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2020年10月

2020年10月31日 (土)

30年の時代を経てよみがえる80年代の名盤

Title:HOT LIPS
Musician:ZIGGY

本作は、もともと1988年にリリースされたZIGGYのメジャー2ndアルバム。彼らの最大のヒット曲「GLORIA」も収録されており、彼らの代表的なアルバムとも言える作品。もっとも、「GLORIA」がヒットしたのは、このアルバムがリリースされた後、1989年にドラマ主題歌に起用され、2度目のシングルカットされた時点であり、そのため本作はオリコンで最高位12位と、「GLORIA」が収録されたアルバムの割りには、さほど大ヒットを記録していません。

さて、今回その30年以上前のアルバムを取り上げたのは、本作が、このたび現在のZIGGYのメンバー、といっても現在、ZIGGYの正式メンバーは森重樹一ひとりのみであることから、ツアーメンバーを起用しての再録音がリリースされました。そのため今回、紹介するのはその再録版。もっとも私自身、このアルバムはリアルタイムでは聴いていませんし、その後も一度も聴いたことなく今回、はじめて聴いてみたアルバムとなるため、再録版の、というよりは純粋にアルバム「HOT LIPS」の感想、といった感じなのですが。

前にZIGGYを取り上げた時にも書いたのですが、彼らの代表曲「GLORIA」というと、いかにもJ-POP的なビートロック。そのため以前はZIGGYというと典型的なJ-POPバンド…といったイメージが強く、少々敬遠していた感もありました。しかし、以前はじめて聴いたベスト盤でそのイメージは大きく変化。彼らが実は、かなり本格的な、洋楽志向も強いロックバンドということをはじめて知りました。

そしてこの「GLORIA」が収録された本作も、かなりハードロックやグラムロック志向の強い、本格的なロックのアルバムに仕上がっています。もともとジャケット写真も、パンクロックに大きな影響を与えたというNew York Dollsのデビューアルバム「New York Dolls」のパロディーですし、(再録版では不明ですが)オリジナル版では「PLAYING ROCKS」にそのNew York Dollsのジョニー・サンダーズがレコーディングに参加していたそうです。

タイトルチューンである「HOT LIPS」もエッジの効いたギターとヘヴィーなバンドサウンドがカッコいい、疾走感あるハードロックナンバーになっていますし、「WHAT DO YOU WANT?」もリズミカルなギターとドラムスのサウンドが耳に残ります。「HIGHWAY DRIVING NIGHT」もラストはヘヴィーなブルース風のギターリフで締めくくるなど、彼らの本格的なルーツ志向を感じさせます。

「PLAYGIN ROCKS」も森重樹一のシャウトが前面に押し出され、疾走感あって、パンキッシュなナンバーとなっていますし、「LAST DANCEはお前に」もブギウギ調のピアノのリズムが軽快なロックンロールな楽曲に仕上がっています。

そんな本格的なロックのアルバムである一方、意外とメロはポップで、ある種「歌謡曲」的な部分も少なくありません。例えば「TOKYO CITY NIGHT」なども、かなり哀愁感ただようナンバーとなっており、メロディーラインはかなり歌謡曲的。そのほかの曲にしても意外と歌謡曲テイストの強いナンバーも強く、J-POP的な「GLORIA」がアルバムの中でさほど浮いていないのは、他の曲もなにげに歌謡曲的な要素が強いから、という点もあるのでしょう。ただ、その歌謡曲的なメロディーラインという、ある種のベタさがアルバムの聴きやすさにつながっており、ひとつの魅力になっているように感じました。

さて今回は再録版ということなのですが、実は前述の通りオリジナルアルバムは聴いておらず、オリジナルとの比較はできません。ただサウンド的には80年代的なサウンドに仕上がっており、おそらくオリジナルから大きな変更はないのではないでしょうか。一方、音圧としてはかなり強くなっており、今風。そういう意味で今の耳で聴いて、より迫力を感じ、聴きやすくなっています。また、森重樹一のボーカルを含めて、時代による衰えは皆無。むしろ、彼のボーカルは年齢を経て、さらに迫力を増しているようにも感じました。

非常にカッコいい疾走感あるバンドサウンドを前面に押し出したロックなアルバム。ほどよく歌謡曲的なメロディーラインとのバランスも絶妙で、間違いなく80年代の名盤といって言いでしょう。時代を経て、今聴いても全く衰えていない魅力があります。ロックリスナーなら必聴の1枚です。

評価:★★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
ROCK SHOW


ほかに聴いたアルバム

森川美穂 VERY BEST SONGS 35/森川美穂

デビュー35周年を迎えるシンガー森川美穂のオールタイムベスト。森川美穂といえば本作にも収録されている「ブルーウォーター」のイメージが強く、イメージ的には90年代に活躍した谷村有美や永井真理子などのガールズポップ勢の先駆け、というイメージがあったのですが、もともとは完全にアイドルでデビューしたんですね。実際、今回のアルバムのデビュー直後の作品、特にDisc1の楽曲はかなりアイドルテイストが強い楽曲が多く、確かにアイドルだったんだな、ということを強く感じました。

ただ、Disc2、特にその「ブルーウォーター」のあたりから、その歌唱力を生かしたボーカルスタイルの曲が多くなってきており、アイドルという色合いが完全に消えていきます。アイドルとしてどういう売られ方をしたのかわからないのですが、楽曲的にはアイドルシンガーというよりもボーカリストとしてのスタイルの方が彼女にピッタリマッチしていたように感じました。最近の作品になるとバラード曲ばかりになり、良くも悪くも「大人のシンガー」としての側面を前面に出している感があり、若干、バラードばかり続く終盤は退屈な感じもしたのですが、ただボーカリストとしてはいい意味で歳を重ねている感もあります。一時期ほど名前を聞く機会は減ってしまいましたが、彼女はこれからもボーカリストとしてそのキャリアを順調に伸ばしていきそうです。

評価:★★★★

Between the Black and Gray/MONOEYES

細美武士率いるロックバンドによる約3年2ヶ月ぶりのニューアルバム。ELLEGARDENも活動を再開し、the HIATUSも活動を続ける中、3バンド並行の活動は大変だとは思うのですが、その中でもニューアルバムをリリースしてくるあたり、細美武士の創作意欲の強さを感じます。ただ、ノイジーなギターサウンドを中心としたバンドサウンドに主軸に置かれたロックなアルバムになっている一方、メロディーラインについては平凡な印象を受けてしまう作品も少なくなく、ちょっと練り込みが足りなかったような。前作もメロのインパクト不足が気になったのですが、今回はその印象がさらに強くなってしまいました。概して疾走感あるギターロックは非常に心地よく楽しめたのですが・・・。

評価:★★★★

MONOEYES 過去の作品
A Mirage In The Sun
Dim the Lights

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2020年10月30日 (金)

シンプルで美しいアルバム

Title:10 Songs
Musician:TRAVIS

1999年にリリースされた「The Man Who」が大ヒットを記録し、その後のColdplayやKeaneといったメランコリックなロックバンド躍進の立役者ともなったTRAVIS。その後、その勢いは一段落し、特に日本では、人気と評価が急激にあがったColdplayに対して、若干忘れ去られ気味なバンドとなってしまっていますが、それでもイギリスではベスト10ヒットを継続しているなど人気バンドの地位はキープ。本作も全英チャートでは5位にランクインされるなど、ヒットを記録しています。

そんな彼らですが、ここ最近は彼らの原点に回帰するような、シンプルなメロディーラインを前に押し出した作品の曲が続いていますが、この、あくまでも「歌」を前に押しだした方向性は、今回のアルバムでさらに明確になったように感じます。「10 Songs」という非常にシンプルなタイトルもまさにアルバムの方向性を象徴しているとも言えるのですが、とにかくシンプルな作風の曲が10曲並んだ、ポップスアルバムに仕上がっていました。

そのシンプルな作風だからこそ際立つのがFran Healyの書くメロディーラインのすばらしさ。最近は他のメンバーが書く楽曲の割合も増えていたのですが、今回のアルバムは前作、Fran Healyが作詞作曲を手掛けています。アルバムを聴き始めてまずは飛び込んでくるのが1曲目「Waving at the Window」の冒頭のメランコリックであまりにも美しいピアノのイントロ。もう、この胸をかきむしられるような美しいフレーズが聴こえた瞬間、このアルバムの傑作ぶりが確信できるような、そんなあまりにも美しいフレーズに出会うことが出来ます。

女性ボーカリストSusanna Hoffsとのデゥオとなっている「The Only Thing」も、男女ボーカルが美しく映えるメロディアスなナンバーになっていますし、フォーキーな「Butterflies」もアコースティックの爽快なサウンドの中にわずかに混じる切ないフレーズが魅力的。アコギとストリングスで聴かせる「Kissing in the Wind」も切ないメロディーラインが胸に突き刺さる楽曲になっています。

サウンドの面もアコギやピアノなどアコースティックなサウンドを主軸にしており非常にシンプルな構成に。ここらへんは初期の作品以上に、よりシンプルにシフトしている、といってもいいかもしれません。唯一「Valentine」はヘヴィーなバンドサウンドを前に押し出しており、このアルバムの中で唯一、ロックバンド然としたTRAVISを垣間見れる作品になっていますが、本作にしてもあくまでもメランコリックなメロディーが前に押し出された作品となっています。

ラストを締めくくる「No Love Lost」もピアノのみの弾き語りによる非常に美しいバラードナンバー。まさにアルバムを締めくくるにふさわしい清涼感あふれるサウンドとメランコリックなメロディーラインの楽曲になっており、最後まで胸にしみいる歌声を聴かせてくれるアルバムになっていました。

非常にシンプルな内容だっただけに、TRAVISというバンドのメロディーラインの美しさを存分に味わえるアルバムになっていました。決して派手さはないのですが、それでもしっかりと心に残るアルバムになっている点、TRAVISの、というよりFran Healyのメロディーメイカーとしての実力を存分に感じる傑作アルバムだったと言えるでしょう。彼らの初期の作品に負けずとも劣らない作品。まだまだ彼らはこれからも魅力的な楽曲を届けてくれそうです。

評価:★★★★★

TRAIVS 過去の作品
Ode to J.Smith
WHERE YOU STAND
Everything at Once


ほかに聴いたアルバム

Live Around The World/QUEEN+ADAM LAMBERT

映画「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットで、一躍世界的に再注目されるようになったQUEEN。フレディーの死後も、ボーカルにポール・ロジャースを迎えてライブ活動を行ったりもしましたが、その後、ポール・ロジャースとの活動には終止符が打たれ、さらに2012年から新ボーカル、アダム・ランバートを迎え活動を行っていました。本作は、そんなアダム・ランバートを迎えてからのライブの模様を収録したライブアルバム。アラム・ランバートはボーカリストとしてフレディーのイメージにも近く、なによりもQUEENとしてのボーカルスタイルはフレディーのものを踏襲しており、そういう意味では安心して聴けることが出来るライブアルバムです。もっとも、それだけに結局はノスタルジーをベースとした活動になっていることは否めないのですが…。

評価:★★★★

QUEEN 過去の作品
Bohemian Rhapsody(The Original Soundtrack)

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2020年10月29日 (木)

日韓合同グループが1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は日韓合同の女性アイドルグループのアルバムが1位を獲得しました。

今週1位を獲得したのはIZ*ONE「Twelve」。韓国のオーディション番組「PRODUCE 48」のオーディションで選ばれたメンバーによる女性アイドルグループ。いままで韓国盤でアルバムのリリースはあったものの、本作が初の国内盤となります。CD販売数1位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数12位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上13万5千枚で1位初登場。韓国盤の前作「Oneiric Diary」の3千枚(8位)より大きくアップしています。

2位には矢沢永吉「STANDARD ~THE BALLAD BEST〜」がランクイン。タイトル通り、彼のバラード曲を集めたベストアルバム。自ら監修し、レコード会社を超えて選曲された3枚組なのですが、バラードだけでCD3枚になるあたり、彼のキャリアの長さを物語っています。CD販売数2位、PCによるCD読取数で3位を獲得。オリコンは初動売上7万2千枚で3位初登場。直近のオリジナルアルバム「いつか、その日が来る日まで…」の11万1千枚(1位)よりダウンしています。

3位には星野源「Gen Hoshino Singles Box "GRATITUDE"」が初登場。こちら、1stシングル「くだらないの中に」から、現時点の最新シングル「ドラえもん」までの全11作品の初回盤仕様CDに特典のDVD、さらに特典CDにBlu-rayもつくという超豪華仕様のボックス盤。25,000円強というお値段ながらもCD販売数が3位にランクインし、見事ベスト10入りです。オリコンでも初動売上で4万4千枚を記録。直近のオリジナルアルバム「POP VIRUS」の27万8千枚(1位)にはさすがに大きく届かないものの、根強い人気を感じさせる結果となりました。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位にランクインしてきたのがJUJU「俺のRequest」。人気のカバーアルバムシリーズ「Request」の第4弾で、本作ではスキマスイッチの「奏」やGLAYの「BELOVED」、小田和正の「言葉にできない」など男性ミュージシャンの楽曲をカバーしています。CD販売数は6位、PCによるCD読取数は15位でしたが、ダウンロード数で1位を獲得。総合順位も5位となりました。オリコンでは初動売上2万3千枚で7位初登場。直近作はベスト盤の「YOUR STORY」でしたが、同作の初動5万4千枚(1位)からはダウン。「Request」シリーズでは前作となる「スナックJUJU ~夜のRequest~」の初動3万4千枚(5位)からもダウンしています。

6位には男性シンガーソングライター高橋優「PERSONALITY」が初登場でランクイン。CD販売数は5位ながらもダウンロード数7位、PCによるCD読取数11位で総合順位はこの位置に。デビュー10周年を迎えた彼の約2年ぶりとなるニューアルバム。オリコンでは初動売上2万3千枚で6位初登場。前作「STARTING OVER」の2万5千枚(2位)より若干の減少。

9位初登場は女性2人組のアイドルデゥオ、ClariS「ClariS 10th Anniversary BEST Green Star」がランクイン。タイトル通り、デビュー10周年を迎える彼女たちのオールタイムベストアルバム。CD販売数7位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数38位。ちなみに2作同時リリースとなっているのですが、もう1枚の「 ClariS 10th Anniversary BEST Pink Moon」は11位に留まり、惜しくも2枚同時ベスト10入りは逃しました。ちなみにオリコンでは初動売上1万枚で9位初登場。直近作はミニアルバム「SUMMER TRACKS-夏のうた-」で、同作の初動5千枚(8位)からはアップ。ただベスト盤としては前作の「ClariS~SINGLE BEST 1st~」の初動3万1千枚(4位)からは大きくダウンしています。

初登場最後は10位にロックバンド銀杏BOYZ「ねえみんな大好きだよ」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数22位。かつて人気を博したロックバンドGOING STEADYのボーカル峯田和伸を中心として結成されたバンドながらも、その後メンバーが脱退し、現在は彼のソロプロジェクトとなっています。非常に寡作なミュージシャンで、結成は2003年と既にキャリア17年目を迎えながらも、オリジナルアルバムはこれで5枚目。かつ1stと2nd、3rdと4thはいずれも同日リリースと、事実上「2枚組」のアルバムでしたので、実質的には3作目のアルバムとなります。本作も前作から6年9ヶ月ぶりと久々となるアルバム。オリコンでは初動売上7千枚で12位初登場。前作「光の中に立っていてね」の2万2千枚(2位)からは大きくダウンというちょっと厳しい結果になっています。

今週の初登場盤は以上。まず米津玄師「STRAY SHEEP」は2位から7位に大きくダウン。PCによるCD読取数は1位を維持しましたが、CD販売数は6位から10位、ダウンロード数も2位から5位に大きくダウン。12週連続のベスト10ヒットとなりましたが、少々厳しい結果となっています。

また、あいみょん「おいしいパスタがあると聞いて」は今週8位にランクインし、これで7週連続ベスト10入りとなりました。CD販売数は19位でしたが、ダウンロード数は10位、PCによるCD読取数は2位にランクインしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年10月28日 (水)

「鬼滅」効果、強し!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

「鬼滅の刃」人気にのって、1、2フィニッシュです。

今週1位を獲得したのはLiSA「炎」。先週に続く2週連続の1位獲得で、CD販売数、ダウンロード数が先週と変わらず1位。ラジオオンエア数は1位から2位、Twitterつぶやき数も1位から3位とダウンしたものの、代わって、ストリーミング数が2位から1位、You Tube再生回数も3位から1位へとランクアップ。総合順位も文句なしの1位となりました。ご存じの通り、本作は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」主題歌。同じくアニメ「鬼滅の刃」主題歌の「紅蓮華」も4位から2位にアップ。ベスト10記録を通算42週に伸ばすと共に、6月8日付チャート以来、21週ぶりのベスト3入りを果たしています。さらに同曲は今週、瑛人の「香水」が14週連続でキープしてきたカラオケ歌唱回数の1位を奪取しています。

オリコン週間シングルランキングでも「炎」が4万2千枚を売り上げて、2週連続の1位獲得。「紅蓮華」も5千枚を売り上げて10位獲得と、ベスト10圏内に2作同時ランクイン。「鬼滅の刃」効果の強さを見せつける結果となっています。

3位はBTS「Dynamite」が先週の2位からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。先週まで1位だったストリーミング数は「炎」と入れ替わる形で2位にダウン。You Tube再生回数も2位から3位にダウンしています。これでベスト10ヒットは10週連続となりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場は1曲のみ。それが10位にランクインしたaiko「ハニーメモリー」。CD販売数3位、ラジオオンエア数1位、PCによるCD読取数7位でしたが、ダウンロード数58位、Twitterつぶやき数50位に留まり、総合順位はこの位置に。彼女らしい切ないラブバラード。オリコンでは初動売上1万9千枚で3位初登場。前作「青空」の初動2万1千枚(6位)からダウンしています。

一方今週はベスト10返り咲き曲も。9位にDISH//「猫」が先週の12位からランクアップ。4週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。以前も紹介しましたが、本作はYou Tubeチャンネル「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンスが話題となり、徐々に人気を伸ばしてきている楽曲。個別チャートではストリーミング数が11位から10位にアップしていますが、ダウンロード数は先週と変わらず15位、You Tube再生回数は39位から42位とダウンしていますので、ほかに強力な楽曲がなかった影響で相対的に順位を伸ばした結果のようです。ただ、本作が話題となった「猫~THE FIRST TAKE ver.~」は別カウントで今週18位にランクインしており、両者の総合ポイント数を合計すると5位相当になります。まだまだ順位を伸ばしてくるかもしれません。

続いてロングヒット曲ですが、まずはYOASOBI「夜に駆ける」は今週4位にダウン。ダウンロード数6位、ストリーミング数3位は先週から同順位だったのですが、7月20日付チャートから15週連続で続いていたYou Tube再生回数のトップは「炎」に譲る形で2位にダウン。ベスト3ヒットは連続7週でストップです。とはいえ、ベスト10入りはこれで27週連続となり、まだまだロングヒットは続きそうです。

NiziU「Make you happy」は先週から変わらず5位をキープ。これで17週連続のベスト10ヒット。ただ、You Tube再生回数は4位をキープしたものの、ストリーミング数は4位から5位、ダウンロード数も7位から10位とダウンしており、下落傾向となっています。

瑛人「香水」は今週8位から6位にアップ。根強い人気を見せ、26週連続のベスト10ヒットを記録しています。ただ、ストリーミング数は8位を維持したものの、You Tube再生回数は6位から8位にダウン。さらに前述の通り、14週連続で1位を維持してきたカラオケ歌唱回数は、「紅蓮華」に1位をゆずり、さらにYOASOBI「夜に駆ける」の2位を下回る3位までダウンしてしまいました。

そして根強い人気といえば米津玄師「感電」が先週の10位から7位にアップ。ベスト10ヒットを16週連続に伸ばしています。こちらはストリーミング数及びYou Tube再生回数いずれも先週から変わらず7位をキープしています。

さらにあいみょん「裸の心」も9位から8位にアップ。20週連続通算21週目のベスト10ヒットとなっています。ただストリーミング数は5位から6位にさらにダウンしており、下落傾向は続いています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年10月27日 (火)

エモい音楽性のSSW

Title:Live Forever
Musician:Bartees Strange

今、アメリカのインディーシーンで最も注目を集めているミュージシャンの一人だそうです。ワシントンDCを拠点に活動を続けているシンガーソングライター、Bartees Strange。本作はそんな彼のデビュー作となります。もともと、2月にリリースされた楽曲「About Today」(本作には未収録)が話題となったそうですが、本作は彼のファルセット気味ののびやかなボーカルを聴かせるソウルテイストのナンバー。本作の1曲目「Jealousy」も幻想的なサウンドに伸びやかなボーカルが特徴的なソウル風の楽曲になっており、なるほど、そういうタイプのSSWなのか…と聴き始めはそう感じました。

ただし、その印象が一気に変わるのが2曲目「Mustang」。最初はシンセのサウンドからスタートするのですが、そこから一気に分厚いバンドサウンドが登場。疾走感あるロックナンバー。ズシリと思いサウンドにちょっとメランコリックさを感じるメロディーラインはエモコアあたりに通じるような音楽性を感じます。続く「Boomer」も、最初、ラップ的なボーカルを入れつつ、疾走感あるエモロック路線は「Mustang」と同様。とにかく正統派ともいえるロックチューンが続き、ロック好きにはたまらない楽曲が並びます。

かと思えば、「In a Cab」ではちょっとジャジーな要素も感じるホーンセッションも入った賑やかなポップナンバーが入ったり、「Flagey God」では打ち込みのサウンドでリズミカルな楽曲となっており、彼なりのディスコチューンとなっていたり、「Far」の序盤ではアコギでフォーキーな作風になっていたり、「Fallen for You」はアコギ弾き語りでしんみりと聴かせる楽曲になっていたりと曲によって作風はバラバラ。ラストの「Ghostly」もスペーシーなエレクトロサウンドで締めくくるなど、Bartees Strangeがどんなミュージシャンかと一言で言うのが非常に難しいミュージシャンとなっています。

このバラバラな音楽性というのは、彼の懐の深さも感じさせますし、ある意味、いろいろな意味でシンガーソングライターらしいといえばシンガーソングライターらしい感じ。日本で言えば「宅録系」といった感じでしょうか。髭と眼鏡で、失礼ながらも少々冴えない感じの風貌も、いかにも「宅録系」のシンガーソングライターといった印象を強く受けます。

ただ、バラバラな音楽性ながらも、アルバム全体として統一感がなかったか、と言えば決してそんな訳ではなく、アルバム全体としては彼の色はしっかりと感じられた作品になっていたかと思います。エレクトロな作品やフォーキーな作品、あるいはソウル風の作品などもありつつ、全体的には比較的「ロック」からの影響、特にエモからの影響を強く感じる作風が目立ちました。それだけにロックリスナーにとっては、様々な作風ながらも全体的に聴いていて心地よさを感じさせるアルバムになっていたのではないでしょうか。まだまだ日本での知名度は限定的のようですが、本作の評価も高く、これからさらに知名度は高まりそうな印象もあります。おそらく今後、彼の名前を聴く機会も増えてきそう。非常に楽しみです。

評価:★★★★★


2020/BON JOVI

ある意味、将来的に歴史として振り返った中、コロナ禍が世界を覆った1年としておそらく非常にネガティブな評価をされるであろう今年、2020年という年を冠したBON JOVIのニューアルバム。本作が非常に特徴的なのは全編、社会問題を取り上げた曲が並んでいるという点。銃規制の問題や、日本でも話題になることが多いBLMに関する楽曲、さらにはコロナ禍を取り上げた曲まであり、全体的に非常に社会派な作風となっています。それだけ今の社会的情勢に対して危機感を抱いているということでしょうか。タイトル通り、まさに「2020年」という年を体現化した作品となっています。

それだけに楽曲的にも、以前の彼らのような、いかにも大味な産業ロック的な作品よりも、グッとタイトで引き締まった、ある意味、オルタナティブロック的な様相すら感じさせる作品となっています。今という時代に寄り添った楽曲だからこそ、サウンド的にも変化しているのでしょうか。正直なところ、勢いという面はさほど感じませんし、サウンド面でも決して目新しさはないのですが、BON JOVIが決してベテランとして固定ファンの中で惰性で活動を続けるような、棺桶に片足を突っ込んだようなバンドではなく、しっかりと「今」という時代に向き合ったバンドであるということを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

BON JOVI 過去の作品
Lost Highway
THE CIRCLE
GREATEST HITS-THE ULTIMATE COLLECTION
What About Now
Burning Bridges
This House Is Not For Sale

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2020年10月26日 (月)

シガー・ロスにより、よりポップに

Title:Shiver
Musician:Jonsi

独特の世界観を構築し、日本でも高い人気を誇るポストロックバンド、シガー・ロス。そのギタリスト及びボーカリストとして活躍するのが彼、Jonsi。2010年にはソロアルバム「GO」をリリースし、高い評価を集めましたが、それから約10年。ソロとして2枚目のアルバムがリリースされました。

前作「GO」は、シガー・ロスと同じような美しいサウンドを聴かせつつ、一方ではメロディーラインはシガー・ロスに比べて至ってポップで、かついい意味でわかりやすい、というアルバムに仕上がっており、ソロとしてシガー・ロスとは明確に異なる路線が特徴的なアルバムになっていました。

今回のアルバムに関しても、基本的には前作と同じような路線を踏襲した作品に仕上がっています。楽曲によっては、メタリックなサウンドを聴かせる「Wildeye」「Swill」のような曲、あるいは讃美歌のような曲調の「Sumarið sem aldrei kom」のような曲もあり、荘厳さを感じさせるような楽曲も少なくありませんでした。

アルバムの冒頭を飾る「Exhale」も、Jonsiのボーカルを重ねて重厚な作風に仕上げる出だしとなっており、ある種の荘厳さを感じさせます。ただ、途中からはテンポのよいポップなメロディーラインが前に出てくる、至ってポップな作風の楽曲に仕上がっていますし、タイトルチューンの「Shiver」についても、美しいコーラスラインを聴かせつつ、基本的にはポップなメロの「歌」を主軸に据えた作品に仕上がっています。

特に女性ボーカリストRobynをゲストに迎えた「Salt Licorice」などはリズミカルなエレクトロサウンドが軽快なテンポを奏でるポップチューンに仕上がっており、ともすればJonsi風のディスコチューン??とも捉えられそうなナンバー。ある意味、シガー・ロスとしてはまず聴かれないであろうタイプの楽曲がユニーに感じさせます。

終盤を締めくくる「Grenade」「Beautiful Boy」も分厚いサウンドが魅力的である種の荘厳さを感じさせるのですが、ただ作品としては決して難しいサウンドを聴かせるといった感じではなく、ただ心地よいサウンドに身を委ねたいようなナンバー。どちらもJonsiのファルセット気味の美しい「歌」が中心になっており、いい意味でしっかりとしたポピュラリティーを感じさせる曲になっています。

正直、サウンド的には決して目新しい感じはなく、また音に圧巻されるような感じでもなく、そういう面では若干物足りなさを感じた部分も否定はできないのですが、それ以上にいい意味で聴きやすいポップなメロや美しいボーカルが実に魅力的なアルバムに仕上がっていたと思います。ただ、次は久しぶりのシガー・ロスで…といいたいところなのですが、ベースのゲオルグ・ホルム以外は脱退してしまい、事実上の活動休止状態のようですので、復活は難しいのかなぁ。とりあえずは、このアルバムを味わいつつ、シガー・ロスの復活を待ちたいところでしょう。

評価:★★★★★

Jonsi 過去の作品
GO


ほかに聴いたアルバム

The Ascension/Sufjan Stevens

アルバムをリリースする毎に各種メディアに大絶賛を受けるアメリカのシンガーソングライターによる新作。前作「Carrie&Lowell」はフォーキーな作風が特徴的でしたが、今回はグッと雰囲気が変わり、打ち込みを用いたドリーミーな作風が特徴的。一方ではそんな中でもバンドサウンドの曲やノイズ、あるいはアバンギャルドな楽曲もあったりして、まあ、このサウンドの自由度はまさにSSWならではといった感じでしょうか。ただ基本的にはポップなメロが流れている作品となっており、アルバム全体としてはいい意味で聴きやすさも感じられます。本作もまた、いろいろと高い評価を得そうな、そんな良作でした。

評価:★★★★★

Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell
Planetarium(Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister)

Gaslighter/The Chicks

アメリカで人気のカントリーバンド。もともとDixie Chicksという名前でしたが、Dixieという名前が奴隷制存続を主張し、南北戦争をひきおこした南部諸州の名称であることから、「The Chicks」と改名した経緯があります。さらに彼女たちは2003年にはブッシュ大統領の行ったイラク戦争を批判。保守的な傾向が強いカントリー業界の中では異質ともいえる政府批判に対して、大きな論争を巻き起こすなど、以前から非常に社会派の側面が強いバンドだったりします。

ただ、楽曲的には軽快でポップな、典型的とも言えるカントリー。ある意味、楽曲的には「大いなるマンネリ」的な傾向も感じられるのですが、いい意味で安定感もあり、安心して楽しめるアルバムと言えるかもしれません。なかなか日本だと、この手のカントリーはヒットしないのですが・・・軽快なポップは日本人でも十分楽しめそう。カントリー界を代表するバンドなだけに、日本でももうちょっと売れてもいいような感じもするのですが。

評価:★★★★

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2020年10月25日 (日)

実はポップ??

Title:ULTRA MONO
Musician:IDLES

イギリスはブリストル出身のポストロックバンドIDLESによる3枚目のアルバム。まずはこのジャケット写真がかなりシュールで見ているだけで笑えてくるのですが・・・(笑)。前作「Joy as an Act of Resistance」が大きな話題を呼び、なんと本作は全英チャートで1位を獲得するなど、名実ともに大ブレイクを記録。今や、大注目のロックバンドの一組となっています。

本作も前作と同様、疾走感あるリズムをバックとした分厚くへヴィーなサウンドがメイン。圧倒的な音圧で、とにかく「ロックを聴いた」という満足感をまずは覚える作品になっています。まさにアルバムの冒頭を飾る「War」などはその典型例とも言える作風。非常に重いバンドサウンドとシャウト気味なボーカルがまずはリスナーの耳に襲いかかってきます。

基本的にはアルバム全体を通じてサウンドは同じようなスタンス。荒々しいサウンドがインディーっぽさを感じる「Grounds」に、疾走感あるヘヴィーなバンドサウンドが魅力的な「Grounds」「Mr.Motivator」と楽曲は続いていきます。

「Kill Them With Kindness」では静かなピアノの音色からスタートし、少々驚かされますが、続いて力強いドラムのリズムとへヴィーなギター、さらにはシャウトという彼ららしいスタイルにシフト。アップテンポで疾走感ある「Ne Touche Pas Moi」はパンクロック的な要素も強い印象。ボーカルは相変わらずシャウト気味ながらも、どこかメロディアスさを感じさせるのが不思議なところです。

後半に至るまで基本的な楽曲構成に大きな変化はなく、よりメタリックさを感じる「Reigns」に、本作の中では珍しく、あまりシャウトが登場せずダウナーに聴かせる「A Hymn」、そしてラストは力強いバンドサウンドにボーカルのシャウトが印象的な、実にIDLESらしいと言える「Danke」で締めくくり。終始、分厚いバンドサウンドで力強く聴かせる構成のアルバムになっていました。

全12曲42分というアルバムの長さもちょうどよく一気に聴き切れてしまうアルバム。なんといっても最初にも書いたのですが、非常にヘヴィーで分厚いバンドサウンドと疾走感あるリズムが心地よく、いい意味で「ロックを聴いた」という満足感に浸れる作品だったと思います。一方で、ボーカルは終始シャウト気味。ただ、それにも関わらず、意外とそのバックにはしっかりとしたメロディーラインが流れており、「ポップ」と感じることが出来るあたりも大きな特徴と言えるかもしれません。おそらく、似たようなタイプの楽曲が並んでいながらも、最後まで飽きることがなく聴くことが出来るというのは、分厚いバンドサウンドが心地よい、といった面もあるのですが、それ以上にポップなメロディーラインがしっかりと楽曲の根底に流れているというのが大きな要素のようにも感じました。

前作同様、非常に楽しめた傑作アルバム。本作もまた、年間ベストクラスの傑作だったと思います。ロックが好きならば、まずは聴いておきたい傑作と言えるでしょう。しかし、こういういかにも「ロック然」としたアルバムがチャート1位とは・・・HIP HOP勢の前に失速気味と思われたロックですが、実はこういうバンドが売れるあたり、やはりロックを求めるリスナー層が多いのでは?最近、ポストロックバンドで勢いのあるバンドが少なくありませんが、その傾向はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

IDLES 過去の作品
Joy as an Act of Resistance

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2020年10月24日 (土)

バンドとしての安定感も覚える新作

Title:You need the Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

相変わらず人気上昇中のロックバンド、ヤバTことヤバイTシャツ屋さんの、約2年10ヶ月ぶりとなるニューアルバム。この間、サンリオピューロランドでのワンマンライブを実施したり、コロナの影響で中止になってしまったのですが、志摩スペイン村でのライブが計画されたりと、相変わらず、ユーモラスかつ奇抜なアイディアでの活動が続いています。さらに本作では見事、自身初となるチャート1位を記録。その人気っぷりを見せつける結果となりました。

ヤバTは、もともとギターボーカルのこやまたくやがマキシマム ザ ホルモンを好きになったことからギターを独学ではじめたところからスタートしているのですが、そのこともありデス声も入れたハードコア風なサウンドながらも、ハードコアな部分以外は意外とポップなメロディーラインという、ホルモンの系統を引き継いだような音楽性が大きな特徴でした。ただ、前作「Tank-top Festival in JAPAN」ではそんなハードコア路線がちょっと後ろに下がり、パンクやギターロック路線がより前面に出てきた作風になっていました。

今回のアルバムに関してもハードコア色は後ろに下がり、パンクロック、ギターロック路線が目立つような構成になっています。「泡Our Music」のAメロの部分や「はやく返してDVD」のデス声のようなハードコア路線もしっかり残っているものの、全体的にはパンクロック路線がメイン。「NO MONEY DANCE」など、ダンサナブルなメロディーラインは、マキシマム ザ ホルモンの影響を強く感じるものの、サビの部分でハードコア路線にシフトすることなく、最後までリズミカルなギターロック路線に終始しています。

楽曲的にはどちらかというと10-FEETからの影響を強く感じるメロディアスパンクチューンの「sweet memories」やトランスのサウンドを入れた「日本の首都、そこは東京」など、バリエーションはさらに広がった感じ。基本的にはシンプルで疾走感あるギターロック路線がメインなのですが、ポップなメロとこの楽曲のバリエーション、さらには40分弱というアルバムの長さもあって、最後まで一気に聴いてしまうような構成になっていました。

歌詞も以前のような内輪受けや学生ノリのような作品が消えて、いい意味で広い層に支持されるように練られてきた感もあります。「珪藻土マットが僕に教えてくれたこと」やメンバーのもりもりもとをいじった「げんきもりもり!モーリーファンタジー」のような、正直、どーでもいいようなネタでユーモラスに聴かせる曲は相変わらずですが、これはこれで彼ららしいユーモアセンスが楽しい感じ。「NO MONEY DANCE」のような歌詞は、ちょっと今の若い世代の哀しい現実を垣間見れる感じもしました。

前作の路線を維持しつつ、いい意味でバンドとしての安定感も感じられる作品になっていたと思います。バンドとして、今後、この路線を維持していくのか、新たな一歩を踏み出すのか、そろそろちょっと分岐点のような感じもするのですが、ファンにとっては間違いなく、安心して楽しめる傑作アルバムだったと思います。今後も彼らの人気はまだ続きそうです。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top
Galaxy of the Tank-top
Tank-top Festival in JAPAN


ほかに聴いたアルバム

夏のせいep/RADWIMPS

全6曲入りのEP盤となったRADWIMPSの新作。伸びやかな歌声で愛を歌う、タイトルチューンである「夏のせい」をはじめとして、スケール感のあるミディアムチューンがメイン。コロナ禍の中で苦しむ人への応援歌として作成された「Light The Light」など、非常に特殊な状況となってしまった、この2020年だからこそリリースされたEP盤といった感のある作品に。基本的にはゆっくりと歌を聴かせるアルバムになっており、サウンド的には目新しさはなかったもののRADWIMPSらしいアルバムには仕上がっていました。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version

Contrast/STUTS

前作「Eutopia」がMusic Magazine誌の「日本のラップ/HIP HOP」部門で年間1位を獲得するなど、高い評価を受けたトラックメイカーによるミニアルバム。ラップ・・・というよりも基本的にはトラックメイカーとしての活動がメインの彼。本作も前作同様、ラップの作品も収録されていますが、基本的にはメロウなトラックを聴かせるような作品が並ぶアルバムに。メロウで温度感の低い、比較的静かなトラックに惹かれるような作品が並びます。様々な音楽的な要素を取り込んだ前作と比べると、本作は比較的シンプルな作風になっているのですが、しっかりと聴かせるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

STUTS 過去の作品
Eutopia

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2020年10月23日 (金)

知る人ぞ知る的な良質のバンドが並ぶ

LIVE MAGIC! 2020 ONLINE

会場 オンライン 日時 2020年10月18日(日)18:00~

コロナの中で、完全に開催が途絶えていたライブですが、ようやく少しずつ、有観客でのライブ開催が戻りつつあります。とはいえ、開催はまだまだ限定的。配信での開催がまだまだ続いています。ただ一方、ライブ配信での開催がゆえに、いままで行きたくても場所や日程の都合上、なかなかいけなかったライブイベントに、オンラインという形で参加できるようになるケースも少なくなく、先月のくるりの京都音博もそうですが、今回紹介するライブイベントもそう。ラジオDJや音楽評論家として活躍するピーター・バラカンが主催する音楽イベント。毎回、彼がセレクトする主にワールドミュージック系の、知る人ぞ知る、しかし非常にクオリティーの高いミュージシャンが参加しているイベントで、以前から参加したいと思いつつ、休日に東京での開催ということでなかなか参加できずにいました。しかし今年はコロナ禍の影響でオンラインでの開催に。2日間開催だったのですが、そのうち日曜日のイベントは時間的な余裕が出来、今回、オンラインという形ではじめてこのイベントに「参加」しました。

ライブは18時ちょうどからスタート。最初はピーター・バラカンがスタジオのようなところから登場し、簡単な挨拶からスタート。まずは過去のアーカイブの放送からスタート。最初はDereb The Ambassadorというエチオピアン・ジャズのグループから登場します。2018年のライブの映像で、軽快なリズムとサックスの音色が心地よい、アフロビート的なリズムにジャズの要素をちょっと加えたような楽曲が魅力的。いわばアフリカ音楽の要素を醸し出しつつも、一方ではあか抜けたようなサウンドを奏でており、このバランスがとても絶妙に楽しめる、そんなバンドでした。

この日はライブ映像の合間にピーター・バラカンのスタジオからの司会とバンドの紹介・解説が流れる構成。この途中のピーター・バラカンの司会の部分はライブ配信という形になっていました。また、ライブ映像の途中には、LIVE MAGIC!に毎年、ブースを出展する飲食店の取材映像なども入り、そういう面でもライブイベントらしさを出した構成になっていました。

続いてはOmar Sosa&Seckou Keitaという、キューバ出身の人気ピアニスト、オマール・ソーサと、セネガル人でロンドン在住のコラ演奏家、セク・ケイタによるユニット。2017年のイベントでの映像となるのですが、この日はさらにパーカッショニストが参加し、3人でのステージとなっていました。アフリカ系の音楽、かと思いきや、流れる水のような爽快感を覚えるサウンドがとても心地よい、非常に清涼感あふれるサウンドが特徴的。コラの音色に感じる、どこか壮大なアフリカ的な雰囲気が垣間見れる点も非常に魅力的で、独特の世界観をつくりあげていたグループでした。

3組目はFlor De Toloacheという女性5人組バンド。アコースティックギターにバイオリン、トランペット、トロンボーンという組み合わせの、アメリカはニューヨーク出身のラテングループ。こちらは2019年のライブ演奏となります。アコースティックなサウンドで、ラテン風のメランコリックな泣きメロを聴かせてくれるのが特徴的。あと、全員、胸元を大きくあけた服を着て、かなりセクシーな雰囲気だったのも印象的でした(笑)。

続いては中村まりwith高田漣による2018年のライブ演奏。高田漣はここでもアルバムを取り上げたことがありますし、よく知っているミュージシャンなのですが、中村まりは今回はじめて聴きます。アコギの弾き語りなのですが、中村まりは非常に伸びやかな表現力豊かな歌声が魅力的なボーカリストで、一気に気になる存在となりました。全2曲なのですが、うち2曲は高田漣の父親、高田渡の「コーヒーブルース」だったのですが、これも彼女の色にすっかり染めた、素晴らしいカバーとなっていました。

5組目はNoam Pikelny&Stuart Duncan。フィドルとバンジョーという組み合わせのユニットで、こちらも2018年のライブ演奏。アメリカンルーツミュージックをフィドルとバンジョーの軽快な音色で演奏したグループで、アコースティックな楽器2本のみの演奏ながらもしっかりとステージを沸かせたスケール感も感じる演奏を聴かせてくれました。

で、ここまでで約1時間が経過。19時からはピーター・バラカンがMCをつとめるInter FMとの同時放送という形になりました。

そしてここではじめて生演奏。スタジオに毎回、LIVE MAGIC!に参加しているというギタリスト濱口祐自が登場し、スタジオでの生演奏を披露してくれました。ライブがはじまってからMCでは関西弁でとにかくしゃべりまくる、いかにも関西人的なキャラなのですが(笑)、演奏がはじまると一転、ギターで魅力的な演奏を聴かせてくれます。最初はギターバンジョーでの軽快な演奏からスタートし、その後はブルージーな曲だったり、最後には自分のオリジナル「楽しい迷路」というシンプルでちょっとブルージーなギターインストを聴かせてくれたりと、全4曲のライブ演奏ながらも、比較的シンプルながらも表現力のあるギターサウンドをしっかりと聴かせてくれました。彼についてもはじめてその名前と演奏を聴いたのですが、これは一度、ライブでも見てみたいです。

その後はJack Broadbentというイギリスのシンガーソングライターによる2016年のライブ映像。1曲だけなのですが、Little Feetの「Willin'」を演奏して、しんみりとした泣きメロを聴かせてくれました。

そしてここで、この日のために収録された映像に。東京は羽村の工場の中で収録された映像なのですが、まずは元ちとせの登場。「朝花節」を披露してくれました。元ちとせのステージは久しぶりに見たのですが、以前と比べると、ボーカリストとして芯がより強くなり、力強さが増したような印象を受けるような演奏に。その歌唱力に惹きつけられるステージでした。

さらに個人的には一番のお目当てだった民謡クルセイダーズに。「虎女さま」を演奏してくれたのですが、サックスやパーカッションを入れた軽快で楽しいステージで、音源で聴く以上に開放感あふれるパフォーマンスになっていました。これは是非ともライブを見てみたいなぁ。そして最後は元ちとせと民謡クルセイダーズのコラボで「豊年節」へ。裏打ちのリズムで力強く、伸びやかな元ちとせのボーカルも強く印象に残ります。民謡クルセイダーズによる演奏もグルーヴ感あふれ、民謡をあらたに解釈したサウンドは見事。素晴らしいコラボとなっていました。

そしてQuarter To Africaというイスラエルの音楽グループから、テナーサックス奏者のヤキールによる、この日のためのメッセージビデオとサックスの短い演奏が届けられます。さらには、このQuarter To Africaによる2017年の演奏に。なんと日本の「炭坑節」をギター、トランペット、サックスなどでカバーした演奏となっており、民謡クルセイダーズにも通じるにような、ジャズやラテン的な要素も取り入れた演奏に。耳なじみある曲なのですが、一風変わった解釈での演奏が非常に魅力的でした。

で、ここでInter FMとの同時放送は終了。この後はライブ配信のみでイベントは続きます。

ここで再び、この日のイベントのみでの映像で、ポーランドの伝統音楽、マズルカを奏でるJanusz Prusinowski Kompaniaが登場します。彼らについては当サイトでもアルバムを取り上げたことのあるグループなのですが、1曲目はフィドルとチェロ(?)、フルートとタンバリンのような楽器を持っての演奏。マズルカの特徴としては3拍子の踊りがベースとなっているそうなのですが、明るく軽快なリズムとサウンドが楽しめる曲になっていました。

一方続く2曲目ではうってかわってトランペットとクラリネットのような縦笛、アコーディオンにチンドン屋のチンドン太鼓のような楽器での演奏となりました。こちらも明るく軽快でワクワクしてくるような演奏に。アルバムを聴いたときにも感じたのですが、このグループもライブで聴いたら楽しいだろうなぁ。いつか、ライブを見てみたいです。

そして最後はSouliveというアメリカのジャズファンクバンドによる2017年のライブ映像で「Tuesday Night Squal」という曲を。ギターやシンセの音色でフュージョン風でありつつもファンキーなリズムとグルーヴィーなサウンドが心地よいギターインストのナンバーになっていました。

そんな訳で、終了したのは20時半頃。みっちり2時間半に及ぶボリューミーな配信ライブでした。今回の「LIVE MAGIC!」。正直、期待していた生演奏はほとんどなく、事前に撮った映像または過去のライブ映像がメインで、その間にピーター・バラカンの紹介・解説でつなぐというスタイル。どちらかというと、ピーター・バラカンによる音楽番組を見ているような、そんな感じの配信ライブになっていました。

とはいえ、さすがは音楽に精通している彼のセレクトだけあって、参加しているミュージシャンはいずれも個性的で非常に魅力的。一般的によく知られているようなミュージシャンは少ないのですが、ただ一度ライブ映像を見ただけで、次は是非、生で見たくなるような、そんな素晴らしいライブ映像の連続で、非常に満足しました。なんといっても、これを「タダ」で見れるというのは非常にお得感もあり、とても楽しめた2時間半となりました。

以前から一度は参加してみたかったイベントライブなのですが、是非、やはり一度来年以降、参加したいなぁ。来年は、以前のように有観客のライブで開催されることを切に願っているのですが・・・。とりあえずは、今回のミュージシャンたちの音源を聴いてみたい!とても充実した内容のイベントでした。

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2020年10月22日 (木)

「鬼滅」効果

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100と同時1位です。

今週1位を獲得したのは女性シンガーLiSA「LEO-NiNE」。CD販売数及びダウンロード数1位、PCによるCD読取数3位。ご存じ社会現象ともなっているアニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華」が大ヒット中のアニソンシンガーですが、同曲も収録したアルバムが初登場で1位を獲得しました。昨日も紹介しましたが、「鬼滅の刃」の映画版の主題歌「炎」がHot100で1位を獲得しており、Hot100との同時1位獲得となります。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上6万6千枚で1位初登場。直近作が2枚同時リリースのベスト盤「LiSA BEST-Way-」「LiSA BEST-Day-」で、それぞれの初動売上4万2千枚(1位)、4万1千枚(2位)からアップ。オリジナルアルバムとしての前作「LiTTLE DEViL PARADE」の2万8千枚(4位)からもアップしています。

2位は米津玄師「STRAY SHEEP」が先週の4位からランクアップし、2週ぶりにベスト3返り咲き。11週連続のベスト10ヒットを記録しています。CD販売数は6位でしたが、ダウンロード数は2位、PCによるCD読取数は1位となっており、まだまだロングヒットは続きそう。

3位には、先週、先行配信により10位にランクインしていた和楽器バンド「TOKYO SINGING」が、CDリリースによりCDの売上が加わったことによりランクアップしベスト3入り。CD販売数は2位。ただし、ダウンロード数は先週の1位から5位にダウン。PCによるCD読取数も16位に留まり、総合順位は3位に。オリコンは初動売上2万枚で5位初登場。前作はEP盤の「REACT」で、同作の初動売上1万6千枚(5位)からはアップ。オリジナルフルアルバムとしては前作の「オトノエ」の初動3万1千枚(2位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に韓国の女性アイドルグループBLACKPINK「THE ALBUM」が4位にランクイン。CD販売数は3位でしたが、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数29位に留まり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上2万2千枚で4位初登場。前作「Kill This Love」の1万1千枚(5位)からアップしています。

7位には氷川きよし「生々流転」がランクイン。これで「せいせいるてん」と読むそうです。CD販売数は5位でしたが、配信は行っていないため対象外、PCによるCD読取数91位で総合順位は7位となっています。オリコンでは初動売上1万4千枚で7位初登場。前作「パピヨン-ボヘミアン・ラプソディ-」の1万6千枚(2位)から若干のダウンとなっています。

最後9位にはDREAMS COME TRUE「DOSCO prime」がランクイン。10月17日にオンラインで開催された「DREAMS COME TRUE WINTER FANTASIA 2020 ‒ DOSCO prime ニコ生 PARTY !!! ‒」の一環としてリリースされた、全編ドリカム自らの手によってディスコ仕様にアレンジされた楽曲12曲を収録された「ベスト盤」。CD販売数7位でしたが、配信なしのためダウンロード数圏外、PCによるCD読取数22位で総合順位は9位となりました。オリコンでは初動売上1万2千枚で8位初登場。前作「THE DREAM QUEST」の6万9千枚(1位)からはさすがに大きくダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年10月21日 (水)

史上初のダブル首位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位を獲得したのは、大ヒット中の映画の主題歌ナンバー。

今週1位を獲得したのはLiSA「炎」でした。社会現象レベルで大ヒットを記録している「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」主題歌。大ヒット中の「紅蓮華」と同じく、「鬼滅の刃」関連の楽曲で、CD販売数、ダウンロード数、ラジオオンエア数及びTwitterつぶやき数で1位獲得。ストリーミング数及びPCによるCD読取数で2位、You Tube再生回数で3位と軒並み上位にランクインし、総合順位も1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万7千枚で1位を獲得。前作「unlasting」の2万6千枚(3位)からアップしています。

また今週「紅蓮華」も先週の8位から4位にランクアップ。通算41週目のベスト10ヒットを記録。特にCD販売数が28位から7位に大きくアップ。ストリーミング数も15位から6位にアップするなど、映画公開の効果が大きく出た結果となっています。ちなみにオリコンでも8位にランクアップし、ベスト10返り咲きを記録しています。

ちなみに今週アルバムチャートでも大ヒット中の「紅蓮華」が収録された彼女のニューアルバム「LEO-NiNE」が1位にランクイン。Hot100及びHot Albumsいずれも1位という結果となっています。このHot100とHot Albumsで同時に1位獲得というのは史上初ということ。LiSAの…という以上に「鬼滅の刃」人気のすさまじさを感じさせます。もっとも、この「LEO-NiNE」には「炎」が収録されておらず、ファンとしては2枚同時に買わざるを得ない戦略になっています。「鬼滅の刃」のファン層的には小中学生あたりも多いでしょうから、こういう販売戦略には若干、疑問を感じる部分もあるのですが…。

2位にはBTS「Dynatime」が先週の3位からランクアップ。ストリーミング数1位、You Tube再生回数2位は先週から変わらず。ダウンロード数も7位から4位にアップ。連続9週目のベスト10ヒット。ベスト3入りも6週連続となっています。

逆に先週2位だったYOASOBI「夜に駆ける」は今週3位にダウン。You Tube再生回数は1位をキープしましたが、先週共に2位だったストリーミング数及びダウンロード数はそれぞれ3位、6位にダウンしています。ただ、これでベスト10入りは26週連続、ベスト3入りも7週連続となっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場は1曲のみ。それが7位に初登場したback number「エメラルド」。TBS系ドラマ「危険なビーナス」主題歌。配信限定のシングルとなっており、ダウンロード数2位、ストリーミング数27位、ラジオオンエア数3位、Twitterつぶやき数38位で総合順位が6位にランクイン。ダンサナブルなリズムに載るポップなメロが印象的なのですが、どこかメランコリックなところがback numberらしさと、いかにもドラマ主題歌になりそうな曲調だな、と感じさせるような曲になっています。

さて、今週もロングヒット曲がズラリと並んでいます。まずNiziU「Make you happy」は先週の4位からワンランクダウンの5位。16週連続のベスト10ヒット。ストリーミング数及びYou Tube再生回数がいずれも3位から4位にダウン。ダウンロード数も4位から7位と全体的に下落傾向になりました。

瑛人「香水」は5位から8位に大幅ダウン。ストリーミング数が6位から8位、You Tube再生回数も5位から6位にダウン。ただしカラオケ歌唱回数は14週連続の1位記録を続けています。ベスト10ヒットはこれで25週連続。

9位にはあいみょん「裸の心」が先週の6位からランクダウン。19週連続、通算20週目のベスト10ヒット。ただストリーミング数は4位から5位に今週もダウン。全体的にはそろそろ後のないチャートとなってきています。

さらに米津玄師「感電」は9位から10位にダウン。これで15週連続のベスト10ヒットとなりましたが、こちらも後がなくなってきました。ストリーミング数も5位から7位、You Tube再生回数も4位から7位にダウンしています。

また先週ベスト10に返り咲いたKing Gnu「白日」は今週11位にランクダウン。残念ながらベスト10返り咲きは1週で終わりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年10月20日 (火)

やはりTHE HIVESは最高!!

Title:Live At Third Man Records
Musician:THE HIVES

THE HIVESというバンド、ちょっと懐かしい名前なのですが覚えておられますでしょうか。スウェーデン出身のガレージロックバンドで、2002年にリリースされた、それまでの彼らの楽曲をまとめたコンピレーションアルバム「Your New Favorite Band」が世界中で大きな話題となりました。このアルバムがリリースされた2000年初頭は、世の中でいわば「ガレージロックリバイバル」と呼ばれたムーブメントが起きている最中。彼らはまさにそのリバイバルの波に乗って注目を集めたバンド、ということになります。

「ガレージロックリバイバル」というと、今、よく話題に上るのがThe StrokesやArctic Monkeys、さらにはThe White Stripesといったバンドでしょうか。THE HIVESも一時期、かなり人気を集めたバンドだったのですが、今となっては半分くらい忘れかけられているバンドといった感じもします。「Your New Favorite Band」リリース後のアルバム「Tyrannosaurus Hives」はイギリスのナショナルチャートでベスト10ヒットを記録したほか、世界的にもヒットを飛ばしたもののその後は失速。2013年にはベーシストのDr. Matt Destructionが健康上の理由から脱退。新メンバーThe Johan and Onlyが加入するものの、その活動は停滞気味となりました。

しかし、2019年には久々のシングルをリリースするなど、その活動が徐々に再開。そしてこのたび、彼らのキャリアにおいて初となるライブアルバムがリリースされました。本作は、昨年5月16日、アメリカはナッシュビルのBlue Roomというライブハウスで録音された音源を収録したもの。そのライブ音源を、同じガレージロックリバイバルの盟友(?)だった元The White Stripesのジャック・ホワイトが主宰するインディーレーベルThird Man Recordsからリリースされました。

個人的に、このガレージロックリバイバルで話題になったバンドの中で、一番はまったバンドが彼ら。特に「Your New Favorite Band」は2002年の私的洋楽ベストアルバムの2位とするなど、繰り返し聴いた大のお気に入りのアルバム。一時期はかなりはまりまくっていました。それだけに今回のライブアルバムも、最初は懐かしい・・・という感覚で聴き始めたのですが、聴いているうちに、また再びTHE HIVESにすっかりはまってしまいました。

あらためて感じるのですがTHE HIVESの魅力は徹底したキャッチー。メロディーラインのポピュラリティーも、同時期のガレージロックバンドの中ではずば抜けていましたし、ギターリフのフレーズも非常にポップで耳に残るキラーフレーズを連発していきます。今回のライブ盤でも「Main Offender」「Hate to Say I Told You So」など代表曲が収録されているのですが、一度聴いたら完全に耳に残り、思わず口ずさんでしまう・・・そんな楽曲でした。

また、ガレージロックバンドとしてシンプルでエッジの効いたサウンドを迫力たっぷりに聴かせる点も彼らの大きな魅力なのですが、ライブ音源ということもあり、そんな彼らのバンドとしても冴えまくった演奏を聴かせてくれています。このBlue Roomという会場はわずかキャパ250人という小さいライブハウスのようですが、そんな観客との距離も近い環境だからでしょうか、最近、さほど活動していなかったはずの彼らですが、メンバー全員、非常に息の合った迫力ある演奏を聴くことが出来ます。観客の歓声もしっかりとらえられており、その場の空気感がしっかりとおさまったライブアルバムになっていました。

ちなみに収録曲の中には「I'm Alive」という昨年発表した新曲も収録。かなりへヴィーなギターリフで迫力たっぷりに聴かせるミディアムチューンのナンバー。正直、疾走感のある彼らのかつての代表曲に比べると若干地味なのは否めないのですが、なにげにメロもギターリフも知らず知らずに耳に残る、彼ららしいキャッチーさはしっかりと備えた曲になっています。THE HIVESの魅力の健在さを示す曲だったと思います。

当日は全10曲演奏したみたいですが、今回はうち7曲を収録。7曲でわずか33分という長さなだけに、正直言って、全曲収録してほしかったなぁ・・・とも思うのですが・・・。ただ、THE HIVES最高!!!と叫びたくなる、久しぶりにTHE HIVESの魅力を再認識できたアルバムになっていました。本格的に活動を再開したのなら、次は是非、久しぶりとなるニューアルバムを、と強く期待してしまいライブアルバム。とりあえずはかつてTHE HIVESにはまった方にも久しぶりに思い出して聴いて欲しいアルバムです。

評価:★★★★★

THE HIVES 過去の作品
The Black and White Album
LEX HIVES


ほかに聴いたアルバム

What You Gonna Do When The Grid Goes Down?/Public Enemy

約3年ぶりになるPublic Enemyのニューアルバムは、トランプ大統領を痛烈に批判した「State Of The Union」など、相変わらず強烈な社会派のHIP HOPを、昔からの彼らのスタイルと変わらない強烈なビートにのせて綴るスタイル。良くも悪くも昔からの彼らのスタイルが貫かれている感じで、強烈なインパクトを受けるのは間違いありません。ある意味、ファンなら間違いなく安心して楽しめる1枚です。

評価:★★★★

Public Enemy 過去の作品
Nothing Is Quick In The Desert

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2020年10月19日 (月)

初のセルフタイトル

Title:ROVO
Musician:ROVO

ご存じ勝井祐二、山本精一ら、いずれもそれぞれがソロとしても目覚ましい活躍を続けるミュージシャンたちが結成し、活動を続けるバンド、ROVO。特にその圧巻のライブパフォーマンスには定評があり、フジロックをはじめとする数々のロックフェスへも参加。さらに毎年ゴールデンウイークには「MDT FESTIVAL」と名付けたイベントを開催し、多くの音楽ファンを魅了しています。

そんな彼らもさすがにこの新型コロナの影響で数多くのライブは中止に。「MDT FESTIVAL」も残念ながら中止となってしまいました。しかし、そんなコロナ禍の中で届けられたのは、なんと結成24年目にして初となるセルフタイトルのアルバム。「結成24年目にしてバンドの意思と楽曲と演奏が完全に一体化した最高傑作」と自ら評するような、自信作となっています。

そしてアルバムを聴き進めると、その自信の理由も納得の内容に仕上がっています。確かにこれは、セルフタイトルにふさわしい傑作アルバムに仕上がっていました。その最大の理由としては、いままでのアルバムに比べても圧倒するほどの楽曲のバリエーション。全6曲入りのアルバムに仕上がっているのですが、その6曲の要所要所に彼らの様々なアイディアがつまっており、聴くものを終始惹きつけてやみません。

まず1曲目「SINO RHIZOME」は、まるで心臓のリズムのような静かな音とシンバルに音色からスタート。この緊迫感ある序盤も耳を惹きますが、途中からはベースラインをファンキーに聴かせるグルーヴィーでちょっと黒さを感じるトランスナンバーへと展開していきます。続く「KAMARA」もヴァイオリンの奏でるメランコリックなメロがまずは耳に残ります。終始ダイナミックなバンドサウンドが重なりつつ、リズムと同時にメロディーも聴かせる楽曲に仕上がっています。

さらに驚かされるのは3曲目「ARCA」で、いきなりアコギの音色で静かにスタート。その後はROVOらしいエキゾチックなバイオリンの音色を聴かせつつ、ダイナミックなバンドサウンドが入ってくるのですが、後半につれて、狂乱度合が増していく展開に惹きつけられます。「AXETO」もメランコリックなバイオリンのメロが印象的なのですが、終始響く軽快でリズミカルなパーカッションのリズムが特徴的。バイオリンの音色と合わせて、どこかエキゾチックな異世界感を覚える楽曲が印象に残ります。

後半の「NOVOS」は郷愁感のあるメロの流れるサウンドに、どこかAOR的な雰囲気すら感じられる、ROVOとしての楽曲の振れ幅の広さを印象付けられる楽曲。さらにラストに流れる「SAI」も郷愁感漂いメロディーがとにかく印象的な楽曲となっており、とても心地よい気持ちを味わうことが出来ます。ただ締めくくりは重厚なサウンドでサイケな締めくくりになっているのがROVOらしいところ。全6曲1時間強。様々に変化する音の世界を楽しめるアルバムになっていました。

いままでのROVOの作品は、圧巻的なサウンドで攻めてくるような作品が多く、ライブを意識した作品が多かったように感じます。ただ、今回のアルバムに関しても、ライブを意識している一方で、それ以上にCD音源でリスナーに聴かせるというスタイルを意識しているような作品のようにも感じました。今回のアルバムが、もともとコロナの前から制作されたものか、それともコロナの最中に制作されたものかは不明なのですが、もし制作を開始したのがコロナ後であった場合は、ひょっとしたらライブをあまり意識しなかったからこそ、もっと「音」自体に純粋に向き合った結果なのかもしれません。

これまでもROVOの作品は傑作続きだったのですが、個人的に今回の作品は、そんな中でもさらに段違いの傑作アルバムだったと思います。彼らの言う通り、本作は彼らの最高傑作と言えるアルバムでしょう。非常にバリエーションの多い作風に、いままでの作品では感じられなかったROVOのメンバーの、奥深い実力を感じることが出来ました。年間ベストクラスの傑作アルバムです。

評価:★★★★★

ROVO 過去の作品
NUOU
ROVO Selected 2001-2004
RAVO
PHOENIX RISING
(ROVO×SYSTEM7)
PHOENIX RISING LIVE in KYOTO(ROVO×SYSTEM7)
PHASE
Phoenix Rising LP(ROVO and System7)
LIVE at MDT Festival 2015
XI


ほかに聴いたアルバム

今回は最近リリースされたtofubeatsの2作品をまとめて紹介。

TBEP/tofubeats

まずは全7曲入りの、タイトル通りのEP盤。基本的に配信限定のデジタルアルバムなのですが、一方、フィジカルではアナログ盤をリリース、というリリース形態が今風な感じ。今回はフロア志向の強いアルバムとなっており、テクノやハウス、ディスコなどの要素を多分に取り入れたアルバムになっています。そのためわかりやすいポップな歌モノこそありませんが、ダンスミュージックとはいえ根底にポップなメロディーは確実に流れており、ダンサナブルなビートと合わせて、非常に聴きやすい内容に。まさにtofubeats流のクラブ・ミュージックといった感の強い作品でした。

評価:★★★★★

RUN REMIXES/tofubeats

そしてこちらは2018年にリリースされたアルバム「RUN」の収録曲を、様々なミュージシャンがリミックスしたリミックスアルバム。こちらも配信オンリーのアルバムとなっています。基本的にはエレクトロ路線という点で共通していながらも、分厚いノイズを入れたり、キュートなポップチューンに仕上げたり、ボーカルにエフェクトをかけてくぐもった感じに仕上げたりとリミキサーに様々な作風に仕上げているのがユニーク。各リミキサーの個性を感じられるリミックスアルバムでした。

評価:★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental

POSITIVE REMIXS
FANTASY CLUB
RUN

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2020年10月18日 (日)

美しいメロが際立つ

Title:Shore
Musician:Fleet Foxes

アメリカはシアトル出身のフォークロックバンド、Fleet Foxes。セルフタイトルのデビュー作で高い評価を受けて以降、毎回傑作アルバムをリリースし続けている彼ら。そんな彼らの約3年ぶりとなるニューアルバムは、このコロナ禍の中で、前日にリリースが突然発表されて配信リリースされたデジタルアルバムとなっています。ちなみにCDのリリースも予定されているみたいですが、リリースは来年の2月とか・・・コロナ関係なく、ある意味、今の時代らしいリリース形態となっています。

前作「Crack-Up」などがまさに典型例だったのですが、フォークロックの中に、幻想的なサイケフォークの要素を加えてドリーミーな作風となっているのが彼らの大きな魅力。今回のアルバムに関してもサイケフォーク的な要素を加えつつ、ただアルバム全体としてはフォークの要素が強い、比較的なシンプルなアレンジでメロディーを聴かせる曲が目立つ楽曲が並ぶ作品になっていました。

特にシンプルなアレンジでメロディーを聴かせるフォーキーな作品が並ぶのが前半。イントロ的な1曲目に続いて、事実上の1曲目となっている「Sunblind」は、アコースティックなギターを中心とした爽快なポップチューンになっていますし、続く「Can I Believe You」もバンドサウンドも入り、比較的ドリーミーなアレンジの要素も感じられるのですが、比較的シンプルなギターポップに。軽快なギターサウンドでポップに聴かせる「Jara」へと続き「Featherweight」は、まさにフォークロックの要素が全開。60年代的な要素すら感じられる哀愁感たっぷりに聴かせるメランコリックなポップチューンに仕上げられています。

一方後半に関してはホーンセッションやバンドサウンドが入り、分厚いサウンドで美しく聴かせるポップチューンが多いのが大きな魅力。「Maestranza」などはアコギを中心としたバンドサウンドながらも、伸びやかなボーカルでダイナミックに聴かせる楽曲構成になっていますし、ポップスさではこのアルバムの中で随一だったのが「Young Mama's Game」。メロディアスなギターロックナンバーで、美しいハーモニーで聴かせるメロディーラインが爽快で非常に心地よさを感じさせる楽曲に仕上がっています。

その後も重厚なハーモニーにシンセの音色も美しい「Quiet Air/Gioia」や、分厚いバンドサウンドがらも軽快なポップを聴かせる「Cradling Mother,Cradling Woman」など、美しいサウンドを分厚く聴かせつつ、ポップにまとめあげた楽曲が並びました。

全体的には美しいサウンドを聴かせつつも、主軸はメロディーと歌に置かれたそうな、そんなアルバムになっていたように感じます。そういう意味ではサイケさや幻想的な雰囲気は前作と比べると後退してしまったようにも感じますが、一方で美しいメロディーラインは今回も間違いなく健在。というよりもサウンドがシンプルになった結果、メロディーラインの美しさがより際立ったアルバムになったようにも感じます。前作とはまた異なった観点で、Fleet Foxesの魅力を存分に感じられる傑作アルバムだったと思います。

突然のリリースにビックリしてしまった本作ですが、サプライズかつ配信のみ(当初は)のアルバムといっても、彼らの魅力は全く落ちることはありませんでした。清涼感あふれるポップソングに終始聴き入ってしまう傑作。ポップミュージックが好きならば、まずは押さえておきたい傑作です。

評価:★★★★★

FLEET FOXES 過去の作品
Fleet Foxes+Sun Giant EP
HELPLESSNESS BLUES
Crack-Up
First Collection 2006-2009

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2020年10月17日 (土)

「彼女らしさ」をあらわした作品

Title:Alicia
Musician:Alicia Keys

今年1月に開催されたグラミー賞の表彰式に司会として抜擢されるなど、絶大な人気の元で積極的な活動を続けているミュージシャン、アリシア・キーズ。毎回、素晴らしい歌とその歌声を私たちに届けてくれる彼女ですが、約4年ぶりのニューアルバムとなる本作も、また素晴らしい傑作に仕上がっていました。

もともと本作は、今年3月頃のリリースを予定していた作品なのですが、新型コロナウイルスの影響によりリリースが延期となった作品。約半年ほど延期された9月にようやくのリリースとなりました。本作のアルバムタイトルはいわばセルフタイトル。ジャケットも彼女の顔写真を4方面から写した写真となっており、まさにこのアルバムは彼女そのものであるという力の入れようを感じさせる作品となっています。

ただ、アルバム自体は比較的シンプルなR&Bのポップチューンが並んでいます。前作「HERE」はジャケットからしてアフロヘアを前面に押し出した写真となっており、ブラックミュージックの要素の強い「黒い」アルバムに仕上がっていました。今回のアルバムももちろんソウルやゴスペルなどの影響を感じつつ、楽曲のスタイルとしてはポップミュージックの方向にシフトした感はあります。

とはいうものの、リズミカルなダンスチューンである「Time Machine」にしてもメロウな歌声を聴かせてくれますし、「Wasted Energy」もレゲエ的な要素も感じるトライバルなリズムが魅力的。女性シンガーJill Scottをフューチャーした、タイトルそのもの「Jill Scott」も、Jillの歌声でかわいらしさを表現しつつ、メロウなR&Bチューンに仕上げているなど、全体的にはソウル色も強く感じられる作風に。ポップ色が強すぎてちょっと物足りなさを感じた前々作「Girl On Fire」や、その前の「The Element Of Freedom」に比べると、グッとブラックミュージック寄りにシフトしている内容になっています。

ほかにも男性シンガーソングライターKhalidとのデゥオでメロディアスなポップを聴かせる「So Done」やアコギで哀愁感たっぷりに歌いあげるミディアムチューン「Gramercy Park」も魅力的なのですが、特に魅力的なのは終盤のバラードナンバー。後半はバラードナンバーが続くのですが、普通、同じようなテンポのバラードが続くと退屈にすら感じてしまうのですが、まったくダレることなく、最後まで聴かせることが出来るのは、彼女のソングライターとしての実力ももちろんですし、ボーカリストとしての表現力があるから、ということなのでしょう。

そんな中で特に印象に残るのが終盤に美しく、そして力強く聴かせるピアノバラード「Perfect Way To Die」。黒人差別に対してのプロテスト運動「Black Lives Matter」ムーブメントについてもメッセージを発信し続ける彼女ですが、本作は人種差別により警察から暴力や残虐的行為を受け命を落とした人々へのトリビュート・ソングだそうで、ピアノを中心としたシンプルなアレンジをバックに力強く歌い上げる彼女の歌声が胸をうちます。

以前は、比較的ジャケット写真にしても肌の色をあまり表に出さないようなジャケット写真が多かった彼女ですが、アフロヘアーを前面に押し出した前作「HERE」に続き、今回のジャケットも、彼女のブラウンの肌の色をしっかり前に押し出し、さらには「黒人的」ともいえるドラッドヘアを用いている彼女。まさに、このジャケット写真も、「Black Lives Matter」ムーブメントにメッセージを出し続ける彼女の活動とリンクするものがあります。

またメッセージ性といえばラストに収録されている「Good Job」も印象的。こちらも同じくピアノバラードで彼女の歌声を力強く聴かせるナンバーなのですが、新型コロナウイルスの中で奮闘している医療従事者などに対するメッセージソングとなっています。このアルバムの最後には、まさにこの2020年という年を象徴した曲が並んでいるのが大きな特徴的。最後の曲も非常に私たちの胸に響いてきます。

ジャケット写真といい、最後に並んだメッセージソングといい、まさに彼女のメッセージが強く伝わってくるアルバム。ある意味、R&B、ソウル寄りの曲もあれば、もっとポップ寄り、さらにはともすればカントリー風の曲まで登場するバリエーションも含めて、「彼女らしさ」を表現したアルバムと言えるかもしれません。そういう意味でもセルフタイトルらしいアルバムとも言えるでしょう。そしてそんなメッセージは、歌詞は直接わからなくても、その歌声で私たちにも突き刺さってきます。内容的には比較的シンプルなのですが、シンプルさ故に、より胸に響く傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Alicia Keys 過去の作品
As I Am
The Element Of Freedom
Girl On Fire
HERE

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2020年10月16日 (金)

TRICERATOPSからのソロ作2枚

今回はロックバンドTRICERATOPSのメンバー2人によるソロ2作の紹介です。

Title:ALBUM.
Musician:和田唱

まずTRICEARTOPSのボーカリストであり、バンドのほぼ全ての曲の作詞作曲を担ってきた和田唱のソロ2枚目となるアルバム。まずはジャケット写真が非常に印象的。前作「地球 東京 僕の部屋」も彼が子どもの頃の写真をジャケット写真に使用しましたが、今回も彼が子どもの頃の写真。一緒に写っているのは言わずと知れた彼の母親で料理研究家の平野レミですね。で、写真を撮っているのは、今は亡き、彼の父親でイラストレーターの和田誠ということ。まさに彼の家族写真になっており、ちょっとほっこりとした気分になります。

さて、TRICERATOPSというと、シンプルなスリーピースのバンドサウンドを奏でるロックバンドなのですが、一方では和田唱の書くポップなメロディーラインも大きな魅力。また、和田唱はロック志向が強い一方で、大のポップス愛好家としても知られています。そんな彼のソロアルバムは、前作でもそうだったのですが、ロック志向の強いTRICERATOPSに対して、和田唱のポップス愛好家としての側面がより強く出ているアルバムになっていました。

まずは1曲目「ココロ」。アコギでしんみり聴かせる3拍子のポップスなのですが、暖かいメロディーラインに、彼のメロディメイカーとしての才がしっかりと反映された楽曲になっています。TRICERATOPSの頃に、個人的に大好きなKANとの交流があったりしたのですが、この曲、歌詞も含めて、そのKANからの影響を感じるような・・・?

その後もちょっとメロウでR&Bからの影響も感じる「世界が変わったアフタヌーン」や、打ち込みを入れたディスコチューン「薔薇のつぼみ」、ボッサ調の「Once Upon A Time」、明るい前向きな歌詞も印象的なラテン調のリズムが印象的な「Heiki Heiki」など、様々なバリエーションの曲が並んでおり、まさに和田唱のポップス好きな側面が強く反映された構成になっています。

前作「地球 東京 僕の部屋」と同様、おそらくトライセラではできないような曲のならぶ、実にソロらしいアルバムになっていまう。また、非常にフックを利かせたサビのメロディーが印象的なトライセラの曲と比べると、全体的にキャッチーなサビはあまり出会えず、若干地味といった感じになっているのもプライベイト色の強いソロ作ならでは、といった言い方も出来るかもしれません。ただ、前作以上にメロディーラインはよく出来た聴かせるポップなものが多く、和田唱のメロディーメイカーとしての才能はしっかりと伝わってきます。

そんな中でも「アイ」は疾走感あるアップテンポなポップチューンになっており、サビもしっかりキャッチーに仕上がっていて、サウンド的には打ち込みなのですが、そのままTRICERATOPSの曲として起用されても不思議ではない楽曲になっています。トライセラが好きな方ならおもわずにやけてしまうような楽曲ではないでしょうか。

和田唱らしさを実に感じるソロアルバムとなった本作。またメロディーメイカーとしての健在ぶりも感じられました。このポップなメロ、次はトライセラで、是非!ただ、こういうバラエティー豊富な曲をつくってくるのなら、ソロもバンドと同時並行で続けてもおもしろいのかも。

評価:★★★★★

和田唱 過去の作品
地球 東京 僕の部屋

Title:CHARGE
Musician:吉田佳史

で、こちらはTRICERATOPSのドラマ、吉田佳史のソロアルバム。全面的にシンセを取り入れたスペーシーな雰囲気のアルバムに。全曲インストの全7曲入り。ドラマーのソロアルバムなのですが、ドラムのリズムは比較的軽く、ドラムが前に出てくるというよりは、シンセ+ギターがメインのインストアルバムといった印象の作品となっています。

正直言ってしまうと、ドラマーとしてのプレイはしっかりと聴かせてくれる反面、例えばメロディーラインだとか、シンセの使い方はあまり面白味なない印象も・・・。全体的にフュージョンの色合いが強く、TRICERATOPSの音楽性とは一線を画している感じはしますし、「Gunnar」とか聴いていると、もともと彼自身がハードロック志向だったのではないか、といった印象も受けます。

まあ、ドラマーによるソロアルバムということで本来はドラムプレイを主軸として耳を傾けるべきでしょうし、そのように聴くと、それぞれ7曲、しっかりとしたバリエーションあるドラムプレイを聴くことが出来るアルバムであることは間違いないと思うのですが・・・。ただ、彼のやりたいことはしっかりと伝わったアルバムであることは間違いありません。次は是非、トライセラでのプレイを!

評価:★★★

そんな訳で、どちらの作品もソロらしく、それぞれのミュージシャンのやりたいことは伝わってくるアルバムだったと思います。そして、そんな中、TRICERATOPSの活動再開というニュースも!!これは、非常に楽しみ!次は待望のトライセラのニューアルバムということになるのでしょうか?それまで、このソロ作を聴きながら、来るべきトライセラの新作を心待ちにしていたいと思います!


ほかに聴いたアルバム

Barometz/安藤裕子

オリジナルフルアルバムとしては実に約4年2ヶ月ぶりとなる安藤裕子のニューアルバム。フルオリジナルアルバムとしての前作「あなたが寝てる間に」リリース後、一時期、曲が書けないとして、他のミュージシャンからの楽曲提供を受けた曲を集めた「頂き物」をリリースしたり、さらにはメジャーレコード会社を離れたりと、その方向性を模索。インディーズからセルフプロデュースのミニアルバム「ITALAN」をリリース後、メジャーシーンに復帰。待望のニューアルバムのリリースとなりました。

ただ、作風としては以前の安藤裕子とは少々異なる、彼女の新たな歩みを感じさせるアルバムで、わかりやすいメロディーラインが並んだポップスというよりは、エレクトロサウンドをふんだんに入れてファンタジックにまとめあげた作風に。ドリーミーでどこか気だるい雰囲気が特徴的で、いい意味で現実離れした作風がリスナーを別世界に誘う、そんなアルバムになっていました。基本的には前作「ITALAN」で模索した方向性の延長線上といった感じ。まだどこか模索中で安藤裕子としての輪郭がぼやけている部分もあるのですが、彼女の新たな一歩として、これからに期待したいアルバムでした。

評価:★★★★★

安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
JAPANESE POP
大人のまじめなカバーシリーズ
勘違い
グッド・バイ
Acoustic Tempo Magic
あなたが寝てる間に
頂き物
ITALAN

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2020年10月15日 (木)

あまりにも狙いすぎなタイトルがちょっと・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

AKB系アイドルグループの同名ではラストとなるベストアルバムが1位獲得です。

今週1位は欅坂46「永遠より長い一瞬 ~あの頃、確かに存在した私たち〜」が獲得です。CD販売数1位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数3位。10月より「櫻坂46」と改名して活動する欅坂46の、同名義ではラストとなるベストアルバム。あまりにも狙いすぎなアルバムタイトルに寒気もするのですが、単なる改名という話題作りも非常にみっともない感じもします。現在、Hot100では韓国発の日本人アイドルグループNiziUがロングヒットを続けていますが、女性アイドル勢もかつての半導体やスマホのように、そのお株を韓国に奪われる日も近そうです。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上14万5千枚で1位初登場。前作「真っ白なものは汚したくなる」の27万9千枚(1位)から大幅ダウン。

2位初登場は「刀剣乱舞-ONLINE- 歌曲集と物語『あなたと 私と』」。CD販売数2位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数10位。ゲームアプリ「刀剣乱舞-ONLINE-」の主題歌と、その曲を登場人物がカバーする全7曲+ショートドラマ1トラックのミニアルバムですが、なんとこの主題歌「あなたと 私と」を担当したのが松任谷由実(!)。ちなみにユーミン名義のシングルは配信オンリーで8月にリリース済。なんか、すごいお金かけているなぁ…というか、ユーミンはこういう仕事は引き受けるんだ…とちょっと意外な感じもしました。オリコンでは初動売上2万8千枚で2位初登場。

3位にはReoNa「unknown」が初登場でランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数15位。いわゆる女性のアニソン歌手で、本作がアルバムデビュー作となります。オリコンでは初動売上1万3千枚で4位初登場。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位にAqours「ラブライブ! サンシャイン!! Aqours CHRONICLE (2015~2017) 」がランクイン。CD販売数は3位でしたが、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数12位に留まり、総合順位はこの位置に。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ! サンシャイン!!」で誕生した「アイドルグループ」Aqoursのベストアルバム。オリコンでは初動売上2万枚で3位初登場。ちなみにラジオCDという形態でのリリースはあったものの、純粋な音楽CDとしては本作が初のアルバムとなっています。

7位には韓国の男性アイドルグループNU'EST「DRIVE」が初登場でランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数68位。オリコンでは初動売上1万枚で8位初登場。直近作は韓国盤の「The Nocturne」で、同作の初動売上6千枚(5位)からはアップ。日本盤でも前作「Bridge the World」の1万8千枚(7位)からはダウンしています。

8位初登場は「EVANGELION FINALLY」。CD販売数6位、PCによるCD読取数30位。コロナの影響で公開延期になっている「シン・エヴァンゲリオン劇場版」公開に差異立ち、「新世紀エヴァンゲリオン」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」で使用された高橋洋子、林原めぐみらによるヴォーカル曲をまとめたセレクションアルバム。どちらかというとアラフォー世代あたりにとって、かなり懐かしく感じるラインナップになっています。オリコンでは初動売上1万1千枚で6位初登場。

9位には人気男性声優西山宏太朗「CITY」がランクイン。CD販売数は7位でしたが、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数49位に留まり、総合順位はこの位置に。本作がデビュー作となるミニアルバム。オリコンでは初動売上1万枚で7位初登場です。

初登場最後10位には和楽器バンド「TOKYO SINGING」がランクイン。10月14日リリース予定のアルバムの先行配信で、ダウンロード数のみのランクインで、ダウンロード数1位に輝いた結果、総合順位でも10位にランクインしてきました。来週はCDリリース分も集計されるため、さらに上位を狙えそうです。

今週の初登場組は以上。一方、ロングヒット組は米津玄師「STRAY SHEEP」。今週で10週連続のベスト10入り。先週の3位からランクダウンし、ついにベスト3陥落となったものの今週も4位にランクイン。まだまだ強さを感じる結果となっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年10月14日 (水)

今週もジャニ曲が1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に引き続き、今週もジャニーズ系が1位獲得です。

今週1位を獲得したのはジャニーズ系男性アイドルグループSnow Man「KISSIN' MY LIPS」。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位獲得。ラジオオンエア数で2位、You Tube再生回数41位で総合順位は1位となっています。前作「D.D.」はSixTONES「Imitation Rain」とのスプリットシングルでしたので、単独リリースとしては本作が初。オリコン週間シングルランキングでは初動売上91万7千枚を記録。そのスプリットシングルだった前作の132万8千枚(1位)よりダウンしていますが、前作はSixTONESを前面に出したバージョンとSnow Manを前面に出した2バージョンの合算だったので、単純比較は出来なさそうです。

さて、今週は初登場曲はこの1曲のみ。2位以下はおなじみのロングヒット曲がズラリと並んでいます。まず2位はYOASOBI「夜に駆ける」が先週と同順位をキープ。You Tube再生回数1位、ストリーミング数及びダウンロード数2位は先週から変わらず。You Tube再生回数はこれで14週連続の1位。ベスト10ヒットもこれで25週連続となりました。

3位は韓国の男性アイドルグループBTS「Dynamite」。ストリーミング数はこちらが1位。一方、You Tube再生回数2位も先週から変わらず。ただダウンロード数は3位から7位にダウン。これで8週連続のベスト10ヒットとなっています。

続いて4位以下ですが、前述の通り、初登場曲はゼロ。一方、ベスト10圏外からの返り咲きが2曲ありました。まずはLiSA「紅蓮華」。先週の11位から8位にランクアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。これでベスト10返り咲きは7度目。通算40週目のベスト10ヒットとなっています。特にダウンロード数はまだ3位にランクインしており、根強い人気を感じさせます。

そしてなんと、今週King Gnu「白日」が17位から10位にランクアップ。7月13日付チャート以来、14週ぶりのベスト10返り咲き。ベスト10返り咲きは6度目、通算55週目のベスト10ヒットとなりました。これは主にNTTドコモのCMソングに彼らの新曲「千両役者」が起用されるなど、再び露出度が増した影響のようです。ダウンロード数が7位から5位、ストリーミング数が12位から10位、You Tube再生回数が10位から6位といずれもランクアップしています。

続いてロングヒット曲ですが、まず女性アイドルグループNiziU「Make you happy」が先週の5位からランクアップし4位にランクイン。ストリーミング数及びYou Tube再生回数3位は先週から変わらず。ダウンロード数は5位から4位にアップ。ストリーミング数再生回数が累計1億回を突破するなど、アイドル系としては異例のロングヒットとなっており、これで15週連続のベスト10ヒットとなっています。

瑛人「香水」も先週の6位からワンランクアップの5位にランクイン。こちらもストリーミング数6位、You Tube再生回数5位と先週と同順位をキープ。カラオケ歌唱回数も13週連続の1位をキープしています。これで24週連続のベスト10ヒットとなっています。

久々のロングヒットとなったあいみょん「裸の心」も7位から6位にアップ。18週連続19週目のベスト10ヒット。ただストリーミング数は4位をキープしているものの、先週、4位から8位にダウンしたダウンロード数はさらに12位までダウンしてしまっています。

米津玄師「感電」は先週と変わらず9位をキープ。これで14週連続のベスト10入りとなっています。こちらもストリーミング数5位、You Tube再生回数4位は先週から変わらず。順位的にはベスト10ギリギリですが、根強い人気を感じさせます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年10月13日 (火)

王道路線のギターロックが耳を惹く

Title:THE THIRD SUMMER OF LOVE
Musician:ラブリーサマーちゃん

そのインパクトあるミュージシャン名がまずは耳に残るラブリーサマーちゃん。本名、今泉愛夏のソロプロジェクトです。なるほど、「ラブリーサマーちゃん」は名前を英語読みしたんですね・・・。徐々に話題となっている宅録系のシンガーソングライターで、祖父が作曲家のいずみたくということでも一部、話題になっています。

そんな彼女の、フルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作。その奇妙な(?)ミュージシャン名と反して、楽曲の方は非常にシンプルなオルタナ系のギターロックとなっており、洋楽テイストも強いサウンドも魅力的。このアルバムも1曲目「AH!」もいきなり力強いギターサウンドからはじまるギターリフで奏でるイントロは、オルタナ系のインディーギターロック好きなら、絶対に耳をそばだててしまうのは間違いありません。2曲目「More Light」もシンセのリフがちょっとレトロな感覚で楽しめる、メロディアスなギターロックナンバー。歌い上げて歌詞をうねらしているサビはインパクト十分。耳に残ります。さらに続く「心ない人」はダイナミックかつノイジーなギターサウンドが迫力のあるガレージ風のナンバー。バンド色の強いロックナンバーになっています。

基本的に、ある種の王道とも言えるギターロック路線。洋楽テイストが強い反面、完全なルーツ志向といった感じでもなく、いい意味でのポップな聴きやすさも感じます。また、ちょっと気だるいボーカルも特徴的で、ちょっとダウナー気味のサウンドとマッチしてこちらも耳を惹きます。特に4曲目の「I Told You A Lie」は、まさにそんな気だるいサウンドにボーカルが見事にマッチした楽曲と言えるでしょう。この、気だるいボーカルもそうですが、洋楽志向が強い一方で、ほどよくポップというギターロックのスタイルは、初期the brilliant greenに近いものを感じます。

一方、中盤になると「豆台風」「LSC2000」「ミレニアム」と、それなりにノイジーなギターサウンドは聴かせるものの、比較的シンプルでロックよりもポップ色に主軸を置いたような作品が並びます。序盤のバンドサウンドを前に押し出したロック色強い作品だけではなく、もうちょっとシンプルなポップチューンもしっかり聴かせる…という点では彼女の振れ幅を感じるのですが、ただ、この中盤はちょっと中だるみだったかも。彼女の作品は、以前、ミニアルバム「人間の土地」を聴いたのですが、メロディーラインにひねりがなさすぎてちょっと平凡という印象を受けました。今回のアルバムも、確かにこのポップなメロを前に押し出した中盤の曲を聴くと、若干メロに関しては物足りなさを感じた点は否めません。

ただ終盤は再びバンドサウンドが強い作品に。「サンタクロースにお願い」もポップなメロを聴かせつつ、ノイジーなギターサウンドを前面に押し出した曲調に。さらに「どうしたいの?」などゴリゴリにヘヴィーなギターリフを前面に押し出したガレージロック色を押し進めた楽曲になっており、ロックなサウンドに耳を惹きます。ラストの「ヒーローズをうたって」は爽やかなポップチューンでの締めくくりとなるのですが、ゴリゴリのロック色が強いナンバーが続いた後の曲なだけに、ほどよい清涼剤のような締めくくりとなっており、心地よい気持ちでアルバムを締めくくることが出来ます。

アルバム「人間の土地」で感じたメロの平凡さはちょっと気に係る部分はあったのですが、ただそれ以上にヘヴィーなバンドサウンドがカッコよく、非常に魅力的な傑作アルバムに仕上がっていました。初期ブリグリもそうですが、最近のミュージシャンではSuperflyやGlim Spankyあたりが好きなら気に入るのではないでしょうか(彼らほどルーツ志向は強くないのですが)。そのかわいらしい名前と反して非常に力強さを感じさせるアルバム。この一度聴いたら忘れられないミュージシャン名、今後、さらに耳にする機会が増えそうです。

評価:★★★★★

ラブリーサマーちゃん 過去の作品
人間の土地


ほかに聴いたアルバム

Welcome My Friend/OKAMOTO'S

OKAMOTO'Sのニューアルバムは全6曲入りのEP盤。メランコリックなメロディーの作品が多く、「MOTEL」など歌謡曲的な雰囲気すら感じさせる曲も。一方でメロはメランコリックながらもファンキーな作風が彼ららしい表題曲の「Welcome My Friend」をはじめ「THE BEAR」「Riot」もヘヴィーなギターを前面に押し出したような作風になっており、全体的にはロック色も強い印象も。先日リリースしたベスト盤で、活動にひとつの区切りをつけた彼らですが、まずは新たな一歩として…といっても、いままで通りといった感じではあるのですが。

評価:★★★★

OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP
NO MORE MUSIC
BOY
10'S BEST

ONE DAY/山崎まさよし

デビュー25周年を迎えた山崎まさよしの新作は、全6曲入りのEP盤。とはいっても、6曲中3曲はインスト、3曲は歌モノという内容。そのため、全体的には地味という印象は否めないものの、ちょっとメランコリックな作風といい、楽曲はインスト曲を含めていずれも山崎まさよしっぽさを感じさせる全6曲。とりあえず、良くも悪くも無難にまとめたといった感じでしょうか。

評価:★★★★

山崎まさよし 過去の作品
COVER ALL-YO!
COVER ALL-HO!

IN MY HOUSE
HOBO'S MUSIC
Concert at SUNTORY HALL
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[STANDARDS]
The Road to YAMAZAKI~the BEST for beginners~[SOLO ACOUSTICS]

FLOWERS
HARVEST ~LIVE SEED FOLKS Special in 葛飾 2014~
ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~
UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 2005-2015~
FM802 LIVE CLASSICS

LIFE
山崎×映画
Quarter Note

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2020年10月12日 (月)

美メロバンド is Back!

Title:The Universal Want
Musician:Doves

2000年前半、イギリスのロックシーンに忽然とあらわれ、そのとろけるような美しいメロディーと、美メロにコーティングされた甘く分厚いサウンドに多くのリスナーが魅了されたロックバンド、Doves。2000年にリリースされた「Lost Souls」がまず大きな話題となり、2002年の「The Last Broadcast」、2005年の「Some Cities」は2作連続全英チャートで1位を獲得し、大ブレイクを果たしています。

かく言う私も、そんな彼らの美しいサウンドにはまってしまったリスナーの一人。特に彼らが大ブレイクした傑作アルバム「The Last Broadcast」はその年、もっともはまった洋楽のアルバムで、2002年の洋楽の私的ベストアルバムで1位に選ぶなど、かなりお気に入りの作品でした。その時はフジロックでも来日したのですが、私も彼らのフジロックでのステージを目撃。非常に素晴らしいライブだった記憶にあります。

そんな彼らは2009年にリリースした「Kingdom of Rust」、そしてその後のリリースされたベストアルバムで活動を休止。わずか4枚の傑作アルバムをこの世に残し、シーンを去っていきました。しかし、そのラストアルバムから10年以上の月日を経て、なんとバンド活動を再開!そしてこのたびリリースされた約11年ぶりとなるニューアルバムが本作。私にとっても待望の1枚だったのですが、全英チャートでも見事1位を獲得。彼らの復活を待っていたファンが多かったことをうかがわせる結果となりました。

その彼らのアルバムは、先行配信シングルにもなった「Carousels」からスタートするのですが、分厚いエレクトロサウンドのスタートは、まるで映画か劇のオープニングのよう。そんな中でおもむろにスタートするバンドサウンドに、思わずゾクゾク。さらにその後展開されるのは、シンセを入れて分厚いバンドサウンドにゆっくりと流れるメロディアスな歌。まさにかつてのDovesそのままの楽曲。期待通りの展開にうれしくなってしまいます。

その後もメランコリックなメロディーラインに、ストリングスも入った分厚いサウンドが耳を惹く「Broken Eyes」やコーラスラインを入れた分厚いエレクトロサウンドに荘厳さも感じる「Cathedrals Of The Mind」、疾走感あるメランコリックなメロディーラインが強いインパクトを持つ「Prisoners」など、かつてのDovesの路線をそのまま継承している、実に彼ららしい楽曲が並びます。

後半戦もテンポあるギターがグルーヴ感を醸し出しつつ、哀愁漂うメロが印象的な「Mother Silverlake」、さらにピアノの音色とストリングスで分厚く、スケール感を持って聴かせるタイトルチューン「Universal Want」と彼ららしいドリーミーなナンバーは続きます。ラストを飾る「Forest House」もアコギを前に押し出したぬくもりあるサウンドながらも、分厚いエレクトロサウンドをそこに重ね、ドリーミーな作風に仕上げてきています。

最初から最後までメランコリックで美しいメロディーを聴かせる歌をストリングス、ピアノ、シンセも用いた分厚くスウィートなサウンドでコーティングしていくスタイルで、かつての彼らの路線をそのまま踏襲した作品に。活動休止前のラストアルバム「Kingdom of Rust」は、ガレージライクなバンドサウンドを前に押し出したような作品になっており、若干シフトチェンジを感じたのですが、活動再開後、久々の本作は、「Some Cities」以前の彼らのスタイルを彷彿とさせる、いわば原点回帰のアルバムになっていました。

正直、年間ベストだった大傑作アルバム「The Last Broadcast」に比べてしまうと…という印象はあるものの、しっかりとあの頃のDovesを彷彿とさせる、期待したリスナーの壺をしっかりついてくる傑作アルバムに仕上がっていたと思います。また、今後はコンスタントに活動を再開してくれるのでしょうか。これだけ美しいメロ、サウンドを書いてくるバンドなだけに、これからに期待したいところ。以前のDovesを知らない若いリスナー層も、かつてDovesにはまった世代も、是非ともチェックして欲しいアルバムです。

評価:★★★★★

Doves 過去の作品
Kingdom of Rust

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2020年10月11日 (日)

美しいメロを聴かせる彼ららしい傑作

Title:American Head
Musician:The Flaming Lips

様々なスタイルで活動し、様々なタイプのアルバムをリリースしているため、なかなかその活動を追いかけるのも困難なThe Flaming Lips。今回のアルバムは、そんな彼らの純然たるオリジナルアルバムとなります。オリジナルアルバムとしては昨年リリースされた「King's Mouth」以来…ということになるのですが、The Flaming Lipsのフロントマンでもあるウェイン・コインのアート作品「King's Mouth」のサントラという位置づけだっただけ、純然たるオリジナルアルバムとしては2017年の「Oczy Mlody」以来、ということになるのでしょうか。さらにその間にはガールズロックデゥオ、Deap VallyとのコラボでDeap Lips名義でアルバムをリリースしていたりもして、非常に積極的な活動が目立ちます。

さて、そんな積極的な活動を続ける彼らですが、今回のアルバムは彼ららしい分厚くサイケなサウンドを聴かせつつ、基本的にはフォーキーな作風で美しいメロディーラインを聴かせてくれる、ポップ主体の曲作りが目立つアルバムに仕上がっていました。まずアルバムの冒頭は、いきなり分厚いエレクトロサウンドからスタートし、サイケな様相を感じさせるのですが、まずはボーカル、Wayne Coyneの美しいファルセットボイスとピアノの音色からスタートする「Will You Return / When You Come Down」はドリーミーで切ないメロディーが胸をうつ楽曲に。まずはその美しいメロディーを存分に楽しめる楽曲からスタートします。

特に今回は序盤から中盤にかけて「Flowers of Neptune 6」「At the Movies on Quaaludes」のような、70年代的な空気も感じさせるフォークロックあるいはソフトロックにカテゴライズされそうな楽曲が魅力的。ピアノの音色も入りつつ、エレクトロサウンドがほどよくサイケでドリーミーな世界を作り出しており、ちょっとメランコリックなメロディーラインを含めて、ゆっくりとThe Flaming Lipsの世界に浸れる魅力的なポップチューンが並んでいます。

ただ、そんな中、アコギの弾き語りでフォーキーにメロディアスに聴かせるポップチューンが流れてきて、非常に美しい曲調だったのでタイトルを確認してみると、「Mother I've Taken LSD」・・・・・・うーん、サイケデリック(笑)。ここらへん、完全にThe Flaming Lipsらしいなぁ。

後半も、ほどよくエレクトロサウンドを入れて、ほどよくサイケながらも、一方ではアコースティックなサウンドを入れてフォーキーで美しいメロを聴かせる曲は続き、「Mother Please Don't Be Sad」などはまさにピアノ弾き語りで聴かせるメロディーラインの美しさに胸をうちますし、「Assassins of Youth」も、70年代のテイストを感じさせる哀愁感たっぷりのメロディーも大きな魅力のフォークロックチューン。さらに女性ボーカリストKacey Musgravesとのデゥオ「God and the Policeman」も、ピアノをメインに様々な音をサンプリングしたサイケ風のアレンジが彼ららしい一方で、女性ボーカルとの清涼感あふれるデゥオが大きな魅力の楽曲になっています。

所々、サイケデリックな分厚いエレクロトノイズなどが入ったり、歪んだ音像を聴かせたりと、まさにサイケロックバンドらしい本領発揮なサウンドも聴かせつつ、アルバム全体としてはフォーキーなメロディーラインを主軸に置いた、魅力的なポップアルバムになっていました。ここ最近の彼らのオリジナルアルバムは、比較的サイケ寄りにシフトしていた感があるのですが、(サントラ的立ち位置だったとはいえ)前作「King's Mouth」に引き続き、グッとポップ寄りにシフトしたアルバム。サイケ寄りのアルバムも魅力的でしたが、やはりこういうポップなメロ、聴きたかったなぁ…ということをあらためて実感したアルバムでした。The Flaming Lipsのメロディーメイカーとしての魅力を存分に味わえる傑作です。

評価:★★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends
Oczy Mlody
GREATEST HITS VOL.1
King's Mouth:Music and Songs
The Soft Bulletin: Live at Red Rocks (feat. The Colorado Symphony & André de Ridder)


ほかに聴いたアルバム

WE ARE CHAOS/Marilyn Manson

約3年ぶりとなるマリリン・マンソンのニューアルバム。不気味なジャケット写真と、「我々は混乱だ」というアルバムタイトルはいかにも彼ららしい感じ。楽曲的にもマリリン・マンソンの王道を行くようなインダストリアルでヘヴィーなロック路線というのはいままでと同様。ただメロディーラインは意外とポップで、聴きやすさも兼ね備えたそんなアルバムに。いい意味で、ベテランバンドとしての安定感とポピュラリティーを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

Marilyn Manson 過去の作品
THE HIGH END OF LOW
Heaven Upside Down

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2020年10月10日 (土)

普遍性ある歌詞が魅力的…だが?

Title:おいしいパスタがあると聞いて
Musician:あいみょん

今、最も話題のシンガーソングライターの一人、あいみょんのニューアルバム「おいしいパスタがあると聞いて」・・・・・・ある意味、完全に10代後半から20代前半の女性あたりに狙いを全振りしたタイトルがすごいなぁ…と思ってしまう今回のアルバム。いまでこそ、こういうタイトルのアルバ宇をリリースする彼女ですが、インディーズとしてのデビュー作は「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」なんで、そこからは遙か遠いところに来てしまったなぁ、という感じを強くしてしまいます。

さて、そんな彼女。「あいみょん」といういかにも今風なニックネーム風のミュージシャン名といい、女子高生御用達的な立ち位置といい、おそらく彼女を名前くらいしか知らない人にとっては、いかにも今どきな音を出して、歌詞にしても流行語をふんだんに取り入れた、今どきなミュージシャン…と思うかもしれません。ただ前作のアルバム「瞬間的シックスセンス」もそうでしたが、彼女の作品を聴いていると、むしろともすれば90年代J-POPを通り越して、70年代の四畳半フォーク的な香りすらしてしまうような作風が大きな魅力になっています。

そもそも彼女の大ブレイクのきっかけとなった「マリーゴールド」にしても好きな子をマリーゴールドに例える歌詞になっており、それこそ「野菊の墓」かよ!ってレベルの昔からありがちな、超スタンダードな歌詞ですし、現在、ロングヒットを記録している「裸の心」にしても、学校の合唱曲で流れてきても不思議ではないレベルの、70年代フォーク的な懐かしさを感じさせるメロディーラインになっています。

この「裸の心」にしてもそうですが、非常にシンプルでかつ、心にグサリと来るような心象描写が彼女の大きな魅力。「ハルノヒ」にしても、北千住駅という具体的な場所を提示して、ここからはじまっていく2人の未来を描いた歌詞は、その風景が見事に浮かびますし、また強いインパクトを残します。「シガレット」にしても、たばこに自分の思いを重ねるという、これまたある意味よくあるスタイルではあるのですが、よくあるスタイルだからこそ、非常に印象に残る歌詞になっています。

恋心にしても、前向きな心境にしてもとてもシンプルかつ等身大の描写が魅力。いわば今風な言葉や風景はほとんどなく、タイトルとは異なり、変な特定世代にむけての媚びを感じさせるような表現もありません。ある意味、普遍性を感じさせる内容になっており、女子高生がファン層の中心でありながら、楽曲的にはむしろアラフォー、アラフィフのおじさんおばさんたちの心も捉えるような内容にすら感じさせます。むしろフォーキーな作風や歌詞は、もっと上の世代にとってもある種のなつかしさを感じさせるかもしれません。

サウンド的には、いわばJ-POP的であり、ほどよく入った、特に主張もないバンドサウンドなのですが、「普遍性」という意味ではむしろ彼女の歌詞にはそういうスタイルがマッチするかもしれません。ただ一方で「真夏の夜の匂いがする」のように怪しげな雰囲気を奏でている曲もあり、彼女の持つ「毒」の要素もちょっとだけ垣間見れたりします。まあ、「毒」といえば今回のアルバムも「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」では、いきなり

「愛は全てを解決しない
金があれば何でもできるかもしれない」
(「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」より 作詞 あいみょん)

なんていう身もふたもない歌詞からそもそもスタートしており、そういう意味では、あの過激なインディーズデビュー作のような、彼女が決して「大衆向けの全く毒のないポップスシンガー」とは異なる側面も今回のアルバムでも垣間見れる部分もあります。そういう観点からすると、あのいかにも女性向けのようなアルバムタイトルも、実はアイロニックな意味合いを込めたタイトルなのかもしれません。

こういう曲を書くシンガーが中高生を中心に売れているというのは、日本の音楽シーンの未来は暗くないぞ、とも思ってしまいます。むしろアラサー世代以上も、変な偏見なしで聴いてみてほしいアルバムかもしれません。良質なポップスアルバムであることは間違いなし。今後にも期待です。

評価:★★★★★

あいみょん 過去の作品
瞬間的シックスセンス


ほかに聴いたアルバム

BAD HOP WORLD/BAD HOP

今年3月1日、予定されていた横浜アリーナでのライブが新型コロナウィルスの影響で中止となり、代わりに同会場で無観客配信ライブを実施。その後続くコロナ禍の中での無観客配信ライブの走り的な存在ともなり、開催当時には大きな話題となったBAD HOP。本作はその配信ライブの後にリリースが発表となり、オリジナルフルアルバムとしては約3年ぶりのリリースとなった配信限定でのニューアルバムとなります。トラップを中心とした今風のトラックに、「3年間の思いを詰め込んだ」という内容は、この3年での彼らの出世談のようなリリックも目立ちます。基本的にリズミカルな作品が多く、いい意味で聴きやすい内容とも言える本作になっており、ここらへんが今の彼らの人気の大きな理由のようにも感じました。

評価:★★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY
Mobb Life
BAD HOP HOUSE
BAD HOP ALL
DAY vol.2

4/ヒトリエ

もともとボカロPとして活動していたwowakaを中心として結成された4人組ロックバンド、ヒトリエ。しかし昨年4月、そのwowakaがわずか31歳という若さで急逝し、多くの音楽ファンにショックを与えました。ヒトリエはギターのシノダがボーカルにチェンジし、活動を続けていくようですが、本作はwowaka在籍時に一区切りをつける、彼ら初となるベストアルバムになります。

ボカロP出身のミュージシャンらしいハイテンポなリズムで疾走感あるサウンドが特徴的な彼ら。メロディーラインはほどよくフックも利いてインパクトもあるのですが…ただ、どの曲もマイナーコード主体のメロディーではっきり言ってしまってアレンジ含めて似たような曲ばかり。この曲幅の狭さは、ある意味かなり厳しい感もあります。もうちょっと異なるタイプのヒトリエも聴いてみたいのですが…。評価は追悼の意味を込めて1つ追加で。

評価:★★★★

ヒトリエ 過去の作品
イマジナリー・モノフィクション
モノクロノ・エントランス
DEEPER
IKI
ai/SOlate
HOWLS

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2020年10月 9日 (金)

いかにもなインディーロックながらも

Title:Hannah
Musician:Lomelda

アメリカはテキサス州シルスビー出身のシンガー・ソングライター、ハンナ・リードのソロ・プロジェクト。これがフルアルバムとしては4枚目のアルバムとなるそうです。タイトルのハンナは言わずもがな、彼女の本名から取られたと思われますので、事実上のセルフタイトルと言えるアルバムとなっています。

楽曲は「Kisses」という曲からスタート。アコースティックギターとピアノを中心に静かに聴かせるフォーキーな楽曲。続く「Hannah Sun」も基本的にはアコースティックなサウンドでフォーキーに聴かせるタイプの楽曲になっており、楽曲の方向性的には、完全にメロディーラインを聴かせるフォークロックというスタイル。ちょっとラフな感じのボーカルスタイルも、ある種歌い手のリアリティーを感じさせるようなスタイルとなっており、いかにもフォーキーな印象を受ける構成となっています。

アコースティックメインのフォークロックというスタイルか…と思いつつアルバムを聴き進めて行くと、ちょっと違和感を覚えるのがインターリュードの「Sing for Stranger」で、ギターノイズが入ってきており、それまでのアコースティックな雰囲気をガラッと変える空気感を持つが間奏となっています。そのインターリュードから続く「Wonder」はフォーキーな様相を残しつつ、バンドサウンドを前に押し出した楽曲に。さらに「Reach」はノイジーなギターサウンドを前に押し出したロックナンバーに、さらに「It's Lomelda」は歪んだギターサウンドを前に押し出した構成の楽曲になっています。

ここらへんの楽曲に至っては、相変わらずミディアムテンポでしっかりと聴かせつつ、ラフでローファイな彼女のボーカルスタイルはそのままながらも、楽曲のタイプ的にはオルタナ系のインディーロックという印象が強いサウンドに。特にギターのエフェクトのかけ方やバンドサウンドのスタイルなどは、良くも悪くも80年代あたりから続く、ベタなインディーロック系のスタイルそのまま。そういう意味では良くも悪くもインディーロック好きには壺な、安心して聴けるスタイル、少々悪く言うと新鮮味にはちょっと欠けるスタイルと言えるかもしれません。

ただ、ローファイ気味に聴かせる彼女のボーカルはどこか人なつっこさもあり、ついつい聴いてしまいますし、フォーキーでメロディアスなメロディーラインは実に魅力的。アコギでフォーキーに聴かせる「Hannah Happiest」や、おなじくアコースティックサウンドを前に押し出した「Tommy Dread」は、実に魅力的なメロディーラインをしっかりと聴かせてくれる楽曲となっています。メロディーラインも全体的にローファイ気味で決して派手さはないのですが、知らず知らずにその魅力にはまってしまい、ついついアルバムを聴きすすめてしまう、そんな魅力を持ったアルバムとなっていました。

フォーキーなサウンドとバンドサウンドのバランスも実にユニークなアルバムとなっており、その点も大きな魅力に。非常にラフなジャケットも、インディーっぽいといえばインディーっぽい感じも。まだまだ知名度も低い彼女ですが、このアルバムは評価も高いみたいで、インディーロック好きには、まずは要チェックのアルバムと言えるのではないでしょうか。これから日本でも徐々にその名前を聴く機会が増えそうです。

評価:★★★★★

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2020年10月 8日 (木)

若い世代に人気のバンドが1位2位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、いわゆる若い世代に人気のバンドが1位2位に並びました。

まず1位はヤバイTシャツ屋さん「You need the Tank-top」。Tシャツ屋さんと名乗りながら、アルバムタイトルはいつもタンクトップな大阪出身の3ピースロックバンド。CD販売数1位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数7位で総合順位で見事1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上4万5千枚で1位初登場。自身初の1位獲得。初動売上も前作「Tank-top Festival in JAPAN」の1万9千枚(6位)から大幅アップとなっています。

そして2位にランクインしてきたのが同じく若い世代に人気のバンド、UNISON SQUARE GARDEN「Patrick Vegee」。CD販売数2位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数3位といずれも上位にランクインしましたが、総合順位は2位に留まりました。オリコンでは初動売上3万枚で2位初登場。前作「MODE MODE MODE」の3万9千枚(2位)から、こちらはダウンしています。

3位も若い世代から、上の2バンド以上に圧倒的な支持を得ているミュージシャンでしょう。米津玄師「STRAY SHEEP」が先週の2位からワンランクダウン。ただし、CD販売数6位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数1位はいずれも先週と同順位をキープ。なお、先週まで並んでランクインしていたあいみょん「おいしいパスタがあると聞いて」は今週、5位にダウンしています。

そんな2枚のアルバムに割り込んで4位に初登場してきたのが松田聖子「SEIKO MATSUDA 2020」。デビュー40周年の記念アルバムになっており「瑠璃色の地球」「赤いスイートピー」「SWEET MEMORIES」などの彼女の代表曲のリメイクと新曲から構成される内容になっています。CD販売数3位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数15位で、総合順位は4位。オリコンでは初動売上2万5千枚で3位初登場。前作「Merry-go-round」の1万2千枚(10位)からアップ。オリジナルアルバムでのベスト3入りは、1996年の「Vanity Fair」以来14年ぶりという快挙となりました。

さて、若い世代に人気のミュージシャンの活躍が目立つ今週のチャートですが、一方ではアラフォー、アラフィフ以上の世代から支持を集めるバンドの活躍も目立ちました。前述の松田聖子も、まさにアラフォー・・・というよりも、もうアラフィフ世代以上の支持が多いアイドルですが、9位10位にはアラフォー、アラフィフ世代に人気の洋楽バンドのアルバムが並びました。

まず9位には90年代初頭に日本でも絶大な人気を集めたロックバンドBON JOVI「2020」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数12位、PCによるCD読取数40位。オリコンでは初動売上8千枚で8位初登場。前作「This House Is Not for Sale」の1万2千枚(6位)からダウンしています。

そして10位にはQueen+Adam Lambert「Live Around the World」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数26位、PCによるCD読取数68位。2018年に公開された映画「ボヘミアン・ラプソディ」で再び高い注目を集めた伝説のロックバンドQueen。ご存じの通り、フレディー・マーキュリーはもうこの世にはいませんが、Queen自体はボーカリストにアダム・ランバートを迎えて活動を続けています。本作は2014年から2020年までの様々なライブの模様を収録したライブアルバム。もちろん「Bohemian Rhapsody」や「We Will Rock You」といったQueenの代表作も収録されています。オリコンでは初動売上6千枚で10位初登場となっています。

そんな訳で、若い世代に人気のミュージシャンとアラフォー・アラフィフ世代向けのミュージシャンがそろい踏みになった今週のチャートでしたが、ほかの初登場盤は・・・まず7位に「Pulse:FINAL FANTASY XIV Remix Album」がランクイン。CD販売数は13位、PCによるCD読取数17位でしたが、ダウンロード数で1位を獲得し、ベスト10入りです。「FINAL FANTASY XIV」に使用された楽曲をリミックスしたアルバム。オリコンでは初動売上7千枚で9位初登場。「FINAL FANTASY XIV」関連では、「SHADOWBRINGERS: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack」の初動1万4千枚(4位)からダウンしています。

さらにベスト10返り咲き組として8位にロックバンド緑黄色社会「SINGALONG」が先週の65位からランクアップ。5月4日付チャート以来、23週ぶりにベスト10に返り咲いています。これは、配信先行でリリースされたアルバムでしたが、このたびCDがリリースされたため。CD販売数が7位にランクインし、ダウンロード数22位、PCによるCD読取数21位と合わせて、総合順位も8位にランクインしています。もともとCDでリリース予定だったものの、新型コロナウィルスの影響でCDリリースが延期に。それが遅ればせながらようやくCDでもリリースされたことによる影響です。オリコンでは初動売上1万枚で7位初登場。前作「溢れた水の行方」の3千枚(17位)からアップし、初のベスト10ヒットとなっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年10月 7日 (水)

今週はジャニ系が1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週1位に返り咲いたYOASOBI「夜に駆ける」は今週再び2位にダウン。ただYou Tube再生回数は今週も1位、ストリーミング数は2位をキープ。ダウンロード数もワンランクダウンしたものの2位と、まだまだ圧倒的な強さを見せています。

その「夜に駆ける」に代わって今週1位を獲得したのはジャニーズ系。Hey!Say!JUMP「Your Song」が1位獲得です。メンバーの山田涼介が主演をつとめるTBS系ドラマ「キワドい2人-K2-」主題歌。CD販売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数で1位、ラジオオンエア数で2位を獲得して総合順位は1位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上20万9千枚で1位初登場。前作「Last Mermaid...」の20万5千枚(1位)からアップしています。

2位YOASOBIを挟み3位にはBTS「Dynamite」が先週と変わらず3位をキープ。これで7週連続のベスト10入りとなりました。ストリーミング数1位、You Tube再生回数2位は先週から変わらず。ダウンロード数が7位から3位、ラジオオンエア数も3位から1位へとアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位にBUMP OF CHICKEN「アカシア」がランクイン。11月4日リリース予定のCDからの先行配信で、ポケモンスペシャルミュージックビデオ「GOTCHA!」テーマソング。バンプらしい爽快感あふれるナンバー。ストリーミング数20位、ラジオオンエア数8位、Twitterつぶやき数26位、You Tube再生回数36位でしたが、ダウンロード数で1位を獲得し、総合順位も見事4位にランクインです。バンプといえば先日、ベーシストの直井由文の不倫報道を受け、直井1人の活動休止が発表されました。最近、どうも不倫に対する風当たりが必要以上に厳しくなっているのがどうにも不快。だって、法律違反でもないし、極端な話、本人間同士の問題じゃない。コンプライアンス重視の風潮やポリティカリーコレクトネスを「行き過ぎ」として叩いている人がいるけど、法律違反でもなんでもない不倫に対する過剰なバッシングこそが、コンプラやポリティカリーコレクトネスの行き過ぎよりよっぽど問題だと思うんですが・・・。

8位初登場は22/7「風は吹いてるか?」。CD販売数は2位だったのですが、ほか、ラジオオンエア数26位、PCによるCD読取数15位、Twitterつぶやき数22位。秋元康プロデュースによるアイドルグループですが、11人のアニメキャラと、それを担当する声優によって構成される声優アイドルグループ。どう考えても「ラヴライヴ!!」をはじめとするアニメキャラによるアイドルプロジェクトの成功例から秋元康が出張って来たグループなのですが、こういう2匹目3匹目のドジョウ狙いはそろそろ勘弁してほしいところ。オリコンでは初動売上5万4千枚で2位初登場。前作「ムズイ」の3万4千枚からアップしています。

今週の初登場組は以上。続いてロングヒット組ですが、まずは5位にNiziU「Make you happy」が先週の4位からワンランクダウンながらも、これで14週連続のベスト10入り。ダウンロード数5位、ストリーミング数3位、You Tube再生回数3位はいずれも先週から同順位をキープ。

瑛人「香水」は先週と変わらず6位をキープ。23週連続のベスト10入り。カラオケ歌唱回数は、12週連続の1位を獲得しています。You Tube再生回数5位、ストリーミング数6位は先週と変わらず。ただしダウンロード数は6位から13位にダウンしています。

7位にはあいみょん「裸の心」が先週の5位から2ランクダウン。17週連続通算18週目のベスト10ヒット。ストリーミング数は先週と変わらず4位をキープしましたが、ダウンロード数は4位から8位へダウン。下落傾向となっています。

そして9位には米津玄師「感電」が7位からこちらも2ランクダウン。こちらは13週連続のベスト10入り。ストリーミング数5位、You Tube再生回数4位は先週から変わらず。ただし、こちらダウンロード数が11位から14位にダウンしています。

また今週、LiSA「紅蓮華」が8位から11位にダウン。ベスト10返り咲きは1週で終了。とりあえずベスト10ヒットは通算39週で一旦ストップです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年10月 6日 (火)

ソウルフルなボーカルが魅力のジャズアルバム

Title:Mama,You Can Bet!
Musician:JYOTI

今回紹介するのはカリフォルニア出身の女性ミュージシャン、JYOTIのニューアルバム。JYOTI…というよりは、もともとはGeorgia Anne Muldrowとして活動する女性ミュージシャン。詳しくはいまひとつわからなかったのですが、この「JYOTI」というのは、彼女がフリージャズを行う場合に名乗る名義…らしいです。2006年から活動を続ける、既にベテランの域に入るようなミュージシャンで、Erykah BaduやBlood Orangeの楽曲にもゲストで参加するなど活躍を続けています。

このJYOTI名義のアルバムは、基本的にはジャズ、それもフリージャズの要素を取り込んだアルバムということもあって、基本的にはジャズにカテゴライズされるインストナンバーが目立ちます。フリーキーなサウンドも目立ちつつ、トライバルなコーラスも魅力的な「Bop For Aneho」、エレクトロサウンドを取り入れつつ、その向こうにはメロウなジャズサウンドが流れる「Bemoanable Lady Geemix」、テンポのよいピアノとドラムでジャジーな演奏を聴かせる「Skippin and Trippin」など、アルバムの中で主軸になっているのはジャジーなインストナンバーになっています。

このジャズのサウンドもトライバルやソウルの要素を取り入れ、グルーヴィーに聴かせるサウンドが非常に魅力的。まず冒頭のタイトルチューン「Mama,You Can Bite!」からして、トライバルに絶妙にテンポをずらしているドラムスのリズムが非常にグルーヴィーで心地よい楽曲ですし、フリーキーなピアノを聴かせる「Swing,Kirikou,Swing!」もベースラインがファンキーで実にカッコいいグルーヴ感を作り出しています。ジャケット写真もかなり黒い雰囲気を醸し出していて魅力的なのですが、楽曲自体もうねるようなグルーヴ感がとにかくカッコいいアルバムになっていました。

そしてそんなサウンドも魅力的なのですが、何よりもカッコよかったのが彼女のボーカル。「Our Joy(Mercedes)」ではそのスモーキーなボーカルを実に魅力的に聴かせてくれていますし、シャウトもいれつつソウルフルに歌い上げる「Orgone」も彼女のボーカリストとしての魅力を存分に発揮した楽曲となっています。

今回はジャズのアルバムということもあって、ボーカルはあくまでも楽器のひとつであり、ギターやドラム、ベースといったリズム楽器と同列という扱い、となっており、例えば「Ra's Noise(Thukumbado)」にしても、歌い上げる彼女のボーカルが入りつつ、サックスやベースが前に押し出される構成となっていました。ただもちろん、そんな中でも彼女のボーカリストとしての魅力は存分に感じられますし、またグルーヴィーなサウンドも存分にカッコいいので、このような構成でも魅力十分。最後まで真っ黒なそのサウンドやボーカルに魅せられたアルバムになっていました。

このいかにも雰囲気ムンムンなジャケットに惹かれた方、間違いありません。サウンドにボーカルに実に魅力的。ジャジーながらもソウルフルでファンキーなそんな傑作アルバム。お勧めです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Smile/Katy Perry

約3年ぶりになるKaty Perryのニューアルバム。「笑顔や元気、回復力、パワー、癒し」をテーマとしたアルバムだそうで、まさにこのコロナ禍の中にピッタリのアルバム…なのですが、このいかにも前向きなコンセプトはある意味、J-POP的な感じすら漂っており、アメリカのポップスでもこういう方向性を求められる傾向があるのか…と思ってしまったりもします。もちろん楽曲的には軽快で明るいポップスチューンがメインで素直に楽しめるアルバム、なのですが、楽曲によってはメランコリックな雰囲気の曲もあったりして、単純な「陽気路線」一本やりではない部分も感じます。ジャケットも、どこか彼女の表情は物憂げですしね。そういう意味ではやはり単調な前向きJ-POPとは一線を画しているのかもしれません。

評価:★★★★

Katy Perry 過去の作品
One Of The Boy
Teenage Dream
Prism

APOLLO/Fireboy DML

ナイジェリア出身の男性シンガーソングライターによる2枚目のアルバム。メランコリックなメロディーラインをしっかりと聴かせる歌モノの楽曲が魅力的で、楽曲によってはトライバルなリズムやレゲエのリズムを入れてきているのも特徴的。ちなみに「ELI」のイントロはどこか「日本昔話」的な雰囲気なのですが、偶然?48分という短さながらも全17曲という構成となっており、1曲あたりが3分強という短さ。そのため、次々と展開されるメロディアスな楽曲の連続がテンポよく、アルバムのメリハリにもなっており、本作の魅力のひとつになっていました。

評価:★★★★★

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2020年10月 5日 (月)

フェスは中止になってしまいましたが・・・。

Title:KUMIRODA
Musician:CUATRO MINIMAL

毎年8月、富山県南砺市で行われるワールドミュージックのフェスティバル「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」。1991年から30年近くにわたり毎年開催されている、いわば音楽フェスの先駆け的なイベントでもあるのですが、今回紹介するCUATRO MINIMALは、そのフェスから登場したユニットです。その「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」は今年は30周年の記念すべき年だったのですが、残念ながらコロナ禍でフェスは中止に。その代わり…という訳ではないのでしょうが、このCUATRO MINIMALの2枚目となるアルバムがリリースされました。

メンバーは、ボイス・パーカッションやホーミーまで駆使するメキシコのシンガー、ファン・パブロ・ヴィヤ、メキシコのギタリスト、フェルナンド・ヴィゲラス、韓国の打楽器奏者チャン・ジェヒョ、日本から、親指ピアノ奏者として活躍しているサカキマンゴーの4人。さらに本作ではアルゼンチンのネオ・フォルクローネのミュージシャン、マリアナ・ピラフも参加。国籍もバラバラな5人のメンバーからなる、実にユニークなユニットによるアルバムになっています。

前作「La Cola Del Dragon」も国際色豊かな作風に仕上がっていましたが、今回のアルバムも全8曲、うち1曲がインターリュードなので事実上全7曲、それぞれ味付けの異なるバラエティー富んだ楽曲が並びます。力強いドラムのリズムとギターでメランコリックな雰囲気をかもしだすインストナンバー「Arrozal」からスタートし、続く「Mokpo Norae」は、ギターのアルペジオに載せて哀愁感たっぷりに歌い上げるボーカルが印象的。ギターの音色はエキゾチックながらも、(おそらく)韓国語のボーカルで、韓国歌謡、あるいは日本の歌謡曲的な要素も感じさせるナンバーとなっています。

続く「Mi Nina Litaca」はマリアナ・ピラフがゲストに加わり、おなじく哀愁感漂うメロディーラインながらも、楽曲的にはよりラテン風。詳しくはわからないのですが、ネオ・フォルクローネの影響も強く反映されているのでしょうか?同じくマリアナ・ピアフがゲストに加わる「Nadie」もラテン風で哀愁感たっぷりの楽曲に仕上がっています。

さらに「Lullaby」はアコーディオンの音色が入ってシャンソン風、インターリュードを挟んでタイトルチューンとなる「Kumiroda-Everything is Dream-」ではエキゾチックなサウンドにのせて、また(おそらく)韓国語で歌い上げられるボーカルは荘厳な雰囲気も醸し出しつつ、力強く歌われるボーカルが印象的。中東的なエキゾチックなサウンドと東アジア的なボーカルスタイルの対比がユニークな楽曲になっています。

ラストを締めくくる「Gase Gase」は、再びラテン風に戻り、軽快でギターのサウンドで哀愁たっぷりに聴かせるナンバーに。最後まで哀愁たっぷりの楽曲で締めくくられています。

そんな感じで、基本的にはアルバム全体を通じて哀愁たっぷりのメロディーラインやバンドサウンドの演奏を聴かせるような構成に。バラエティーも豊富とはいえ、ラテン風の曲調と韓国民謡の影響を感じさせる楽曲が並んでおり、正直言うと、前作に比べるとバリエーションの幅は狭くなったような感のあるアルバムです。

ただ逆に、それだけアルバム全体としての統一感は増した感もありますし、CUATRO MINIMALとしての方向性も示せたアルバムとも言えるのではないでしょうか。なにより哀愁感たっぷりのメロディーラインは日本人の琴線にも触れそうなメロディーであり、そういう意味でもワールドミュージックとしての敷居の高さは皆無で、純粋にその演奏とメロディーラインを楽しめる1枚になっていたようにも感じました。

さらにライブで聴いたら心地いいだろうなぁ…という気持ちもありつつ、来年は「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」の再開を心から願いつつ。今はなによりもこの心地よいサウンドに身をゆだねたいな、そんな気分になるそんな1枚でした。

評価:★★★★★

CUATRO MINIMAL 過去の作品
La Cola Del Dragon


ほかに聴いたアルバム

King's Disease/Nas

約2年ぶりとなるNasのニューアルバム。「27 Summers」「Til The War Is Won」のような、今どきなトラップのリズムを取り入れた曲がありつつ、リズミカルな「Ultra Black」「The Definition」のようなナンバー、メロウな歌やトラックを聴かせる「Replace Me」「All Bad」など、全体的には様々なタイプのラップ、トラックに手を広げつつ、聴きやすくポップにまとめあげた曲調が印象的。いい意味で聴きやすさを感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

NAS 過去の作品
Untitled
Distant Relatives(Nas&Damian Marley)
Life Is Good
Nasir

Source/Nubya Garcia

新世代のUKジャズシンガーとして注目を集めるサックス奏者によるデビューアルバム。彼女の奏でる力強くダイナミックなサックスがまず印象的。彼女のサックスを主軸に据えて、サックスで聴かせるメロディーが楽曲の中心にひとつの柱のように立っており、そのため安定感も覚える作品に。そしてその安定感がゆえに、その周りで自由に奏でるバンド演奏がまた素晴らしい。基本路線としてはジャズなのですが、かなりパワフルなその演奏はロックの要素も感じられます。サックスとピアノと楽器は違いますが、このアグレッシブなロック路線は上原ひろみにも通じる要素も感じられます。ジャズ好きはもちろん、ロックリスナーにとっても訴求力ある1枚です。

評価:★★★★★

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2020年10月 4日 (日)

今年はオンラインで開催

京都音楽博覧会2020

会場 京都拾得(オンライン) 日時 2020年9月20日(日)19:30~

新型コロナの影響で、2020年の音楽フェスが軒並み中止またはオンライン開催となった中、くるりが主催で毎年開催している京都音楽博覧会もオンライン開催となりました。そんな訳で、ずっと参加できなかった京都音博ですが、オンラインということで今年は参加。オンラインとはいえ、2010年以来、2度目の京都音博となりました。

岸田繁楽団

まず時間となり最初にスタートしたのは「岸田繁楽団」なる、今回の京都音博を機に結成されたグループ。

「1.誰でも入れる楽団
2.どこでも演奏する楽団
3.なんでも演奏する楽団」

がコンセプトのようで、バイオリンやピアノ、コントラバス、クラリネットなどといった管弦楽的な編成の楽器に、岸田繁のギターやドラムセットも加わるポピュラーミュージックと管弦楽を融合させたようなスタイル。最初は京都拾得からの演奏で、岸田繁作曲による管弦楽の楽曲を優雅、というよりもメロディアスに、そして軽快に聴かせてくれます。

1曲が終了した後は、別撮で岸田繁への簡単なインタビューがあり、続いて2曲目は…これは意外な感じ!THE BOOMの「島唄」のカバー!伸びやかなストリングスをバックに岸田繁のボーカルが楽曲に妙にマッチしていました。さらにHomecomingsの畳野彩加を迎えてユーミンの「ひこうき雲」のカバー。こちらも畳野彩加のボーカルがユーミンっぽいボーカルスタイルとなっている、ストリングスも絶妙にマッチしたカバーに仕上がっていました。さらにHomecomingsの「白い光の朝」という曲へ。こちらもストリングスをバックとした爽やかな曲調が印象に残ります。

さらにUCARY & THE VALENTINEをゲストに「ドンじゅらりん」へ。この曲は岸田繁が作詞作曲を手掛けたEテレ「み~つけた!」で使用されている楽曲のカバーですね。「み~つけた」の曲らしいユニークでとても楽しい曲になっていました。さらに佐藤征史がベースで登場し「
琥珀色の街、上海蟹の朝」へ。こちらはバンドサウンドメインのファンキーなアレンジは変わらずに、ストリングスやUCARY & THE VALENTINEのボーカルが加わり、より爽やかさが加わりました。続く「ブレーメン」はもともとストリングスアレンジの曲ですが、今回はゲストボーカルとして小山田壮平が参加。トランペットでファンファンも加わり、また原曲とは少々変わった雰囲気になっていたのがユニークでした。

岸田繁へのインタビューでandymoriへの賛辞が述べられた後、小山田壮平をゲストに迎えたままandymoriの懐かしい「1984」へ。さらにはナポリ民謡の「サンタ・ルチア」のカバー、さらには再び短い岸田繁のインタビュー映像を挟みアウトロ的なインストナンバーに。ストリングスバックの優雅な雰囲気で1時間弱のライブは幕を下ろしました。

くるり

配信ライブはそのままくるりへ。一転、バンドサウンドが全面に押し出された演奏に切り替わり、最初は「愉快なピーナッツ」からスタートとなりました。さらに「さよならリグレット」「京都の大学生」とポップな曲が続きます。「京都の大学生」は岸田繁がマイク1本で歌う、歌謡曲風なステージになりました。さらにちょっとユーモラスな「Liberty&Gravity」、さらにはここで新曲。「益荒男さん」という曲らしく、日本の民謡やレトロ歌謡の影響も感じさせるユニークな楽曲が、今の岸田繁の興味のありかを感じさせます。

序盤は比較的、ポップな方向性の作品が並びましたが、さらに続けて披露された新曲「潮風のアリア」はバンドサウンドを前に出したミディアムチューン。郷愁感あるメロがくるりらしい楽曲に。そしてちょっと懐かしい「虹」、レア曲の「鍋の中のつみれ」、さらに「太陽のブルース」とミディアムテンポのギターロックナンバーが続きます。

で、ここで一転「トレイン・ロック・フェスティバル」とアップテンポなロックチューンに。さらにこれまた懐かしい「東京」「ロックンロール」と、緩急つけたロックチューンが展開します。アウトロではバンドメンバーみんなでジャムった後、そのままブルージーな岸田のギターにのって、ブルージーなバンドサウンドに。そしてそのままくるりとしては珍しいブルースナンバー「怒りのぶるうす」へと流れていきます。

さらにインストナンバー「Tokyo OP」で息の合った演奏を聴かせてくれた後は、そこまでの雰囲気から一転、岸田繁がアコギをかかえて「Bremen」へ。ファンファンのトランペットもメンバー3人のみの演奏となりしんみりと響かせながら聴かせます。さらに同じくメンバー3人のみの演奏で「キャメル」、そして「宿はなし」をしんみりと聴かせライブは幕を下ろしました。

最後はこの日の出演メンバーの写真が流れ、「来年は梅小路公園でお会いしましょう」というメッセージも流れライブは終了。くるりのステージは約1時間強。合計2時間強のライブでした。

今回は配信ライブでしたが、生ライブの形式ではなく、岸田繁楽団では途中、インタビュー映像が挟まったり、くるりのステージではMCもなく淡々とライブが展開していくような内容で、ライブというよりは映像作品という色合いの強い「配信ライブ」になっていました。ただ、岸田繁楽団はクラシック志向の強い岸田繁らしい試みで、ゲストも参加しているなど、ある意味「フェス」っぽい企画に。くるりのステージもサポートメンバーを迎えてのステージと、メンバー3人だけのステージという構成になっていて、新曲も含め、しっかりくるりの魅力を伝えたステージになっており、聴き応えのある内容になっていました。

今年はこういう形になってしまった京都音楽博覧会。まあ、ただそのお陰で久しぶりに「参加」できた、ということはあるんですけどね。もっとも来年は何の憂いもなく、以前にように梅小路公園で開催できるようになっていることを切に願っています。次、いつ行けるかどうかはわかりませんが・・・。

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2020年10月 3日 (土)

久しぶりにスキマの曲三昧

今回は、比較的同時期にリリースされたスキマスイッチの2組のアルバムの紹介。久しぶりに続けざまにスキマスイッチの曲をたくさん聴いた「スキマ三昧」に浸れました。

Title:スキマスイッチ TOUR 2019-2020 POPMAN'S CARNIVAL vol.2
Musician:スキマスイッチ

まずは毎度おなじみ、スキマスイッチのライブアルバム。なぜか毎回、ライブツアー毎にライブアルバムをリリースする彼ら。これで実に11枚目となるライブアルバムとなります。こちらは昨年12月25日に東京・中野サンプラザで行われた「スキマスイッチ TOUR 2019-2020 POPMAN'S CARNIVAL vol.2」のライブ音源を収録されています。

「なぜか毎回」という書き方をするのは、彼らは基本、ポップスグループであるため、ライブアレンジとして原曲を大きく崩すようなことはしませんし、また、ロックバンドのようにライブによってはバンドの息がピッタリ合い、奇跡のようなステージを見せてくれる…とうタイプでもありません。ライブ毎に、それほど大きく状況が変わるわけでもなく、そういう意味でも若干、ここまで毎回のようにライブアルバムをリリースする必要はあるのか??とは思ってしまいます。

ただ、それでも今回のライブ音源に関しては原曲に比べて、よりホーンセッションが前に押し出されているアレンジが目立ちました。「ガラナ」もホーンセッションでより軽快な雰囲気になっていましたし、「ズラチナルーカ」もホーンセッションが響くことにより切なさがよりましたように感じました。

選曲的にはアルバムリリース直後のツアーではないこともありベスト盤的な選曲に。特に12月25日のライブということで「クリスマスがやってくる」なんていかにもな選曲や「冬の口笛」といった季節性を感じさせる選曲もありつつ、基本的にはスキマスイッチの魅力をしっかり伝えつつ、はじめての方でも楽しめるような選曲になっていたように感じます。

ちなみにラストには「MC集」として5トラック分のライブツアーでの厳選MCが収録。ちょっとしたコントみたいなMCも楽しい感じ。特にOfficial髭男dismに言及した部分があり、「スキマスイッチはかつては今のヒゲダンのような人気が…」といったところでは確かにそうだよなぁ…ということを懐かしく感じます。当時は今のビルボードチャートのような混合チャートがなかったのですが、もし当時に混合チャートがあったら、「全力少年」とか「ガラナ」あたりはもっとロングヒットになっていたんじゃないかなぁ…なんてことを想像してしまいました。

そんな訳で今回もライブ盤としては十分楽しめたのですが…ただMC集を厳選して収録するよりは、ライブ音源をMC含めて1つの会場で完全収録にしてほしいなぁ、なんて感じたり。逆に、各会場の音源を厳選して収録という形にしてほしいなぁ、なんてことを感じました。ま、比較的ファンズアイテム的な要素も強い、いつものライブ盤ですが、彼らの魅力は十分感じられる作品でした。

評価:★★★★

Title:スキマノハナタバ ~Smile Song Selection〜
Musician:スキマスイッチ

で、もう1枚が2018年にリリースされた「スキマノハナタバ ~Love Song Selection~」に続くコンセプトアルバム第2弾。今回は「スキマスイッチのエネルギッシュな音楽で"楽しさ"と"笑顔"を届ける」をテーマにセレクトした楽曲を収録した企画盤となります。

そのため比較的アップテンポで軽快な曲が多かった今回のアルバム。素直にスキマスイッチのポップなメロの楽しさを感じられるアルバムになっていたようにも感じます。ただ、逆にアップテンポな曲が多かっただけに目立ったのは、「片想い」をテーマとした曲。「青春」「ガラナ」「かけら ほのか」のような片想いを歌ったような曲が、曲調が爽やかでアップテンポなだけに逆に目立つようにも感じます。ただ、今回のアルバムには収録されていませんが「アイスクリームシンドローム」のような、「片想い」をテーマとした優れた曲がスキマスイッチの曲に多いですよね。そこがまた彼らの大きな魅力でしょう。

また、「楽しさ」と「笑顔」というテーマだからこそ前向きな曲が多いのも特徴なのですが、そんな中でもラストの「あけたら」は今回、コロナ禍の中で制作された新曲なのですが、その歌詞が印象的。歌詞は、おそらくコロナ禍の中で換気のため窓を「開ける」という意味と、このコロナ禍が「明けたら」というダブルミーニングになっているのですが、まさにコロナ禍での閉そく感を織り込みつつ、その後に向けてのメッセージを込めた、今だからこそ歌われるべき曲になっていました。

楽曲的には文句なしの内容で、スキマスイッチの魅力を再認識できたのですが、ただ、「あけたら」以外は既存曲をまとめただけで(「全力少年」についてはリマスターはされていますが)やはりファンズアイテム的な要素の強いアルバム。楽曲の良さだけなら5つなのですが…もっとも「あけたら」1曲だけでも聴く価値のあるアルバムという点は間違いないでしょう。そういう意味ではファンなら要チェックのアルバムです。

評価:★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"
re:Action
新空間アルゴリズム
スキマノハナタバ~Love Song Selection~
SUKIMASWITCH TOUR 2018"ALGOrhythm"
SUKIMASWITCH 15th Anniversary Special at YOKOHAMA ARENA ~Reversible~


ほかに聴いたアルバム

駄々録~Dadalogue/No Lie-Sense

ムーンライダーズのリーダーとしてもおなじみの鈴木慶一と、ナゴムレコードの主宰で、劇作家としても活躍しているKERAのユニット、No Lie-Senseによる3枚目のアルバム。レトロ歌謡曲にコミックソングを織り交ぜた、ユニークな作風が特徴的。Music Magazine誌ではかなりの大絶賛だったのですが…個人的には、そこで褒められるほどには正直楽しめなかった部分も。どうも全体に、音楽的な意図が先ばしってしまって頭でっかちに感じてしまいました。

評価:★★★★

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2020年10月 2日 (金)

愛に満ち溢れて

Title:THE TRAVELING LIFE
Musician:小山田壮平

2000年代も終わるであろう頃に突如登場し、音楽ファンの高い評価と支持を集めたバンドandymori。2010年にリリースされたアルバム「ファンファーレと熱狂」が各種メディアで絶賛をあつめ、さらに2012年にリリースされたアルバム「光」はヒットチャートでベスト10入りするなど、高い人気も獲得しました。ただ、2014年にそんな人気の最中に残念ながら突然の解散を表明。その後、ボーカルで、andymoriの楽曲の作詞作曲を担当していた小山田壮平は、シンガーソングライターの長澤知之と組んでALというバンドをスタートさせましたが、ソロでも断続的に活動をスタート。そしてこのたび、初となるソロアルバムがリリースとなりました。

andymoriの作品といえば、叙情感あふれた歌詞が大きな魅力のひとつでした。小山田壮平のソロ作に関しても基本的にその路線を踏襲。叙情感あふれる歌詞が本作の大きな魅力となっています。比較的、具体的な単語を並べ、風景が目に浮かぶような描写の歌詞が多く、シンプルなメロディーラインと相まって、歌詞の世界がすんなり心にストンと落ちるような楽曲がメインとなっています。

今回のアルバムの中で、特に歌詞が印象を残っているのがまず「ゆうちゃん」でした。小学生か中学生あたりの幼なじみどおしの関係を描いたような歌詞で、ほっこりと暖かい雰囲気の描写が非常に魅力的。フォーキーなメロとサウンドも曲にマッチして、非常に印象的な曲になっています。

「君の愛する歌」も魅力的。「君の愛する歌を歌いたい」と歌われる「君」は、おそらく歌詞を読む限り、決して男女の愛情に関わらず、広く人間愛をうたっているように思います。それだけにスケール感を覚える歌詞ですが、暖かいメロディーラインにのるサウンドはエフェクトのかかったギターでスケール感を覚えます。

また、いままで紹介した2曲もそうですが、

「傷だらけの心は愛へと続いてる
こっちへおいでと君のこと何度でも僕が呼ぶから
君は扉をあけて 何度でも帰っておいで」
(「あの日の約束通りに」より 作詞 小山田壮平)

と歌う「あの日の約束通りに」も包容力ある愛を感じさせます。このようにアルバム全体として非常に暖かく、恋人に、というよりももっと広い「相手」をターゲットとした暖かい愛情を歌うような歌詞が目立つ内容となっています。それだけにアルバム全体としてとても暖かい空気が漂い、聴き終わった後に、とても心地よい聴後感を覚えるようなアルバムに仕上がっていました。

また、メロディーラインも基本的ミディアムテンポで、決してキャッチーな感じはないのですが、心にしっかりと染み入るようなメロディーをしっかりと歌い上げる曲になっています。そして、ユニークだったのがサウンド面。基本的にフォークやカントリーなどの要素が強いアコースティックテイストがサウンドがメインとなりつつも、例えば「旅に出るならどこまでも」ではテルミンの音を入れて妙に不気味な雰囲気を醸し出していたり、「スランプは底なし」ではバンドサウンドを前面に出したギターロックの曲になっていたり、ラストの「夕暮れのハイ」では最初、へヴィーなギターリフを主軸とするサウンドだったりと、ロックな側面もかなり強く感じるサウンドになっており、この点もandymoriから見られた傾向と言えるのですが、このロックなサウンドと叙情感あふれる歌詞のバランスが非常にユニークだったりします。

もっともandymoriの頃の歌詞は、例えば「革命」では死を意識したような歌詞が目立ったり、ラスト作の「宇宙の果てはこの目の前に」でも前向きな歌詞ながらも悲しい現実を歌っていたりと、決して明るいという印象はありません。しかし小山田壮平のこのソロ作は、前向きな歌詞もそうですが、人に対する優しさ、愛情に満ち溢れています。その点がandymori時代とは大きく異なるように感じました。

小山田壮平というと、andymori時代に危険ドラッグの使用で警察の事情聴取を受けたり、また、解散ライブ直前に川に飛び込んで大けがをして解散ライブが延期になるという奇行が目立ちました。それだけに精神面で非常に心配していたのですが、ただこのアルバムを聴く限りでは、彼がいま、非常に良い状態にあることを感じさせます。そして、そんな精神面を反映した、聴いていて暖かい気持ちになるような愛にあふれる傑作に仕上がっていました。正直、かなり安心した1枚。今後はソロ作がメインとなるのでしょうか。andymori時代と同様の傑作が今後も期待できそうです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

FRIENDS/NAMBA69

今年2月にドラマーのSAMBUが脱退。新ドラマーMOROを迎えての初となる、NAMBA69の新作は5曲入りのミニアルバム。ちなみにMOROは昨年解散したShiggy Jr.のメンバーだったようで、かなり異なる音楽性のバンドへのシフトになりましたね…。ただ、ドラマーが変わったからといってスタイルに大きな変化はなく、相変わらずのパンキッシュなサウンドを一気に聴かせてくれる5曲。そういう意味で目新しさはないものの、安定感のある1枚となっていました。

評価:★★★★

NAMBA69 過去の作品
21st CENTURY DREAMS
LET IT ROCK
Ken Yokoyama VS NAMBA69(Ken Yokoyama/NAMBA69)
CHANGES

V/MY FIRST STORY

タイトル通り、ファストリ5作目の…と思ったらオリジナルアルバムではこれが6作目となるようですね。ダイナミックなヘヴィーロックのサウンドが非常に心地よいのですが、タイプ的にはボーカルHiroの実兄のバンド、ONE OK ROCKと似ているような部分も。ワンオクに比べると、よりメランコリックなメロディーラインを前に押し出してポップなメロを聴かせるスタイルといった感じでしょうか。その結果、若干薄味になってしまっている感もあります。ただ、前に聴いたアルバム「ANTITHESE」に比べると、ゴリゴリにヘヴィーなナンバーから、メロディーを聴かせるナンバーまでバリエーションは増えた感もあり、そういう意味では飽きずに最後まで楽しむことが出来ました。ちなみにラストの「アンダードッグ」では昨年、大麻保持で逮捕されたRIZEのJesseが参加。かなりカッコいいミクスチャーのナンバーとなっています。おそらく、本作が復帰後第1弾となると思うのですが、これだけあっさり復帰できたのが意外な感じも…。今後は過ちを繰り返さないようにがんばってほしいのですが。

評価:★★★★

MY FIRST STORY 過去の作品
ANTITHESE

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2020年10月 1日 (木)

今週も米津、あいみょんが並んで・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は2位3位に並んだあいみょん「おいしいパスタがあると聞いて」米津玄師「STRAY SHEEP」ですが、今週も2枚同時にランクイン。ただし、今週は2位米津玄師、3位あいみょんという順位が入れ替わる結果となり、米津玄師の強さを見せつける結果となりました。特に米津玄師はCD販売数ころ6位までダウンしているものの、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数は1位という結果に。逆にあいみょんはCD販売数、ダウンロード数、PCによるCD読取数いずれも3位という結果となりました。

で、先週同様、この2枚のアルバムの上に立ったのは女性アイドルのアルバムで、今週は日本のアイドルグループ。日向坂46「ひなたざか」が初登場で1位を獲得。CD販売数及びダウンロード数で1位、PCによるCD読取数で2位という結果に。例のごとく、秋元康のAKB系のグループで、もともとけやき坂46という名前で活動していたグループが改名したもの。改名後では初のアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上20万8千枚で1位初登場。けやき坂46名義でリリースした前作「走り出す瞬間」の初動15万4千枚(1位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にWANIMA「Cheddar Flavor」がランクイン。9月22日に行われた「COMINATCHA!! TOUR FINAL LIVE VIEWING ZOZO MARINE STADIUM」で発表され、翌日に発売となった9曲入りのミニアルバム。CD販売数2位、PCによるCD読取数9位。オリコンでは初動売上3万枚で2位初登場。前作「COMINATCHA!!」の7万2千枚(1位)からはダウンしています。

5位にはBUCK-TICK「ABRACADABRA」が初登場。約2年半ぶりとなるベテランバンドのニューアルバムで、これがなんと22枚目のオリジナルアルバムになるそうです。CD販売数4位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数16位。オリコンでは初動売上2万枚で3位初登場。前作「No.0」の1万8千枚(2位)よりアップしています。

6位初登場はMONOEYES「Between the Black and Gray」。ご存じELLEGARDENやthe HIATUSで活躍する細美武士率いるバンド。CD販売数5位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数12位。オリコンでは初動売上1万7千枚で6位初登場。前作「Dim The Lights」の2万8千枚(5位)からダウンしています。

7位にランクインしてきたのが黒澤ルビィ(降幡愛)from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Kurosawa Ruby First Solo Concert Album ~ RED GEM WINK~」。メディアミックス作品「ラブライブ!サンシャイン!!」から登場した架空のアイドルグループAqoursのメンバーによるソロ作。先週、桜内梨子(逢田梨香子)from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Sakurauchi Riko First Solo Concert Album~Pianoforte Monologue~」がランクインしてきましたが、それに続く作品となります。CD販売数8位、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数26位。月曜日(21日)リリースだったため、オリコンでは先行リリース分の関係で先週、10位にランクインしましたが、ビルボードでは今週、初登場でベスト10入りしています。

8位には韓国の男性アイドルグループPENTAGONのニューアルバム「UNIVERSE:THE HISTORY」がランクインしています。CD販売数7位、ダウンロード数99位。本作が初となるフルアルバム。オリコンでは初動売上1万2千枚で7位初登場。前作「SHINE」の2万5千枚(4位)よりダウンしています。

ちなみに先週、ベスト10に返り咲き、通算8週目のベスト10ヒットを果たしたNiziU「Make you happy」ですが、今週は19位までダウン。ベスト10返り咲きは1週のみに留まりました。今週のHot Albumsは以上。ランキングはまた来週の水曜日に!

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