シンプルで美しいアルバム
Title:10 Songs
Musician:TRAVIS
1999年にリリースされた「The Man Who」が大ヒットを記録し、その後のColdplayやKeaneといったメランコリックなロックバンド躍進の立役者ともなったTRAVIS。その後、その勢いは一段落し、特に日本では、人気と評価が急激にあがったColdplayに対して、若干忘れ去られ気味なバンドとなってしまっていますが、それでもイギリスではベスト10ヒットを継続しているなど人気バンドの地位はキープ。本作も全英チャートでは5位にランクインされるなど、ヒットを記録しています。
そんな彼らですが、ここ最近は彼らの原点に回帰するような、シンプルなメロディーラインを前に押し出した作品の曲が続いていますが、この、あくまでも「歌」を前に押しだした方向性は、今回のアルバムでさらに明確になったように感じます。「10 Songs」という非常にシンプルなタイトルもまさにアルバムの方向性を象徴しているとも言えるのですが、とにかくシンプルな作風の曲が10曲並んだ、ポップスアルバムに仕上がっていました。
そのシンプルな作風だからこそ際立つのがFran Healyの書くメロディーラインのすばらしさ。最近は他のメンバーが書く楽曲の割合も増えていたのですが、今回のアルバムは前作、Fran Healyが作詞作曲を手掛けています。アルバムを聴き始めてまずは飛び込んでくるのが1曲目「Waving at the Window」の冒頭のメランコリックであまりにも美しいピアノのイントロ。もう、この胸をかきむしられるような美しいフレーズが聴こえた瞬間、このアルバムの傑作ぶりが確信できるような、そんなあまりにも美しいフレーズに出会うことが出来ます。
女性ボーカリストSusanna Hoffsとのデゥオとなっている「The Only Thing」も、男女ボーカルが美しく映えるメロディアスなナンバーになっていますし、フォーキーな「Butterflies」もアコースティックの爽快なサウンドの中にわずかに混じる切ないフレーズが魅力的。アコギとストリングスで聴かせる「Kissing in the Wind」も切ないメロディーラインが胸に突き刺さる楽曲になっています。
サウンドの面もアコギやピアノなどアコースティックなサウンドを主軸にしており非常にシンプルな構成に。ここらへんは初期の作品以上に、よりシンプルにシフトしている、といってもいいかもしれません。唯一「Valentine」はヘヴィーなバンドサウンドを前に押し出しており、このアルバムの中で唯一、ロックバンド然としたTRAVISを垣間見れる作品になっていますが、本作にしてもあくまでもメランコリックなメロディーが前に押し出された作品となっています。
ラストを締めくくる「No Love Lost」もピアノのみの弾き語りによる非常に美しいバラードナンバー。まさにアルバムを締めくくるにふさわしい清涼感あふれるサウンドとメランコリックなメロディーラインの楽曲になっており、最後まで胸にしみいる歌声を聴かせてくれるアルバムになっていました。
非常にシンプルな内容だっただけに、TRAVISというバンドのメロディーラインの美しさを存分に味わえるアルバムになっていました。決して派手さはないのですが、それでもしっかりと心に残るアルバムになっている点、TRAVISの、というよりFran Healyのメロディーメイカーとしての実力を存分に感じる傑作アルバムだったと言えるでしょう。彼らの初期の作品に負けずとも劣らない作品。まだまだ彼らはこれからも魅力的な楽曲を届けてくれそうです。
評価:★★★★★
TRAIVS 過去の作品
Ode to J.Smith
WHERE YOU STAND
Everything at Once
ほかに聴いたアルバム
Live Around The World/QUEEN+ADAM LAMBERT
映画「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットで、一躍世界的に再注目されるようになったQUEEN。フレディーの死後も、ボーカルにポール・ロジャースを迎えてライブ活動を行ったりもしましたが、その後、ポール・ロジャースとの活動には終止符が打たれ、さらに2012年から新ボーカル、アダム・ランバートを迎え活動を行っていました。本作は、そんなアダム・ランバートを迎えてからのライブの模様を収録したライブアルバム。アラム・ランバートはボーカリストとしてフレディーのイメージにも近く、なによりもQUEENとしてのボーカルスタイルはフレディーのものを踏襲しており、そういう意味では安心して聴けることが出来るライブアルバムです。もっとも、それだけに結局はノスタルジーをベースとした活動になっていることは否めないのですが…。
評価:★★★★
QUEEN 過去の作品
Bohemian Rhapsody(The Original Soundtrack)
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