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2020年11月16日 (月)

カレー屋の匂いも漂ってくるような

Title:インドカレー屋のBGM 決定版

「インドカレー屋のBGM」という企画モノについては、ご存じの方も多いかもしれません。インド人が経営する本場インドカレーの専門店で流れている「謎の音楽」をリサーチし、その楽曲をつきとめ、CDとして収録したアルバム。謎の音楽というエキゾチックさや、妙に耳の残り気になってしまうメロディーというインドカレー屋のBGMについつい惹かれる人も多いらしく、2005年の第1弾以来、シリーズを重ね、累計4万枚のセールスを記録するという、ちょっとしたスマッシュヒットとなっているオムニバス盤だそうです。私も以前からこのシリーズのことは知っていたのですが、今回「決定版」という形でリリースされた本作を、遅ればせながらチェックしてみました。

基本的に、このインドカレー屋のBGMに収録されている楽曲は、日本でも一時期話題となった「ボリウッド」と呼ばれるインド映画に使用されている音楽がメイン。インドの音楽というと、タブラやシタールなどの楽器を用いて、非常に複雑なリズムを奏でる構成の音楽、というイメージが強いのですが、正直言うと、このCDに収録されている楽曲は、そういう複雑な変拍子から構成されるようなインド音楽とは違うタイプの曲になっています。

全体的には比較的チープな打ち込みをバックに、ハイテンポでダンサナブルなリズム、典型的なハイトーンの女性ボーカル、そして哀愁感あふれるメロといった楽曲がメイン。比較的わかりやすいリズムの曲がメインとなっており、ラップなども取り込んだ曲もあったりと、欧米のサウンドの影響を多分に取り入れ、ただ所々に強烈なインド的な風味を加えた、そんな楽曲になっています。

ちなみにそんな楽曲を歌い上げるのは「プレイバックシンガー」と呼ばれるような歌手だそうで、映画で使われる音楽を俳優の代わりに歌うシンガーだそうで、特にインドでは、主演俳優や音楽監督と同等の地位を占めるなど、非常に高く評価されているそうです。今回のCDに収録されている曲を歌うシンガーも、非常に長いキャリアのある歌手も少なくないようで、かなりコミカルで謎にみちた企画のように感じるのですが、ボリウッド映画で使われる楽曲をまとめたオムニバスとして、なにげに聴き応えのある企画盤であるようにも感じました。

楽曲的には、上にも書いた通り、終始、エキゾチックな香り漂うサウンドにダンサナブルでチープなリズムが重なる曲が続いていき、インドカレー屋で感じるような異世界のような不思議な感覚を味わうことが出来ます。本作に収録されている曲でもラストの「Ehi Thaiyaa Motiya」はシタールやタブラの音色が入っている曲になっており、伝統音楽的な曲調になっているのも印象的。強烈なインド音楽のサウンドを存分に味わうことが出来るアルバムになっていました。

ジャケット写真といい、日本語の「空耳」をそのままサブタイトルにしちゃった試みといい、かなりB級っぽい奇抜なオムニバスなのですが、一方でインド音楽のオムニバスとしては聴き応えのあるアルバムだったと思います。まあ、だからこそ、15年にわたる人気シリーズになっているのでしょう。妙な味わいが癖になってやめられなくなりそうな、そんなアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Letter to You/Bruce Springsteen

前作からわずか1年4ヶ月というスパンでリリースされたBOSSのニューアルバムは、2012年にリリースされたアルバム「WRECKING BALL」以来、約8年ぶりとなる、Eストリート・バンドとのオリジナルアルバム。基本的に彼の渋みを増したボーカルでゆっくりと歌われるタイプの曲が多いのですが、アルバム全体としてはEストリート・バンドとの作品ということもあって、力強いバンドサウンドを前面に押し出したロック色の強い作品になっています。Bruce Springsteenらしさを強く感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars

Beastie Boys Music/Beastie Boys

アメリカの人気HIP HOPグループ、Beastie Boys。1986年にリリースしたアルバム「Licensed to ill」がHIP HOPのアルバムとしてははじめてビルボードで1位を獲得するなど大ヒットを記録し、その後も人気グループとしてHIP HOPシーンを牽引していったのですが、2012年にリーダーのMCAが47歳という若さで逝去。その後、事実上の解散状況となっています。

今回突如リリースされたのは、そんな彼らのキャリアを網羅したベストアルバム。まあ、彼らのベスト盤は過去に何作かリリースされており決して新しさはないものの、改めて彼らの代表曲を聴きなおすことが出来ました。比較的ビートの強いダイナミックでリズミカルなサウンドはHIP HOPというよりもロック的な部分も強く、そういう意味ではロックリスナーにも親和性の強いサウンドを聴くことが出来ます。一方ではHIP HOP的な魅力もしっかりと兼ね備えており、ロックリスナー、HIP HOPリスナーに幅広くアピールできるサウンドが彼らの大きな魅力であり、かつだからこそ大ヒットを記録できた、とあらためて感じることが出来ました。それにしても、あまりにも早すぎるMCAの死はあらためて非常に残念にも感じる、そんなベスト盤でした。

評価:★★★★★

Beastie Boys 過去の作品
HOT SAUCE COMMITTEE PART 2
An Exciting Evening At Home With Shadrach, Meshach & Abednego
Love American Style
Hey Ladies(Remixes)
Shadrach(Remixes)
Shake Your Rump(Remixes)
Looking Down The Barrel Of A Gun (Remixes)

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