シガー・ロスにより、よりポップに
Title:Shiver
Musician:Jonsi
独特の世界観を構築し、日本でも高い人気を誇るポストロックバンド、シガー・ロス。そのギタリスト及びボーカリストとして活躍するのが彼、Jonsi。2010年にはソロアルバム「GO」をリリースし、高い評価を集めましたが、それから約10年。ソロとして2枚目のアルバムがリリースされました。
前作「GO」は、シガー・ロスと同じような美しいサウンドを聴かせつつ、一方ではメロディーラインはシガー・ロスに比べて至ってポップで、かついい意味でわかりやすい、というアルバムに仕上がっており、ソロとしてシガー・ロスとは明確に異なる路線が特徴的なアルバムになっていました。
今回のアルバムに関しても、基本的には前作と同じような路線を踏襲した作品に仕上がっています。楽曲によっては、メタリックなサウンドを聴かせる「Wildeye」や「Swill」のような曲、あるいは讃美歌のような曲調の「Sumarið sem aldrei kom」のような曲もあり、荘厳さを感じさせるような楽曲も少なくありませんでした。
アルバムの冒頭を飾る「Exhale」も、Jonsiのボーカルを重ねて重厚な作風に仕上げる出だしとなっており、ある種の荘厳さを感じさせます。ただ、途中からはテンポのよいポップなメロディーラインが前に出てくる、至ってポップな作風の楽曲に仕上がっていますし、タイトルチューンの「Shiver」についても、美しいコーラスラインを聴かせつつ、基本的にはポップなメロの「歌」を主軸に据えた作品に仕上がっています。
特に女性ボーカリストRobynをゲストに迎えた「Salt Licorice」などはリズミカルなエレクトロサウンドが軽快なテンポを奏でるポップチューンに仕上がっており、ともすればJonsi風のディスコチューン??とも捉えられそうなナンバー。ある意味、シガー・ロスとしてはまず聴かれないであろうタイプの楽曲がユニーに感じさせます。
終盤を締めくくる「Grenade」「Beautiful Boy」も分厚いサウンドが魅力的である種の荘厳さを感じさせるのですが、ただ作品としては決して難しいサウンドを聴かせるといった感じではなく、ただ心地よいサウンドに身を委ねたいようなナンバー。どちらもJonsiのファルセット気味の美しい「歌」が中心になっており、いい意味でしっかりとしたポピュラリティーを感じさせる曲になっています。
正直、サウンド的には決して目新しい感じはなく、また音に圧巻されるような感じでもなく、そういう面では若干物足りなさを感じた部分も否定はできないのですが、それ以上にいい意味で聴きやすいポップなメロや美しいボーカルが実に魅力的なアルバムに仕上がっていたと思います。ただ、次は久しぶりのシガー・ロスで…といいたいところなのですが、ベースのゲオルグ・ホルム以外は脱退してしまい、事実上の活動休止状態のようですので、復活は難しいのかなぁ。とりあえずは、このアルバムを味わいつつ、シガー・ロスの復活を待ちたいところでしょう。
評価:★★★★★
Jonsi 過去の作品
GO
ほかに聴いたアルバム
The Ascension/Sufjan Stevens
アルバムをリリースする毎に各種メディアに大絶賛を受けるアメリカのシンガーソングライターによる新作。前作「Carrie&Lowell」はフォーキーな作風が特徴的でしたが、今回はグッと雰囲気が変わり、打ち込みを用いたドリーミーな作風が特徴的。一方ではそんな中でもバンドサウンドの曲やノイズ、あるいはアバンギャルドな楽曲もあったりして、まあ、このサウンドの自由度はまさにSSWならではといった感じでしょうか。ただ基本的にはポップなメロが流れている作品となっており、アルバム全体としてはいい意味で聴きやすさも感じられます。本作もまた、いろいろと高い評価を得そうな、そんな良作でした。
評価:★★★★★
Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell
Planetarium(Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister)
Gaslighter/The Chicks
アメリカで人気のカントリーバンド。もともとDixie Chicksという名前でしたが、Dixieという名前が奴隷制存続を主張し、南北戦争をひきおこした南部諸州の名称であることから、「The Chicks」と改名した経緯があります。さらに彼女たちは2003年にはブッシュ大統領の行ったイラク戦争を批判。保守的な傾向が強いカントリー業界の中では異質ともいえる政府批判に対して、大きな論争を巻き起こすなど、以前から非常に社会派の側面が強いバンドだったりします。
ただ、楽曲的には軽快でポップな、典型的とも言えるカントリー。ある意味、楽曲的には「大いなるマンネリ」的な傾向も感じられるのですが、いい意味で安定感もあり、安心して楽しめるアルバムと言えるかもしれません。なかなか日本だと、この手のカントリーはヒットしないのですが・・・軽快なポップは日本人でも十分楽しめそう。カントリー界を代表するバンドなだけに、日本でももうちょっと売れてもいいような感じもするのですが。
評価:★★★★
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