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2020年11月

2020年11月30日 (月)

大きな壁を乗り越えた傑作

Title:2020
Musician:a flood of circle

以前から、アルバム毎にこのサイトでも紹介してきた4人組ガレージロックバンドa flood of circle。ただ、アルバム毎に出来不出来の差が大きく、傑作アルバムが誕生した!と思ったら、次の作品は凡作だったり・・・と正直、なかなかバンドとして波に乗り切れない感も否定できません。本作は、そんな彼らの約1年半ぶりとなるニューアルバム。10枚目となるフルアルバムで、タイトルはもちろん今年をあらわした数字。ちなみに「ニーゼロニーゼロ」と読むそうです。

そんなアルバムによって差の大きい彼らの最新作なだけに期待半分、不安半分で聴き始めた本作なのですが・・・本作は、まさに快心の一撃とも言うような傑作アルバムになっていました!しゃがれ声のボーカルのシャウトと語りをバックに疾走感あるガレージサウンドが鳴り響く「2020 Blues」が、まず聴いていてロックリスナーとしてはワクワクさせるような、まさに聴いているだけでケガをさせられそうな非常に「尖った」快心作になっていますし、続く「Beast Mode」もその勢いがそのまま続くような、疾走感あるギターロック。ここから3曲目の「ファルコン」まで、一気に展開する勢いあるガレージロックチューンが続いていき、聴いていて、一気にアルバムにはまり込みます。

中盤はここから一転、ポップ志向の強いメロディアスなナンバー「Super Star」「天使の歌が聴こえる」で一区切り。そこから一転、パンクチューンの「Free Fall&Free For All」になるのですが、この歌詞がまた良い出来栄えになっています。

「YEAH YEAH YEAH YEAH
覚悟を決めて飛ぶんだ
YEAH YEAH YEAH YEAH
100%の安心は無いさ
YEAH YEAH YEAH YEAH
ドキドキしてるなら
YEAH YEAH YEAH YEAH
100%生きてるんだ」
(「Free Fall&Free For All」より 作詞 佐々木亮介)

という歌詞がいいですね。ある意味、パンクロックらしいメッセージ性のある歌詞になっています。

その後もミディアムチューン「人工衛星のブルース」をしんみり聴かせた後は、再び疾走感あるギターロックに。ポップテイストの強い「Rollers Anthem」から、ヘヴィーなギターサウンドが印象的な「ヴァイタル・サインズ」に軽快なポップチューン「Whisky Pool」。ちょっと怪しげに聴かせる「欲望ソング(WANNA WANNA)」に、ラストを締めくくるのはスケール感も感じるミディアムチューン「火の鳥」で締めくくりとなります。

序盤の疾走感あるナンバーから、ミディアムテンポを聴かせる中盤。そして再び盛り上がる楽曲を配した終盤から、ラストにスケール感あるナンバーで締めくくり、という展開も実に見事。聴いていて全くダレることありませんし、そのままライブのセットリストになりそうな構成になっているため、音源で聴いていても、ライブを楽しむような感覚を味わうことが出来ます。

そんな傑作となった本作ですが、いままでのa flood of circleの作品に比べても、大きく進歩したように感じた部分があります。それは、ポップでメロディアスな曲についても、違和感なく「ロック」として聴くことが出来た点。a flood of circleの楽曲は、ヘヴィーなガレージロックを聴かせる曲については文句なくカッコいいものの、ボーカル佐々木亮介の声が非常に端正であるが故に、メロディアスでポップな作風になると、一気に平凡なJ-POPのように聴こえてしまう点が大きなマイナスでした。しかし本作に関しては、中盤のミディアムチューンも決して平凡なポップ路線に陥ることなく、ほかのロックナンバーと並んでも違和感なく楽しむことが出来ました。それはバンドとしてサウンドの強度が増したということも要因でしょうし、メロディーラインもひとつ大きな壁を超えたという点も大きな要因なのではないでしょうか。

個人的にはa flood of circleの最高傑作ともいえる出来のアルバムだったと思います。バンドとしても大きな壁をひとつ乗り越えた感もあり、次回作以降も楽しみになってくる傑作でした。次回作も同じような出来だったら、間違いなくバンドとして大きな成長を遂げたと言えるのでしょうが・・・そうなれば、彼らの本格的ブレイクも近いかもしれません。彼らの活動から、目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
NEW TRIBE
a flood of circle
CENTER OF THE EARTH
HEART


ほかに聴いたアルバム

Cheddar Flavor/WANIMA

9月22日に行われた無観客配信ライブ「COMINATCHA!! TOUR FINAL LIVE VIEWING ZOZO MARINE STADIUM」にて突如、9月23日のリリースが発表された9曲入りのミニアルバム。コロナ禍でライブもままならない状況の中、ファンに対する最高の贈り物といった感じでしょうか。もっとも内容的にはいつも通りのWANIMA。メロディアスな歌をハーモニーをうまく入れつつ、力強く歌い上げる曲が並びます。こういう曲を、満員のライブ会場で、みんなで大声をあげながらライブを楽しめる・・・そんな日が一日でも早く戻ってくるといいのですが・・・。

評価:★★★★

WANIMA 過去の作品
Are You Coming?
Everybody!!
COMINATCHA!!

Cheer/真心ブラザーズ

妙にかわいらしいジャケットが印象的な、オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる真心ブラザーズの新作。ここ数作、ルーツ志向を明確にしたようなアルバムが続いていましたが、今回のアルバムは、ポップなジャケットでもわかる通り、比較的ポップな歌モノがメイン。「炎」なんて、かなり軽快なポップチューンに仕上がっており、90年代J-POPを彷彿とさせるような・・・。ただ全体的には歌モノ方面を目指すにはちょっと地味というか、インパクトは薄かったような感じはします。ベテランの彼ららし安定感のある作品ではあるのですが。ちなみにジャケットを手掛けたのはタナカカツキという漫画家で、カプレルトイで話題となった「コップのフチ子」の考案者の方らしいですね。

評価:★★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling
Do Sing
PACK TO THE FUTURE
FLOW ON THE CLOUD
INNER VOICE
トランタン

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2020年11月29日 (日)

「平成最後のロックバンド」

Title:心の中の怪獣たちよ
Musician:突然少年

最近、急速に注目を集めているロックバンド、突然少年。「平成最後のロックバンド」という呼び名もあるようですが、2018年、2019年と2年連続でフジロックに出演するなど、一気に注目を集めているため、その名前を聴いたことある方も少なくないのではないでしょうか。2019年には初のフルアルバム「Thank you my Friend and my Family」をリリース。本作は、それに続く2枚目のフルアルバムとなります。

「突然少年」という名前も、どこかNUMBER GIRLあたりを彷彿とさせる語感なのですが(ナンバガなら「少女」か・・・)、タイプ的には何気にスマートな感もあるナンバガとは異なり、泥臭さも感じる、「王道」とも言えるスタイルのロック。眼鏡をかけているボーカルという点こそナンバガと共通項はあるのですが、上半身裸といういで立ちにも泥臭さを感じますし、ボーカルのシャウトが主導の正統派なパンクロック系のサウンドは、サンボマスターあたりに近いものも感じます。もっとも、サンボマスターほどブラックミュージックからの影響は感じませんし、ハイトーンボーカルという点では、フラワーカンパニーズに近いということも言えるかもしれません。

そんな訳で、彼らの奏でるバンドサウンドは、正統派の、力強いバンドサウンドを練り響かせるパンクロック。「ボール」「アンラッキーヤングメン」あたりは、そんな彼らのスタイルの中心を行くようなサウンドと言えるかもしれません。「台風一過」のようなミディアムチューンで聴かせるナンバーや、ラストを飾る「フロムアンダーグラウンド」など、もうちょっとオルタナ系のギターロック寄りの楽曲もあったりしますし、「雨の日」あたりは、まさにNUMBER GIRLの影響を感じるようなギターサウンドを聴けたりもするのですが、基本的にはパンク系のギターロックで一気に突っ走るタイプのアルバム。全9曲42分という長さなので、似たようなタイプの曲で突っ走るには、長さ的にもちょうどよいという印象を受けます。

また、自分の平凡さに悩みもがくような歌詞も印象的。

「8番ライト 俺
誰にも期待はされていないけど
ホームラン一発狙っていく」
(「ボール」より 作詞 戸田源一郎)

「あぁなんとなく過ぎていく日々の中で
オレは生きている
なんとかなるさと いつも思っています」
(「100年後」より 作詞 戸田源一郎)

など、自分の平凡さを受け入れつつ、どこかその中でもがいて生きていこうとする姿を感じ取れる歌詞に共感を覚える方も多いように思います。

また、ラストの「フロムアンダーグラウンド」などは、まさにこのコロナ禍の中で、ライブを行うこともままならないようなライブハウスに対するエールを送るような楽曲になっています。コロナの前に書かれた歌詞なのか、それともコロナを踏まえて書かれた歌詞なのかは不明なのですが、ただ、今の時代のアルバムで歌うにはピッタリの1曲となっていました。

ただ一方では、もう一歩、ひねりやもっと強い個性も欲しかったかな、とも思います。特にサウンド面には一発聴くだけで、これが突然少年の音だ!というほどのサウンドの個性は残念ながら出せていなかったように感じます。歌詞にしても方向性は良いのですが、一度聴くだけで忘れられなくなるようなキラーフレーズには残念ながら出会えませんでした。

そういう点では、傑作というにはちょっと惜しい1枚だったように思います。ただ、まだまだ話題になって間もない彼ら。今後の成長も期待できそう。これからが楽しみなロックバンド。ライブも評判がいいみたいなので、コロナが落ち着いたら、足を運びたいなぁ。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

この気持ちもいつか忘れる/THE BACK HORN

本作は、「君の膵臓をたべたい」が話題となった小説家、住野よると、THE BACK HORNとの共同プロジェクトにより生み出された小説「この気持ちもいつか忘れる」の内容に沿った形での5曲入りのミニアルバム。本作のCDが付いた小説が販売されていますが、一方で配信ではTHE BACK HORNの作品単独で聴くことが出来、今回私が聴いたのはこちら。小説については未読です。

本作の方は、5曲入りといってもうち1曲はインターリュードになっているので、実質的には4曲入りのアルバム。小説とリンク、といっても基本的にはいつものTHE BACK HORNらしい作品。ヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドに悲しげなメランコリックなメロディーラインがインパクトを持った作品が続いています。これで小説を読んでみたい・・・とまでは正直思わなかったのですが、THE BACK HORNとしての期待にはしっかりと応えているような作品でした。

評価:★★★★

THE BACK HORN 過去の作品
BEST
パルス
アサイラム
リヴスコール
暁のファンファーレ
運命開花
BEST OF BACK HORN II
情景泥棒
ALL INDIES THE BACK HORN
カルペ・ディエム

どうにかなる日々/クリープハイプ

劇場アニメ「どうにかなる日々」の主題歌及び劇伴音楽を収録したオリジナルサウンドトラック。1曲目の主題歌「モノマネ」以外は基本的に劇中で使われたインスト曲。「モノマネ」は、日常を描写した恋人の切ないやり取りを描いた歌詞が印象的ですが、メロはいまひとつフックが弱く、ちょっと印象が弱くなっているのが残念。全体的には短いフレーズの連続なので、基本的にはアニメのファンか、クリープハイプのファン向けといった感じでしょうか。おそらく次のアルバムで「モノマネ」が収録されると思うので、ファン以外はそれを待てばいいような感じも。

評価:★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観
もうすぐ着くから待っててね
泣きたくなるほど嬉しい日々に

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2020年11月28日 (土)

「残酷な天使のテーゼ」が頭の中で流れ続けています・・・。

Title:EVANGELION FINALLY

特に「エヴァンゲリオン」シリーズについて事細かに追いかけているわけでもないので、このアルバムについてもヒットチャートに顔を出した段階ではじめて知りました。「エヴァンゲリオン」シリーズ25周年アニバーサリー企画の第3弾としてリリースされた、いままで「エヴァンゲリオン」のアニメや劇場版なので使用されたヴォーカル楽曲を集めたセレクションアルバム。「事細かに追いかけている訳ではない」とは書いたのですが、「エヴァンゲリオン」が最初にブームになった、私が大学生の頃、友人に勧められて、テレビシリーズを一通り見て、劇場版のうち、最初の2作「シト新生」と「Air/まごころを、君に」を見に行った程度にははまってはいたので、今回のアルバムに懐かしさを感じて、アルバムもチェックしてみました。

そんなアルバムの冒頭を飾るのは、もちろん「エヴァンゲリオン」の曲といったらこれ。高橋洋子の「残酷な天使のテーゼ」。高橋洋子自体、失礼ながらもこの曲と、やはり「エヴァンゲリオン」の主題歌の「魂のルフラン」の、事実上の「2発屋」なのですが、この2曲だけでおそらく一生食いっぱぐれないだろうなぁ、と感じるほどの、アニソンのスタンダードナンバーとしてすっかり定着しています。ただ、あらためてこの曲を聴くと、楽曲としての強度が半端ありません。聴いた後、いまでも頭の中に、良くこの曲が流れ続けています(笑)。

もっともこの曲、この楽曲としての強度も含めて、確かにアニソンとしてもJ-POPとしても非常によく出来ている楽曲だなぁ、ということは今回、強く感じました。サビからはじまるスタートに、ほどよくインパクトのあるAメロ。そしてBメロから盛り上げて一気にサビに流れ込む展開はまさにJ-POPの典型例といった感じ。逆にマイナーコード主体で進行していくコード進行やダイナミックなサビの展開はいかにもアニソン的ですし、歌詞も「エヴァンゲリオン」の世界観に上手くマッチして、ちょっと謎めいたファンタジックな歌詞も強いインパクトがあります。

ただ、J-POPとしては良くも悪くも「様式化」されているという印象もあり、この「様式美」的な部分もなた、この楽曲の持つインパクトに一役買っているのかな、といった印象も受けます。こういう「様式美」的な部分も、ある種のアニソンには良く見られる要素で、良くも悪くも「アニソンっぽい」と感じさせる要因になっている感もあります。実際、今年、「鬼滅の刃」の主題歌として大ヒットしている「紅蓮華」も、マイナーコード主体のコード進行にダイナミックなサビという展開は、「アニソンとしての様式美」に準じた作風になっており、ある意味、20年以上前の作品から、根本的な部分があまり変わっていないという点は、「アニソン」が一部熱烈的な支持を受ける一方で、音楽的には一部の曲を除いて、あまり高い評価を受けない理由のようにも感じました。

もっとも、この曲で使用されている曲でいかにも「アニソン」的な曲は、「残酷な天使のテーゼ」と「魂のルフラン」くらいであり、その他の曲に関しては、ジャジーだったり、クラッシック音楽的だったりムーディーだったり、もうちょっと音楽的に「大人な雰囲気」を狙ったような感もあります。それはそれで、まだ、今よりも「子供が見るもの」と思われていた、20年以上前の「エヴァンゲリオン」の世界観に、もっと大人の雰囲気を与える要素として機能していた・・・ような記憶があります。

懐かしさを感じつつ聴くことが出来た本作ですが、一方で「残酷の天使のテーゼ」と「魂のルフラン」の2曲のインパクトがあまりにも強すぎて、聴いた後、他の曲の印象が薄くなってしまった感も・・・。また、アルバムの構成としては非常に残念なのですが、ボーカル曲がフル収録されていないという点で非常に中途半端。新劇場版の主題歌を歌った宇多田ヒカルの曲は未収録ですし、Finallyを名乗るにはかなり中途半端な感が。そういう意味ではちょっと残念な感のあるアルバムではありました。

評価:★★★


ほかに聴いたアルバム

PERSONALITY/高橋優

いままで所属していた事務所、アミューズを退所し、個人事務所に移籍した後の第1弾となるニューアルバム。そのタイトルといい、眼鏡をはずして白い壁をバックに白い服をきたジャケット写真といい、心機一転の新たな一歩といった感じになるのでしょうか。ただ、基本的には彼の曲はいつものスタイル。良くも悪くも力強さと暑苦しさがインパクトとなっている楽曲が並びます。それだけに基本的に歌詞のインパクトの有無が彼のアルバムの出来を左右するのですが・・・正直言って、今回のアルバムに関しては、「これ」といって耳に残るフレーズがなかったというのが事実。一番インパクトがあったのが、おそらく「東京うんこ哀歌」で、タイトル通りに「うんこ」について歌った曲なのですが・・・個人的には狙いすぎな感がして今一つ・・・というか、この曲、ブリーフ&トランクスが歌ったら、かなりピッタリくるように感じるのですが・・・。まあ、基本的にいつも通りなので、ファンには安心して聴けるような作品といった感じでしょうか。個人的には次回作に期待、かな。

評価:★★★

高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
BREAK MY SILENCE
今、そこにある明滅と群生
高橋優 BEST 2009-2015 『笑う約束』
来し方行く末
STARTING OVER

年中模索/スターダストレビュー

デビュー40周年を迎えた彼らの、約2年ぶりとなるニューアルバム。基本的にはいつも通りの、非常に安定感あるポップスを聴かせてくれるのですが、そんな中でも本作は、かなりバラエティー豊富な作品が目立つ内容に。ロックンロールから大滝詠一風のスイートなポップス、シンセを取り入れたポップチューンやアコギでしんみり聴かせるナンバーなど。基本的には「卒なくこなしている」という印象も受けるのですが、ベテランバンドの彼ららしい、音楽的な素養の深さも感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
還暦少年
STARDUST REVUE 楽園音楽祭 2018 in モリコロパーク
スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」

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2020年11月27日 (金)

昭和初期や戦後の流行歌を今の時代に

Title:それゆけ!電撃流行歌
Musician:町あかり

もともと歌謡曲に造詣が深く、自らの音楽にも歌謡曲的な要素をふんだんに盛り込んでいたシンガーソングライターの新作は、自身初となるカバーアルバム。それも本作でユニークなのは、カバーの対象となるのが、この手のカバー曲となるとありがちな70年代や80年代の歌謡曲のカバーではなく、昭和初期や戦後すぐの流行歌のカバーであるという点。そのため歌謡曲のカバーというとありがちな、懐メロ的にアラフィフ世代やアラ還世代向けに買ってもらおう・・・という下心はゼロですし、また、「最近の曲は昔の曲と比べると・・・」みたいな、必要以上に最近の曲を卑下しようとするスタンスもゼロ。純粋に昔の良い曲を今によみがえらせようというスタンスでのカバーアルバムとなっています。

さて、そんな今回のカバーアルバムなのですが、全体的には原曲の雰囲気を生かしつつも、あくまでも「現在」の視点でのアレンジを施したカバーに仕上げています。そのため、正直なところ、それが原曲にマッチした曲と、若干アンマッチだったように感じられるカバーも少なくありませんでした。アンマッチという点でいえば、序盤の「青い山脈」「丘を越えて」。どちらも藤山一郎の大ヒット曲で、いまだにカバーなどで歌われることも少なくない曲で、いまなおスタンダードナンバーとして知られる曲。よく知られている曲だからかもしれませんが、今回、かなり大胆なエレクトロアレンジを加えていますが、正直言うと、このアレンジがかなり厳しいものになっていました。特に厳しかったのはボーカルにエフェクトが加えられてしまった点。結果として聴いていてチープさが否めないアレンジとなってしまっており、最初、この2曲が並んだ時は、「これはあまり期待できないな・・・」とガッカリしてしまいました。

もっとも、アレンジとして極端に原曲にマッチしていなかったのはこの2曲だけで、その後の曲に関しては、それなりに原曲のイメージを保ちつつ、曲の雰囲気的には今風にアップデートされ、今の耳でも聴いて、「現在のポップソング」として楽しめるカバーに仕上がっていました。

例えば「東京チカチカ」は東京の喧騒をうたったコミカルな内容は現状にもマッチする歌詞なのですが、リズミカルでテンポよいボーカルがHIP HOP的に解釈されており、これが昭和初期の曲なのか、と意外に感じる新鮮さを覚えますし、ラストの「港の見える丘」はエレクトロのアレンジが印象的なのですが、こちらに関しては序盤の2曲と異なり、ドリーミーな雰囲気のアレンジが楽曲の雰囲気にもピッタリマッチして、今風に見事、アップデートされたカバーとなっています。

また、町あかりのボーカリストとしての魅力を感じさせるカバーも少なくなく、「上海帰りのリル」「白い花の咲く頃」など、ムーディーに聴かせる曲に関しては、のびやかなボーカルで感情たっぷりに聴かせる彼女のボーカルが実に魅力的。ボーカリストとしての町あかりの実力を感じさせてくれました。ただ、「白い花の咲く頃に」に関しては、若干アレンジ面でのサウンドのチープさが浮いていた感じがする点はちょっと残念だったのですが・・・。

そして今回は、そんなカバーの別アレンジが、配信限定のミニアルバムとしてもリリースされています。

Title:別冊!電撃流行歌
Musician:町あかり

そしてこちらがその別アレンジバージョン。「それゆけ!」ではピアノアレンジだった「上海帰りのリル」が同作では打ち込みに。逆にエレクトロアレンジだった「港が見える丘」では逆に生楽器でジャジーなアレンジに。明るくマーチ調に仕上げていた「憧れのハワイ航路」は一転、ムーディーに聴かせるアレンジになっていたり、アコーディオンでレトロ調だった「サーカスの唄」はギターを入れたバンドサウンドを取り入れたアレンジに、と「それゆけ!」でのアレンジと雰囲気をガラリと変えた別アレンジの曲が並びます。

ここらへん、おそらく彼女が「それゆけ!」を作成する段階で、いろいろとアレンジを模索したんだろうな、という苦労の跡がうかがえます。おそらく、他の曲に関しても、様々なアレンジの試みが行われた上で、「それゆけ!」のような結果になったのでしょう。そして、その別バージョンの中で、そのまま埋もれさせておくのは惜しいアレンジが、今回この「別冊!」で取り上げられたのでしょう。実際、4曲とも非常によく出来たカバーが並んでおり、ひょっとしたら「それゆけ!」のカバーより良かったのでは?と思うような曲も少なくありませんでした。

試みとしては非常にユニークなカバーアルバムとなっていた2作。若干、惜しいと感じる部分もあったのですが、全体的には昭和初期から戦後の名曲をしっかり今の時代のポップスとして解釈できた、良カバーに仕上げられていたと思いますし、町あかりの歌手としての力量、また、流行歌への深い造詣も感じされるアルバムになっていました。これが、次の彼女のアルバムにどう反映されるのか・・・それも非常に楽しみになってきます。

評価:どちらも★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し
EXPO町あかり
収穫祭!(町あかり&池尻ジャンクション)
あかりおねえさんの ニコニコへんなうた


ほかに聴いたアルバム

10/tricot

活動10周年を迎える女性3人+男性1人の4人組バンドtricotのニューアルバム。ガレージロックからの影響も顕著なヘヴィーなバンドサウンドはかなり迫力もありカッコよく、その一方、メロディーラインは意外とキュートなポップというアンバランスさがバンドの売り。ただ以前からメロディーラインのインパクト不足は気になっていたのですが、切なさを感じるメロディーラインはそれなりにインパクトも得てきたような印象も。もうちょっとで傑作になりそうな予感はあるのですが。

評価:★★★★

tricot 過去の作品
A.N.D.
3
真っ黒

 

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2020年11月26日 (木)

まさかの1位獲得!

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はちょっと意外な作品が1位獲得です。

今週1位に初登場したのはエレファントカシマシのボーカリスト、宮本浩次によるソロアルバム「ROMANCE」でした。彼が歌謡曲やJ-POPのカバーに挑戦したカバーアルバムで、小坂明子の「あなた」、松田聖子の「赤いスイートピー」、ユーミンの「恋人はサンタクロース」、さらには宇多田ヒカルの「First Love」と様々な女性ボーカル曲のカバーに挑戦。CD販売数1位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数で5位を獲得し、総合チャートで見事1位獲得となりました。オリコン週間アルバムチャートでも初動売上4万7千枚で1位初登場。前作「宮本、独歩」の初動3万5千枚(3位)を上回り、エレカシを含め、シングルアルバム通じて、初の1位獲得となりました。

こういうアルバムが話題となり1位獲得というのはかなり意外な気もするのですが、ただ、レコード会社側がこれに味をしめて、第2弾第3弾とかリリースしてきそうでちょっと不安が・・・。正直言うと、次はエレカシとしての新譜を聴きたいのですが・・・そういう意味ではちょっと複雑な心境も抱いてしまう1位獲得でした。

2位には韓国の男性アイドルグループBTS「BE」が初登場。11月20日に韓国盤でリリースされたニューアルバムで、ビルボードでは配信部分のみでのランクインながらも、ダウンロード数で1位を獲得し、2位に初登場してきました。

3位は先週2位の嵐「This is 嵐」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。CD販売数は2位から3位、PCによるCD読取数も1位から2位にダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず6位にはGirls2「大事なモノ/#キズナプラス」が初登場。テレビ東京系女児向けドラマ「ガールズ×戦士シリーズ」から派生したアイドルグループ。CD販売数は4位でしたが、PCによるCD読取数は76位に留まり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。前作「私がモテてどうすんだ」の6千枚(8位)からアップしています。ちなみに同作、ミニアルバムとなっていますが、タイトルの2曲+1曲+その3曲のカラオケという6曲入りで、事実上のシングル。なのに、なぜアルバム扱いとしたのでしょうか?ひょっとしてシングル扱いにすると、Hot100では上位に食い込むことが出来ず、曲が埋没してしまうから、なんて理由だったりして?

初登場はもう1曲。7位にMISIA「So Special Christmas」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数9位。本作は彼女がクリスマスソングのカバーや、彼女のオリジナル曲のセルフカバーを収録したクリスマスアルバム。タイトルの「So」は、知的障害のある人たちに様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を年間を通じて提供している国際的なスポーツ組織「SPECIAL OLYMPICS(SO)」の理念に共感する意味も込められているそうで、収益の一部を、SOの日本組織「公益財団法人スペシャルオリンピックス日本(SON)」に寄付されるそうです。オリコンでは初動売上9千枚で7位初登場。前作「MISIA SOUL JAZZ BEST 2020」の2万3千枚(3位)よりダウンしています。

今週の初登場は以上。一方、今週はベスト10返り咲きも。あいみょん「おいしいパスタがあると聞いて」が先週の11位から9位にランクアップし、2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これでベスト10記録を通算10週に伸ばしています。一方、ロングヒットでは米津玄師「STRAY SHEEP」が7位から5位にアップ。ベスト10ヒットを16週連続としています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年11月25日 (水)

再び1位に返り咲き

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はあの曲が再び1位に返り咲き。強さを見せつけています。

今週1位を獲得したのは大ヒット中の映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」主題歌、LiSA「炎」。先週、2位にランクダウンしたのですが、わずか1週で1位に返り咲きました。CD販売数は6位までダウン。ラジオオンエア数9位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数は11位に留まりましたが、ダウンロード数、ストリーミング数、You Tube再生回数、カラオケ歌唱回数の4部門で1位を獲得。その強さを見せつける結果となりました。一方で先週3位にランクアップした「紅蓮華」は6位にダウン。ただ、ベスト10ヒットは通算46週に伸ばしています。

さらに今週、LiSAの曲がもう1曲ランクインしてきています。それが10位初登場となったLiSA×Uru「再会」。一発撮りパフォーマンスを届けてきたYou Tubeチャンネル「THE FIRST TAKE」が、配信専門レーベル「THE FIRST TAKE MUSIC」を設立。その第1弾となるのが本作で、LiSAとシンガーソングライターUruによるコラボ曲。ダウンロード数2位、ラジオオンエア数で1位を獲得。ストリーミング数40位、Twitterつぶやき数61位、You Tube再生回数27位を記録し、総合順位でベスト10入りを果たしています。ちなみに本作、作詞作曲プロデュースはYOASOBIのAyaseが担当。まさにHot100でロングヒットを繰り広げているミュージシャン同士の共演となっています。

で、そのYOASOBI「夜に駆ける」は4位から5位にワンランクダウン。ただ、ストリーミング数3位、You Tube再生回数2位、ダウンロード数9位は先週から変わらず。ベスト10ヒットを31週連続に伸ばしています。

ベスト3に戻ります。2位は大阪を拠点に活動するAKB48の姉妹グループNMB48「恋なんかNo thank you!」が初登場でランクイン。CD販売数は1位でしたが、その他、PCによるCD読取数12位、Twitterつぶやき数36位でそのほかは圏外。総合順位も2位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万枚で1位初登場。前作「だってだってだって」の19万7千枚(2位)よりダウン。

3位は韓国の女性アイドルグループTWICE「BETTER」が先週の17位からランクアップし、ベスト10入りを果たしています。CD販売数2位、ダウンロード数22位、ストリーミング数24位、ラジオオンエア数2位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数5位、You Tube再生回数12位。オリコンでは初動売上8万3千枚で2位初登場。前作「Fanfare」の17万6千枚(1位)からダウン。

続いて4位以下の初登場曲ですが、4位以下初登場は前述のLiSA×Uruを除くとあと1曲。優里「ドライフラワー」が先週の16位からランクアップ。ランクインから4週目にして初のベスト10ヒットを記録しています。ちなみに女性ではなく男性シンガーソングライターです。ダウンロード数33位、Twitterつぶやき数86位、カラオケ歌唱回数56位ですが、ストリーミング数で4位、You Tube再生回数で9位を記録し、見事ベスト10入り。もともと、昨年リリースされた「かくれんぼ」がTikTokで使用されるなど大きな話題を呼び、今年10月でリリースされた同曲のヒットにつながりました。TikTok発のヒットで、シンプルなラブバラードという構図は、今年大ヒットを記録した瑛人「香水」と似たようなシチュエーション。具体的な「モノ」一語をタイトルにしている点も共通しています。この曲も「香水」同様のロングヒットを記録するのでしょうか。

一方ロングヒット組は、まずBTS「Dynamite」は5位から4位にアップ。ストリーミング数2位、You Tube再生回数3位は先週から変わらず。これでベスト10ヒットは14週連続に伸びています。また、NiziU「Make you happy」は7位から9位にダウン。ストリーミング数は7位から8位にダウン。一方、ダウンロード数は10位から9位、You Tube再生回数も6位から5位にアップしており、まだヒットは続きそう。これでベスト10ヒットは21週連続となりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年11月24日 (火)

コロナ禍で中止になったツアーのライブ音源

Title:ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020
Musician:ザ・クロマニヨンズ

コロナ禍の中、ライブの先行きが全く見えません。緊急事態宣言解除後は徐々にライブも再開。恐る恐るという状況ながらも、ライブは復活しつつあります。ただ、とはいえまだまだその開催は限定的。さらにここ最近の「第三波」到来により、今後の行く末も見渡せない状況となってしまっています。誰にも気兼ねなく、満員のライブ会場で、大きな声を出しながらライブを出来る日がいつになるのか・・・ともすれば悲観的な状況になってしまいます。

そんな状況の中リリースされたのが今回のザ・クロマニヨンズのライブアルバム。昨年リリースされたアルバム「PUNCH」からのライブツアーの模様を収録したライブ盤なのですが、ご多分に漏れず、このツアーも途中にコロナ禍によって中止という憂き目にあってしまいました。そんな「幻のツアー」(といううたい文句なのですが、中止になったとはいえ、ある程度は実施されているライブなだけに「幻」とはちょっと違う感じもするのですが)の模様を収録したライブアルバムとなっています。

結成から14年目。気が付いたらヒロト&マーシーのバンドとしてはもっとも長く活動しているバンドとなったクロマニヨンズ。もちろんそのライブにも定評のある彼らですが、ライブ盤は2013年にリリースされた「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」以来2作目ということになります。そう考えると、ライブバンドの彼らにしてみれば、決してライブ盤の数は多くありません。それにも関わらず、あえてライブアルバムをリリースするというのは、このコロナ禍の中で、ライブの実施もままならない中、少しでもライブの熱狂をファンに伝えたい、そんなクロマニヨンズの想いがあるのでしょう。

そしてその想いを反映するかのように、ライブの雰囲気をそのままパッケージしたライブアルバムに仕上がっていました。「PUNCH」直後のツアーということもあり、最初は「PUNCH」の曲をそのまま曲順に沿って演奏。A面曲を終了後、「旅立ちはネアンデルタール」などを挟んで、その後はB面曲に。こちらもアルバムのラスト曲「ロケッティア」こそ最後の方にまわされているものの、基本的に曲順に沿ってライブはすすんでいきます。そしてアルバム曲を一通り演奏した後は「エイトビート」「エルビス(仮)」「ナンバーワン野郎!」などが並び、さらには終盤は「タリホー」で盛り上がる・・・全23曲。アルバムの曲を中心に、しかし盛り上がる代表曲はしっかりと演奏して会場を盛り上げる、典型的といえば典型的な展開ながらも、理想的な構成のライブになっていました。

ライブ音源にはしっかりと観客からの歓声も入っています。基本的にMCは入っていないのですが、ファンの歓声を含め、その場の「音」をすべて収めるような録音になっていることもあり、ライブの臨場感がしっかりと伝わってきます。そして、あらためて感じるのですが、ザ・クロマニヨンズの曲は本当にライブ向きだな、ということを強く感じます。楽曲は非常にシンプル。もともとヒロト&マーシーのバンドの曲はシンプルなパンクロックがメインなのですが、このシンプルさがザ・クロマニヨンズの曲ではさらに拍車がかかっています。しかし、シンプルであるからこそバンドとしての実力が試されているのは間違いなく、そしてザ・クロマニヨンズはライブにおいて、そのバンドとしての実力をいかんなく発揮する演奏を聴かせてくれています。

そんな彼らのライブの魅力をしっかりと伝えてくれる、そんなライブアルバムになっていました。あらためて、素晴らしいライブを1日も早く聴きたい!そう感じる内容になっていました。満員のライブハウスでのザ・クロマニヨンズのライブが、次、いつになるかはわからないのですが・・・その日が1日でも早くくることを願って、今はこのライブアルバムで、疑似ライブを楽しみたいところです。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー
PUNCH


ほかに聴いたアルバム

Bedroom Joule/[Alexandros]

[Alexandros]のニューアルバムは、「新型コロナウイルス「COVID-19」感染拡大の状況下、最前線で働く人や自宅で過ごす人が眠る前にベッドルームでリラックスして聴き、楽しんでもらえるように」という思いから作られたコンセプトアルバム。各メンバーの自宅からリモートで制作されたアルバムで、基本的に過去の作品のリアレンジが主となっています。6月に配信でリリースされた後、数曲加えた8月にCDでもリリースされました。アレンジは、本作のコンセプトに沿った、ゆっくりと聴かせるようなアレンジがメイン。そのため率直に言って「地味」な点は否めず、当初、配信で聴いた時はさほどピンと来ない作品でした。ただ、CDリリースに合わせてインスト曲などが入ることにより、アルバム全体として起伏が生じて、アルバム全体としてのインパクトもグッと増した印象が。エレクトロサウンドとアコースティックな音のバランスも絶妙で、コンセプト通り、ゆっくりと味わえるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

[Alexandros] 過去の作品
Schwarzenegger([Champagne])
ALXD
EXIST!
Sleepless in Brooklyn

FRAGILE/LAMP IN TERREN

これがメジャー5作目となるギターロックバンドの約1年10ヶ月ぶりの新作。序盤はドリーミーでスケール感のあるミディアムテンポの楽曲で、正直、BUMP OF CHICKENからの影響…というか、そのままといった楽曲。ただ、基本的にはメロディーラインには聴かせる曲が少なくなく、アコギで切ないメロをしんみり聴かせる「チョコレート」は絶品。中盤あたりまでは彼ららしさも出ている傑作の様相を呈していたのですが、後半はどこにでもいるような平凡なギターロック路線に戻ってしまい、最後はちょっとダレてしまいました。バンプに似ているという点も含めて、それなりの良作ながらもどこか物足りない…というのは以前の彼らのアルバムと同様。ある意味、非常に惜しいバンドに感じます。ここらへん、あとひとつ壁を乗り越えたらブレイクしそうなのですが。

評価:★★★★

LAMP IN TERREN 過去の作品
silver lining
LIFE PROBE
fantasia
The Naked Blues

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2020年11月23日 (月)

次は南インドの音楽との融合

Title:Global Control/Invisible Invasion
Musician:Ammar 808

チュニジア人のシンセ奏者/プロデューサーであるソフィアン・ベン・ユーセフによるソロユニット、Ammar 808。以前も当サイトで紹介した「Maghreb United」が世界的にも注目を集めヒットを記録し、一躍、ワールドミュージック界の注目の的となりました。本作は、そんな彼の2枚目となるアルバム。再び大きな注目を集める1枚となっているそうです。ちなみに前作「Maghreb United」でも書いたのですが、彼の名前「808」は「ヤオヤ」こと日本のメーカー、ローランドによるリズムマシーン、TR-808から取られたということ。そういう意味では日本人にとっても親近感の持てるミュージシャンと言えるかもしれません。

前作「Maghreb United」はタイトル通り、北アフリカのマグレブの音楽と西洋的なエレクトロビートと融合させた音楽。ただ、このマグレブ音楽を軸として様々な音楽とごった煮になったような、ある種の「B級」感あふれたサウンドが大きな魅力でした。そして今回、彼が取り込んだのは南インドの古典音楽であるカルナータカ音楽。彼自身、若いころにインドに留学したことがあるそうで、それだけインド音楽にも深い造形を持っているそうで、彼の幅広い音楽的な素養を感じられます。

もっともカルナータカ音楽、と言われても、私自身はインド音楽にさほど詳しい訳ではないのですが・・・ただ、アルバムの1曲目「Marivere gati」では、まさしくインド!といった感じの女性ボーカルのこぶしの利いた妖艶なボーカルからスタートします。そしてその音楽のバックには強いビートのエレクトロサウンドが。続く「Ey paavi」も伸びやかで妖艶なサウンドに、ちょっとチープなエレクトロサウンドがエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。男女2人のやり取りのようなボーカルもコミカル。どこか感じるB級的な雰囲気が大きな魅力にも感じます。

このこぶしを利かせた妖艶なボーカルスタイルでエキゾチックな雰囲気を醸し出しつつ、チープさを感じるエレクトロビートを力強く聴かせるというのが本作の主なスタイル。その後も「Geeta duniki」などでは非常にメランコリックなメロディーラインが魅力となっていますし、「Duryohana」で聴かせる、ハイトーンのホーンも、おそらくインドの楽器なのではないでしょうか?エキゾチックな雰囲気が強い魅力になっています。

ただ一方、非常にユニークなのですが、全8曲の作品、その8曲が8曲、微妙に異なるエレクトロのビートを聴かせてくれており、これがアルバムの中でのバリエーションとなっています。「Mahaganapatim」はアクセントを聴かせつつ、エッジの効いた細かいリズムパターンが特徴的ですし、「Pahi jagajjanani」は、テクノの要素の強い、あか抜けたスペーシーなリズムが特徴的。最後を締めくくる「Summa solattumaa」もチープな雰囲気ながらも力強いはじけるようなエレクトロビートを聴かせてくれます。

チープな雰囲気のエレクトロサウンドでB級的な・・・という言い方をしていますが、ただバリエーションに富んだリズムパターンやサウンド、幅広い音楽的素養からは間違いなく彼の実力を感じさせます。本作もまた前作同様のごった煮的なアルバムだったのですが、そのごった煮の素材が前作とは異なる点もおもしろいところ。これからどんなサウンドをごった煮してくれるか・・・彼の活動からは目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

Ammar 808 過去の作品
Maghreb United


ほかに聴いたアルバム

Magic Oneohtrix Point Never/Oneohtrix Point Never

ニューヨーク・ルックリンを拠点に活動するダニエル・ロパティンによるソロプロジェクトの約2年ぶりのニューアルバム。前作「Age of」ではじめて彼の作品を聴いたのですが、その前作はいかにもソフトロック的なアルバムジャケットで、内容も歌モノ・・・ながらも微妙に歪んだサウンドメイキングが魅力的な内容でした。今回のアルバムも様々なサウンドをサンプリング。1曲の中でどんどんと雰囲気が変わっていくドラスチックな展開もスリリングな作品になっていたのですが、「歌モノ」的な要素が強かった前作に比べると、メロディアスな部分は要所要所に感じるものの、全体的には「実験的」な要素が強くなっていたアルバムになっていました。ちょっととっつきにくかった部分もあり、個人的には前作の方が好みだったかな。様々な音楽的な挑戦がおもしろいアルバムではあるのですが。

評価:★★★★

Oneohtrix Point Never 過去の作品
Age of

Hey Clockface/Elvis Costello

かなり不気味なジャケット写真が妙に目をひくエルヴィス・コステロの約2年ぶりとなるニューアルバム。前半は、2曲目の「No Flag」をはじめギターサウンドとシャウト気味のボーカルでロッキンな曲を聴かせつつ、主軸となるのはムーディーなミディアムテンポのナンバー。メランコリックなメロディーラインも特徴的で、良くも悪くも「良質な大人の音楽」というイメージを強く抱くアルバムになっています。アルバムの出来としては一定以上の安定感があり、その点はさすがはコステロといった感じでしょうか。しっかりと聴かせる作品になっていました。

評価:★★★★

Elvis Costello 過去の作品
Momofuku(Elvis Costello&the Imposters)
Secret,Profane&Sugarcane
National Ransom
Wise Up Ghost(Elvis Costello&The Roots)
LOOK UP(Elvis Costello&the Imposters)
Purse(Elvis Costello&The Imposters)

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2020年11月22日 (日)

18歳未満お断り?

Title:ブルーフィルム-Revival-
Musician:cali≠gari

いや~いきなりドギツイ18禁的なジャケットで申し訳ありません。今回紹介するアルバムは、もともとcali≠gariが2000年にリリースしていた通称「エロアルバム」というアルバム。もともと、現在のボーカリスト石井秀仁が加入直後にリリースされたアルバムで、インディーズでの当初リリース時に完売。翌年には2ndプレスもリリースされたものの、こちらも現在では廃盤となり入手困難。そんな中、今回は新曲に新たなカバー曲を追加した全10曲入りのアルバムとしてリニューアル。すべて新録という、かなりの力の入れようの新作となっています。

オリジナル盤リリース時はオリジナルコンドームが購入特典として付いてきたという、とことん「エロ」路線を突き進んだ本作。楽曲もここで堂々と書くのもはばかられるような(笑)エロエロの楽曲が続きます。そんな未成年お断りの下ネタ満載のアルバムなのですが、これがビックリするほどカッコいい楽曲の連続になっています。まず1曲目は今回あらたに収録されたカバー曲。イタリアのDJユニットSPANKERSが2000年にリリースして大ヒットを記録した「Sex On The Beach」のカバーなのですが、原曲のおバカなパーティーチューンの雰囲気が一転。ヘヴィーなギターサウンドでゴリゴリと攻めてくる、ヘヴィーなパンクナンバーに早変わり。これ、原曲よりカッコよくない?と思ってしまう、cali≠gari流の名カバーに仕上がっています。

オリジナル版では冒頭を飾っていた「エロトピア」もヘヴィーなギターリフをバックに、妖艶でエロチックな雰囲気を醸し出しつつ、ヘヴィーなロックナンバーになっています。さらに続く「ミルクセヰキ」は軽快なスカ調のナンバー。タイトルは間違いなくダブルミーニングなんでしょう。ミルクを男性のあれに例える手法は、戦前のブルースナンバーでもよく見られる手法なのである意味、お決まりともいえる歌詞。ただリズミカルなスカのリズムが楽しいロックナンバーに仕上がっています。

その後もジャジーなアレンジを加えて妖艶に聴かせる「真空回廊」、バンドサウンドにシンセの音色を加えてメランコリックに聴かせる「原色エレガント」、ノイジーでサイケなアレンジでドリーミーに聴かせる「さかしま」など、それぞれバリエーションある作風ながらもcali≠gariの音楽性の広さを感じさせる楽曲に仕上がっており、「エロアルバム」というギミックを用いつつ、その実、アルバムの内容としては彼らのバンドとしての実力を存分に発揮した楽曲が並んでいます。

今回、新曲として収録された「デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!」もかなりインパクトの強いポップなナンバーに。ポップで軽快なギターロックのナンバーになっており、絶妙に加わるファンキーなリズムも楽しいナンバー。90年代のJ-POPの雰囲気も感じられる楽曲になっており、岡村靖幸あたりが好きなら気にいるかも?ある種のなつかしさも感じました。タイトル通りの爽やかに仕上げつつも、エロい歌詞も非常にユニークです。

ラストを飾るタイトルチューン「ブルーフィルム」もまた、パンキッシュで賑やかなバンドサウンドも楽しい、メロディーは至ってポップなギターロックナンバー。メロディーラインは爽やかにまとめつつ、どこか切なく、メランコリックさを歌詞も妙に耳に残る楽曲に仕上がっています。

また、実験的で非常にユニークだったのがインストナンバー「音セックス2020」で、様々な音をサンプリングし、それを絡み合わせることで音でセックスを表現したようなナンバー。これもまたエロネタながらも、かなりサウンドとして挑戦的な楽曲となっており、非常に楽しくも、同時に彼らの挑戦にうならせるような楽曲になっていました。

「エロ」というある種の飛び道具を用いつつ、楽曲としてはかなり凝った名曲がそろっている非常にカッコいいアルバムになっていた本作。cali≠gariのバンドとしての実力を存分に発揮したアルバムになっています。「エロ」というギミックを用いたからこそ、バンドとしての自由度が高まった結果、より傑作がリリースされ、ということかもしれません。ジャケット写真で引いてしまった方でも是非聴いてほしい傑作アルバム。ロックのアルバムとして文句なしにカッコいい1枚でした。

評価:★★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11
12
13
この雨に撃たれて


ほかに聴いたアルバム

はじまっていく たかまっていく E.P./サンボマスター

サンボマスターの新作は、タイアップ付の新曲2曲とライブ音源3曲からなる5曲入りのEP盤。タイトルチューンである「はじまっていく たかまっていく」はラップ的な要素も入れて意欲的な部分もあったりするものの、全体的にシャウトもサウンドも抑えめ。2曲ともタイアップを意識したようなポップ寄りの曲になっており、サンボマスターとしての魅力は薄め。ライブ音源の方も、パンクな彼らを前面に押し出した、といった感じではなく、全体的に「売り」を意識したようなアルバムになっていたのはちょっと残念でした。

評価:★★★

サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
サンボマスターとキミ
YES

Walking On Fire/GLIM SPANKY

GLIM SPANKYの最新作は、ギターサウンドといよりもバンド全体としてダイナミックな作風に聴かせている点が特徴的。デビュー当初の60年代的なルーツ志向から、前作で感じたもうちょっと時代が下ったハードロック色という方向性は今回のアルバムもそのまま。非常に力強いサウンドがインパクトになっています。同じルーツロック志向ながらも微妙にスタンスを変えつつ活動を続ける彼女たち。このハードロック路線をさらに先鋭化していくのでしょうか?

評価:★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け
Next One
I STAND ALONE
BIZARRE CARNIVAL
LOOKING FOR THE MAGIC

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2020年11月21日 (土)

いつもながらのシンプルなポップアルバム

Title:Love Goes
Musician:Sam Smith

約3年ぶりとなったサム・スミスのニューアルバムは、今回の新型コロナの影響を大きく受けてしまうアルバムになってしまいました。もともとは「To Die For」というタイトルで5月1日にリリースされることが決定された本作。しかしコロナ禍の最中ということで5月のリリースは延期に。さらに「To Die For」というタイトルがコロナ禍の中では不謹慎ということになり、タイトルも「Love Goes」に変更。10月30日にようやくニューアルバムのリリースとなりました。

そんなコロナ騒動に思いっきり巻き込まれてしまった今回のアルバムですが、そんな中でリリースされた先行シングルはバラードシンガーのイメージが強い彼にしては、比較的テンポのよいダンサナブルなシングル曲が続いていたということでも話題になりました。事実、本作に収録されている「Diamonds」やBurna Boyをゲストに迎えた「My Oasis」などは確かにリズミカルなナンバーですし、タイトルそのまま「Dance('Til You Love Someone Elese)」「Dancing with a Stranger」のようなエレクトロダンスチューンも収録されています。そういう意味ではいままでの彼のアルバムに比べると、比較的ダンサナブルな楽曲も収録されているアルバムと言えるかもしれません。

ただ正直なところアルバム全体としてはダンスチューンも目立つバリエーションのある作品というよりは、いつものサム・スミスと同様、ミディアムチューン中心に美しいメロディーラインを聴かせる作品というイメージで大きな変化はありませんでした。アルバムもアカペラのバラードソング「Young」からスタートしますし、前半は前述の先行配信曲や「Another One」「So Serious」のようなテンポよくメロディアスな曲が並ぶのですが、そんな曲も基本的には伸びやかなサム・スミスのボーカルが主軸となっており、彼のいままでのイメージから大きな変化はありません。

さらに後半にはスケール感あるバラードナンバー「Kids Again」やストリングスも入ってダイナミックに歌い上げるバラード「Fire on Fire」など、彼らしいバラードナンバーが続きます。そんな中でも特にインパクトがあるのがタイトルチューンでもある「Love Goes」。メランコリックなメロディーラインにファルセットも入って美しく聴かせる彼のボーカル、さらに途中ホーンセッションも入ってスケール感を覚えるサウンドも見事で、タイトルチューンらしいアルバムの中での主軸となっている楽曲に仕上がっています。

そんな訳でいままでの彼の楽曲と大きな相違はなく、サウンドは比較的シンプル。バリエーションもダンスチューンが耳を惹くものの、バラエティー豊富な、というよりはあくまでも歌を聴かせるスタイルという点に大きな変化はありません。ただ、それでも最後まで飽きることなくしっかりと聴かせることが出来るのは、いままでの彼の楽曲同様、美しいメロディーラインと美しいボーカルが際立っているからでしょう。まただからこそシンプルなサウンドでも十分勝負できるだけのクオリティーを維持しているのでしょう。今回のアルバムも、そんな彼の魅力が満載の傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All


ほかに聴いたアルバム

The Power Of The One/Bootsy Collins

Pファンクのメンバーであり、ファンク界隈では最も著名なベーシストのひとりBootsy Collins。70歳近い今となっても、Pファンクのノリと全く変わらない精力的な音楽活動を続けていますが、本作は約3年ぶりとなるニューアルバム。基本的にはいつも通り、終始ご機嫌なファンクチューンが並んでいる作品に。大いなるマンネリといえばマンネリなのですが、最初から最後まで続くファンキーなリズムに聴いていてご機嫌になってくる、とても心地よさを感じるアルバムでした。

評価:★★★★

Bootsy Collins 過去の作品
THA FUNK CAPITAL OF THE WORLD
World Wide Funk

Positions/Ariana Grande

アメリカのシンガーソングライター、アリアナ・グランデのニューアルバム。基本的に楽曲は彼女ののびやか美しい歌声を主軸に据えた、清涼感あってメロディアスなポップチューンが並んでいます。ただ、そのキュートなルックスとは裏腹に・・・というと怒られてしまいそうですが・・・メッセージ性を込めた作品が特徴的で、タイトルチューンの「Positions」は女性大統領に扮したPVも話題になり、女性の社会的な立ち位置をメッセージに込めたといわれていますし、1曲目を飾る「Shut up」も今の時代にリリースされると、トランプ大統領に向けたメッセージソングにすら感じます。そういうメッセージ性を楽曲の中にさらりと取り入れつつ、全体的にはキュートなポップチューンにまとめあげている点に彼女の実力を感じさせる、そんな作品でした。

評価:★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything
The Best
Sweetener
thank u,next

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2020年11月20日 (金)

久々にコンパクトでポップなアルバム

Title:SIGN
Musician:Autechre

その独特の音世界で様々なミュージシャンへの影響を与え、多くの音楽リスナーに支持されるエレクトロユニットAutechre。既に結成から30年以上、ワープ・レコードでアルバムデビューしてから25年以上が経過するベテランユニットだったりします。ただ既に「ベテラン」の域に達している彼らですが、その制作意欲は全く衰えていません。衰えていないどころか、ここ数年はオリジナルアルバムが非常に長尺化している傾向にあり、前作「NTS Sessions」はCDにすると8枚組、全8時間にも及ぶという強烈な長さのセッション。前々作「elseq 1-5」も5時間にも及ぶアルバムになっており、その前の「Exai」も2時間に及ぶアルバムと、近年になるに至って、どんどんインフレ化していきました。

そんな中、リリースされた約2年ぶりとなるアルバムは、全11曲、65分という、比較的シンプルで「常識的」な長さのアルバムになっています。まあ、正直なところ、前作「NTS Sessions」はアルバムとして長すぎて、ちょっと冗長といった印象を受けるアルバムでしたので、今回のアルバム程度の長さがちょうどよい、といった感じでしょうか。実際、アルバム全体としては、おそらく良い意味で取捨選択されているようなシンプルな構成の楽曲が並び、いい意味で「ポップ」という印象を受けるアルバムに仕上がっていたように感じます。

アルバム全体としては、比較的ダウナーで、ドローン的な要素を含んだ楽曲が多く見受けられる内容になっています。1曲目「M4 Lama」など、まさにドローン的なサウンドにメタリックな音が重なるようなダウナーな作風になっていますし、続く「F7」もハイトーンのメタリックなサウンドで構成されながらも、全体的には陰鬱な印象の受ける作風になっています。

後半も「sch.mefd 2」「gr4」など、メタリックなサウンドを入れつつ、ドローン風のサウンドが低音で響く、ダウナーな楽曲が並びます。ただ、楽曲としては5~6分程度の曲が並んでいるため、ポピュラーミュージックとしての体裁は兼ね備えており、その中に実はポップなメロディーラインが流れているため意外と聴きやすい、というのは彼ららしさを感じます。「au14」などはリズミカルなテンポのエレクトロビートが軽快な作品になっており、聴きやすいポップな作風となっているため、これが中盤に入っていることでアルバムにひとつの核が生じていますし、ラストを飾る「r cazt」などはメロディーラインに哀愁感すら漂っており、そのメロが心に残るようなアルバムに仕上がっていました。

ここ最近のアルバムの中では断然ポップで聴きやすいアルバムに仕上がっていた本作。ちょっと冗長的だったここ最近のアルバムに比べて、グッと引き締まったアルバムといった印象も受けました。彼らの魅力をしっかりと感じることの出来る傑作アルバムです。

評価:★★★★★

・・・と思っていたら、それからわずか20日後、早くもニューアルバムがリリースされました。

Title:PLUS
Musician:Autechre

続けざまにリリースされたこのアルバムは、決して「SIGN」のアウトテイク集、ではなく歴とした新作となるそうです。実際、ドローンの要素の強かった「SIGN」と比べると、メタリックなエレクトロビートでリズミカルな楽曲が目立つのが今回のアルバム。1曲目「DekDre Scap B」こそダウナーな作風になっているものの、強いビートが目立つ曲調ですし、続く「7FM ic」もテンポよいエレクトロビートが主軸となっている曲になっています。

その後もエッジの効いたエレクトロビートの「X4」やスペーシーなサウンドにアーケードゲーム風なノイズが混じる「ii.pre esc」、さらに最後の「TM1 open」は、ピコピコサウンドとも言うべき軽快なエレクトロサウンドで疾走感もって展開される曲調に、聴いていて楽しくなってしまうような楽曲に仕上がっています。

今回のアルバムも、全9曲63分という「常識的」な内容。ただ、「SIGN」に比べると、「ecol4」が15分弱、「X4」が12分、ラストの「TM1 open」が11分と1曲の長さは前作に比べて若干長尺な曲も目立ちます。もっとも、軽快なエレクトロサウンドがミニマル的に続くリズムとなっているため、長尺でも比較的聴きやすい構成に。アルバム全体としても前作以上に「ポップ」にまとまっていて聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。

「SIGN」とは異なる作風のアルバムということで、「SIGN」「PLUS」合わせてAutechreの今やりたいことを表現した構成になっている、ということなのでしょうか。ただ、1枚あたりのアルバムの長さは1時間程度と(彼らにしては)コンパクトにまとまったのですが、2枚合わせると2時間強と今回もやはりそれなりのボリュームのなってしまった作品に。やはり彼らの衰えない創作意欲をカバーするためには、60分程度の長さでは物足りなさすぎるということなのでしょうか。ただ、それでも2枚のアルバムに分けたことにより、それなりにメリハリがついて、それぞれのアルバムがいい意味で引き締まっている、聴きやすいアルバムに仕上がっていたように感じます。Autechreの実力をしっかりと感じられる2枚のアルバムでした。

評価:★★★★★

Autechre 過去の作品
Quaristice
Oversteps
move of ten
Exai
NTS Sessions 1-4


ほかに聴いたアルバム

MTV Unplugged/Pearl Jam

彼らがデビューアルバム「TEN」で大ブレイクした直後、1992年3月に行ったアコースティックによるスタジオライブ番組「MTVアンプラグド」で行ったパフォーマンスの模様を収録したライブアルバムいままで「レコードストアデイ」の限定商品としてアナログリリースされたことはあったのですが、単独での通常リリースは今回がはじめて。コロナ禍でライブもままならない中でのライブの穴埋め的な意図もあるのでしょうか?

ただ、アコースティックなライブパフォーマンスながらも、そんな中からにじみ出てくるパワフルな演奏を感じられるのがこのアルバム。「MTV Unplugged」というと大人の雰囲気のパフォーマンス、というイメージが強いのですが、1992年、若いエネルギーがありあまる彼らにとっては、アコースティックライブであろうと、そのパワーを「封印」することは出来なかった模様。ただ、このアコースティックなサウンドと、彼らのみなぎるパワーの絶妙なバランスがユニークなライブパフォーマンスに仕上がっています。今となっては非常に貴重な音源。逆に、今の彼らだったら、どのようなパフォーマンスをするのか気になるところでもあるのですが。

評価:★★★★★

Pearl Jam 過去の作品
Backspacer
Lightning Bolt
Gigaton

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2020年11月19日 (木)

上位は男性アイドル勢がズラリ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は嵐が圧倒的な強さで1位を獲得しましたが、今週も上位は男性アイドルグループがズラリと並びました。

まず1位を獲得したのがすとぷり「Strawberry Prince」。You Tubeやツイキャスなどで活躍している6人組グループで、アニメキャラクターを表に押し出して活動しているグループ。アルバムタイトルのすとろべりーぷりんすがもともとの名前なのですが、アルバムの名義としては略称が正式名称になっているようです。CD販売数1位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数4位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上22万9千枚で1位初登場。前作「すとろべりーねくすとっ!」の16万8千枚(2位)からアップしています。

ネット初のバーチャルアイドルグループが1位になりましたが、2位はリアルな男性アイドルグループ。嵐「This is 嵐」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。CD販売数は2位にダウンしましたが、PCによるCD読取数は今週も1位を維持しています。

3位初登場は日韓合同の男性アイドルグループORβIT「00」がランクイン。オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」をきっかけに誕生したグループ。これで「オルビット」と読むそうです。ちなみにアルバムタイトルは「オーツ―」と読むようです。CD販売数5位、PCによるCD読取数は28位でしたが、ダウンロード数は2位にランクインし、総合順位でベスト3入りとなりました。オリコンでは初動売上2万9千枚で3位に初登場しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に浜田省吾「In the Fairlife」が入ってきました。CD販売数3位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数16位。2004年から断続的に活動を行っている、浜田省吾とアレンジャーの水谷公生、そして女性作家の春嵐の3人のユニット、Fairlifeで発表した楽曲を再編集したミニアルバムとなります。オリコンでは初動売上2万枚で5位初登場。直近作はR&Bのカバーアルバム「The Moonlight Cats Radio Show Vol.1」「The Moonlight Cats Radio Show Vol.2」で同作の初動2万2千枚(1位、2位)より若干のダウン。オリジナルアルバムとしては前作「Journey of a Songwriter ~旅するソングライター」の初動2万4千枚(1位)からダウンしています。

5位は元関ジャニ∞の渋谷すばるによる「NEED」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数69位、PCによるCD読取数47位で総合順位はこの位置に。関ジャニ∞脱退及びジャニーズ事務所退所後2作目のアルバムとなります。オリコンでは初動売上2万1千枚で4位初登場。前作「二歳」の6万8千枚(4位)から大きくダウンしています。

8位には韓国の男性アイドルグループSuperM「Super One」がランクイン。SHINee、EXO、NCTというアイドルグループのメンバーから選抜されたメンバーによるグループ。CD販売数は6位でしたが、その他のチャートでは圏外。本作がアルバムでは初の国内盤となります。オリコンでは1万2千枚を売り上げて7位にランクインしています(先週までは輸入盤の売上でランクインしていたようです)。

初登場最後は9位にオーストラリアのロックバンドAC/DC「Power Up」が入ってきています。CD販売数は15位、ダウンロード数も12位でしたが、PCによるCD読取数が6位という、ちょっと珍しい結果に。洋楽なのでレンタルも解禁されていないし、ファン層的に、CDをパソコンに取り込んで…という方は決して多くないように思うのですが、なぜここまで高順位となったのでしょうか?オリコンでは初動売上7千枚で10位初登場。前作「Rock or Bust」の9千枚(14位)からはダウンしています。

一方、今週のロングヒット盤ですが、米津玄師「STRAY SHEEP」。今週は先週の6位から7位にワンランクダウン。ただ、これでベスト10ヒットは15週連続となりました。一方で先週まで9週連続ベスト10ヒットを続けていたあいみょん「おいしいパスタがあると聞いて」は今週11位にランクダウン。ベスト10連続ヒットはとりあえず9週で終了となりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年11月18日 (水)

「鬼滅」人気は続くものの・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先日、このコロナ禍の中でも無事開催にこぎつけた紅白歌合戦の出場者が発表となりました。そんな中でネガティブな意味で話題になったのがジャニーズ系が総勢7組も出場するという点。かなり偏り気味なラインナップが物議をかもしています。

今週1位を獲得したのは、そんなジャニーズ系の初登場組の一組。SixTONESのニューシングル「NEW ERA」。日テレ系アニメ「半妖の夜叉姫」オープニングテーマ。先週の86位からCDリリースに合わせて一気にランクアップし、1位獲得となりました。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数1位、ラジオオンエア数3位、You Tube再生回数40位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上44万6千枚で1位初登場。前作「NAVIGATOR」の初動62万2千枚(1位)からダウンしています。

そして2位3位には「鬼滅」曲が並びました。2位には先週まで1位をキープしていたLiSA「炎」がワンランクダウン。ただ、ダウンロード数、ストリーミング数及びYou Tube再生回数の1位は先週から変わらず。CD販売数は5位から2位にアップしているなど、まだまだ高い人気を伺わせます。そして「紅蓮華」が5位から3位にランクアップ。2週ぶりのベスト3返り咲きとなり、ベスト10記録と通算45週に伸ばしています。ちなみに彼女も今年の紅白出場組の一人。「鬼滅の刃」効果でかなり盛り上がりそうです。

続いて4位以下の初登場曲です。まず6位に菅田将暉「虹」がランクイン。映画「STAND BY MEドラえもん2」主題歌。11月25日リリース予定のシングルからの先行配信。ダウンロード数2位、ストリーミング数18位、ラジオオンエア数58位、Twitterつぶやき数48位で、初登場でベスト10入りです。映画のテーマに沿ったような、割とベタで泣かせにかかるようなミディアムチューンになっています。菅田将暉は昨年出場したものの、今年は紅白落選組。確かに今年は大きなヒットがありませんでしたしね・・・。

初登場組もう1作は10位に男性シンガーソングライター平井大「Stand by me,Stand by you」が先週の12位からランクアップし、初登場から10週目にしてベスト10入りを果たしました。2週間に1度のペースで配信シングルをリリースしてきた彼の第8弾となる楽曲で、9月にリリースされた作品なのですが、徐々に人気を集め、ついにベスト10入り。楽曲のタイプとしては、前述の「虹」やあるいは瑛人の「香水」にも通じるような、良くも悪くもベタな感じのするミディアムチューンのラブソング。ダウンロード数26位、You Tube再生回数20位ですが、ストリーミング数で6位を獲得しています。今後、ロングヒット曲となっていくのでしょうか。

一方ロングヒット組は、まずYOASOBI「夜に駆ける」は6位から4位に再度のランクアップ。こちらはストリーミング数3位、You Tube再生回数2位は先週から変わらず。ただし、ダウンロード数は5位から9位にダウンしています。ちなみに紅白には残念ながら出場せず。この曲のヒットを考えると、十分初出場に値するミュージシャンだと思うのですが・・・辞退したのでしょうか?これでベスト10ヒットを30週連続に伸ばしました。

BTS「Dynamite」は7位から5位に再度アップ。こちらもストリーミング数2位、You Tube再生回数3位は先週から変わらず。なおBTSは紅白に今年も落選。まあ、紅白のためだけに日本に来日するのも、今の状況では難しいかもしれませんが。これで13週連続のベスト10ヒットとなっています。

NiziU「Make you happy」は8位から7位にアップ。ストリーミング数7位は先週から変わらず。You Tube再生回数は5位から6位に、ダウンロード数は7位から10位にダウンしています。彼女は今年の紅白初登場組。特にCDデビュー前でありながらも出場を決めたということでも話題となりました。ただ、ビルボードチャートをウォッチしている身としては「CDデビューまだだっけ・・・」と意外な気持ちになりました。今週でベスト10ヒットが連続20週となりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年11月17日 (火)

非常に「器用な」ユニット

Title:かつて天才だった俺たちへ
Musician:Creepy Nuts

MCのR-指定とDJのDJ松永によるユニット、Creepy Nutsのミニアルバム。Creepy Nutsの2人といえば、以前から非常に高い評判で知られていたユニット。R-指定は「ULTIMATE MC BATTLE」で3年連続グランドチャンピオンに輝いたほか、テレビ朝日系バラエティー「フリースタイルダンジョン」で、般若の後をついで「ラスボス」に就任するなど、高いスキルで知られていますし、一方、DJ松永の方も「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019」で優勝するなど、非常に高いスキルを持つメンバー同士のユニットとなっています。

私も以前から彼らのことは知っていましたが、いままでアルバムを聴く機会がなく、音源を聴くのがこれが初。ただ今回のアルバム、ミニアルバムということなのですが、「ラジオ盤」ということで楽曲の間に彼らのトークが入り、全70分近い長さのボリューミーな内容に。タイトル通り、彼らのラジオ番組を聴いているような、そんなユニークな構成になっています。

そんなはじめて聴いた彼らの楽曲なのですが、まずは聴いてみて、彼らが非常に器用なユニットだな、ということを感じました。というのも、今回収録されている全7曲、ある意味バラバラな音楽性のユニークな内容に仕上がっていたからです。まず「ヘルレイザー」はホーンセッションの入ってムーディーな雰囲気の曲からスタートしたかと思えば、「耳無し芳一style」はトラップのサウンドを取り入れた、今風のサウンドが耳に残る楽曲に。かと思えば「オトナ」はメランコリックな歌モノになっていますし、「日曜日よりの使者」は、なんと菅田将暉と組んでハイロウズのカバーに挑戦。同じく菅田将暉と組んだ「サントラ」はむしろ青春パンク路線か?と思わせるようなロックな楽曲になっていますし、メロディアスな「Dr.フランケンシュタイン」から、ラストを飾るタイトルチューン「かつて天才だった俺たちへ」は軽快なHIP HOPチューンながらも、ジャジーな雰囲気のベースラインやドラムスが印象的な楽曲に仕上がっています。

全体的にはゴリゴリとラップを聴かせるスタイルというよりは、ほどよく歌も入ってメロディアスなポップに仕上げており聴きやすい内容に。ただ、最初にも書いた通り、R-指定もDJ松永も共に高いスキルの持ち主、ということもあって、これらバリエーションある楽曲を卒なくこなしちゃっている、という印象を受けました。ある意味、楽曲のスタイルがバラバラなだけに、Creepy Nutsらしさというのがちょっと見えにくいかも?と思わないこともないのですが、どの曲も軽快なポップにまとめている点が彼ららしさ、と言えるのかもしれません。

今回は「ラジオ盤」ということに曲間にトークが入る点も特徴的。正直言ってしまうと、彼らのトークは決して凝った上手いものではなく、何度も聴くような内容ではないかもしれません。ただ、それぞれ楽曲がどのようなコンセプトで作成されているのかを、軽快なトークの中でちゃんと語っており、そういう意味でははじめて彼らの楽曲を聴く人にとっても、彼らのことをよく知ることが出来る構成になっている、と言えるかもしれません。また、楽曲のタイプがバラバラなだけに、曲間のトークがちょうど楽曲同士の連結環の役割を果たしている部分もありました。そういう意味ではよく出来た構成と言えるのかもしれません。

ちなみに「ラジオ盤」のトークの中ではなぜか語られていなかったのですが、配信音源はトーク部分がカットされているため、楽曲部分だけまとめて聴けます。とりあえず彼らの曲を聴いてみたいから、トークは・・・という方にはこちらが良いのかも。ただ、彼らがどのようなミュージシャンか知るためには「ラジオ盤」のトーク部分は最適なので、一度はチェックしてみて損はないかも。個人的にはちょっと器用すぎるかも?という印象を受けた部分もあったのですが、次回作も聴いてみたいと思わせる、そんなユニットでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

ABRACADABRA/BUCK-TICK

前々作「アトム 未来派 No.9」、前作「No.0」とここに来てバンドとしての勢いを感じさせる傑作が続いたBUCK-TICK。それだけにそれに続く最新作である本作も期待しながら聴いたのですが、正直言って前半に関しては、それなりの良作ではあるものの、正直言うと、比較的無難にまとめているかな…という印象を受けてしまいました。ただ、それでも彼ららしいメランコリックなメロディーラインはインパクト十分。ベテランらしい底力を感じます。また中盤以降はエレクトロサウンドを全面的に押し出しているのですが、こちらも力強いビートでインパクトがあり、バンドとしての実力を感じます。前々作、前作ほどではないものの、BUCK-TICKというバンドの衰えを知らない勢いも感じさせる良作に仕上がっていました。

評価:★★★★

BUCK-TICK 過去の作品
memento mori
RAZZLE DAZZLE
夢見る宇宙
或るいはアナーキー
アトム 未来派 No.9
CATALOGUE 1987-2016
No.0

2020/eastern youth

このコロナ禍に襲われた2020年という年をあえてタイトルとしたエモコアバンドeastern youthの新作。非常にヘヴィーでエモーショナルなバンドサウンドとボーカルは相変わらず。比較的前向きなメッセージも多く込められており、コロナ禍で世間全般が暗くなってしまっている今の状況の中だからこその作品という感じもしますし、だからこそ「2020」というアルバムタイトルにしたのかもしれません。ただ、一方では良くも悪くもいつも通りのeastern youthといった感じ。正直言えば目新しさはなかったし、若干「大いなるマンネリ」な気配も。その点は前作「SONGentoJIYU」でも感じたのですが、今回のアルバムではその感覚がより強くなってしまっていました。

評価:★★★★

eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006

歩幅と太陽
心ノ底ニ灯火トモセ
叙景ゼロ番地
ボトムオブザワールド
SONGentoJIYU

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2020年11月16日 (月)

カレー屋の匂いも漂ってくるような

Title:インドカレー屋のBGM 決定版

「インドカレー屋のBGM」という企画モノについては、ご存じの方も多いかもしれません。インド人が経営する本場インドカレーの専門店で流れている「謎の音楽」をリサーチし、その楽曲をつきとめ、CDとして収録したアルバム。謎の音楽というエキゾチックさや、妙に耳の残り気になってしまうメロディーというインドカレー屋のBGMについつい惹かれる人も多いらしく、2005年の第1弾以来、シリーズを重ね、累計4万枚のセールスを記録するという、ちょっとしたスマッシュヒットとなっているオムニバス盤だそうです。私も以前からこのシリーズのことは知っていたのですが、今回「決定版」という形でリリースされた本作を、遅ればせながらチェックしてみました。

基本的に、このインドカレー屋のBGMに収録されている楽曲は、日本でも一時期話題となった「ボリウッド」と呼ばれるインド映画に使用されている音楽がメイン。インドの音楽というと、タブラやシタールなどの楽器を用いて、非常に複雑なリズムを奏でる構成の音楽、というイメージが強いのですが、正直言うと、このCDに収録されている楽曲は、そういう複雑な変拍子から構成されるようなインド音楽とは違うタイプの曲になっています。

全体的には比較的チープな打ち込みをバックに、ハイテンポでダンサナブルなリズム、典型的なハイトーンの女性ボーカル、そして哀愁感あふれるメロといった楽曲がメイン。比較的わかりやすいリズムの曲がメインとなっており、ラップなども取り込んだ曲もあったりと、欧米のサウンドの影響を多分に取り入れ、ただ所々に強烈なインド的な風味を加えた、そんな楽曲になっています。

ちなみにそんな楽曲を歌い上げるのは「プレイバックシンガー」と呼ばれるような歌手だそうで、映画で使われる音楽を俳優の代わりに歌うシンガーだそうで、特にインドでは、主演俳優や音楽監督と同等の地位を占めるなど、非常に高く評価されているそうです。今回のCDに収録されている曲を歌うシンガーも、非常に長いキャリアのある歌手も少なくないようで、かなりコミカルで謎にみちた企画のように感じるのですが、ボリウッド映画で使われる楽曲をまとめたオムニバスとして、なにげに聴き応えのある企画盤であるようにも感じました。

楽曲的には、上にも書いた通り、終始、エキゾチックな香り漂うサウンドにダンサナブルでチープなリズムが重なる曲が続いていき、インドカレー屋で感じるような異世界のような不思議な感覚を味わうことが出来ます。本作に収録されている曲でもラストの「Ehi Thaiyaa Motiya」はシタールやタブラの音色が入っている曲になっており、伝統音楽的な曲調になっているのも印象的。強烈なインド音楽のサウンドを存分に味わうことが出来るアルバムになっていました。

ジャケット写真といい、日本語の「空耳」をそのままサブタイトルにしちゃった試みといい、かなりB級っぽい奇抜なオムニバスなのですが、一方でインド音楽のオムニバスとしては聴き応えのあるアルバムだったと思います。まあ、だからこそ、15年にわたる人気シリーズになっているのでしょう。妙な味わいが癖になってやめられなくなりそうな、そんなアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Letter to You/Bruce Springsteen

前作からわずか1年4ヶ月というスパンでリリースされたBOSSのニューアルバムは、2012年にリリースされたアルバム「WRECKING BALL」以来、約8年ぶりとなる、Eストリート・バンドとのオリジナルアルバム。基本的に彼の渋みを増したボーカルでゆっくりと歌われるタイプの曲が多いのですが、アルバム全体としてはEストリート・バンドとの作品ということもあって、力強いバンドサウンドを前面に押し出したロック色の強い作品になっています。Bruce Springsteenらしさを強く感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ
Western Stars

Beastie Boys Music/Beastie Boys

アメリカの人気HIP HOPグループ、Beastie Boys。1986年にリリースしたアルバム「Licensed to ill」がHIP HOPのアルバムとしてははじめてビルボードで1位を獲得するなど大ヒットを記録し、その後も人気グループとしてHIP HOPシーンを牽引していったのですが、2012年にリーダーのMCAが47歳という若さで逝去。その後、事実上の解散状況となっています。

今回突如リリースされたのは、そんな彼らのキャリアを網羅したベストアルバム。まあ、彼らのベスト盤は過去に何作かリリースされており決して新しさはないものの、改めて彼らの代表曲を聴きなおすことが出来ました。比較的ビートの強いダイナミックでリズミカルなサウンドはHIP HOPというよりもロック的な部分も強く、そういう意味ではロックリスナーにも親和性の強いサウンドを聴くことが出来ます。一方ではHIP HOP的な魅力もしっかりと兼ね備えており、ロックリスナー、HIP HOPリスナーに幅広くアピールできるサウンドが彼らの大きな魅力であり、かつだからこそ大ヒットを記録できた、とあらためて感じることが出来ました。それにしても、あまりにも早すぎるMCAの死はあらためて非常に残念にも感じる、そんなベスト盤でした。

評価:★★★★★

Beastie Boys 過去の作品
HOT SAUCE COMMITTEE PART 2
An Exciting Evening At Home With Shadrach, Meshach & Abednego
Love American Style
Hey Ladies(Remixes)
Shadrach(Remixes)
Shake Your Rump(Remixes)
Looking Down The Barrel Of A Gun (Remixes)

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2020年11月15日 (日)

様々なミュージシャンが参加(CHAIも!)した自由度の高いアルバム

Title:Song Machine: Season One – Strange Timez
Musician:Gorillaz

blueのデーモン・アルバーンと、イギリスの漫画家・イラストレイターのジェイミー・ヒューレットによる架空のバンドプロジェクトGorillaz。当初は企画モノ的なプロジェクトとみられてきたGorillazですが、当初の結成から22年目に突入。ともすればblur以上の成功すらおさめており、すっかり「ベテランバンド」の仲間入りをした彼ら(?)。そんなGorillazは今年の初頭から「Song Machine」というプロジェクトをスタート。これはGorillazが様々なミュージシャンと組んで楽曲政策を行うプロジェクトで、そんなプロジェクトの中で発表されたアルバムを今回まとめた、約2年ぶりのニューアルバムが本作となります。

そんなGorillazのニュープロジェクトに集まったメンバーはとにかく豪華で、The Cureのロバート・スミスにエルトンジョン、Beckなどといったベテラン勢から、St Vincentやslowthaiのような注目の若手ミュージシャンまで、ロックやポップス、ソウルやHIP HOPなど、実に多彩な音楽性を持ったミュージシャンが並んでいます。

また、それに従い、収録されている楽曲も実にバラエティー富んだ作品が並んでいます。テンポよく疾走感あるロックチューンの「Strange Timez」からスタートし、Beckが参加した「The Valley of The Pagans」は、Beckらしいともいえる軽快なポップチューン。日本人にとってなじみ深いゲームを題材とした「Pac-Man」はダウナーなラップを入れた、ちょっとコミカルな感のあるポップチューンですし、エルトン・ジョンの参加した「The Pink Phantom」はメロウなソウルチューンとなっています。

その後も、ちょっと80年代的な打ち込みが入ったエレクトロポップの「Aries」、マリのシンガー、Fatoumata Diawaraが参加した「Désolé」は、まさにデーモン・アルバーンの趣味性も反映されたトライバルな雰囲気を兼ね備えた楽曲になっていますし、本編ラストを飾る「Momentary Bliss」はblurの楽曲に似たような要素も感じる、パンキッシュなギターロックチューンで締めくくり。どこかコミカルな雰囲気も感じられる点もGorillazらしいと言えるかもしれません。

デーモン・アルバーンの興味に取り入れつつも、参加ミュージシャンの音楽性に沿ったバラエティー富んだ作品に仕上がっています。もともとGorillazの楽曲は非常に自由度の高い曲が並んでいるのですが、今回のアルバムはそんな中でも特に自由度の高いアルバムに仕上がっていたと思います。これだけ自由度がありつつ「バンド」として破綻していないのは、Gorillazがバーチャルバンドであるが所以でしょうし、またこの自由度があるからこそ、20年以上という長い期間、このプロジェクトは維持できたのでしょう。また一方、どの楽曲もデーモン・アルバーンが持っているポップスセンスあふれるメロディーラインが流れており、それが自由度の高いアルバムの中でひとつの統一感となっています。この点もGorillazの大きな魅力に感じました。

そして今回のアルバムで一番の注目は、ここでも何度か紹介している日本人ミュージシャンCHAIが参加していることでしょう。本編ではなくデラックスエディションに収録されている「MLS」での参加なのですが、「日本人ミュージシャンが参加」といってよくありがちな、日本盤のボーナストラックに参加している、という感じではなく、全世界向けのアルバムの中で参加しています。楽曲はCHAIらしいダウナーな雰囲気のまったりとしたミディアムチューンなのですが、日本語も登場。ボーカルといいCHAIらしいメロディーラインといい、しっかりとCHAIらしさが出ている楽曲になっていました。

ちなみに本作、Season Oneというタイトルがついていますが、このプロジェクトはまだまだ続く、ということなのでしょうか?それだったら、これからも様々なミュージシャンとのコラボが期待できそう・・・。もっとも、この手のプロジェクト、Season Oneなどと名付けながら、いつまでたってもSeason Twoに続かないケースは多々あるので(笑)、過剰な期待をしないで待っていたいと思います。さてさて。

評価:★★★★★

GORILLAZ 過去の作品
D-Sides
Plastic Beach
THE FALL
The Singles Collection 2001-2011
Humanz
The Now Now

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2020年11月14日 (土)

コロナ禍が生み出したアルバム?

先日、TRAVISの「10 Songs」という非常にシンプルなタイトルのアルバムを紹介しましたが、今回のアルバムタイトルは、それを上回るシンプルさかもしれません。

Title:songs
Musician:Adrianne Lenker

Title:instrumentals
Musician:Adrianne Lenker

「songs」と「instrumentals」。そのものズバリでこれ以上ないシンプルなタイトルのアルバムを2枚同時リリースしたのは、ここでもアルバムを何度か紹介したことのあるフォークロックバンドBig Thiefの女性ボーカリスト、Adrianne Lenkerのソロアルバム。Big Thiefのワールドツアーがコロナ禍によって中止された3月初旬に、彼女はマサチューセッツの山小屋に移住。その雰囲気にインスパイアされてつくられたアルバムだそうで、100%アナログ機材だけで制作された作品になっています。

まず「songs」の方ですが、タイトル通り、「歌モノ」の曲を集めた楽曲。非常にシンプルなタイトルにもあらわれているように、基本的にアコースティックギターのみで演奏されたアレンジの中、彼女の清涼感あふれる歌声が静かに流れる楽曲ばかり。とてもシンプルな曲調でフォーキーな作品をしんみりと聴かせる構成になっています。

アコギを静かにかき鳴らしつつメランコリックに歌う「ingydar」、清涼感あるボーカルとメロディーが美しい「anything」、アコギのアルペジオで静かに歌われるフォーキーなメロが印象に残る「heavy focus」、しんみり伸びやかなボーカルを聴かせる「come」、切なさを感じるメロディーラインが印象的な「dragon eyes」など、どの曲も全く派手さはありません。派手さはないのですが、フォーキーで美しいメロディーラインと歌声がしっかりと印象に残る楽曲が全11曲並んでいます。

一方、「instrumentals」は「music fo indigo」「mostly chimes」という2曲だけで構成される40分弱のアルバム。こちらは1日のはじまりに日課として行っていたアコースティックギターの即興演奏をコラージュして構成したアルバムとなっています。そのため楽曲としてはそれぞれ21分、16分という長尺の楽曲なのですが、ひとつの曲としてまとまっているというよりも、それぞれ様々なアコギの演奏が断続的に連なっているような作品になっています。ただ、シンプルで美しいアコギの演奏はとてもやさしさを感じられ、ついつい聴き入ってしまう内容になっていました。

このシンプルなサウンドの楽曲は、まさにこのコロナ禍の「Stay Home」の状況の中、山小屋というちょっと閉鎖的な自然の環境でこそ生まれた作品なのでしょう。そういう意味ではコロナ禍が生み出したアルバムと言っていいかもしれません。コロナ禍は音楽業界にマイナスの意味で様々なインパクトを与えてきましたが、逆にミュージシャンが家にこもって制作しなければならないという制限された環境が故に、新しいアイディアや作品も生み出された側面もあり、このアルバムもそんな典型例と言えるかもしれません。

派手さはなく、わかりやすいインパクトもない作品ではあるのですが、どちらもシンプルなメロディーラインとサウンドが魅力的でついつい聴き入ってはまってしまう、そんな傑作アルバム。とかくギスギスになって憂鬱になりがちな今の世界の状況ですが、そんな中、この美しい歌声に癒されたくなる、そんな作品でした。

評価:どちらも★★★★★

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2020年11月13日 (金)

懐かしいナンバーの連続

B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day2

会場 Zepp Haneda(オンライン) 日時 2020年11月7日(土)19:00~

まだまだコロナ禍の影響でライブの本格的開催もなかなかままならぬ中、今回はB'z初の無観客配信ライブ。今回のライブではなんと毎週土曜日に5週連続のライブを実施。彼らの活動期間を5つの時代に区切り、それぞれの時代の曲をセットリストに組み込んだ、という趣向の凝った配信ライブとなっていました。Day1は見れなかったのですが、今回、まずはDay2を視聴。Day2の今回は90年代半ばの楽曲を集めたセットリスト。自分にとっても高校生から大学生の頃にリリースされた曲の連続で、かなり懐かしさを感じるセットリストになりました。

ライブ会場はZepp Haneda。バックは灰色でくすんだような壁のようになっており、まるで廃墟のような凝った雰囲気のステージになっていました。そんな中、まずは「LOVE IS DEAD」「おでかけしましょ」とかなり懐かしさを感じるナンバーからスタート。というか、久しぶりに聴きました・・・。逆の意味で、このコロナ禍らしい選曲といえば選曲といった感じもします。「おでかけしましょ」は、ある意味B'zらしいともいえる「ポップ」な曲で、ライブで盛り上がりそうだなぁ・・・と思いながら、楽しんで聴くことが出来ました。

そしてかなり懐かしい「Don't Leave Me」へ。かなりゆっくりと、そして力強く歌い上げるライブバラード。うーん、かなりボーカルの声量が必要とされるナンバーなのですが、30年近くたって、全く衰えを感じさせない稲葉浩志のボーカルに驚かされます・・・。さらに「闇の雨」と、こちらはかなりレア曲で、私自身もかなり久しぶりに聴いた感じも。ちょっと切なく歌い上げるバラードナンバーなのですが、こういうライブならではの選曲といった感じでしょうか。かなり意外でした。

バラードでしんみりした選曲から一転、簡単なMCを挟み、これまた懐かしさを感じる「You&I」、さらに「夢見が丘」へ。これもまたアルバム曲ながらも人気の高い、メランコリックなミディアムナンバーで、非常にうれしい選曲に思わず聴き入ってしまいます。その後、軽くMCで、今回のライブ会場の羽田に関するコメントをして、そのまま「love me,I love you」へ。ここで稲葉浩志はマイク片手にステージを飛び出し、Zepp Hanedaの中を歌いながら歩き回ります。ある意味、配信ライブらしい演出。「やりたくないことばかりが/次々と見つかるけれど」のフレーズでコロナ感染症対策のソーシャルディスタンスやマスクのお願いを指さしたりして、なにげにこの曲の歌詞、このコロナ禍でピッタリあてはまってしまうようなフレーズが登場するんですね・・・。

そこから雰囲気は一転。ブルージーなギターフレーズをしっかりと聴かせ、非常にブルージーな曲調の「もうかりまっか」へ。こちらも懐かしいナンバーなのですが、いまから聴くとかなりブルージーな曲調ながらも歌詞はコミカルなのがある意味B'zらしいですね。なぜか途中「港のヨーコヨコハマヨコスカ」ならぬ「羽田のヨーコヨコハマヨコスカ」のフレーズが入った後、暗くなったステージの中で、ランタン片手に、稲葉浩志のコロナ禍での愚痴のような「語り」が繰り広げられるという、今の時代らしい、コミカルな展開になっていました。

そして再びコミカルな演出から一転「The Wild Wind」へ。ステージ上に火がたかれて、かなり雰囲気のあるステージに。このステージ上に火をたくという演出は無観客だからこそ実施できたんでしょうか。続く「Home」は非常事態宣言の中で、自宅セッション動画をアップした曲で、この日は全員での演奏となりました。こちらも今回のライブにふさわしい選曲。まだ無観客ですが、ライブサポートメンバーを含めて演奏できた、という点では日常へちょっとだけ戻ってきたといった感じでしょうか。途中、曲中にMCが入って、稲葉浩志が各メンバーにStay Home中に何をやっていたかのインタビューなんかが入ったりして、これまた、今の時代らしい構成になっていました。

その後のMCではあらためてこの日のメンバー紹介。そしてそのまま「ミエナイチカラ~INVISIBLE ONE~」へと突入しました。ここらへんからライブは終盤戦に。さらに「スイマーよ!」「Liar! Liar!」とアップテンポな曲が続き、テンションはどんどん上がっていきます。そして「さまよえる蒼い弾丸」でさらにテンションは最高潮に達します。

そしてラストは「Calling」!最初、稲葉浩志はマイクを置き、地声で声をはりあげて歌い始めます。この曲も、ある意味、今のコロナ禍の時代を反映できそうな歌詞なのが印象的。稲葉浩志の力強い歌声と、松本孝弘のギタープレイが強く印象に残るナンバーで、まさに今回のライブのラストを飾るにふさわしいナンバーに感じました。

ライブは約1時間40分程度。非常に懐かしい曲の連続。レア曲なども少なくなく、久しぶりに聴いた曲も多くありました。また、演出や選曲なども、このコロナ禍の無観客配信ライブらしい部分も少なくなり、逆にこの状態だからこそ楽しめることが出来るステージだったように感じます。しかし、これらの曲のリリースから既に20年以上の月日が経過しているんですね・・・あらためて自分が年を取ったなぁと感じてしまいました(苦笑)。そして、変わらぬ稲葉浩志の歌唱力にはビックリ。ただ、さすがにルックスやMCの普通のしゃべるになると、それなりの寄る年波を感じてしまうのも事実なのですが・・・。

終始懐かしい気分に浸りながら楽しんだB'zのライブ。5週連続のライブということで、来週は残念ながら予定があり見ることが出来ないのですが、Day4やDay5も時間が許せば見てみたいなぁ。配信ライブというスタイルをしっかりと生かした、彼ららしい完成度の高いステージでした。

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2020年11月12日 (木)

This is 1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

圧倒的な強さでの1位獲得です。

1位初登場はの約3年ぶりとなるオリジナルアルバム「This is 嵐」。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位を獲得し、総合順位も1位。ここ最近、配信シングルのリリースが続いている彼らですが、そのシングル曲も収録した本作。発売日の11月3日はデビューシングル「A・RA・SHI」からちょうど21年目になる日に設定したようで、通常の水曜日発売ではなく火曜日発売となっています。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上69万9千枚で1位初登場。直近作はベスト盤「5×20 All the BEST!! 1999-2019」で同作の初動130万4千枚からはさすがに大きくダウン。前作「『untitled』」の66万8千枚(1位)よりはアップ。今年いっぱいでの活動休止を予定している彼らですが、集大成的なアルバムタイトルは、ラストであることを意識したのでしょうか。

2位は韓国の男性アイドルグループStray Kids「ALL IN」が先週の62位からランクアップし、2週目にしてベスト10入り。CD販売数2位、ダウンロード数及びPCによるCD読取数47位。オリコンでは初動売上4万8千枚で2位初登場。前作「SKZ2020」の3万1千枚(1位)からアップ。

3位初登場はEXILE ATSUSHI「40~forty~」。11月2日をもってEXILEを脱退したATUSHIのソロアルバム。タイトルは彼の今の年齢から取ったのでしょう。CD販売数3位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数36位。オリコンでは初動売上2万3千枚で4位初登場。直近作はベストアルバム「TRADITIONAL BEST」で、初動1万枚(8位)よりアップ。ただし、オリジナルアルバムとしての前作「Love Ballade」の8万1千枚(1位)よりはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に、現在人気上昇中のポップスバンド、マカロニえんぴつ「愛を知らずに魔法は使えない」がランクイン。CD販売数4位、PCによるCD読取数33位。全6曲入りのEP盤。テレビ東京系アニメ「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」のオープニング曲「生きるをする」とエンディング曲「mother」が収録されており、同作の軸となっていますので、アルバムタイトルはドラクエを意識したのでしょう。オリコンでは初動売上1万6千枚で6位初登場。前作「hope」の1万1千枚(4位)からアップしています。

9位は主にアニソンを中心に歌う男女2人組ユニット、fripSideのベストアルバム「the very best of fripSide 2009-2020」がランクイン。ボーカルが以前のnaoから南條愛乃に代わって以降の楽曲を集めたベスト盤。CD販売数6位、ダウンロード数22位、PCによるCD読取数25位で総合順位は9位にランクイン。ちなみにバラードベスト「the very best of fripSide -moving ballads-」との同時リリースとなりますが、同作は惜しくも11位に留まりました。オリコンでは初動売上9千枚で8位初登場。直近作「infinite synthesis 5」から初動枚数は横バイ(9位)となっています。

もう1枚、こちらもアニソンを中心に歌う男性2人組ユニットGRANRODEOのシングルコレクション「GRANRODEO Singles Collection "RODEO BEAT SHAKE"」が10位初登場。CD販売数8位、ダウンロード数69位、PCによるCD読取数68位。オリコンでは初動売上6千枚で12位初登場。直近作「FAB LOVE」の9千枚(8位)からダウン。ベスト盤としての前作「DECADE OR GR」の1万4千枚(5位)からも大きくダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年11月11日 (水)

「鬼滅」人気はまだまだ続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

これで4週連続の1位となりました。

今週1位を獲得したのは大ヒット中の映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」主題歌、LiSA「炎」。これで4週連続の1位獲得となります。先週1位だったCD販売数は5位、ラジオオンエア数は4位、PCによるCD読取数は2位にダウンしましたが、ダウンロード数、ストリーミング数、You Tube再生回数は今週も1位獲得。「鬼滅」人気でのヒットはまだまだ続きそうです。一方、「紅蓮華」は今週2位から5位にダウン。とはいえ、ベスト10記録を通算44週に伸ばしています。

2位初登場はジャニーズ系アイドルグループSexyZone「NOT FOUND」。日テレ系ドラマ「バベル九朔」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位を獲得していますが、Twitterつぶやき数3位、ラジオオンエア数47位、その他のチャートでは圏外となり、総合順位は2位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上24万4千枚で同作が1位獲得。前作「RUN」の24万6千枚(1位)からはダウンしています。

3位はBUMP OF CHICKEN「アカシア」がCDリリースに合わせて先週の29位からランクアップ。4週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。「ポケットモンスター」スペシャルミュージックビデオ「GOTCHA!」テーマソング。CD販売数で初登場3位を記録したほか、CDリリースに合わせてラジオオンエア数も54位から18位、Twitterつぶやき数もランク圏外から12位へと大きくランクアップしています。オリコンでは初動売上9万2千枚で2位初登場。前作「話がしたいよ」の5万7千枚(3位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲となります。まず4位に、秋元康が企画したオーディション番組から登場したアイドルグループラストアイドル「何人も」がランクイン。CD販売数は2位でしたが、PCによるCD読取数56位、Twitterつぶやき数28位、その他のチャートは圏外となり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上7万6千枚で3位初登場。前作「愛を知る」の5万1千枚(1位)からアップしています。

10位にはKing Gnu「三文小説」が先週の11位からランクアップし、ベスト10入りを果たしています。日テレ系ドラマ「35歳の少女」主題歌で、12月2日リリース予定のCDからの先行配信となります。ピアノやストリングスも入って叙情的に歌い上げる楽曲で、ファルセットを多用した常田大希のハイトーンボーカルも印象的。かなり歌謡曲テイストも強い曲になっています。ダウンロード数3位、ストリーミング数16位、ラジオオンエア数23位、Twitterつぶやき数11位、You Tube再生回数12位。CDリリース時点でランクアップが予想されますが、今後、ロングヒットとなるのでしょうか?

さて一方ロングヒット曲ですが、まず韓国系。BTS「Dynamite」は先週の3位から7位にダウン。ただ、ストリーミング数2位、You Tube再生回数3位は先週から変わらず。ダウンロード数は10位から6位にアップするなど、まだまだ強さを感じます。これで12週連続のベスト10ヒットとなりました。

NiziU「Make you happy」は6位から8位にダウン。こちらはストリーミング数は6位から7位にダウンしましたが、ダウンロード数7位、You Tube再生回数5位は先週から同順位を維持しています。こちらはこれで19週連続のベスト10ヒット。

またYOASOBI「夜に駆ける」は4位から6位にダウン。とはいえ、こちらもストリーミング数の3位、You Tube再生回数の2位は先週から変わらず。ダウンロード数も6位から5位にアップしています。これで本作は29週連続のベスト10ヒットとなります。

ただ一方、今週は初登場曲及びベスト10圏外からのランクイン曲が4曲あった影響もあり、ベスト10からランクダウンしたロングヒット曲も目立ちます。まず瑛人「香水」は今週、ついに11位にダウン。ベスト10ヒットは27週連続でストップです。ただストリーミング数及びYou Tube再生回数はまだ10位にランクインしており、来週以降の再ランクインも十分可能性はありそう。

しぶとい人気を見せていたあいみょん「裸の心」も今週14位にダウン。ベスト10ヒットは21週連続通算22週目で一度ストップです。こちらもストリーミング数は8位とベスト10をキープしており、まだまだ上位を狙えそうです。

さらに米津玄師「感電」も7位から15位にダウン。こちらもベスト10ヒットは17週連続でストップしています。本作もストリーミング数は9位、You Tube再生回数は8位にランクインしており、まだまだ再ランクインの可能性はありそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年11月10日 (火)

あえて「今」をパッケージ

Title:NOW
Musician:クレイジーケンバンド

ほぼ毎年、オリジナルアルバムをリリースし続けるクレイジーケンバンド。結成から23年目で20枚目という昨今では珍しいハイペースでアルバムをリリースし続けていますが、このコロナ禍の中でも当然のようにニューアルバムがリリースされました。前作「PACIFIC」から約1年2ヶ月ぶりとなる新譜です。

今回のアルバムは、そんな新型コロナ感染症が蔓延する中で作成された作品となっており、ほとんどが「Stay Home」の環境の中で作成された曲だそうです。おそらく、この2020年という1年は、多くの人たちにとっては早く過ぎ去ってほしい1年ではなかったでしょうか。しかし、今回のアルバム、タイトルからしてあえて「今」という時代をパッケージした作品になっています。クレイジーケンバンドの横山剣はこのアルバムに対して「数年後に『2020年ってこんなだったんだよね』となれば本望」と語っていますが、「混沌とした時代の"夜"と"朝"の間」という表現も用いており、「Stay Home」の環境下で作成したアルバムだったからこそ、この時代の空気感が反映されたアルバムになっていた、ということなのかもしれません。

アルバムの冒頭を飾る「サムライ・ボルサリーノ」などは、まさにそんなコロナ禍を反映したワードが歌詞にも登場しており、「Go toかStayか」「禍が明けたら ハグしような」なんてフレーズが登場しています。楽曲もファンキーなリズムながらもミディアムチューンでどこか気だるさを感じさせる点も、コロナ禍での今の空気を反映させたような曲調に仕上がっています。

ただ、歌詞というよりも、この「今」の空気を包み込んだのは楽曲全体の雰囲気でしょう。基本的に楽曲はいつも通りのクレイジーケンバンドといった感じで目新しさはないのですが、ミディアムチューンのメロウでアンニュイな雰囲気の楽曲が多く並んでいます。ミディアムチューンでねっとりとした雰囲気を醸し出す「IVORY」、ボッサ風の「だから言ったでしょ」、しんみりメロウにムーディーに聴かせる「月夜のステラ」、タイトル通り、どこかドリーミーで気だるさを感じる「夢の夢」など、しっとりと聴かせるタイプの曲が目立つように感じます。

そしてラストを締めくくるのが「Hello,Old New World」という、これもアンニュイな雰囲気が漂うインストチューン。この「古く新しい世界」というのは、まさにコロナ禍で、それに対応した生活様式を強制される、今の状況に当てはまっている、と言えるかもしれません。まさに、2020年という時代にふさわしいアルバムになっていました。

目新しさはないものの、ベテランらしい安定感はしっかりと感じられたアルバム。しんみり聴かせるナンバーが多かっただけにちょっと地味かな?という印象もあるのですが、逆に統一感があり、今の時代へのメッセージ性もしっかりしており、そういう意味でもアルバム全体として実によく出来た作品になっていたと思います。次はまた来年、新譜がリリースされるのでしょうか。その時までには、このコロナ禍から抜け出して、生活様式も以前のスタイルを取り戻していればよいのですが・・・。

評価:★★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね
香港的士-Hong Kong Taxi-
CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界
GOING TO A GO-GO
PACIFIC


ほかに聴いたアルバム

CHAOSMOLOGY

ロックバンド9mm Parabellum Bulletに対するトリビュートアルバム。全2枚組からなる内容で、Disc1は「歌盤」、Disc2は「instrumental盤」として、それぞれ歌あり曲を収録したロックバンド中心のトリビュートと、インストバンドによるトリビュートから構成されています。

Disc1の「歌盤」に関しては、正直、いまひとつ面白味はありませんでした。もともと9mm Parabellum Bulletは癖の強いバンドなのですが、各バンド、その9mmの作風をそのままなぞっただけのカバーといった感じでバンドとしての個性を出せておらず、面白味はゼロ。唯一、チャランポランタンだけが、自らの土俵に9mmの曲を引きずり込み、彼女たちらしいカバーに仕上げていたユニークな内容になっていました。一方で非常におもしろかったのがインスト盤。バンドそれぞれ自らの解釈により9mmの曲をカバーしており、個性あふれるバリエーションあるカバーになっていました。

正直、「歌盤」は参加バンドの力不足が目立ってしまった感も・・・。一方、「instrumental盤」は各々のバンドの実力がはっきりと感じられた良カバーでした。評価は両者合わせてといった感じで。

評価:★★★★

LIVE IN HEAVEN/曽我部恵一

コロナ禍の中の7月14日に、渋谷WWW Xで行われたラップセットでの曽我部恵一のライブ音源をおさめたライブアルバム。HIP HOPイベントの一環として行われたステージだったらしく、アルバム「ヘブン」をベースとした全編ラップによるステージとなっています。これはこれで貴重なステージで聴きごたえがあったのですが、バンドによる演奏だったこともあり、若干HIP HOPにもロックにもどっちつかずだったような印象を受けてしまう点が気になりました。元となったアルバム「ヘブン」でも、どこかHIP HOPに慣れていない素人っぽさが感じられて、それがひとつの魅力ではあったのですが、ライブではそういうHIP HOPに慣れていない部分がチグハグさとして出てしまった感もありました。

ただ今回のアルバム、コロナ流行後のライブをおさめたアルバムとしては、私が聴いた中で(配信などをのぞいて)はじめて・・・かも??少しずつライブイベントも戻って来たみたいで、このまま以前みたいにライブが普通に行われる状況に1日も早く戻ってくれればいいのですが・・・。

評価:★★★★

曽我部恵一 過去の作品
キラキラ!(曽我部恵一BAND)
ハピネス!(曽我部恵一BAND)
ソカバンのみんなのロック!(曽我部恵一BAND)
Sings
けいちゃん
LIVE LOVE
トーキョー・コーリング(曽我部恵一BAND)
曽我部恵一 BEST 2001-2013
My Friend Keiichi
ヘブン
There is no place like Tokyo today!
The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-
純情LIVE(曽我部恵一と真黒毛ぼっくす)

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2020年11月 9日 (月)

愛すること

Title:ねえみんな大好きだよ
Musician:銀杏BOYZ

実に前作から約6年半ぶりとなる銀杏BOYZのニューアルバム。ご存じの通り、GOING STEADY解散後、峯田和伸が2003年に結成した銀杏BOYZ。2005年には2枚のアルバムを同時リリースした後、ライブを中心に活動を続け、それからちょうど9年という間隔をあけて、まだ2枚同時にアルバムをリリース。そこからさらに約6年半という月日をあげて、ようやくリリースされたニューアルバムが本作です。これが5枚目のアルバムとなるのですが、2005年のリリースも2014年のリリースもいずれも2作同時リリースとなっていますので、事実上、3作目のアルバムと言えるかもしれません。

結成から既に17年が経過している銀杏BOYZ。その間にメンバーも脱退し、現在は峯田和伸のソロプロジェクトとなっていますが、非常に寡作なミュージシャンであることがわかります。逆に言えば、それだけ1作1作への力の入れようがすごい、とも言えるわけで、実際、今回のアルバムも、峯田和伸のあふれだしそうな思いがそのままつまったようなアルバムになっています。

彼の「思い」がまずはサウンド面であふれ出しているのはアルバムの冒頭。「DO YOU LIKE ME」のスタートは強烈なノイズからスタート。2014年にリリースされたアルバム「BEACH」は全編、ノイズで埋め尽くされたアルバムになっていましたが、それを彷彿とさせる出だしになっています。ただハードコアパンクなこの曲、「ねえみんな大好きだよ」というアルバムタイトルとは裏腹な「DO YOU LIKE ME」と問いかける内容に、「愛されたい」という彼の感情がストレートにこもっており、峯田らしい赤裸々な歌詞も大きなインパクトとなっています。

続く「SKOOL PILL」も「DO YOU LIKE ME」同様のハードコアパンクが続き、GOING STEADY時代の「DON'T TRUST OVER THIRTY」をセルフカバーした「大人全滅」もヘヴィーなギターサウンドをバックに歌い上げるパンキッシュなナンバー。まさに序盤は峯田のあふれる思いが、そのままハードコアパンクという形に体現化されたような楽曲が並びます。

ただ一方、ここからグッと変わるのが中盤以降。続く「アーメン・ザーメン・メリーチェイン」は、ギターノイズが前面に流れているものの、主軸となっているのはメランコリックなメロでしんみりと歌われる「歌」。あのYUKIと共演した「恋は永遠」に至っては、大滝詠一を彷彿させるような分厚いサウンドでキュートなポップチューンに。「GOD SAVE THE わーるど」も軽快なエレクトロアレンジのポップチューンとなっており、アルバム全体を聴き終わると、むしろそのメロディアスな歌が印象に残り、ポップなアルバムという印象を受けます。

しかしそんな中でも強烈に響いてくるのは、「愛すること」をストレートに、時にはその本質部分をえぐりだすように描いた、峯田和伸の歌詞。例えば「骨」では

「愛しちゃいたい
愛しちゃいたい
愛しちゃいたい
きもいね。しゃあないね。
骨までしゃぶらせて」
(「骨」より 作詞 峯田和伸)

と、かなり赤裸々な歌詞が強いインパクトを残します。そしてなにより歌詞で強い印象を受けるのが「生きたい」でしょう。12分に及ぶ長いこの楽曲では、峯田和伸の思いが滔々と語られています。なによりもタイトル通り「生きたい」と歌い上げるこの曲ですが、同時に愛し愛されることを綴っています。そしてこの曲を聴くと、アルバムタイトルにもなり、アルバム全体で歌われている「愛すること」「愛されること」というのは、すなわち、「生きること」につながっている・・・そう強く感じられる楽曲になっており、まさにこのアルバムの集大成的な1曲と言えるでしょう。

ノイズを前面に押し出した曲調や峯田和伸の思いを詰め込んだ歌詞の世界といい、聴き終わってかなり重く心に響いてくるアルバム。確かに、これだけの思いを詰め込んだアルバムを作り上げるのだから、寡作にならざるを得ないよなぁ・・・と思ってしまうアルバムでした。いろいろな意味でズッシリと重たい、すごいアルバムだったと思います。次のアルバムもまた、5、6年後になるのでしょうか。でも、これだけの作品を作り上げるのだから、仕方ないのかなぁ。

評価:★★★★★

銀杏BOYZ 過去の作品
SEX CITY~セックスしたい(銀杏BOYZと壊れたバイブレーターズ)
光のなかに立っていてね
BEACH


ほかに聴いたアルバム

Patrick Vegee/UNISON SQUARE GARDEN

途中、B面ベストのリリースを挟みつつ、オリジナルアルバムとしては前作「MODE MOOD MODE」以来、約2年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。その前作は、バンドとしての勢いがそのままアルバムに反映されたような、まさに脂ののったバンドが、もっとも脂ののった時期にのみリリースできるような傑作アルバムに仕上がっていました。そこから3年近くが経過した本作も、その勢いはまだ止まっていません。ただ、正確に言うと、楽曲のセレクトや構成により勢いを持続させようとしているようなアルバムで、特にアップテンポな楽曲の連続、かつ曲間のあえて狭められたような構成になっており、アルバム全体として疾走感のある内容になっていました。そういう意味でアルバム構成や選曲に頼っているという意味では前作に比べると、という側面があるものの、まだまだやはりバンドとしての勢いは感じられるアルバム。まだまだ彼らの勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT
Dr.Izzy
MODE MOOD MODE
Bee-Side Sea-Side 〜B-side Collection Album〜

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2020年11月 8日 (日)

バラエティー豊富な作風に音楽的素養を感じる

Title:SUPERMARKET
Musician:藤原さくら

2016年に月9ドラマ「ラヴソング」のヒロイン役に抜擢され、主題歌「Soup」も大ヒットを記録し、一躍話題を呼んだシンガーソングライター藤原さくら。このように書くと、いかにも大手芸能事務所がゴリ押しでプッシュした、典型的なJ-POP系の売れ線シンガー…というイメージを持ってしまうのですが、実はアルバム単位で聴くと、深い音楽的素養と洋楽からの強い影響を感じる実力派シンガーソングライターだった、ということは以前、何度か紹介した彼女のアルバムのレビューでも記載済かと思います。今回のアルバムは、その大ヒットしたシングル「Soup」を収録した「PLAY」から約3年5ヶ月ぶり。途中、ミニアルバムのリリースを挟みつつ、フルアルバムとしては久々となるニューアルバムとなります。

そんな久々となる今回のアルバムなのですが、まず大きな特徴としては、様々なミュージシャンがプロデューサーとして加わり、楽曲の幅がグッと広がった点ではないでしょうか。途中リリースされたミニアルバム「red」「green」ではOvallのmabanuaがプロデューサーとして参加。それはそれでアルバム全体に統一感をもたらす結果となりました。今回のアルバムはmabanuaのほかに、Ovallのメンバーである関口シンゴやSPECIAL OTHERSのYAGI&RYOTAなど、前作「PLAY」で参加していたメンバーに加えて、冨田恵一やスカートの澤部渡などもプロデューサー勢で参加。前作「PLAY」でも多彩なプロデューサーが参加していたのですが、さらにバリエーションが広がっている印象を受けます。

アルバムのスタートは爽快なポップチューン「Super good」からスタート。全英語詞のナンバーで洋楽テイストの強いリズミカルなポップチューンになっています。さらに2曲目「Ami」は彼女自ら編曲を手掛けた楽曲なのですが、こちらはバンドサウンドでロック色も強い、ちょっとメランコリックさも感じるメロディーラインが魅力の楽曲に。メロウなソウルテイストのミディアムチューン「生活」「Right and light」も魅力的。ムーディーな雰囲気の漂う大人なポップに仕上がっています。

その後もホーンセッションも入って軽快なポップスに仕上げている「Monster」や軽快なカントリー風の明るいポップス「BPM」、最後はギターでしんみり聴かせるブルージーな「楽園」など、洋楽テイストも強い魅力的なポップナンバーが続いていきます。一方で「コンクール」などは、ストリングスも入ってムーディーな雰囲気の歌謡曲テイストの強い楽曲になっており、そういう点でもバラエティー豊富な作風を感じさせます。

ロックやポップス、カントリー、ソウル、ブルース、さらには歌謡曲まで、まさに非常に音楽性の幅広さを感じさせる藤原さくらの実力を感じさせるアルバム。作風がバラバラなゆえに、若干アルバム全体としての統一感には欠け、また核になるような楽曲がなかったという点では、インパクトの不足を感じる点、正直、マイナスポイントも感じてしまいます。ただ、もっともっと高い評価を受けてもいいシンガーソングライターであることには間違いありません。幅広いポップス愛好家に是非とも聴いてほしいと感じる、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

藤原さくら 過去の作品
PLAY
green
red


ほかに聴いたアルバム

THE ARTIFACTS,UNPLUGGED MUSIC/オサム&ヒロノリ from MOON CHILD

1997年にシングル「ESCAPE」がドラマ主題歌にも起用され大ヒットを記録したバンドMOON CHILD。残念ながら大ヒットはこの1曲のみに終わり、1999年にバンドも解散してしまいます。その後も散発的な再結成が何度か行われたのですが、新たな音源はリリースされず今日に至っています。そんな中、リリースされたのがギターボーカルの佐々木収とギターの秋山浩徳が組んで結成されたこのユニット。楽曲としてはMOON CHILDの代表曲をアコースティックギターでカバーした作品。久しぶりにMOON CHILDの曲を聴いたのですが「ESCAPE」に限らず、ファンキーなサウンドとメロディアスなポップはインパクトがあり、ヒットがほとんど続かなかったのが不思議に感じるほど。売り方が悪かったのかなぁ。アコギのソロも魅力的でしたが、久しぶりにMOON CHILDの原曲も聴きたくなった、そんなカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

シングルコレクション+アチコチ/坂本真綾

デビュー25周年を記念してリリースされた坂本真綾のタイトル通りのシングルコレクション。2012年にリリースされたシングルコレクション「シングルコレクション+ミツバチ」以降にリリースされたシングル曲を網羅しているほか、未発表曲や初CD化となるレアトラックも収録した2枚組となるアルバム。とにかく清涼感ある歌声が魅力的で、いままでの作品以上に楽曲のバリエーションが増しているのですが、アコースティックな作風やサウンドの間を聴かせるような隙間のあるアレンジの方が彼女にはマッチしているような感じも。ユーミンの「卒業写真」のカバーも絶品で、彼女のボーカリストとしての魅力も感じさせます。「シングルコレクション+ミツバチ」に収録されていた「やさしさに包まれたなら」のカバーも素晴らしかったので、なにげにユーミンと彼女、相性よいのでは?次は書き下ろし作を依頼してみてもよいのかも??とにかく、これからのさらなる活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

坂本真綾 過去の作品
かぜよみ
everywhere
You can't catch me
Driving in the silence
シングルクレクション+ ミツバチ
シンガーソングライター
FOLLOW ME UP
今日だけの音楽

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2020年11月 7日 (土)

ネタの切れ味は抜群

Title:パペピプペロペロ
Musician:ブリーフ&トランクス

毎回、日常の些細な出来事をユニークな視点から歌にしつつ、学生時代からの友人であるメンバー2人のハーモニーが大きな特徴のフォークデゥオ、ブリーフ&トランクス。公式サイトの紹介では「ブリトラサウンドの代名詞でもあるコンピュータープログラミングをあえて封印し、初の試みであるアコースティックギターにとことんこだわったアンプラグド的なアルバム!」と記載があるのですが・・・あれ?打ち込みってブリトラの代名詞だったっけ??むしろアコギメインのギターデゥオって印象が強いのですが・・・(確かに、リズムに打ち込みを用いた曲が多いのは事実ですが)。

そんな訳で今回のアルバム、特徴としては2人のアコギの音だけに拘ったアコースティックなアルバムになっています・・・という感じなのですが、確かに打ち込みのリズムはなくなったものの、基本的にいままでも2人のアコギの音色や2人のハーモニーワークに軸足が置かれていたユニットでしたので、そんなに大きな印象の違いはありません。もちろん、それは悪い意味ではなく、(今回の曲のネタになっている表現になってしまうのですが)「いい意味で」

最終的にはブリトラのアルバムの良しあしは、彼らの歌のネタの切れ味に左右されるところが多いのですが、前作「ブリトラ埋蔵金」ではメンバーの伊藤多賀之のソロ時代の曲をリメイクするなど、若干ネタ切れ気味か?と思われる部分もありました。ただ、今回の作品に関しては、再びネタの切れ味が戻ってきたように感じます。まずインパクトがあったのが冒頭を飾る「ガテン系リズム」。タイトル通り、ガテン系、いわば肉体労働者の日常を、建設現場の工事のリズムにのせて歌う楽曲で、そのアイディアもユニークですし、2人が交互に歌うスタイルも、その2人の息の合ったコンビネーションを感じる、ブリトラらしい作品になっています。

上でも私が使ってしまいましたが、日常会話でよく用いられがちなフレーズ「いい意味で」をユニークにネタにした「いい意味で」や、彼ららしい学校ネタの「多目的室」、さらにユニークなエロ歌詞が爆笑モノの「SM相対性理論」も非常にユニーク。ラストを締めくくるのは、2014年のシングル曲「メラメラスクリーム」の第2弾「メラメラスクリーム2」。ファルセットボイス中心に構成され、日常で思わず叫びたくなるようなネタを繰り広げるのですが、ネタ的にはむしろ第1弾よりもユーモラスさを増した感じもします。

ただ今回のアルバムで一番インパクトがあったのは、「旦那アレルギー」だったのではないでしょうか。冷め切った夫婦間を辛辣な視点で描くこの曲は、ネタ的にはかなりハード。最後のオチもかなりヘヴィーな展開となっており、もし歌詞を見ただけならば、よくこれだけ重い内容を曲にできたな、と思うのですが、それを意外と違和感なくアルバムの中で歌ってしまうあたり、日ごろから日常ネタを曲にしているブリトラだからこそ、といった感じなのでしょうか。ただ、こういう重いネタをさらっと歌えてしまうあたりに、何気に彼らの実力を感じたりもしました。

ネタ的には「よくこんなネタ、見つけてきたな」と思うような感心するような題材も多く、ブリトラの切れ味が完全に戻った感のある今回のアルバム。クスっと笑いながら、時にはその視点にドキッとしながら、最後まで一気に聴くことが出来たアルバムでした。

評価:★★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛
ブリトラ依存症
手のひらを満月に
ブリトラBESTバイブルⅠ~家族で聴いても恥ずかしくない曲集~
ブリトラBESTバイブルⅡ~ひとりでこっそり聴いた方がいい曲集~
ブリトラ埋蔵金


ほかに聴いたアルバム

ASOVIVA/フレデリック

フレデリックの新作は全6曲(初回盤は全7曲+DVD)入りのEP盤。シンセを全面的に用いた軽快なエレクトロダンスチューンに、メランコリックなメロディーラインというスタイルはいつも通り。先行配信リリースされた「されどBGM」など、ちょっと洒落たシティポップ風の作品が魅力的。基本的にはいつもの彼らのスタイルといった感じではあるのですが、タイトル通りの軽快な「遊び場」を提供してくれるような、そんな作品でした。

評価:★★★★

フレデリック 過去の作品
フレデリズム
TOGENKYO
フレデリズム2

SKY-HI's THE BEST/SKY-HI

SKY-HI名義でのソロ活動が話題となっている、avexのダンスグループAAAのメンバー、日高光啓のソロベスト。3枚組となっており、Disc1は「POPS BEST」として、タイトル通りのポップスの曲を並べた作品、Disc2は「RAP BEST」としてHIP HOPの曲を並べた作品、Disc3は「COLLABORATION BEST」として様々なミュージシャンとのコラボ作を集めた作品となっています。

内容の出来栄えとしては、明らかにDisc3>Disc2>Disc1といった感じ。「POPS BEST」もHIP HOP的な作品もあり決して悪くはないのですが、今どきよくありそうなJ-POPという印象。「RAP BEST」はラッパーとしての評価の高い彼の本領発揮といった感じなのですが、それ以上に良かったのが「COLLABORATION BEST」。彼みたいなラップスキルがあって、ある意味アイドル的な端正なボーカルの持ち主は珍しいのでしょうか。それなりに個性的でありつつも癖がありすぎるわけではなく、かつラップスキルもあるという彼の存在はコラボ相手としてかなり貴重かつどのようなラッパーともうまくマッチしています。「POPS BEST」が3つ、「RAP BEST」が4つ、「COLLABORATION BEST」が5つ。そのため合計の評価は・・・

評価:★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO
JAPRISON
Say Hello to My Minions 2(SKY-HI×SALU)

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2020年11月 6日 (金)

往年のロックバンドらしいロックバンド

Title:Strange Days
Musician:The Struts

イギリスのロックバンド、The Strutsの3枚目となるニューアルバム。70年代、ともすれば60年代あたりのロックバンドを彷彿とさせるようなジャケット写真もそうですが、ある意味、いかにもロックバンドらしいといった表現がピッタリとくる彼ら。もともとイギリスでもライブを中心に徐々に人気をあげてきており、本作ではイギリス公式チャートで自身最高位となる11位を記録。確実に、ファン層を広げてきています。

そのジャケット写真もそうですが、彼らの楽曲はいかにもロック然としたロックといった感じ。ハードロックやグラムロックの影響をストレートに受けた楽曲が印象的で、特に70年代後半や80年代あたりの、ロックというジャンルが最も「ポップ」で、人気の高かった時代のサウンドをそのままこの時代に引き継いだような、そんな作風が印象的です。

タイトルチューンである1曲目「Strange Days」はかのロビー・ウイリアムズがゲストボーカルで参加。スケール感あるサウンドで、どちらかというとロックというよりもポップ寄りの作品になっているのですが、2曲目「All Dressed Up(With Nowhere To Go)」は、イントロのギターリフは、ストーンズからの影響を強く感じる一方、ボーカルのシャウトはいかにも80年代的で一種のなつかしさを感じます。

続く「Do You Love Me」や、デフ・レパードのジョー・エリオットとフィル・コリンが参加した「I Hate How Much I Want You」は完全に80年代の産業ロックを彷彿とさせるようなダイナミックなナンバー。ひょっとしたら、この曲を10年くらい前に聴いたら「ダサい」という印象すら受けていたかもしれません・・・。ただ、時代が一回りしたということもあるでしょうし、やはりダイナミックなバンドサウンドが魅力的という点もあるのでしょう。今聴くと、懐かしさと同時にカッコよさを感じさせる楽曲になっています。

しかし、このアルバムの中で文句なしにカッコよかったのはちょうど中盤、5曲目の「Wild Child」でしょう。この曲、あのトム・モレロがギターで参加。彼の奏でるヘヴィーなギターリフだけで楽曲がグッと引き締まる、文句なしにカッコいい楽曲。The Strutsが、というよりもトム・モレロの実力による部分も大きいのですが、アルバムの中でも断トツにカッコいいサウンドを聴かせてくれます。

後半も、いかにもハードロック然としたロックバラード「Burn It Down」や、AOR風の「Another Hit Of Showmanship」、さらにモータウンビートを取り入れて軽快なハードロックチューン「Can't Stop」など、80年代テイストをふんだんに盛り込んだ、懐かしさ満載のロックナンバーが続いていきます。アラフォー、アラフィフ世代には、感涙モノと言える楽曲ばかりようにも感じます。

そんな訳で往年のロックバンドらしい楽曲がならんだアルバム。ただ、今の時代となっては逆に新しさと、その突き抜けぶりからはむしろカッコよさすら感じさせる、そんなアルバムになっていました。正直なところ、上にも書いた通り、このアルバムを10年前に聴いたら、「ダサい」と感じてしまったかもしれません。もっとも、昔の産業ロックバンドみたいな大味な部分はあまりなく、ルーツロックをはじめ様々な音楽からの影響や楽曲のバリエーションも感じさせてくれます。間違いなく、ロック好き、それもひと昔前のハードロックが好きならはまってしまうアルバム。まだまだ人気が伸びそうな予感のする1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Blue Note Re:Imagined

イギリスのデッカ・レコードとジャズの名門レーベル、ブルーノートがタッグを組んでリリースしたコンピレーションアルバム。Blue Noteの名曲の数々を現代のジャズミュージシャンがカバーしたアルバム。全体的に今風なアレンジでBlue Noteの名曲の数々を再解釈した曲が並んでいるのですが、大胆な再解釈というよりは、原曲を今風にリアレンジといった印象の楽曲が多かったような。全体的にはメロウなサウンドで幅広いジャズリスナーが楽しめそうなコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★

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2020年11月 5日 (木)

かなり意外な1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位は正直言って、かなり意外でした。

今週1位を獲得したのはZORN「新小岩」。もともと般若主宰の昭和レコードに所属していたラッパー。10代から数多くのMCバトルで好成績を残していたようですが、自主製作版でのデビューが2009年というから、何気に既に中堅の域に達しているラッパー。前作「LOVE」を最後に昭和レコードを脱退。昭和レコード脱退後初となる本作で、見事1位獲得となりました。さらに今回のチャートで驚きだったのは、CD販売数はなんと20位という低順位だったという点。一方、ダウンロード数は1位を獲得。PCによるCD読取数も64位に留まったものの、総合順位では見事1位獲得となりました。ちなみにオリコン週間アルバムランキングでも、初動売上はわずか1千枚で36位初登場に留まっています。ただ一方オリコンでも合算アルバムランキングでは10位にランクインしており、かなり極端に売上比率が配信に偏った結果になっていました。

続いて2位にランクインしたのは韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「minisode1:Blue hour」。彼ら3作目となるミニアルバムで、CD販売数は本作が1位。ダウンロード数も14位にランクインしたものの、総合順位では2位に留まりました。一方、オリコン週間アルバムランキングでは同作が1位に初登場。初動売上は3万2千枚で、前作「The Dream Chapter:ETERNITY」の2万9千枚(1位)よりアップしています。

3位は、今週、Hot100で2週連続1、2フィニッシュを達成したLiSA「LEO-NiNE」が先週の4位からランクアップ。2週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。本作も鬼滅効果でロングヒットを記録しそうです。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位にアラフォー世代には非常に懐かしい名前のバンドがランクインしています。今週4位に初登場したのはWANDS「BURN THE SECRET」。90年代のビーイング系ブームの時に「もっと強く抱きしめたなら」や「時の扉」などが大ヒットを記録し、一躍人気バンドとなった彼ら。その後、売れ線路線に嫌気がさしたボーカルの上杉昇と柴崎浩が脱退し、WANDS解散か?と思いきや、どこからか全くWANDSとは関係ないボーカリストがバンドに参加し、無理やりバンドは継続。一部で失笑を買いました。その後、徐々に活動は縮小し、自然消滅的な流れとなったのですが、昨年、まさかのバンド再開。ボーカルこそ上原大史という新ボーカルを起用したものの、ギターは柴崎浩、キーボードは木村真也という、全盛期のメンバーが参加しての復活となりました。本作では、「Secret Night」や「もっと強く抱きしめたなら」「世界中の誰よりきっと」など全盛期のヒットナンバーもカバー。そんな選曲がアラフォー世代の懐古心をくすぐったのか、CD販売数2位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数11位で見事ベスト10ヒットとなりました。オリコンでも初動売上1万5千枚で4位初登場。ベスト10ヒットは1995年の「PIECE OF MY SOUL」以来、実に約25年ぶりという記録となりました。

9位初登場はにじさんじ「Prismatic Colors」。「にじさんじ」はいちから株式会社が運営するスマートフォンアプリで、同アプリを使用したバーチャルYou Tuberグループだそうです。本作は「残酷な天使のテーゼ」のような懐かしいナンバーから最近のボカロ曲などまでカバーしたカバーアルバムになっています。CD販売数6位、PCによるCD読取数4位。オリコンでは初動売上2万4千枚で3位初登場。前作「SMASH The PAINT!!」の1万5千枚(7位)よりアップしています。

初登場はもう1作。10位に韓国の女性アイドルグループTWICE「Eyes Wide Open:TWICE Vol.2」がランクインしています。韓国盤のアルバムのため、Hot AlbumsではCD販売数はランクインせず、ダウンロード数で3位、PCによるCD読取数77位で総合順位でベスト10入りしています。オリコンでは輸入盤の売上により、初動売上1万5千枚で5位初登場。同じく韓国盤の前作「MORE&MORE」の1万2千枚(2位)よりアップしています。

今週の初登場は以上。一方、ロングヒット盤としてはまず米津玄師「STRAY SHEEP」。今週は7位から6位にワンランクアップし、13週連続のベスト10入りを果たしています。ダウンロード数は5位から9位にダウンしましたが、一方、CD販売数は10位から7位にアップ。PCによるCD読取数も1位をキープしています。

また、あいみょん「おいしいパスタがあると聞いて」は先週から変わらず8位を維持。8週連続ベスト10ヒットとなっています。こちらもダウンロード数は10位から13位にダウンしましたが、CD販売数は19位から11位にアップ。PCによるCD読取数も先週から変わらず2位をキープしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年11月 4日 (水)

今週も「鬼滅」効果で

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き、2週連続の1、2フィニッシュです。

今週1位を獲得したのは大ヒット中の映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」主題歌、LiSA「炎」。これで3週連続の1位獲得で、CD販売数、ダウンロード数、ストリーミング数、ラジオオンエア数、PCによるCD読取数、You Tube再生回数でいずれも1位獲得。Twitterつぶやき数は9位、カラオケ歌唱回数は8位に留まりましたが、8部門中6部門で1位という圧倒的な人気での1位獲得となりました。さらに同じくアニメ「鬼滅の刃」主題歌の「紅蓮華」も先週から引き続き2位をキープ。ベスト10記録を通算43週に伸ばしています。

今週、ほかに目立つのは韓国系。BTS「Dynamite」は先週から変わらず3位をキープ。11週連続のベスト10ヒットを記録したほか、日韓合同プロジェクトにより誕生した女性アイドルグループNiziU「Make you happy」は先週の5位からワンランクダウンながら6位にランクイン。これでベスト10ヒットを18週連続に伸ばしています。

さらに今週5位に韓国の女性アイドルグループTWICE「I CAN'T STOP ME」が初登場でランクイン。ダウンロード数9位、ストリーミング数5位、Twitterつぶやき数35位、You Tube再生回数4位。10月26日にリリースされたアルバム「Eyes wide open」に収録されている新曲となります。

さて、続いて4位以下の初登場ですが、今週初登場はTWICEのほかにあと1曲。7位に嵐「Party Starters」がランクイン。配信限定のシングルでソフトバンク5Gプロジェクト「これからだ」篇CMソング。ダウンロード数2位、Twitterつぶやき数1位、You Tube再生回数27位。配信限定シングルの前作「Whenever You Call」はかのブルーノ・マーズ制作・プロデュースで話題となりましたが、本作もアメリカのソングライターで、Panic! st the Discoなどへの楽曲提供でも知られるSam Hollanderをプロデューサーに起用し、洋楽テイストの強い作品に仕上がっています。

そして今週も強いロングヒット曲。まず、YOASOBI「夜に駆ける」は先週から変わらず4位をキープ。ダウンロード数6位、ストリーミング数3位、You Tube再生回数2位は先週から変わらず。これで28週連続のベスト10ヒットとなっています。

あいみょん「裸の心」も先週から変わらず8位をキープ。これで21週連続通算22週目のベスト10入り。ただダウンロード数は6位から7位にダウン。

瑛人「香水」は今週6位から9位に大幅ダウン。ストリーミング数は6位から10位、You Tube再生回数も8位から9位にダウン。これでベスト10ヒットは27週連続に伸ばしたものの、そろそろ後がなくなってきました。

ここにきて土俵際の粘り腰を見せているのが米津玄師「感電」。先週10位から7位にアップし、今週は再びダウンしたものの、なんとか10位をキープ。これでベスト10ヒットを17週連続に伸ばしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年11月 3日 (火)

キュートでポップ

Title:Fake It Flowers
Musician:beabadoobee

昨年、若干18歳の女性シンガーソングライターが大きな話題となりました。ビリー・アイリッシュ。アメリカ出身の彼女はティーンエイジャーの本音を綴った歌詞が大きな話題となり、今年のグラミー賞で主要4部門を含む5部門を受賞し大きな話題に。その後、グラミー賞受賞でようやく日本でも話題となり、ヒットを記録しました。

そのアメリカのビリー・アイリッシュに対抗…したわけではないと思うのですが、イギリスからすい星のごとく現れ、一気に大きな話題となった女性シンガーソングライターが彼女。名前は「ビーバドゥービー」と呼ぶらしく、本名はBeatrice Laus。もともとフィリピンのイロイロ市出身で、3歳の時にロンドンに移り住んだそうです。このジャケット写真だとちょっとわかりにくいのですが、ルックス的には完全にアジア系なので、日本人にとっても親しみが持てそうです。

もともと彼女のファンが動画サイトにアップした「Coffee」という楽曲が、数日で30万回以上再生されるなど話題となり注目を集め、2019年にはNMEアワードの新人賞を受賞。さらにイギリスの新人ミュージシャンの登竜門ともいえる「BBC Sound of 2020」にもノミネートされて話題となりました。さらに本作ではイギリスのナショナルチャートで8位を獲得。名実ともにブレイクしています。

そんな話題の彼女ですが、もともとスマパンやソニックユース、マイブラなどからの影響を公言しているそうで、ある意味、典型的な90年代のオルタナ系ギターロック路線が、これまた耳なじみやすい印象を受けます。1曲目「Care」から、まさに90年代のギターロックを彷彿とさせるようなギターロックにポップなメロディーラインがインパクトのあるナンバー。さらに「Dye It Red」などはギターをバックに静かに入るイントロからして、完全にNIRVANA。ある意味、サウンド的には非常に「わかりやすい」とも言えるかもしれません。

その後もヘヴィーなバンドサウンドとシャウトするボーカルでダイナミックに聴かせる「Charlie Brown」やある意味、典型的なノイジーなオルタナ系ギターロックでポップなメロを聴かせる「Together」、分厚いギターサウンドを聴かせつつ、ポップなメロがインパクトのある「Yoshimi,Forest,Megdaiene」など、ポップなギターロックという典型的な楽曲が並びます。

ポップなメロディーラインやキュートなボーカルを含めて、イメージ的には完全にthe brilliant green。個人的にはブリグリが好きなら絶対気に入りそうなミュージシャンだと思います。そういう意味ではサウンド的に正直目新しさはほとんどありません。ただ、彼女のキュートなボーカルを含めて、ポップでキュートなメロディーラインといい、ほどよくノイジーでダイナミックなバンドサウンドといい、特に90年代のUK系のギターロックが好きなら間違いなく壺にはまるミュージシャンだと思います。本作が話題になるというのは非常によく理解できます。

おそらく日本でも今後、より話題になりその名前を聴く機会が増えそうなミュージシャン。というよりも、ルックス的な親しみやすさも含めて、日本ではビリー・アイリッシュより人気が出る可能性も高いような。今後に要注目のミュージシャン。個人的にもかなりはまってしまったミュージシャンでした。

評価:★★★★★

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2020年11月 2日 (月)

メランコリックなメロが魅力のポストハードコアバンド

Title:Lament
Musician:Touche Amore

最近、ここで紹介する期待のロックバンドが増えてきているように思います。先日紹介したIDLESもそうですし、ロックバンドというよりもSSWですが、Bartees Strangeもロック寄りのミュージシャンですし、私的ベストアルバムで上半期1位としたDoglegもそうですし、ここ最近、ヒットシーンはすっかりHIP HOP勢に占拠され、ともすれば「脇役」的な位置づけになりつつあるロックですが、やはり分厚い爆音に圧倒されたいという欲求は強いのでしょうか、勢いのあるロックバンドが増えてきているように思います。

今回紹介するバンドもそんなバンドの一組、と言えるでしょうか。ロサンジェルスやカリフォルニアをベースに活動する「ポストハードコアバンド」Touche Amore。最近出ていた…といった感じではなく、結成は2007年。このアルバムは既に6枚目となるオリジナルアルバムになりますので、既に中堅、ともすれば「ベテラン」の領域に入るミュージシャンと言えるかもしれません。

基本的に彼らのスタイルは、分厚いバンドサウンドをこれでもかというほどの勢いで攻めてくるハードコアバンド。ボーカルは終始、シャウトしているスタイルがメインとなっており、疾走感あるリズムも魅力的になっています。特に前半は1曲目を飾る「Come Heroine」からスタートし、タイトルチューンである「Lament」「Feign」と分厚いサウンドで疾走感あるハードコアのナンバーが続いており、聴いていて、その音圧が非常に心地よい楽曲が並びます。

そのため、楽曲のタイプ的には先日紹介したIDLESに近いようなタイプのバンドと言えるかもしれません。ボーカルのスタイルがシャウトが基本なのも共通項。IDLESはイギリスのバンドですので、彼らはそれに対抗する(?)アメリカのポストハードコアバンド・・・・・・と言えるかもしれません。

ただ、圧倒的なサウンドの分厚さで攻めてくるIDLESに比べると、彼らのサウンドはもうちょっとあっさりとした印象もあります。また、IDLESも意外とポップなメロディーラインが大きな魅力なのですが、一方、彼らについても意外とポップで、そしてメランコリックさを感じるメロディーラインが大きな魅力。例えば前述のタイトルチューン「Lament」もボーカルがシャウトするメロディーは意外と哀愁感を覚えますし、ほかにも、例えば中盤の「Savoring」などもボーカルのスタイルは他の曲と同様にシャウトしているのですが、メロディーラインは非常にポップで、メロディアスという印象すら受ける曲になっています。

終盤の「Deflector」もメランコリックなメロディーラインが魅力になっていますし、最後を締めくくる「A Forecast」も中盤から分厚いバンドサウンドが入ってくるのですが、前半は静かなピアノの弾き語りに。こちらもメランコリックな歌が大きな魅力になっています。ここらへん、IDLESに比べると、よりメランコリックさが大きな魅力になっているように感じます。

おそらくIDLESあたりが気に入るのならば間違いなく気に入りそうな、そのハードコアなサウンドが大きな魅力のロックバンド。逆に、彼らが好きならIDLESなんかも好きなんだろうなぁ。まだまだ日本では無名のバンドですが、こちらも今後、徐々に人気が伸びてくるかもしれません。ロック好き要注目の1枚です。

評価:★★★★★

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2020年11月 1日 (日)

ジョンの曲が今によみがえる

Title:GIMME SOME TRUTH.
Musician:John Lennon

今年、生誕80年を迎えるジョン・レノン。説明するまでもないと思いますが、伝説的なバンドThe Beatlesの一員であり、かつメインのソングライターの一人であった彼。The Beatles解散後も妻であるオノ・ヨーコと共に平和活動を続け、今では一種の平和活動のアイコン的な存在にもなっています。1980年にわずか40歳という若さで凶弾に倒れ、その短い生涯を終えましたが、いまでも彼がつくった曲の多くは歌い継がれ、彼の存在は音楽シーンに限らず、大きな存在となっています。

本作はそんな彼のベストアルバム。生誕80年目の記念すべきベストアルバムとして、相当力が入ったベストアルバムになっているようで、彼の実の息子、ショーン・レノンがプロデュース、さらにはオノ・ヨーコがエクゼクティヴ・プロデューサーとして参加。まさに家族総出(?)のベストアルバムとなっています。ちなみにその力強さを感じさせる横顔が印象的なジャケット写真は、彼がMBE勲章を返還に行った日に撮影された、彼としては珍しい横顔の白黒写真だそうです。

まずは今回のセレクション、彼のソロ時代の代表曲をまとめて聴いて強く思うのは、ソロ時代の曲でも、今なお歌い継がれている曲が多いな・・・というより、なんとなくのイメージなのですが、CMソングとしてよく耳に入る曲が多いような印象も受けます。ソロ時代の代表曲として取り上げられることが多い「Imagine」をはじめ、「Power To The People」(「Gatorade」のCM曲)だったり、「Woman」(三菱「ekワゴン」CM曲)だったり、「Stand by me」(キリンフリーCM曲)だったり、「Beautiful Boy(Darling Boy)」(資生堂CM曲)だったりと、ともすればThe Beatles曲以上に多いないか??とすら思うほど、CMによく使われているような印象も受けます。

おそらく要因のひとつとして、The Beatles時代の曲みたいに有名すぎない一方、平和活動家というジョン・レノンのイメージは企業が採用するCMソングとしてもピッタリという点もあるのでしょう。またちょっとうがった見方をすると、既にこの世にいない彼の曲を使用すれば、いわゆるスキャンダルなどとは無縁、という読みもあるのかもしれません。いろいろな意味で使い勝手がいい、という点があるのでしょう。

もっとも、やはりそういう要因もあるのでしょうが、最大の理由は曲の良さである点は言うまでもありません。実際、今回のベスト盤であらためて彼の代表曲を聴くと、やはり心に染み入ってくるような名曲ばかり。40年以上前の曲ばかりなのですが、今、普通に聴いても全く違和感ない、普遍的なメロディーラインを楽曲から感じることが出来ます。

また、そんなメロディーラインの普遍性を強く感じたのは、今回のアルバムのリミックスによる部分も大きいようにも感じました。今回のリミックスによって、グッと音がよくなったように感じます。サウンドもよりクリアになり、音もクリアに。楽曲のバランスも、今の耳で聴いて全く違和感のないように調整されているように感じました。結果として、彼の名曲の数々が、2020年の今の音楽として生まれ変わり、そのためメロディーラインの持つ普遍性がより明確になったようにも感じました。

あらためてJohn Lennonというミュージシャンの魅力、そしてすごさを感じたベスト盤。2枚組というボリューム感もちょうどいい感じ。文句なしにJohn Lennonの「入門」としてもお勧めできるベストアルバムです。

評価:★★★★★

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