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2020年10月 5日 (月)

フェスは中止になってしまいましたが・・・。

Title:KUMIRODA
Musician:CUATRO MINIMAL

毎年8月、富山県南砺市で行われるワールドミュージックのフェスティバル「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」。1991年から30年近くにわたり毎年開催されている、いわば音楽フェスの先駆け的なイベントでもあるのですが、今回紹介するCUATRO MINIMALは、そのフェスから登場したユニットです。その「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」は今年は30周年の記念すべき年だったのですが、残念ながらコロナ禍でフェスは中止に。その代わり…という訳ではないのでしょうが、このCUATRO MINIMALの2枚目となるアルバムがリリースされました。

メンバーは、ボイス・パーカッションやホーミーまで駆使するメキシコのシンガー、ファン・パブロ・ヴィヤ、メキシコのギタリスト、フェルナンド・ヴィゲラス、韓国の打楽器奏者チャン・ジェヒョ、日本から、親指ピアノ奏者として活躍しているサカキマンゴーの4人。さらに本作ではアルゼンチンのネオ・フォルクローネのミュージシャン、マリアナ・ピラフも参加。国籍もバラバラな5人のメンバーからなる、実にユニークなユニットによるアルバムになっています。

前作「La Cola Del Dragon」も国際色豊かな作風に仕上がっていましたが、今回のアルバムも全8曲、うち1曲がインターリュードなので事実上全7曲、それぞれ味付けの異なるバラエティー富んだ楽曲が並びます。力強いドラムのリズムとギターでメランコリックな雰囲気をかもしだすインストナンバー「Arrozal」からスタートし、続く「Mokpo Norae」は、ギターのアルペジオに載せて哀愁感たっぷりに歌い上げるボーカルが印象的。ギターの音色はエキゾチックながらも、(おそらく)韓国語のボーカルで、韓国歌謡、あるいは日本の歌謡曲的な要素も感じさせるナンバーとなっています。

続く「Mi Nina Litaca」はマリアナ・ピラフがゲストに加わり、おなじく哀愁感漂うメロディーラインながらも、楽曲的にはよりラテン風。詳しくはわからないのですが、ネオ・フォルクローネの影響も強く反映されているのでしょうか?同じくマリアナ・ピアフがゲストに加わる「Nadie」もラテン風で哀愁感たっぷりの楽曲に仕上がっています。

さらに「Lullaby」はアコーディオンの音色が入ってシャンソン風、インターリュードを挟んでタイトルチューンとなる「Kumiroda-Everything is Dream-」ではエキゾチックなサウンドにのせて、また(おそらく)韓国語で歌い上げられるボーカルは荘厳な雰囲気も醸し出しつつ、力強く歌われるボーカルが印象的。中東的なエキゾチックなサウンドと東アジア的なボーカルスタイルの対比がユニークな楽曲になっています。

ラストを締めくくる「Gase Gase」は、再びラテン風に戻り、軽快でギターのサウンドで哀愁たっぷりに聴かせるナンバーに。最後まで哀愁たっぷりの楽曲で締めくくられています。

そんな感じで、基本的にはアルバム全体を通じて哀愁たっぷりのメロディーラインやバンドサウンドの演奏を聴かせるような構成に。バラエティーも豊富とはいえ、ラテン風の曲調と韓国民謡の影響を感じさせる楽曲が並んでおり、正直言うと、前作に比べるとバリエーションの幅は狭くなったような感のあるアルバムです。

ただ逆に、それだけアルバム全体としての統一感は増した感もありますし、CUATRO MINIMALとしての方向性も示せたアルバムとも言えるのではないでしょうか。なにより哀愁感たっぷりのメロディーラインは日本人の琴線にも触れそうなメロディーであり、そういう意味でもワールドミュージックとしての敷居の高さは皆無で、純粋にその演奏とメロディーラインを楽しめる1枚になっていたようにも感じました。

さらにライブで聴いたら心地いいだろうなぁ…という気持ちもありつつ、来年は「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」の再開を心から願いつつ。今はなによりもこの心地よいサウンドに身をゆだねたいな、そんな気分になるそんな1枚でした。

評価:★★★★★

CUATRO MINIMAL 過去の作品
La Cola Del Dragon


ほかに聴いたアルバム

King's Disease/Nas

約2年ぶりとなるNasのニューアルバム。「27 Summers」「Til The War Is Won」のような、今どきなトラップのリズムを取り入れた曲がありつつ、リズミカルな「Ultra Black」「The Definition」のようなナンバー、メロウな歌やトラックを聴かせる「Replace Me」「All Bad」など、全体的には様々なタイプのラップ、トラックに手を広げつつ、聴きやすくポップにまとめあげた曲調が印象的。いい意味で聴きやすさを感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

NAS 過去の作品
Untitled
Distant Relatives(Nas&Damian Marley)
Life Is Good
Nasir

Source/Nubya Garcia

新世代のUKジャズシンガーとして注目を集めるサックス奏者によるデビューアルバム。彼女の奏でる力強くダイナミックなサックスがまず印象的。彼女のサックスを主軸に据えて、サックスで聴かせるメロディーが楽曲の中心にひとつの柱のように立っており、そのため安定感も覚える作品に。そしてその安定感がゆえに、その周りで自由に奏でるバンド演奏がまた素晴らしい。基本路線としてはジャズなのですが、かなりパワフルなその演奏はロックの要素も感じられます。サックスとピアノと楽器は違いますが、このアグレッシブなロック路線は上原ひろみにも通じる要素も感じられます。ジャズ好きはもちろん、ロックリスナーにとっても訴求力ある1枚です。

評価:★★★★★

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