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2020年10月23日 (金)

知る人ぞ知る的な良質のバンドが並ぶ

LIVE MAGIC! 2020 ONLINE

会場 オンライン 日時 2020年10月18日(日)18:00~

コロナの中で、完全に開催が途絶えていたライブですが、ようやく少しずつ、有観客でのライブ開催が戻りつつあります。とはいえ、開催はまだまだ限定的。配信での開催がまだまだ続いています。ただ一方、ライブ配信での開催がゆえに、いままで行きたくても場所や日程の都合上、なかなかいけなかったライブイベントに、オンラインという形で参加できるようになるケースも少なくなく、先月のくるりの京都音博もそうですが、今回紹介するライブイベントもそう。ラジオDJや音楽評論家として活躍するピーター・バラカンが主催する音楽イベント。毎回、彼がセレクトする主にワールドミュージック系の、知る人ぞ知る、しかし非常にクオリティーの高いミュージシャンが参加しているイベントで、以前から参加したいと思いつつ、休日に東京での開催ということでなかなか参加できずにいました。しかし今年はコロナ禍の影響でオンラインでの開催に。2日間開催だったのですが、そのうち日曜日のイベントは時間的な余裕が出来、今回、オンラインという形ではじめてこのイベントに「参加」しました。

ライブは18時ちょうどからスタート。最初はピーター・バラカンがスタジオのようなところから登場し、簡単な挨拶からスタート。まずは過去のアーカイブの放送からスタート。最初はDereb The Ambassadorというエチオピアン・ジャズのグループから登場します。2018年のライブの映像で、軽快なリズムとサックスの音色が心地よい、アフロビート的なリズムにジャズの要素をちょっと加えたような楽曲が魅力的。いわばアフリカ音楽の要素を醸し出しつつも、一方ではあか抜けたようなサウンドを奏でており、このバランスがとても絶妙に楽しめる、そんなバンドでした。

この日はライブ映像の合間にピーター・バラカンのスタジオからの司会とバンドの紹介・解説が流れる構成。この途中のピーター・バラカンの司会の部分はライブ配信という形になっていました。また、ライブ映像の途中には、LIVE MAGIC!に毎年、ブースを出展する飲食店の取材映像なども入り、そういう面でもライブイベントらしさを出した構成になっていました。

続いてはOmar Sosa&Seckou Keitaという、キューバ出身の人気ピアニスト、オマール・ソーサと、セネガル人でロンドン在住のコラ演奏家、セク・ケイタによるユニット。2017年のイベントでの映像となるのですが、この日はさらにパーカッショニストが参加し、3人でのステージとなっていました。アフリカ系の音楽、かと思いきや、流れる水のような爽快感を覚えるサウンドがとても心地よい、非常に清涼感あふれるサウンドが特徴的。コラの音色に感じる、どこか壮大なアフリカ的な雰囲気が垣間見れる点も非常に魅力的で、独特の世界観をつくりあげていたグループでした。

3組目はFlor De Toloacheという女性5人組バンド。アコースティックギターにバイオリン、トランペット、トロンボーンという組み合わせの、アメリカはニューヨーク出身のラテングループ。こちらは2019年のライブ演奏となります。アコースティックなサウンドで、ラテン風のメランコリックな泣きメロを聴かせてくれるのが特徴的。あと、全員、胸元を大きくあけた服を着て、かなりセクシーな雰囲気だったのも印象的でした(笑)。

続いては中村まりwith高田漣による2018年のライブ演奏。高田漣はここでもアルバムを取り上げたことがありますし、よく知っているミュージシャンなのですが、中村まりは今回はじめて聴きます。アコギの弾き語りなのですが、中村まりは非常に伸びやかな表現力豊かな歌声が魅力的なボーカリストで、一気に気になる存在となりました。全2曲なのですが、うち2曲は高田漣の父親、高田渡の「コーヒーブルース」だったのですが、これも彼女の色にすっかり染めた、素晴らしいカバーとなっていました。

5組目はNoam Pikelny&Stuart Duncan。フィドルとバンジョーという組み合わせのユニットで、こちらも2018年のライブ演奏。アメリカンルーツミュージックをフィドルとバンジョーの軽快な音色で演奏したグループで、アコースティックな楽器2本のみの演奏ながらもしっかりとステージを沸かせたスケール感も感じる演奏を聴かせてくれました。

で、ここまでで約1時間が経過。19時からはピーター・バラカンがMCをつとめるInter FMとの同時放送という形になりました。

そしてここではじめて生演奏。スタジオに毎回、LIVE MAGIC!に参加しているというギタリスト濱口祐自が登場し、スタジオでの生演奏を披露してくれました。ライブがはじまってからMCでは関西弁でとにかくしゃべりまくる、いかにも関西人的なキャラなのですが(笑)、演奏がはじまると一転、ギターで魅力的な演奏を聴かせてくれます。最初はギターバンジョーでの軽快な演奏からスタートし、その後はブルージーな曲だったり、最後には自分のオリジナル「楽しい迷路」というシンプルでちょっとブルージーなギターインストを聴かせてくれたりと、全4曲のライブ演奏ながらも、比較的シンプルながらも表現力のあるギターサウンドをしっかりと聴かせてくれました。彼についてもはじめてその名前と演奏を聴いたのですが、これは一度、ライブでも見てみたいです。

その後はJack Broadbentというイギリスのシンガーソングライターによる2016年のライブ映像。1曲だけなのですが、Little Feetの「Willin'」を演奏して、しんみりとした泣きメロを聴かせてくれました。

そしてここで、この日のために収録された映像に。東京は羽村の工場の中で収録された映像なのですが、まずは元ちとせの登場。「朝花節」を披露してくれました。元ちとせのステージは久しぶりに見たのですが、以前と比べると、ボーカリストとして芯がより強くなり、力強さが増したような印象を受けるような演奏に。その歌唱力に惹きつけられるステージでした。

さらに個人的には一番のお目当てだった民謡クルセイダーズに。「虎女さま」を演奏してくれたのですが、サックスやパーカッションを入れた軽快で楽しいステージで、音源で聴く以上に開放感あふれるパフォーマンスになっていました。これは是非ともライブを見てみたいなぁ。そして最後は元ちとせと民謡クルセイダーズのコラボで「豊年節」へ。裏打ちのリズムで力強く、伸びやかな元ちとせのボーカルも強く印象に残ります。民謡クルセイダーズによる演奏もグルーヴ感あふれ、民謡をあらたに解釈したサウンドは見事。素晴らしいコラボとなっていました。

そしてQuarter To Africaというイスラエルの音楽グループから、テナーサックス奏者のヤキールによる、この日のためのメッセージビデオとサックスの短い演奏が届けられます。さらには、このQuarter To Africaによる2017年の演奏に。なんと日本の「炭坑節」をギター、トランペット、サックスなどでカバーした演奏となっており、民謡クルセイダーズにも通じるにような、ジャズやラテン的な要素も取り入れた演奏に。耳なじみある曲なのですが、一風変わった解釈での演奏が非常に魅力的でした。

で、ここでInter FMとの同時放送は終了。この後はライブ配信のみでイベントは続きます。

ここで再び、この日のイベントのみでの映像で、ポーランドの伝統音楽、マズルカを奏でるJanusz Prusinowski Kompaniaが登場します。彼らについては当サイトでもアルバムを取り上げたことのあるグループなのですが、1曲目はフィドルとチェロ(?)、フルートとタンバリンのような楽器を持っての演奏。マズルカの特徴としては3拍子の踊りがベースとなっているそうなのですが、明るく軽快なリズムとサウンドが楽しめる曲になっていました。

一方続く2曲目ではうってかわってトランペットとクラリネットのような縦笛、アコーディオンにチンドン屋のチンドン太鼓のような楽器での演奏となりました。こちらも明るく軽快でワクワクしてくるような演奏に。アルバムを聴いたときにも感じたのですが、このグループもライブで聴いたら楽しいだろうなぁ。いつか、ライブを見てみたいです。

そして最後はSouliveというアメリカのジャズファンクバンドによる2017年のライブ映像で「Tuesday Night Squal」という曲を。ギターやシンセの音色でフュージョン風でありつつもファンキーなリズムとグルーヴィーなサウンドが心地よいギターインストのナンバーになっていました。

そんな訳で、終了したのは20時半頃。みっちり2時間半に及ぶボリューミーな配信ライブでした。今回の「LIVE MAGIC!」。正直、期待していた生演奏はほとんどなく、事前に撮った映像または過去のライブ映像がメインで、その間にピーター・バラカンの紹介・解説でつなぐというスタイル。どちらかというと、ピーター・バラカンによる音楽番組を見ているような、そんな感じの配信ライブになっていました。

とはいえ、さすがは音楽に精通している彼のセレクトだけあって、参加しているミュージシャンはいずれも個性的で非常に魅力的。一般的によく知られているようなミュージシャンは少ないのですが、ただ一度ライブ映像を見ただけで、次は是非、生で見たくなるような、そんな素晴らしいライブ映像の連続で、非常に満足しました。なんといっても、これを「タダ」で見れるというのは非常にお得感もあり、とても楽しめた2時間半となりました。

以前から一度は参加してみたかったイベントライブなのですが、是非、やはり一度来年以降、参加したいなぁ。来年は、以前のように有観客のライブで開催されることを切に願っているのですが・・・。とりあえずは、今回のミュージシャンたちの音源を聴いてみたい!とても充実した内容のイベントでした。

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