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2020年11月 8日 (日)

バラエティー豊富な作風に音楽的素養を感じる

Title:SUPERMARKET
Musician:藤原さくら

2016年に月9ドラマ「ラヴソング」のヒロイン役に抜擢され、主題歌「Soup」も大ヒットを記録し、一躍話題を呼んだシンガーソングライター藤原さくら。このように書くと、いかにも大手芸能事務所がゴリ押しでプッシュした、典型的なJ-POP系の売れ線シンガー…というイメージを持ってしまうのですが、実はアルバム単位で聴くと、深い音楽的素養と洋楽からの強い影響を感じる実力派シンガーソングライターだった、ということは以前、何度か紹介した彼女のアルバムのレビューでも記載済かと思います。今回のアルバムは、その大ヒットしたシングル「Soup」を収録した「PLAY」から約3年5ヶ月ぶり。途中、ミニアルバムのリリースを挟みつつ、フルアルバムとしては久々となるニューアルバムとなります。

そんな久々となる今回のアルバムなのですが、まず大きな特徴としては、様々なミュージシャンがプロデューサーとして加わり、楽曲の幅がグッと広がった点ではないでしょうか。途中リリースされたミニアルバム「red」「green」ではOvallのmabanuaがプロデューサーとして参加。それはそれでアルバム全体に統一感をもたらす結果となりました。今回のアルバムはmabanuaのほかに、Ovallのメンバーである関口シンゴやSPECIAL OTHERSのYAGI&RYOTAなど、前作「PLAY」で参加していたメンバーに加えて、冨田恵一やスカートの澤部渡などもプロデューサー勢で参加。前作「PLAY」でも多彩なプロデューサーが参加していたのですが、さらにバリエーションが広がっている印象を受けます。

アルバムのスタートは爽快なポップチューン「Super good」からスタート。全英語詞のナンバーで洋楽テイストの強いリズミカルなポップチューンになっています。さらに2曲目「Ami」は彼女自ら編曲を手掛けた楽曲なのですが、こちらはバンドサウンドでロック色も強い、ちょっとメランコリックさも感じるメロディーラインが魅力の楽曲に。メロウなソウルテイストのミディアムチューン「生活」「Right and light」も魅力的。ムーディーな雰囲気の漂う大人なポップに仕上がっています。

その後もホーンセッションも入って軽快なポップスに仕上げている「Monster」や軽快なカントリー風の明るいポップス「BPM」、最後はギターでしんみり聴かせるブルージーな「楽園」など、洋楽テイストも強い魅力的なポップナンバーが続いていきます。一方で「コンクール」などは、ストリングスも入ってムーディーな雰囲気の歌謡曲テイストの強い楽曲になっており、そういう点でもバラエティー豊富な作風を感じさせます。

ロックやポップス、カントリー、ソウル、ブルース、さらには歌謡曲まで、まさに非常に音楽性の幅広さを感じさせる藤原さくらの実力を感じさせるアルバム。作風がバラバラなゆえに、若干アルバム全体としての統一感には欠け、また核になるような楽曲がなかったという点では、インパクトの不足を感じる点、正直、マイナスポイントも感じてしまいます。ただ、もっともっと高い評価を受けてもいいシンガーソングライターであることには間違いありません。幅広いポップス愛好家に是非とも聴いてほしいと感じる、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY
green
red


ほかに聴いたアルバム

THE ARTIFACTS,UNPLUGGED MUSIC/オサム&ヒロノリ from MOON CHILD

1997年にシングル「ESCAPE」がドラマ主題歌にも起用され大ヒットを記録したバンドMOON CHILD。残念ながら大ヒットはこの1曲のみに終わり、1999年にバンドも解散してしまいます。その後も散発的な再結成が何度か行われたのですが、新たな音源はリリースされず今日に至っています。そんな中、リリースされたのがギターボーカルの佐々木収とギターの秋山浩徳が組んで結成されたこのユニット。楽曲としてはMOON CHILDの代表曲をアコースティックギターでカバーした作品。久しぶりにMOON CHILDの曲を聴いたのですが「ESCAPE」に限らず、ファンキーなサウンドとメロディアスなポップはインパクトがあり、ヒットがほとんど続かなかったのが不思議に感じるほど。売り方が悪かったのかなぁ。アコギのソロも魅力的でしたが、久しぶりにMOON CHILDの原曲も聴きたくなった、そんなカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

シングルコレクション+アチコチ/坂本真綾

デビュー25周年を記念してリリースされた坂本真綾のタイトル通りのシングルコレクション。2012年にリリースされたシングルコレクション「シングルコレクション+ミツバチ」以降にリリースされたシングル曲を網羅しているほか、未発表曲や初CD化となるレアトラックも収録した2枚組となるアルバム。とにかく清涼感ある歌声が魅力的で、いままでの作品以上に楽曲のバリエーションが増しているのですが、アコースティックな作風やサウンドの間を聴かせるような隙間のあるアレンジの方が彼女にはマッチしているような感じも。ユーミンの「卒業写真」のカバーも絶品で、彼女のボーカリストとしての魅力も感じさせます。「シングルコレクション+ミツバチ」に収録されていた「やさしさに包まれたなら」のカバーも素晴らしかったので、なにげにユーミンと彼女、相性よいのでは?次は書き下ろし作を依頼してみてもよいのかも??とにかく、これからのさらなる活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

坂本真綾 過去の作品
かぜよみ
everywhere
You can't catch me
Driving in the silence
シングルコレクション+ ミツバチ
シンガーソングライター
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