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2020年11月23日 (月)

次は南インドの音楽との融合

Title:Global Control/Invisible Invasion
Musician:Ammar 808

チュニジア人のシンセ奏者/プロデューサーであるソフィアン・ベン・ユーセフによるソロユニット、Ammar 808。以前も当サイトで紹介した「Maghreb United」が世界的にも注目を集めヒットを記録し、一躍、ワールドミュージック界の注目の的となりました。本作は、そんな彼の2枚目となるアルバム。再び大きな注目を集める1枚となっているそうです。ちなみに前作「Maghreb United」でも書いたのですが、彼の名前「808」は「ヤオヤ」こと日本のメーカー、ローランドによるリズムマシーン、TR-808から取られたということ。そういう意味では日本人にとっても親近感の持てるミュージシャンと言えるかもしれません。

前作「Maghreb United」はタイトル通り、北アフリカのマグレブの音楽と西洋的なエレクトロビートと融合させた音楽。ただ、このマグレブ音楽を軸として様々な音楽とごった煮になったような、ある種の「B級」感あふれたサウンドが大きな魅力でした。そして今回、彼が取り込んだのは南インドの古典音楽であるカルナータカ音楽。彼自身、若いころにインドに留学したことがあるそうで、それだけインド音楽にも深い造形を持っているそうで、彼の幅広い音楽的な素養を感じられます。

もっともカルナータカ音楽、と言われても、私自身はインド音楽にさほど詳しい訳ではないのですが・・・ただ、アルバムの1曲目「Marivere gati」では、まさしくインド!といった感じの女性ボーカルのこぶしの利いた妖艶なボーカルからスタートします。そしてその音楽のバックには強いビートのエレクトロサウンドが。続く「Ey paavi」も伸びやかで妖艶なサウンドに、ちょっとチープなエレクトロサウンドがエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。男女2人のやり取りのようなボーカルもコミカル。どこか感じるB級的な雰囲気が大きな魅力にも感じます。

このこぶしを利かせた妖艶なボーカルスタイルでエキゾチックな雰囲気を醸し出しつつ、チープさを感じるエレクトロビートを力強く聴かせるというのが本作の主なスタイル。その後も「Geeta duniki」などでは非常にメランコリックなメロディーラインが魅力となっていますし、「Duryohana」で聴かせる、ハイトーンのホーンも、おそらくインドの楽器なのではないでしょうか?エキゾチックな雰囲気が強い魅力になっています。

ただ一方、非常にユニークなのですが、全8曲の作品、その8曲が8曲、微妙に異なるエレクトロのビートを聴かせてくれており、これがアルバムの中でのバリエーションとなっています。「Mahaganapatim」はアクセントを聴かせつつ、エッジの効いた細かいリズムパターンが特徴的ですし、「Pahi jagajjanani」は、テクノの要素の強い、あか抜けたスペーシーなリズムが特徴的。最後を締めくくる「Summa solattumaa」もチープな雰囲気ながらも力強いはじけるようなエレクトロビートを聴かせてくれます。

チープな雰囲気のエレクトロサウンドでB級的な・・・という言い方をしていますが、ただバリエーションに富んだリズムパターンやサウンド、幅広い音楽的素養からは間違いなく彼の実力を感じさせます。本作もまた前作同様のごった煮的なアルバムだったのですが、そのごった煮の素材が前作とは異なる点もおもしろいところ。これからどんなサウンドをごった煮してくれるか・・・彼の活動からは目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

Ammar 808 過去の作品
Maghreb United


ほかに聴いたアルバム

Magic Oneohtrix Point Never/Oneohtrix Point Never

ニューヨーク・ルックリンを拠点に活動するダニエル・ロパティンによるソロプロジェクトの約2年ぶりのニューアルバム。前作「Age of」ではじめて彼の作品を聴いたのですが、その前作はいかにもソフトロック的なアルバムジャケットで、内容も歌モノ・・・ながらも微妙に歪んだサウンドメイキングが魅力的な内容でした。今回のアルバムも様々なサウンドをサンプリング。1曲の中でどんどんと雰囲気が変わっていくドラスチックな展開もスリリングな作品になっていたのですが、「歌モノ」的な要素が強かった前作に比べると、メロディアスな部分は要所要所に感じるものの、全体的には「実験的」な要素が強くなっていたアルバムになっていました。ちょっととっつきにくかった部分もあり、個人的には前作の方が好みだったかな。様々な音楽的な挑戦がおもしろいアルバムではあるのですが。

評価:★★★★

Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of

Hey Clockface/Elvis Costello

かなり不気味なジャケット写真が妙に目をひくエルヴィス・コステロの約2年ぶりとなるニューアルバム。前半は、2曲目の「No Flag」をはじめギターサウンドとシャウト気味のボーカルでロッキンな曲を聴かせつつ、主軸となるのはムーディーなミディアムテンポのナンバー。メランコリックなメロディーラインも特徴的で、良くも悪くも「良質な大人の音楽」というイメージを強く抱くアルバムになっています。アルバムの出来としては一定以上の安定感があり、その点はさすがはコステロといった感じでしょうか。しっかりと聴かせる作品になっていました。

評価:★★★★

Elvis Costello 過去の作品
Momofuku(Elvis Costello&the Imposters)
Secret,Profane&Sugarcane
National Ransom
Wise Up Ghost(Elvis Costello&The Roots)
LOOK UP(Elvis Costello&the Imposters)
Purse(Elvis Costello&The Imposters)

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