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2020年10月12日 (月)

美メロバンド is Back!

Title:The Universal Want
Musician:Doves

2000年前半、イギリスのロックシーンに忽然とあらわれ、そのとろけるような美しいメロディーと、美メロにコーティングされた甘く分厚いサウンドに多くのリスナーが魅了されたロックバンド、Doves。2000年にリリースされた「Lost Souls」がまず大きな話題となり、2002年の「The Last Broadcast」、2005年の「Some Cities」は2作連続全英チャートで1位を獲得し、大ブレイクを果たしています。

かく言う私も、そんな彼らの美しいサウンドにはまってしまったリスナーの一人。特に彼らが大ブレイクした傑作アルバム「The Last Broadcast」はその年、もっともはまった洋楽のアルバムで、2002年の洋楽の私的ベストアルバムで1位に選ぶなど、かなりお気に入りの作品でした。その時はフジロックでも来日したのですが、私も彼らのフジロックでのステージを目撃。非常に素晴らしいライブだった記憶にあります。

そんな彼らは2009年にリリースした「Kingdom of Rust」、そしてその後のリリースされたベストアルバムで活動を休止。わずか4枚の傑作アルバムをこの世に残し、シーンを去っていきました。しかし、そのラストアルバムから10年以上の月日を経て、なんとバンド活動を再開!そしてこのたびリリースされた約11年ぶりとなるニューアルバムが本作。私にとっても待望の1枚だったのですが、全英チャートでも見事1位を獲得。彼らの復活を待っていたファンが多かったことをうかがわせる結果となりました。

その彼らのアルバムは、先行配信シングルにもなった「Carousels」からスタートするのですが、分厚いエレクトロサウンドのスタートは、まるで映画か劇のオープニングのよう。そんな中でおもむろにスタートするバンドサウンドに、思わずゾクゾク。さらにその後展開されるのは、シンセを入れて分厚いバンドサウンドにゆっくりと流れるメロディアスな歌。まさにかつてのDovesそのままの楽曲。期待通りの展開にうれしくなってしまいます。

その後もメランコリックなメロディーラインに、ストリングスも入った分厚いサウンドが耳を惹く「Broken Eyes」やコーラスラインを入れた分厚いエレクトロサウンドに荘厳さも感じる「Cathedrals Of The Mind」、疾走感あるメランコリックなメロディーラインが強いインパクトを持つ「Prisoners」など、かつてのDovesの路線をそのまま継承している、実に彼ららしい楽曲が並びます。

後半戦もテンポあるギターがグルーヴ感を醸し出しつつ、哀愁漂うメロが印象的な「Mother Silverlake」、さらにピアノの音色とストリングスで分厚く、スケール感を持って聴かせるタイトルチューン「Universal Want」と彼ららしいドリーミーなナンバーは続きます。ラストを飾る「Forest House」もアコギを前に押し出したぬくもりあるサウンドながらも、分厚いエレクトロサウンドをそこに重ね、ドリーミーな作風に仕上げてきています。

最初から最後までメランコリックで美しいメロディーを聴かせる歌をストリングス、ピアノ、シンセも用いた分厚くスウィートなサウンドでコーティングしていくスタイルで、かつての彼らの路線をそのまま踏襲した作品に。活動休止前のラストアルバム「Kingdom of Rust」は、ガレージライクなバンドサウンドを前に押し出したような作品になっており、若干シフトチェンジを感じたのですが、活動再開後、久々の本作は、「Some Cities」以前の彼らのスタイルを彷彿とさせる、いわば原点回帰のアルバムになっていました。

正直、年間ベストだった大傑作アルバム「The Last Broadcast」に比べてしまうと…という印象はあるものの、しっかりとあの頃のDovesを彷彿とさせる、期待したリスナーの壺をしっかりついてくる傑作アルバムに仕上がっていたと思います。また、今後はコンスタントに活動を再開してくれるのでしょうか。これだけ美しいメロ、サウンドを書いてくるバンドなだけに、これからに期待したいところ。以前のDovesを知らない若いリスナー層も、かつてDovesにはまった世代も、是非ともチェックして欲しいアルバムです。

評価:★★★★★

Doves 過去の作品
Kingdom of Rust

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