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2020年11月17日 (火)

非常に「器用な」ユニット

Title:かつて天才だった俺たちへ
Musician:Creepy Nuts

MCのR-指定とDJのDJ松永によるユニット、Creepy Nutsのミニアルバム。Creepy Nutsの2人といえば、以前から非常に高い評判で知られていたユニット。R-指定は「ULTIMATE MC BATTLE」で3年連続グランドチャンピオンに輝いたほか、テレビ朝日系バラエティー「フリースタイルダンジョン」で、般若の後をついで「ラスボス」に就任するなど、高いスキルで知られていますし、一方、DJ松永の方も「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019」で優勝するなど、非常に高いスキルを持つメンバー同士のユニットとなっています。

私も以前から彼らのことは知っていましたが、いままでアルバムを聴く機会がなく、音源を聴くのがこれが初。ただ今回のアルバム、ミニアルバムということなのですが、「ラジオ盤」ということで楽曲の間に彼らのトークが入り、全70分近い長さのボリューミーな内容に。タイトル通り、彼らのラジオ番組を聴いているような、そんなユニークな構成になっています。

そんなはじめて聴いた彼らの楽曲なのですが、まずは聴いてみて、彼らが非常に器用なユニットだな、ということを感じました。というのも、今回収録されている全7曲、ある意味バラバラな音楽性のユニークな内容に仕上がっていたからです。まず「ヘルレイザー」はホーンセッションの入ってムーディーな雰囲気の曲からスタートしたかと思えば、「耳無し芳一style」はトラップのサウンドを取り入れた、今風のサウンドが耳に残る楽曲に。かと思えば「オトナ」はメランコリックな歌モノになっていますし、「日曜日よりの使者」は、なんと菅田将暉と組んでハイロウズのカバーに挑戦。同じく菅田将暉と組んだ「サントラ」はむしろ青春パンク路線か?と思わせるようなロックな楽曲になっていますし、メロディアスな「Dr.フランケンシュタイン」から、ラストを飾るタイトルチューン「かつて天才だった俺たちへ」は軽快なHIP HOPチューンながらも、ジャジーな雰囲気のベースラインやドラムスが印象的な楽曲に仕上がっています。

全体的にはゴリゴリとラップを聴かせるスタイルというよりは、ほどよく歌も入ってメロディアスなポップに仕上げており聴きやすい内容に。ただ、最初にも書いた通り、R-指定もDJ松永も共に高いスキルの持ち主、ということもあって、これらバリエーションある楽曲を卒なくこなしちゃっている、という印象を受けました。ある意味、楽曲のスタイルがバラバラなだけに、Creepy Nutsらしさというのがちょっと見えにくいかも?と思わないこともないのですが、どの曲も軽快なポップにまとめている点が彼ららしさ、と言えるのかもしれません。

今回は「ラジオ盤」ということに曲間にトークが入る点も特徴的。正直言ってしまうと、彼らのトークは決して凝った上手いものではなく、何度も聴くような内容ではないかもしれません。ただ、それぞれ楽曲がどのようなコンセプトで作成されているのかを、軽快なトークの中でちゃんと語っており、そういう意味でははじめて彼らの楽曲を聴く人にとっても、彼らのことをよく知ることが出来る構成になっている、と言えるかもしれません。また、楽曲のタイプがバラバラなだけに、曲間のトークがちょうど楽曲同士の連結環の役割を果たしている部分もありました。そういう意味ではよく出来た構成と言えるのかもしれません。

ちなみに「ラジオ盤」のトークの中ではなぜか語られていなかったのですが、配信音源はトーク部分がカットされているため、楽曲部分だけまとめて聴けます。とりあえず彼らの曲を聴いてみたいから、トークは・・・という方にはこちらが良いのかも。ただ、彼らがどのようなミュージシャンか知るためには「ラジオ盤」のトーク部分は最適なので、一度はチェックしてみて損はないかも。個人的にはちょっと器用すぎるかも?という印象を受けた部分もあったのですが、次回作も聴いてみたいと思わせる、そんなユニットでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

ABRACADABRA/BUCK-TICK

前々作「アトム 未来派 No.9」、前作「No.0」とここに来てバンドとしての勢いを感じさせる傑作が続いたBUCK-TICK。それだけにそれに続く最新作である本作も期待しながら聴いたのですが、正直言って前半に関しては、それなりの良作ではあるものの、正直言うと、比較的無難にまとめているかな…という印象を受けてしまいました。ただ、それでも彼ららしいメランコリックなメロディーラインはインパクト十分。ベテランらしい底力を感じます。また中盤以降はエレクトロサウンドを全面的に押し出しているのですが、こちらも力強いビートでインパクトがあり、バンドとしての実力を感じます。前々作、前作ほどではないものの、BUCK-TICKというバンドの衰えを知らない勢いも感じさせる良作に仕上がっていました。

評価:★★★★

BUCK-TICK 過去の作品
memento mori
RAZZLE DAZZLE
夢見る宇宙
或るいはアナーキー
アトム 未来派 No.9
CATALOGUE 1987-2016
No.0

2020/eastern youth

このコロナ禍に襲われた2020年という年をあえてタイトルとしたエモコアバンドeastern youthの新作。非常にヘヴィーでエモーショナルなバンドサウンドとボーカルは相変わらず。比較的前向きなメッセージも多く込められており、コロナ禍で世間全般が暗くなってしまっている今の状況の中だからこその作品という感じもしますし、だからこそ「2020」というアルバムタイトルにしたのかもしれません。ただ、一方では良くも悪くもいつも通りのeastern youthといった感じ。正直言えば目新しさはなかったし、若干「大いなるマンネリ」な気配も。その点は前作「SONGentoJIYU」でも感じたのですが、今回のアルバムではその感覚がより強くなってしまっていました。

評価:★★★★

eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006

歩幅と太陽
心ノ底ニ灯火トモセ
叙景ゼロ番地
ボトムオブザワールド
SONGentoJIYU

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