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2020年10月11日 (日)

美しいメロを聴かせる彼ららしい傑作

Title:American Head
Musician:The Flaming Lips

様々なスタイルで活動し、様々なタイプのアルバムをリリースしているため、なかなかその活動を追いかけるのも困難なThe Flaming Lips。今回のアルバムは、そんな彼らの純然たるオリジナルアルバムとなります。オリジナルアルバムとしては昨年リリースされた「King's Mouth」以来…ということになるのですが、The Flaming Lipsのフロントマンでもあるウェイン・コインのアート作品「King's Mouth」のサントラという位置づけだっただけ、純然たるオリジナルアルバムとしては2017年の「Oczy Mlody」以来、ということになるのでしょうか。さらにその間にはガールズロックデゥオ、Deap VallyとのコラボでDeap Lips名義でアルバムをリリースしていたりもして、非常に積極的な活動が目立ちます。

さて、そんな積極的な活動を続ける彼らですが、今回のアルバムは彼ららしい分厚くサイケなサウンドを聴かせつつ、基本的にはフォーキーな作風で美しいメロディーラインを聴かせてくれる、ポップ主体の曲作りが目立つアルバムに仕上がっていました。まずアルバムの冒頭は、いきなり分厚いエレクトロサウンドからスタートし、サイケな様相を感じさせるのですが、まずはボーカル、Wayne Coyneの美しいファルセットボイスとピアノの音色からスタートする「Will You Return / When You Come Down」はドリーミーで切ないメロディーが胸をうつ楽曲に。まずはその美しいメロディーを存分に楽しめる楽曲からスタートします。

特に今回は序盤から中盤にかけて「Flowers of Neptune 6」「At the Movies on Quaaludes」のような、70年代的な空気も感じさせるフォークロックあるいはソフトロックにカテゴライズされそうな楽曲が魅力的。ピアノの音色も入りつつ、エレクトロサウンドがほどよくサイケでドリーミーな世界を作り出しており、ちょっとメランコリックなメロディーラインを含めて、ゆっくりとThe Flaming Lipsの世界に浸れる魅力的なポップチューンが並んでいます。

ただ、そんな中、アコギの弾き語りでフォーキーにメロディアスに聴かせるポップチューンが流れてきて、非常に美しい曲調だったのでタイトルを確認してみると、「Mother I've Taken LSD」・・・・・・うーん、サイケデリック(笑)。ここらへん、完全にThe Flaming Lipsらしいなぁ。

後半も、ほどよくエレクトロサウンドを入れて、ほどよくサイケながらも、一方ではアコースティックなサウンドを入れてフォーキーで美しいメロを聴かせる曲は続き、「Mother Please Don't Be Sad」などはまさにピアノ弾き語りで聴かせるメロディーラインの美しさに胸をうちますし、「Assassins of Youth」も、70年代のテイストを感じさせる哀愁感たっぷりのメロディーも大きな魅力のフォークロックチューン。さらに女性ボーカリストKacey Musgravesとのデゥオ「God and the Policeman」も、ピアノをメインに様々な音をサンプリングしたサイケ風のアレンジが彼ららしい一方で、女性ボーカルとの清涼感あふれるデゥオが大きな魅力の楽曲になっています。

所々、サイケデリックな分厚いエレクロトノイズなどが入ったり、歪んだ音像を聴かせたりと、まさにサイケロックバンドらしい本領発揮なサウンドも聴かせつつ、アルバム全体としてはフォーキーなメロディーラインを主軸に置いた、魅力的なポップアルバムになっていました。ここ最近の彼らのオリジナルアルバムは、比較的サイケ寄りにシフトしていた感があるのですが、(サントラ的立ち位置だったとはいえ)前作「King's Mouth」に引き続き、グッとポップ寄りにシフトしたアルバム。サイケ寄りのアルバムも魅力的でしたが、やはりこういうポップなメロ、聴きたかったなぁ…ということをあらためて実感したアルバムでした。The Flaming Lipsのメロディーメイカーとしての魅力を存分に味わえる傑作です。

評価:★★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends
Oczy Mlody
GREATEST HITS VOL.1
King's Mouth:Music and Songs
The Soft Bulletin: Live at Red Rocks (feat. The Colorado Symphony & André de Ridder)


ほかに聴いたアルバム

WE ARE CHAOS/Marilyn Manson

約3年ぶりとなるマリリン・マンソンのニューアルバム。不気味なジャケット写真と、「我々は混乱だ」というアルバムタイトルはいかにも彼ららしい感じ。楽曲的にもマリリン・マンソンの王道を行くようなインダストリアルでヘヴィーなロック路線というのはいままでと同様。ただメロディーラインは意外とポップで、聴きやすさも兼ね備えたそんなアルバムに。いい意味で、ベテランバンドとしての安定感とポピュラリティーを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

Marilyn Manson 過去の作品
THE HIGH END OF LOW
Heaven Upside Down

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