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2020年9月14日 (月)

Arcaのパーソナリティーが反映

Title:KiCk i
Musician:Arca

ベネズエラのトラックメイカーArca。Bjorkのアルバムのプロデュースで話題となり、さらにはKanye WestやFKA Twigsとの仕事も話題となり、一躍注目を集めるミュージシャンとして活躍しています。そんなArcaの約3年ぶりとなるオリジナルアルバムなのですが、まず、ジャケット写真に驚かされます。どこか日本のフィギュアみたいな感じもする武器に身を固め、こちらをじっと見つめる彼女・・・・・・って、あれ?Arcaって女性だったの?と思ってしまうのですが・・・今回、彼女は自らをノンバイナリー(性認識が男性・女性どちらにもはっきりと当てはまらないという考え)であると公言。今回、このようなジャケット写真を公表するに至ったようです。今回のアルバムもいきなり1曲目は「Nonbinary」という曲からスタートします。

ただもっとも、Arca自身、いままで音楽に対してそのパーソナリティーを前面に出してきたようなミュージシャンではありません。そういうこともあって今回、彼女がノンバイナリーとしてその姿をあらわしたとしても、さほどの違和感はありませんでした。ただ、今回のアルバムの特徴としては、彼女がノンバイナリーであることを公表し、それを前面に出したことによって、アルバムが非常にパーソナリティーな内容になったように感じます。

そのため、無機質的な感触が強かった以前のアルバムと比べると、楽曲として暖かみが増して、よりポップにシフトした印象を受けます。具体的に言うと、以前のアルバムに比べて「歌モノ」がグッと増えています。1曲目「Nonbinary」からして、おそらく彼女の独白であろうポエトリーリーディングのような語りが展開される楽曲になっていますし、「Calor」「Machote」のような彼女自身がその歌声を聴かせる楽曲も目立ちます。さらにラストを締める「No Queda Nada」では、彼女が伸びやかな歌声で歌い上げる荘厳な楽曲に仕上がっており、Arcaがボーカリストとして前面に出てきている楽曲になっています。

そのほかにも豪華なゲストボーカルが参加した「歌モノ」の曲が目立ちます。アルバムのハイライトとも言えるのが間違いなく、かのBjorkが参加した「Arterwards」で、荘厳なエレクトロサウンドを聴かせる、しっかりArcaらしさを押し出した曲であるのですが、Bjorkの感情たっぷりに歌い上げるボーカルが前面に出ており、完全にBjrokの楽曲になってしまっています…が、相手がBjrokでは仕方ないですね。このままではBjorkの曲として終わってしまうと思ったのか(笑)、最後はArca自身がボーカルで登場し、曲を締めくくりました。

他にもROSALIAが参加した「KLK」ではラテン調のビートを披露しつつ、軽快なポップチューンを聴かせてくれたりしつつ、逆に、「La Chiqui」ではSOPHIEがゲストボーカルとして参加し、幻想的な歌声を聴かせつつ、強烈なハイトーンビートでアバンギャルドな作風に仕上げてきたりと、歌モノをいれつつポップでまとめながらも、Arcaらしい挑戦心、アバンギャルドさはしっかりと健在していました。

セルフタイトルとなった前作「Arca」もポップな方向性にシフトした作品になっていましたが、今回の作品は、よりArcaというパーソナリティーを押し出し、さらなるポップに仕上げた作品に。ただもちろん、以前からのArcaらしさも健在で、彼女にしか作りえないような独特の「ポップス」に仕上がっていました。今後は、より彼女のパーソナリティーを反映した作風にシフトしていくのでしょうか。今後の方向性にも要注目です。

評価:★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant
Arca

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