« シガー・ロスにより、よりポップに | トップページ | 「鬼滅」効果、強し! »

2020年10月27日 (火)

エモい音楽性のSSW

Title:Live Forever
Musician:Bartees Strange

Liveforever

今、アメリカのインディーシーンで最も注目を集めているミュージシャンの一人だそうです。ワシントンDCを拠点に活動を続けているシンガーソングライター、Bartees Strange。本作はそんな彼のデビュー作となります。もともと、2月にリリースされた楽曲「About Today」(本作には未収録)が話題となったそうですが、本作は彼のファルセット気味ののびやかなボーカルを聴かせるソウルテイストのナンバー。本作の1曲目「Jealousy」も幻想的なサウンドに伸びやかなボーカルが特徴的なソウル風の楽曲になっており、なるほど、そういうタイプのSSWなのか…と聴き始めはそう感じました。

ただし、その印象が一気に変わるのが2曲目「Mustang」。最初はシンセのサウンドからスタートするのですが、そこから一気に分厚いバンドサウンドが登場。疾走感あるロックナンバー。ズシリと思いサウンドにちょっとメランコリックさを感じるメロディーラインはエモコアあたりに通じるような音楽性を感じます。続く「Boomer」も、最初、ラップ的なボーカルを入れつつ、疾走感あるエモロック路線は「Mustang」と同様。とにかく正統派ともいえるロックチューンが続き、ロック好きにはたまらない楽曲が並びます。

かと思えば、「In a Cab」ではちょっとジャジーな要素も感じるホーンセッションも入った賑やかなポップナンバーが入ったり、「Flagey God」では打ち込みのサウンドでリズミカルな楽曲となっており、彼なりのディスコチューンとなっていたり、「Far」の序盤ではアコギでフォーキーな作風になっていたり、「Fallen for You」はアコギ弾き語りでしんみりと聴かせる楽曲になっていたりと曲によって作風はバラバラ。ラストの「Ghostly」もスペーシーなエレクトロサウンドで締めくくるなど、Bartees Strangeがどんなミュージシャンかと一言で言うのが非常に難しいミュージシャンとなっています。

このバラバラな音楽性というのは、彼の懐の深さも感じさせますし、ある意味、いろいろな意味でシンガーソングライターらしいといえばシンガーソングライターらしい感じ。日本で言えば「宅録系」といった感じでしょうか。髭と眼鏡で、失礼ながらも少々冴えない感じの風貌も、いかにも「宅録系」のシンガーソングライターといった印象を強く受けます。

ただ、バラバラな音楽性ながらも、アルバム全体として統一感がなかったか、と言えば決してそんな訳ではなく、アルバム全体としては彼の色はしっかりと感じられた作品になっていたかと思います。エレクトロな作品やフォーキーな作品、あるいはソウル風の作品などもありつつ、全体的には比較的「ロック」からの影響、特にエモからの影響を強く感じる作風が目立ちました。それだけにロックリスナーにとっては、様々な作風ながらも全体的に聴いていて心地よさを感じさせるアルバムになっていたのではないでしょうか。まだまだ日本での知名度は限定的のようですが、本作の評価も高く、これからさらに知名度は高まりそうな印象もあります。おそらく今後、彼の名前を聴く機会も増えてきそう。非常に楽しみです。

評価:★★★★★


2020/BON JOVI

ある意味、将来的に歴史として振り返った中、コロナ禍が世界を覆った1年としておそらく非常にネガティブな評価をされるであろう今年、2020年という年を冠したBON JOVIのニューアルバム。本作が非常に特徴的なのは全編、社会問題を取り上げた曲が並んでいるという点。銃規制の問題や、日本でも話題になることが多いBLMに関する楽曲、さらにはコロナ禍を取り上げた曲まであり、全体的に非常に社会派な作風となっています。それだけ今の社会的情勢に対して危機感を抱いているということでしょうか。タイトル通り、まさに「2020年」という年を体現化した作品となっています。

それだけに楽曲的にも、以前の彼らのような、いかにも大味な産業ロック的な作品よりも、グッとタイトで引き締まった、ある意味、オルタナティブロック的な様相すら感じさせる作品となっています。今という時代に寄り添った楽曲だからこそ、サウンド的にも変化しているのでしょうか。正直なところ、勢いという面はさほど感じませんし、サウンド面でも決して目新しさはないのですが、BON JOVIが決してベテランとして固定ファンの中で惰性で活動を続けるような、棺桶に片足を突っ込んだようなバンドではなく、しっかりと「今」という時代に向き合ったバンドであるということを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

BON JOVI 過去の作品
Lost Highway
THE CIRCLE
GREATEST HITS-THE ULTIMATE COLLECTION
What About Now
Burning Bridges
This House Is Not For Sale

|

« シガー・ロスにより、よりポップに | トップページ | 「鬼滅」効果、強し! »

アルバムレビュー(洋楽)2020年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« シガー・ロスにより、よりポップに | トップページ | 「鬼滅」効果、強し! »