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2020年9月21日 (月)

原点回帰の新作

Title:Purple Noon
Musician:Washed Out

アメリカの男性ミュージシャン、アーネスト・グリーンによるソロプロジェクト、Washed Out。2011年にリリースされたアルバム「Within and Without」が高い評判を得て、一躍、注目を集めました。そこで話題となった音楽のジャンルが「チルウェイヴ」という音楽。チープな打ち込みをバックに、ノスタルジックなメロディーラインを載せている点が特徴的な音楽で、80年代的なシンセポップと、今風のHIP HOPが融合されている音楽、ということだそうです。

Washed Outというミュージシャンは、このチルウェイヴというジャンルを確立し、その後のシーンに大きな影響を与えたミュージシャンでした。ただ、その後は若干音楽性が変化し、特に前作「Mister Mellow」はダンスミュージックやHIP HOP寄りにシフトした作品になっていた……そうです。聴いていないので詳しくは知らないのですが…。

しかし、今回のアルバムはそんな彼が「原点回帰」ということで、デビュー作の方向性に近い、チルウェイヴの作品を作り上げてきました。まずその傾向は1曲目から顕著。「Too Late」はちょっとチープさを感じる打ち込みのリズムがまさに80年代的テイストで、ノスタルジックな雰囲気を感じる哀愁感漂うメロディーラインからして完全にチルウェイヴのイメージにピッタリ来ています。

さらに続く「Face Up」「Time to Walk Away」は、80年代的ながらも、どこか洒落た感のある打ち込みのサウンドとメロディーラインに、ここ数年、世界中で注目を集めているシティポップの要素を強く感じます。Washed Outが確立したチルウェイヴの音楽性は、まさにシティポップの要素を兼ね備えたような部分を強く感じるのですが、そのような音楽を、今から約10年前の2011年に、まだ80年代的なシティポップがほとんど注目されていないような時期に打ち出したWashed Outの先見性をあらためて今回のアルバムでは強く感じました。

またこのチルウェイヴの音楽の特徴とした「霧にかかったようなホワイトノイズ」という説明を見受けます。実際、デビュー作「Within and Without」でもこの霧にかかったようなサウンドという点が大きな特徴となっていました。ただ今回の作品に関しては、特に前半においてこの「霧にかかったようなサウンド」という特徴はあまり強くはありません。ただ、中盤の「Game of Chance」「Leave You Behind」は、まさにこの「霧にかかったようなホワイトノイズ」という特徴を兼ね備えた楽曲になっており、そういう意味ではしっかりとチルウェイヴの要素を踏まえた作品として仕上げていました。

そんな訳で、まさに原点回帰となった今回のアルバム。といっても個人的には彼のアルバムを聴いたのはそのデビュー作以来なので、彼のその後の変化は知らないのですが…。ただ、懐かしく、メランコリックで妙に人懐っこいメロディーラインは非常に魅力的。ほどよいノイズもまじり、非常に心地よさを感じる音楽になっていました。メロディーラインもいい意味でわかりやすく、日本人にとっても壺をついたようなメロディーと言えるのでは?良質なポップソングとしてお勧めできるアルバムでした。

評価:★★★★★

Washed Out 過去の作品
Within and Without


ほかに聴いたアルバム

Microphones in 2020/The Microphones

アメリカのロックバンドによるThe Microphones。1999年から活動を開始し、2003年に解散。ただし、その後は再結成で散発的な活動を続け、このたび実に約17年ぶりとなるアルバムとなったのが本作。とはいえ本作、約44分にも及び1曲のみが収録されているという作品。シングル…ではなく一応アルバム扱いのようですが。ただ、この手のアルバムでありがちな、非常にマニアックな聴きにくいアルバムといった感じではなく、終始メランコリックなメロディーが流れつつ、フォーキーな作風になったりノイズギターが入ったりと徐々に形式を変えつつ展開していくような内容に。44分という長さで聴きどころも多く、あっという間に楽しめるような作品でした。

評価:★★★★★

Twice as Tall/Burna Boy

ナイジェリアのシンガーソングライターによる5枚目のアルバム。Beyonceのアルバム「The Lion King:The Gift」への参加でも話題を集め、前作「African Giant」も傑作アルバムに仕上がっていました。それだけに期待して聴いた今回のアルバム。確かにアフリカ音楽やレゲエにHIP HOPなどを融合させた音楽性は非常にユニーク。ただ、全体的にはレゲエ的な要素も強く、メランコリックなメロディーが前に。良くも悪くも垢抜けた感はあり、アフリカの音楽と西洋音楽の融合というイメージは前作に比べると薄くなってしまった感もありました。欧米ポップ寄りにグッとシフトした1枚。この方向性が次回作以降、吉と出るか凶と出るか・・・。

評価:★★★★

Burna Boy 過去の作品
African Giant

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