30年の時代を経てよみがえる80年代の名盤
Title:HOT LIPS
Musician:ZIGGY
本作は、もともと1988年にリリースされたZIGGYのメジャー2ndアルバム。彼らの最大のヒット曲「GLORIA」も収録されており、彼らの代表的なアルバムとも言える作品。もっとも、「GLORIA」がヒットしたのは、このアルバムがリリースされた後、1989年にドラマ主題歌に起用され、2度目のシングルカットされた時点であり、そのため本作はオリコンで最高位12位と、「GLORIA」が収録されたアルバムの割りには、さほど大ヒットを記録していません。
さて、今回その30年以上前のアルバムを取り上げたのは、本作が、このたび現在のZIGGYのメンバー、といっても現在、ZIGGYの正式メンバーは森重樹一ひとりのみであることから、ツアーメンバーを起用しての再録音がリリースされました。そのため今回、紹介するのはその再録版。もっとも私自身、このアルバムはリアルタイムでは聴いていませんし、その後も一度も聴いたことなく今回、はじめて聴いてみたアルバムとなるため、再録版の、というよりは純粋にアルバム「HOT LIPS」の感想、といった感じなのですが。
前にZIGGYを取り上げた時にも書いたのですが、彼らの代表曲「GLORIA」というと、いかにもJ-POP的なビートロック。そのため以前はZIGGYというと典型的なJ-POPバンド…といったイメージが強く、少々敬遠していた感もありました。しかし、以前はじめて聴いたベスト盤でそのイメージは大きく変化。彼らが実は、かなり本格的な、洋楽志向も強いロックバンドということをはじめて知りました。
そしてこの「GLORIA」が収録された本作も、かなりハードロックやグラムロック志向の強い、本格的なロックのアルバムに仕上がっています。もともとジャケット写真も、パンクロックに大きな影響を与えたというNew York Dollsのデビューアルバム「New York Dolls」のパロディーですし、(再録版では不明ですが)オリジナル版では「PLAYING ROCKS」にそのNew York Dollsのジョニー・サンダーズがレコーディングに参加していたそうです。
タイトルチューンである「HOT LIPS」もエッジの効いたギターとヘヴィーなバンドサウンドがカッコいい、疾走感あるハードロックナンバーになっていますし、「WHAT DO YOU WANT?」もリズミカルなギターとドラムスのサウンドが耳に残ります。「HIGHWAY DRIVING NIGHT」もラストはヘヴィーなブルース風のギターリフで締めくくるなど、彼らの本格的なルーツ志向を感じさせます。
「PLAYGIN ROCKS」も森重樹一のシャウトが前面に押し出され、疾走感あって、パンキッシュなナンバーとなっていますし、「LAST DANCEはお前に」もブギウギ調のピアノのリズムが軽快なロックンロールな楽曲に仕上がっています。
そんな本格的なロックのアルバムである一方、意外とメロはポップで、ある種「歌謡曲」的な部分も少なくありません。例えば「TOKYO CITY NIGHT」なども、かなり哀愁感ただようナンバーとなっており、メロディーラインはかなり歌謡曲的。そのほかの曲にしても意外と歌謡曲テイストの強いナンバーも強く、J-POP的な「GLORIA」がアルバムの中でさほど浮いていないのは、他の曲もなにげに歌謡曲的な要素が強いから、という点もあるのでしょう。ただ、その歌謡曲的なメロディーラインという、ある種のベタさがアルバムの聴きやすさにつながっており、ひとつの魅力になっているように感じました。
さて今回は再録版ということなのですが、実は前述の通りオリジナルアルバムは聴いておらず、オリジナルとの比較はできません。ただサウンド的には80年代的なサウンドに仕上がっており、おそらくオリジナルから大きな変更はないのではないでしょうか。一方、音圧としてはかなり強くなっており、今風。そういう意味で今の耳で聴いて、より迫力を感じ、聴きやすくなっています。また、森重樹一のボーカルを含めて、時代による衰えは皆無。むしろ、彼のボーカルは年齢を経て、さらに迫力を増しているようにも感じました。
非常にカッコいい疾走感あるバンドサウンドを前面に押し出したロックなアルバム。ほどよく歌謡曲的なメロディーラインとのバランスも絶妙で、間違いなく80年代の名盤といって言いでしょう。時代を経て、今聴いても全く衰えていない魅力があります。ロックリスナーなら必聴の1枚です。
評価:★★★★★
ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
ROCK SHOW
ほかに聴いたアルバム
森川美穂 VERY BEST SONGS 35/森川美穂
デビュー35周年を迎えるシンガー森川美穂のオールタイムベスト。森川美穂といえば本作にも収録されている「ブルーウォーター」のイメージが強く、イメージ的には90年代に活躍した谷村有美や永井真理子などのガールズポップ勢の先駆け、というイメージがあったのですが、もともとは完全にアイドルでデビューしたんですね。実際、今回のアルバムのデビュー直後の作品、特にDisc1の楽曲はかなりアイドルテイストが強い楽曲が多く、確かにアイドルだったんだな、ということを強く感じました。
ただ、Disc2、特にその「ブルーウォーター」のあたりから、その歌唱力を生かしたボーカルスタイルの曲が多くなってきており、アイドルという色合いが完全に消えていきます。アイドルとしてどういう売られ方をしたのかわからないのですが、楽曲的にはアイドルシンガーというよりもボーカリストとしてのスタイルの方が彼女にピッタリマッチしていたように感じました。最近の作品になるとバラード曲ばかりになり、良くも悪くも「大人のシンガー」としての側面を前面に出している感があり、若干、バラードばかり続く終盤は退屈な感じもしたのですが、ただボーカリストとしてはいい意味で歳を重ねている感もあります。一時期ほど名前を聞く機会は減ってしまいましたが、彼女はこれからもボーカリストとしてそのキャリアを順調に伸ばしていきそうです。
評価:★★★★
Between the Black and Gray/MONOEYES
細美武士率いるロックバンドによる約3年2ヶ月ぶりのニューアルバム。ELLEGARDENも活動を再開し、the HIATUSも活動を続ける中、3バンド並行の活動は大変だとは思うのですが、その中でもニューアルバムをリリースしてくるあたり、細美武士の創作意欲の強さを感じます。ただ、ノイジーなギターサウンドを中心としたバンドサウンドに主軸に置かれたロックなアルバムになっている一方、メロディーラインについては平凡な印象を受けてしまう作品も少なくなく、ちょっと練り込みが足りなかったような。前作もメロのインパクト不足が気になったのですが、今回はその印象がさらに強くなってしまいました。概して疾走感あるギターロックは非常に心地よく楽しめたのですが・・・。
評価:★★★★
MONOEYES 過去の作品
A Mirage In The Sun
Dim the Lights
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