですが・・・本作は、まさに快心の一撃とも言うような傑作アルバムになっていました!しゃがれ声のボーカルのシャウトと語りをバックに疾走感あるガレージサウンドが鳴り響く「2020 Blues」が、まず聴いていてロックリスナーとしてはワクワクさせるような、まさに聴いているだけでケガをさせられそうな非常に「尖った」快心作になっていますし、続く「Beast Mode」もその勢いがそのまま続くような、疾走感あるギターロック。ここから3曲目の「ファルコン」まで、一気に展開する勢いあるガレージロックチューンが続いていき、聴いていて、一気にアルバムにはまり込みます。
中盤はここから一転、ポップ志向の強いメロディアスなナンバー「Super Star」「天使の歌が聴こえる」で一区切り。そこから一転、パンクチューンの「Free Fall&Free For All」になるのですが、この歌詞がまた良い出来栄えになっています。
「YEAH YEAH YEAH YEAH
覚悟を決めて飛ぶんだ
YEAH YEAH YEAH YEAH
100%の安心は無いさ
YEAH YEAH YEAH YEAH
ドキドキしてるなら
YEAH YEAH YEAH YEAH
100%生きてるんだ」
(「Free Fall&Free For All」より 作詞 佐々木亮介)
という歌詞がいいですね。ある意味、パンクロックらしいメッセージ性のある歌詞になっています。
その後もミディアムチューン「人工衛星のブルース」をしんみり聴かせた後は、再び疾走感あるギターロックに。ポップテイストの強い「Rollers Anthem」から、ヘヴィーなギターサウンドが印象的な「ヴァイタル・サインズ」に軽快なポップチューン「Whisky Pool」。ちょっと怪しげに聴かせる「欲望ソング(WANNA WANNA)」に、ラストを締めくくるのはスケール感も感じるミディアムチューン「火の鳥」で締めくくりとなります。
序盤の疾走感あるナンバーから、ミディアムテンポを聴かせる中盤。そして再び盛り上がる楽曲を配した終盤から、ラストにスケール感あるナンバーで締めくくり、という展開も実に見事。聴いていて全くダレることありませんし、そのままライブのセットリストになりそうな構成になっているため、音源で聴いていても、ライブを楽しむような感覚を味わうことが出来ます。
そんな傑作となった本作ですが、いままでのa flood of circleの作品に比べても、大きく進歩したように感じた部分があります。それは、ポップでメロディアスな曲についても、違和感なく「ロック」として聴くことが出来た点。a flood of circleの楽曲は、ヘヴィーなガレージロックを聴かせる曲については文句なくカッコいいものの、ボーカル佐々木亮介の声が非常に端正であるが故に、メロディアスでポップな作風になると、一気に平凡なJ-POPのように聴こえてしまう点が大きなマイナスでした。しかし本作に関しては、中盤のミディアムチューンも決して平凡なポップ路線に陥ることなく、ほかのロックナンバーと並んでも違和感なく楽しむことが出来ました。それはバンドとしてサウンドの強度が増したということも要因でしょうし、メロディーラインもひとつ大きな壁を超えたという点も大きな要因なのではないでしょうか。
個人的にはa flood of circleの最高傑作ともいえる出来のアルバムだったと思います。バンドとしても大きな壁をひとつ乗り越えた感もあり、次回作以降も楽しみになってくる傑作でした。次回作も同じような出来だったら、間違いなくバンドとして大きな成長を遂げたと言えるのでしょうが・・・そうなれば、彼らの本格的ブレイクも近いかもしれません。彼らの活動から、目が離せなさそうです。
評価:★★★★★
a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle
CENTER OF THE EARTH
HEART
ほかに聴いたアルバム
Cheddar Flavor/WANIMA
9月22日に行われた無観客配信ライブ「COMINATCHA!! TOUR FINAL LIVE VIEWING ZOZO MARINE STADIUM」にて突如、9月23日のリリースが発表された9曲入りのミニアルバム。コロナ禍でライブもままならない状況の中、ファンに対する最高の贈り物といった感じでしょうか。もっとも内容的にはいつも通りのWANIMA。メロディアスな歌をハーモニーをうまく入れつつ、力強く歌い上げる曲が並びます。こういう曲を、満員のライブ会場で、みんなで大声をあげながらライブを楽しめる・・・そんな日が一日でも早く戻ってくるといいのですが・・・。
評価:★★★★
WANIMA 過去の作品
Are You Coming?
Everybody!!
COMINATCHA!!
Cheer/真心ブラザーズ
妙にかわいらしいジャケットが印象的な、オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる真心ブラザーズの新作。ここ数作、ルーツ志向を明確にしたようなアルバムが続いていましたが、今回のアルバムは、ポップなジャケットでもわかる通り、比較的ポップな歌モノがメイン。「炎」なんて、かなり軽快なポップチューンに仕上がっており、90年代J-POPを彷彿とさせるような・・・。ただ全体的には歌モノ方面を目指すにはちょっと地味というか、インパクトは薄かったような感じはします。ベテランの彼ららし安定感のある作品ではあるのですが。ちなみにジャケットを手掛けたのはタナカカツキという漫画家で、カプレルトイで話題となった「コップのフチ子」の考案者の方らしいですね。
評価:★★★★
真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST
Keep on traveling
Do Sing
PACK TO THE FUTURE
FLOW ON THE CLOUD
INNER VOICE
トランタン
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