王道路線のギターロックが耳を惹く
Title:THE THIRD SUMMER OF LOVE
Musician:ラブリーサマーちゃん
そのインパクトあるミュージシャン名がまずは耳に残るラブリーサマーちゃん。本名、今泉愛夏のソロプロジェクトです。なるほど、「ラブリーサマーちゃん」は名前を英語読みしたんですね・・・。徐々に話題となっている宅録系のシンガーソングライターで、祖父が作曲家のいずみたくということでも一部、話題になっています。
そんな彼女の、フルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作。その奇妙な(?)ミュージシャン名と反して、楽曲の方は非常にシンプルなオルタナ系のギターロックとなっており、洋楽テイストも強いサウンドも魅力的。このアルバムも1曲目「AH!」もいきなり力強いギターサウンドからはじまるギターリフで奏でるイントロは、オルタナ系のインディーギターロック好きなら、絶対に耳をそばだててしまうのは間違いありません。2曲目「More Light」もシンセのリフがちょっとレトロな感覚で楽しめる、メロディアスなギターロックナンバー。歌い上げて歌詞をうねらしているサビはインパクト十分。耳に残ります。さらに続く「心ない人」はダイナミックかつノイジーなギターサウンドが迫力のあるガレージ風のナンバー。バンド色の強いロックナンバーになっています。
基本的に、ある種の王道とも言えるギターロック路線。洋楽テイストが強い反面、完全なルーツ志向といった感じでもなく、いい意味でのポップな聴きやすさも感じます。また、ちょっと気だるいボーカルも特徴的で、ちょっとダウナー気味のサウンドとマッチしてこちらも耳を惹きます。特に4曲目の「I Told You A Lie」は、まさにそんな気だるいサウンドにボーカルが見事にマッチした楽曲と言えるでしょう。この、気だるいボーカルもそうですが、洋楽志向が強い一方で、ほどよくポップというギターロックのスタイルは、初期the brilliant greenに近いものを感じます。
一方、中盤になると「豆台風」「LSC2000」「ミレニアム」と、それなりにノイジーなギターサウンドは聴かせるものの、比較的シンプルでロックよりもポップ色に主軸を置いたような作品が並びます。序盤のバンドサウンドを前に押し出したロック色強い作品だけではなく、もうちょっとシンプルなポップチューンもしっかり聴かせる…という点では彼女の振れ幅を感じるのですが、ただ、この中盤はちょっと中だるみだったかも。彼女の作品は、以前、ミニアルバム「人間の土地」を聴いたのですが、メロディーラインにひねりがなさすぎてちょっと平凡という印象を受けました。今回のアルバムも、確かにこのポップなメロを前に押し出した中盤の曲を聴くと、若干メロに関しては物足りなさを感じた点は否めません。
ただ終盤は再びバンドサウンドが強い作品に。「サンタクロースにお願い」もポップなメロを聴かせつつ、ノイジーなギターサウンドを前面に押し出した曲調に。さらに「どうしたいの?」などゴリゴリにヘヴィーなギターリフを前面に押し出したガレージロック色を押し進めた楽曲になっており、ロックなサウンドに耳を惹きます。ラストの「ヒーローズをうたって」は爽やかなポップチューンでの締めくくりとなるのですが、ゴリゴリのロック色が強いナンバーが続いた後の曲なだけに、ほどよい清涼剤のような締めくくりとなっており、心地よい気持ちでアルバムを締めくくることが出来ます。
アルバム「人間の土地」で感じたメロの平凡さはちょっと気に係る部分はあったのですが、ただそれ以上にヘヴィーなバンドサウンドがカッコよく、非常に魅力的な傑作アルバムに仕上がっていました。初期ブリグリもそうですが、最近のミュージシャンではSuperflyやGlim Spankyあたりが好きなら気に入るのではないでしょうか(彼らほどルーツ志向は強くないのですが)。そのかわいらしい名前と反して非常に力強さを感じさせるアルバム。この一度聴いたら忘れられないミュージシャン名、今後、さらに耳にする機会が増えそうです。
評価:★★★★★
ラブリーサマーちゃん 過去の作品
人間の土地
ほかに聴いたアルバム
Welcome My Friend/OKAMOTO'S
OKAMOTO'Sのニューアルバムは全6曲入りのEP盤。メランコリックなメロディーの作品が多く、「MOTEL」など歌謡曲的な雰囲気すら感じさせる曲も。一方でメロはメランコリックながらもファンキーな作風が彼ららしい表題曲の「Welcome My Friend」をはじめ「THE BEAR」「Riot」もヘヴィーなギターを前面に押し出したような作風になっており、全体的にはロック色も強い印象も。先日リリースしたベスト盤で、活動にひとつの区切りをつけた彼らですが、まずは新たな一歩として…といっても、いままで通りといった感じではあるのですが。
評価:★★★★
OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP
NO MORE MUSIC
BOY
10'S BEST
ONE DAY/山崎まさよし
デビュー25周年を迎えた山崎まさよしの新作は、全6曲入りのEP盤。とはいっても、6曲中3曲はインスト、3曲は歌モノという内容。そのため、全体的には地味という印象は否めないものの、ちょっとメランコリックな作風といい、楽曲はインスト曲を含めていずれも山崎まさよしっぽさを感じさせる全6曲。とりあえず、良くも悪くも無難にまとめたといった感じでしょうか。
評価:★★★★
山崎まさよし 過去の作品
COVER ALL-YO!
COVER ALL-HO!
IN MY HOUSE
HOBO'S MUSIC
Concert at SUNTORY HALL
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[STANDARDS]
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[SOLO ACOUSTICS]
FLOWERS
HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~
ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~
UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 2005-2015~
FM802 LIVE CLASSICS
LIFE
山崎×映画
Quarter Note
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事
- 円熟味の増した傑作アルバム(2020.12.28)
- 自由度の高い音楽性(2020.12.27)
- いつもの彼女とは異なるサウンド(2020.12.26)
- Gotchの才が発揮されたソロ3枚目(2020.12.25)
- 今の時代を描いたミニアルバム(2020.12.22)
コメント