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2020年10月18日 (日)

美しいメロが際立つ

Title:Shore
Musician:Fleet Foxes

アメリカはシアトル出身のフォークロックバンド、Fleet Foxes。セルフタイトルのデビュー作で高い評価を受けて以降、毎回傑作アルバムをリリースし続けている彼ら。そんな彼らの約3年ぶりとなるニューアルバムは、このコロナ禍の中で、前日にリリースが突然発表されて配信リリースされたデジタルアルバムとなっています。ちなみにCDのリリースも予定されているみたいですが、リリースは来年の2月とか・・・コロナ関係なく、ある意味、今の時代らしいリリース形態となっています。

前作「Crack-Up」などがまさに典型例だったのですが、フォークロックの中に、幻想的なサイケフォークの要素を加えてドリーミーな作風となっているのが彼らの大きな魅力。今回のアルバムに関してもサイケフォーク的な要素を加えつつ、ただアルバム全体としてはフォークの要素が強い、比較的なシンプルなアレンジでメロディーを聴かせる曲が目立つ楽曲が並ぶ作品になっていました。

特にシンプルなアレンジでメロディーを聴かせるフォーキーな作品が並ぶのが前半。イントロ的な1曲目に続いて、事実上の1曲目となっている「Sunblind」は、アコースティックなギターを中心とした爽快なポップチューンになっていますし、続く「Can I Believe You」もバンドサウンドも入り、比較的ドリーミーなアレンジの要素も感じられるのですが、比較的シンプルなギターポップに。軽快なギターサウンドでポップに聴かせる「Jara」へと続き「Featherweight」は、まさにフォークロックの要素が全開。60年代的な要素すら感じられる哀愁感たっぷりに聴かせるメランコリックなポップチューンに仕上げられています。

一方後半に関してはホーンセッションやバンドサウンドが入り、分厚いサウンドで美しく聴かせるポップチューンが多いのが大きな魅力。「Maestranza」などはアコギを中心としたバンドサウンドながらも、伸びやかなボーカルでダイナミックに聴かせる楽曲構成になっていますし、ポップスさではこのアルバムの中で随一だったのが「Young Mama's Game」。メロディアスなギターロックナンバーで、美しいハーモニーで聴かせるメロディーラインが爽快で非常に心地よさを感じさせる楽曲に仕上がっています。

その後も重厚なハーモニーにシンセの音色も美しい「Quiet Air/Gioia」や、分厚いバンドサウンドがらも軽快なポップを聴かせる「Cradling Mother,Cradling Woman」など、美しいサウンドを分厚く聴かせつつ、ポップにまとめあげた楽曲が並びました。

全体的には美しいサウンドを聴かせつつも、主軸はメロディーと歌に置かれたそうな、そんなアルバムになっていたように感じます。そういう意味ではサイケさや幻想的な雰囲気は前作と比べると後退してしまったようにも感じますが、一方で美しいメロディーラインは今回も間違いなく健在。というよりもサウンドがシンプルになった結果、メロディーラインの美しさがより際立ったアルバムになったようにも感じます。前作とはまた異なった観点で、Fleet Foxesの魅力を存分に感じられる傑作アルバムだったと思います。

突然のリリースにビックリしてしまった本作ですが、サプライズかつ配信のみ(当初は)のアルバムといっても、彼らの魅力は全く落ちることはありませんでした。清涼感あふれるポップソングに終始聴き入ってしまう傑作。ポップミュージックが好きならば、まずは押さえておきたい傑作です。

評価:★★★★★

FLEET FOXES 過去の作品
Fleet Foxes+Sun Giant EP
HELPLESSNESS BLUES
Crack-Up
First Collection 2006-2009

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