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2020年11月 7日 (土)

ネタの切れ味は抜群

Title:パペピプペロペロ
Musician:ブリーフ&トランクス

毎回、日常の些細な出来事をユニークな視点から歌にしつつ、学生時代からの友人であるメンバー2人のハーモニーが大きな特徴のフォークデゥオ、ブリーフ&トランクス。公式サイトの紹介では「ブリトラサウンドの代名詞でもあるコンピュータープログラミングをあえて封印し、初の試みであるアコースティックギターにとことんこだわったアンプラグド的なアルバム!」と記載があるのですが・・・あれ?打ち込みってブリトラの代名詞だったっけ??むしろアコギメインのギターデゥオって印象が強いのですが・・・(確かに、リズムに打ち込みを用いた曲が多いのは事実ですが)。

そんな訳で今回のアルバム、特徴としては2人のアコギの音だけに拘ったアコースティックなアルバムになっています・・・という感じなのですが、確かに打ち込みのリズムはなくなったものの、基本的にいままでも2人のアコギの音色や2人のハーモニーワークに軸足が置かれていたユニットでしたので、そんなに大きな印象の違いはありません。もちろん、それは悪い意味ではなく、(今回の曲のネタになっている表現になってしまうのですが)「いい意味で」

最終的にはブリトラのアルバムの良しあしは、彼らの歌のネタの切れ味に左右されるところが多いのですが、前作「ブリトラ埋蔵金」ではメンバーの伊藤多賀之のソロ時代の曲をリメイクするなど、若干ネタ切れ気味か?と思われる部分もありました。ただ、今回の作品に関しては、再びネタの切れ味が戻ってきたように感じます。まずインパクトがあったのが冒頭を飾る「ガテン系リズム」。タイトル通り、ガテン系、いわば肉体労働者の日常を、建設現場の工事のリズムにのせて歌う楽曲で、そのアイディアもユニークですし、2人が交互に歌うスタイルも、その2人の息の合ったコンビネーションを感じる、ブリトラらしい作品になっています。

上でも私が使ってしまいましたが、日常会話でよく用いられがちなフレーズ「いい意味で」をユニークにネタにした「いい意味で」や、彼ららしい学校ネタの「多目的室」、さらにユニークなエロ歌詞が爆笑モノの「SM相対性理論」も非常にユニーク。ラストを締めくくるのは、2014年のシングル曲「メラメラスクリーム」の第2弾「メラメラスクリーム2」。ファルセットボイス中心に構成され、日常で思わず叫びたくなるようなネタを繰り広げるのですが、ネタ的にはむしろ第1弾よりもユーモラスさを増した感じもします。

ただ今回のアルバムで一番インパクトがあったのは、「旦那アレルギー」だったのではないでしょうか。冷め切った夫婦間を辛辣な視点で描くこの曲は、ネタ的にはかなりハード。最後のオチもかなりヘヴィーな展開となっており、もし歌詞を見ただけならば、よくこれだけ重い内容を曲にできたな、と思うのですが、それを意外と違和感なくアルバムの中で歌ってしまうあたり、日ごろから日常ネタを曲にしているブリトラだからこそ、といった感じなのでしょうか。ただ、こういう重いネタをさらっと歌えてしまうあたりに、何気に彼らの実力を感じたりもしました。

ネタ的には「よくこんなネタ、見つけてきたな」と思うような感心するような題材も多く、ブリトラの切れ味が完全に戻った感のある今回のアルバム。クスっと笑いながら、時にはその視点にドキッとしながら、最後まで一気に聴くことが出来たアルバムでした。

評価:★★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛
ブリトラ依存症
手のひらを満月に
ブリトラBESTバイブルⅠ~家族で聴いても恥ずかしくない曲集~
ブリトラBESTバイブルⅡ~ひとりでこっそり聴いた方がいい曲集~
ブリトラ埋蔵金


ほかに聴いたアルバム

ASOVIVA/フレデリック

フレデリックの新作は全6曲(初回盤は全7曲+DVD)入りのEP盤。シンセを全面的に用いた軽快なエレクトロダンスチューンに、メランコリックなメロディーラインというスタイルはいつも通り。先行配信リリースされた「されどBGM」など、ちょっと洒落たシティポップ風の作品が魅力的。基本的にはいつもの彼らのスタイルといった感じではあるのですが、タイトル通りの軽快な「遊び場」を提供してくれるような、そんな作品でした。

評価:★★★★

フレデリック 過去の作品
フレデリズム
TOGENKYO
フレデリズム2

SKY-HI's THE BEST/SKY-HI

SKY-HI名義でのソロ活動が話題となっている、avexのダンスグループAAAのメンバー、日高光啓のソロベスト。3枚組となっており、Disc1は「POPS BEST」として、タイトル通りのポップスの曲を並べた作品、Disc2は「RAP BEST」としてHIP HOPの曲を並べた作品、Disc3は「COLLABORATION BEST」として様々なミュージシャンとのコラボ作を集めた作品となっています。

内容の出来栄えとしては、明らかにDisc3>Disc2>Disc1といった感じ。「POPS BEST」もHIP HOP的な作品もあり決して悪くはないのですが、今どきよくありそうなJ-POPという印象。「RAP BEST」はラッパーとしての評価の高い彼の本領発揮といった感じなのですが、それ以上に良かったのが「COLLABORATION BEST」。彼みたいなラップスキルがあって、ある意味アイドル的な端正なボーカルの持ち主は珍しいのでしょうか。それなりに個性的でありつつも癖がありすぎるわけではなく、かつラップスキルもあるという彼の存在はコラボ相手としてかなり貴重かつどのようなラッパーともうまくマッチしています。「POPS BEST」が3つ、「RAP BEST」が4つ、「COLLABORATION BEST」が5つ。そのため合計の評価は・・・

評価:★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO
JAPRISON
Say Hello to My Minions 2(SKY-HI×SALU)

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