もう49歳ですか・・・
Title:49 Forty-Nine
Musician:久松史奈
1992年にシングル「天使の休息」が大ヒットを記録し、一躍注目を集めたシンガー、久松史奈。本作は、その彼女のデビュー30周年を記念してリリースされたベストアルバム。タイトルの「49 Forty-Nine」は彼女の年齢から取られた模様。ジャケット写真も、その彼女のかなり大人っぽい雰囲気が印象的です。「天使の休息」が流行った頃はかなりやんちゃという印象を受けていた(というか、実際、不良だったらしいし)彼女ですが、良い感じで年を重ねましたね。
以前、2012年にリリースされた「GOLDEN☆BEST」を聴いて、このサイトでも取り上げたことがあり、その時も書いたのですが、久松史奈というと私が高校時代に愛聴していたラジオ番組のパーソナリティーとして参加していたこともあり、親近感のあるミュージシャン。特に「天使の休息」がブレイクしたタイミングが、ちょうどそのラジオ番組を良く聴いていた時期と重なっており、このヒットはかなりうれしかったことを覚えています。
今回のベスト盤でももちろん、その「天使の休息」も収録。あらためて聴いてみたのですが、やはり素直にいい曲だなと感じます。メロディーラインにはインパクトがあり、一度聴くと思わず口ずさんでしまうようなキャッチ―さがあります。歌詞もほどよくリスナーに寄り添うような曲調になっており、応援歌的な要素はJ-POP風ながらもおしつけがましさはなく、素直に聴き入るポップスに仕上がっています。
ただ今回のアルバムで彼女の曲を通して聴くと、「天使の休息」や、その次にリリースされた「微笑みながら」のようなインパクトあるメロディーはあるものの、全体として久松史奈だけが持っているような個性が薄いように感じてしまいました。今回のベスト盤、1曲目「LADY BLUE」から10曲目「YES MY FRIEND」までが、BMGビクターでの、いわばメジャー時代の作品になるのですが、90年代のJ-POPそのままといった感じの楽曲で、率直にいって、これといった特色は薄い印象。久松史奈といえば「天使の休息」の一発屋というイメージも強いと思うのですが、確かに、これだと一発で終わってしまうよな…という感想を抱いてしまいました。
ちなみに前回聴いたベスト盤「GOLDEN☆BEST」は、そのBMGビクター時代のシングル曲とカップリング曲のみを収録したベスト盤でしたが、今回のアルバムはその後の活動も網羅しています。BMGを離れた後の彼女の曲は、以前の作品と比べると、グッとロック色が強くなった作品。作風としては、こちらもよくありがちなハードロックといった印象は否めなかったのですが、ただ、90年代的なサウンドに比べると、よりロックなバンドサウンドの方が彼女の歌声には合っているようにも感じます。最初からこの方向性なら、もうちょっと彼女の人気も変わったかも?
さらに今回は新曲として「Short Film」という曲と、さらに「天使の休息」を再録した「天使の休息2020」も収録されています。で、この「天使の休息2020」が、実に素晴らしいセルフカバーに仕上がっていました。30年近い歳月を経たその歌声は、すっかり「大人」になった彼女が感情たっぷりに歌い上げており、非常に優しさを感じます。1992年とは全く異なる、ボーカリストとして素晴らしい表現力を獲得した彼女の魅力を存分に感じます。歌詞の内容も含めて、大人になったからこそ心に響く曲になっており、原曲以上によく出来たセルフカバーだったのでは?とすら思えるような出来映えに仕上がっていました。
かつて「天使の休息」が好きだった方は、このセルフカバーを聴くだけでも価値はあるのでは、と思わせるようなベスト盤。いろいろと思うところもあるのですが、なんだかんだいっても懐かしさを感じながら聴くことが出来た1枚でした。久々に懐かしい気分に浸れたアルバム。ちなみに彼女は現在もコンスタントに音楽活動を続けている模様。これからも末永く、音楽活動を頑張ってほしいです!
評価:★★★★
久松史奈 過去の作品
GOLDEN☆BEST 久松史奈 SINGLE COLLECTION
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