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2020年9月 8日 (火)

ユニークな視点から自らの体験を描く

Title:LIFE RECORDER
Musician:TOMOVSKY

直近作が、ライブで発表された音源を集めたライブアルバム的な企画盤だったので、オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなるTOMOVSKYのニューアルバム。毎回、身の回りの出来事をユニークな視点から切り取っている彼ですが、今回のアルバムも、まずはそんなTOMOVSKYらしい、独特の歌詞の世界がユニークなアルバムになっていました。

特に独特の視点という意味でユニークだったのが「AI」。まさに昨今話題のAIについてうたった歌なのですが

「AIはかわいそう
AIはおひとよし
いいコトも
悪いコトも
全部その中に
かかえてるんだから」
(「AI」より 作詞 大木知之)

と、彼なりの視点でAIに対して同情を加えている視点は非常にユニーク。「事故とか/あおり運転とか/もう見たくない」と歌う「ドライブレコーダー」みたいな、機械を擬人化したような曲はほかにもあり、ここらへんの彼らしい視点が非常にユニークでした。

ただ今回のアルバム、ユニークな視点以上に、「LIFE RECORDER」というタイトル通り、彼の身の回りに起きたような出来事を歌が目立ち、その最たるものが「MRI」からスタートする4部作。2018年末から患った股関節痛にまつわる体験を4曲にわたって歌われており、特に「寄り添う2人」からスタートする松葉杖3部作は、股関節痛の時の体験を歌にしているのですが、松葉杖を愛人として見立てている視点がまた、TOMOVSKYらしくユニークに感じます。

他に「登山部をやめたい」と歌いだけの、非常にシュールな「登山部」や、乱暴なドライバーや丁寧なドライバーに対する心境を歌った「くだれ(天罰編)」「くだれ(デザート編)」といったユニークな曲が並びます。一方で、「悲しすぎる未来」では「100年後/200年後/君はいない/もちろん僕もいない」と当たり前の内容を歌った歌詞ながらも、非常に切なさを感じさせるラブソング(?)になっていますし、「地球最後の日」も「地球最後の日は街じゅうにキスであふれた」と歌う、非常に暖かい視点の歌詞になっています。ここらへん、トモフのやさしさ、暖かさを感じますた。

また今回、サウンドに関しては全体的にチープな宅録的な曲が多かったように感じます。比較的シンプルなギターロックが多いのですが、レゲエ調の「ヘッドフォン」にしても、ディスコ風の「AI」にしても、打ち込みが妙にチープ。まあ、味といえば味なのですが、全体的にはチープな雰囲気のアレンジの楽曲が並んでいました。

そんな訳で相変わらずいつものTOMOVSKYらしいアルバムに仕上がっていた本作。ただ、歌詞的にもメロやサウンド的にも、彼のアルバムの中では若干インパクトは弱かったようにも思います。「え?そんな視点で?」という思わずクスっと笑ってしまうような曲もありませんでしたし…。ただ、本作もトモフらしい魅力にあふれているのは事実。このコロナ禍の中、世間が暗くなってしまうような中だからこそ、彼のような独特の視点の楽曲が重要になってくるような気がします。ファンならずとも今の世の中だからこそ楽しんでほしい1枚です。

評価:★★★★

TOMOVSKY 過去の作品
幻想
秒針
いい星じゃんか!
終わらない映画
BEST3
SHAAA!!!
FUJIMI
SHINJUKU TIME 2018-1
SHINJUKU TIME 2018-2


ほかに聴いたアルバム

THE BAND STAR/ハルカミライ

メジャー2作目で初のベスト10ヒットを記録し、現在、人気上昇中のパンクバンド、ハルカミライ。ミュージシャン名からして、いかにもひと昔前に流行ったような青春パンク風ですし、このミュージシャン名だけで拒絶反応を起こすような音楽ファンも少なくなさそう(苦笑)。そんなこともあって私自身もおそるおそるアルバムを聴いてみたですが、正直言うと、思ったよりは悪くはないかな、といった印象。楽曲的には王道のパンクロック路線で、後半になるとよりオルタナ系ギターロック路線が強くなり、予想していたようないかにもチープな青春パンク色はさほど強くはありません。最初、予想していたよりは楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★

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