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2020年10月16日 (金)

TRICERATOPSからのソロ作2枚

今回はロックバンドTRICERATOPSのメンバー2人によるソロ2作の紹介です。

Title:ALBUM.
Musician:和田唱

まずTRICEARTOPSのボーカリストであり、バンドのほぼ全ての曲の作詞作曲を担ってきた和田唱のソロ2枚目となるアルバム。まずはジャケット写真が非常に印象的。前作「地球 東京 僕の部屋」も彼が子どもの頃の写真をジャケット写真に使用しましたが、今回も彼が子どもの頃の写真。一緒に写っているのは言わずと知れた彼の母親で料理研究家の平野レミですね。で、写真を撮っているのは、今は亡き、彼の父親でイラストレーターの和田誠ということ。まさに彼の家族写真になっており、ちょっとほっこりとした気分になります。

さて、TRICERATOPSというと、シンプルなスリーピースのバンドサウンドを奏でるロックバンドなのですが、一方では和田唱の書くポップなメロディーラインも大きな魅力。また、和田唱はロック志向が強い一方で、大のポップス愛好家としても知られています。そんな彼のソロアルバムは、前作でもそうだったのですが、ロック志向の強いTRICERATOPSに対して、和田唱のポップス愛好家としての側面がより強く出ているアルバムになっていました。

まずは1曲目「ココロ」。アコギでしんみり聴かせる3拍子のポップスなのですが、暖かいメロディーラインに、彼のメロディメイカーとしての才がしっかりと反映された楽曲になっています。TRICERATOPSの頃に、個人的に大好きなKANとの交流があったりしたのですが、この曲、歌詞も含めて、そのKANからの影響を感じるような・・・?

その後もちょっとメロウでR&Bからの影響も感じる「世界が変わったアフタヌーン」や、打ち込みを入れたディスコチューン「薔薇のつぼみ」、ボッサ調の「Once Upon A Time」、明るい前向きな歌詞も印象的なラテン調のリズムが印象的な「Heiki Heiki」など、様々なバリエーションの曲が並んでおり、まさに和田唱のポップス好きな側面が強く反映された構成になっています。

前作「地球 東京 僕の部屋」と同様、おそらくトライセラではできないような曲のならぶ、実にソロらしいアルバムになっていまう。また、非常にフックを利かせたサビのメロディーが印象的なトライセラの曲と比べると、全体的にキャッチーなサビはあまり出会えず、若干地味といった感じになっているのもプライベイト色の強いソロ作ならでは、といった言い方も出来るかもしれません。ただ、前作以上にメロディーラインはよく出来た聴かせるポップなものが多く、和田唱のメロディーメイカーとしての才能はしっかりと伝わってきます。

そんな中でも「アイ」は疾走感あるアップテンポなポップチューンになっており、サビもしっかりキャッチーに仕上がっていて、サウンド的には打ち込みなのですが、そのままTRICERATOPSの曲として起用されても不思議ではない楽曲になっています。トライセラが好きな方ならおもわずにやけてしまうような楽曲ではないでしょうか。

和田唱らしさを実に感じるソロアルバムとなった本作。またメロディーメイカーとしての健在ぶりも感じられました。このポップなメロ、次はトライセラで、是非!ただ、こういうバラエティー豊富な曲をつくってくるのなら、ソロもバンドと同時並行で続けてもおもしろいのかも。

評価:★★★★★

和田唱 過去の作品
地球 東京 僕の部屋

Title:CHARGE
Musician:吉田佳史

で、こちらはTRICERATOPSのドラマー、吉田佳史のソロアルバム。全面的にシンセを取り入れたスペーシーな雰囲気のアルバムに。全曲インストの全7曲入り。ドラマーのソロアルバムなのですが、ドラムのリズムは比較的軽く、ドラムが前に出てくるというよりは、シンセ+ギターがメインのインストアルバムといった印象の作品となっています。

正直言ってしまうと、ドラマーとしてのプレイはしっかりと聴かせてくれる反面、例えばメロディーラインだとか、シンセの使い方はあまり面白味なない印象も・・・。全体的にフュージョンの色合いが強く、TRICERATOPSの音楽性とは一線を画している感じはしますし、「Gunnar」とか聴いていると、もともと彼自身がハードロック志向だったのではないか、といった印象も受けます。

まあ、ドラマーによるソロアルバムということで本来はドラムプレイを主軸として耳を傾けるべきでしょうし、そのように聴くと、それぞれ7曲、しっかりとしたバリエーションあるドラムプレイを聴くことが出来るアルバムであることは間違いないと思うのですが・・・。ただ、彼のやりたいことはしっかりと伝わったアルバムであることは間違いありません。次は是非、トライセラでのプレイを!

評価:★★★

そんな訳で、どちらの作品もソロらしく、それぞれのミュージシャンのやりたいことは伝わってくるアルバムだったと思います。そして、そんな中、TRICERATOPSの活動再開というニュースも!!これは、非常に楽しみ!次は待望のトライセラのニューアルバムということになるのでしょうか?それまで、このソロ作を聴きながら、来るべきトライセラの新作を心待ちにしていたいと思います!


ほかに聴いたアルバム

Barometz/安藤裕子

オリジナルフルアルバムとしては実に約4年2ヶ月ぶりとなる安藤裕子のニューアルバム。フルオリジナルアルバムとしての前作「あなたが寝てる間に」リリース後、一時期、曲が書けないとして、他のミュージシャンからの楽曲提供を受けた曲を集めた「頂き物」をリリースしたり、さらにはメジャーレコード会社を離れたりと、その方向性を模索。インディーズからセルフプロデュースのミニアルバム「ITALAN」をリリース後、メジャーシーンに復帰。待望のニューアルバムのリリースとなりました。

ただ、作風としては以前の安藤裕子とは少々異なる、彼女の新たな歩みを感じさせるアルバムで、わかりやすいメロディーラインが並んだポップスというよりは、エレクトロサウンドをふんだんに入れてファンタジックにまとめあげた作風に。ドリーミーでどこか気だるい雰囲気が特徴的で、いい意味で現実離れした作風がリスナーを別世界に誘う、そんなアルバムになっていました。基本的には前作「ITALAN」で模索した方向性の延長線上といった感じ。まだどこか模索中で安藤裕子としての輪郭がぼやけている部分もあるのですが、彼女の新たな一歩として、これからに期待したいアルバムでした。

評価:★★★★★

安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
JAPANESE POP
大人のまじめなカバーシリーズ
勘違い
グッド・バイ
Acoustic Tempo Magic
あなたが寝てる間に
頂き物
ITALAN

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