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2020年9月12日 (土)

シンプルゆえに味わい深い傑作

Title:folklore
Musician:Taylor Swift

今や、おそらくアメリカで最も人気のあるシンガーソングライターの一人となったテイラー・スウィフト。日本でも高い人気と知名度を誇る彼女ですが、そんな彼女の約1年ぶりとなるニューアルバム。リリース公表日がリリース日の1日前というサプライズリリースということでファンを驚かせましたが、突然のリリースにも関わらず、ビルボードチャートでは当然のように1位を獲得。大ヒットとなっています。

さてそんな今回のアルバムですが、プロデューサーとして以前からの盟友、ジャック・アントノフに加えてThe Nationalのアーロン・デスナーが参加。17曲中11曲をアーロンがプロデューサーとして参加しています。また、コロナ禍の中作成されたアルバムということで、作成は主にリモートによって作成されたようで、さらにほとんどの楽器をジャックとアーロンが演奏するという、ある意味、宅録的なアルバムに仕上がっています。

そんなアルバムということもあって、アルバム全体としては比較的、シンプルな作品として仕上がっています。カントリー色の強い「Seven」やアコギでフォーキーな作風に仕上がっている「Illicit Affairs」「betty」などといった曲もあり、ここらへんは以前からの彼女らしい曲調と言えるかもしれません。ただ、全体的にはカントリー、フォーク色の強い以前の彼女のアルバムのような作品…といった感じではありません。シンセが入って分厚い音を聴かせる「This Is Me Trying」や、ピアノとストリングスで幻想的に聴かせる「Epiphany」といったような、軽く幻想的な作風が本作のひとつの特徴となっています。

他にも打ち込みのリズムをバックにメロディアスに聴かせる「The Last Great American Dynasty」や、静かなギターサウンドをバックに伸びやかなボーカルで聴かせる「Peace」など、シンプルながらもしっかりとメロディーを聴かせるポップチューンがメイン。エレクトロサウンドを取り入れて比較的ポップで派手目な作品が多かった前作「Lover」と比べると「地味目」という印象すら受けるかもしれませんが、The Nationalのアーロン・デスナーがプロデューサーとして参加している影響でしょうか、インディーロックの色合いを強く感じるような作風となっています。そのため、地味という印象を受けるアルバムですが、その実、アルバムのバリエーションも豊かで、聴けば聴くほど味が出てくるような、味わい深い作風になっていたように感じます。

そんなシンプルな作風がゆえに、テイラーの表現力あふれるボーカルの魅力を味わえるのも本作の特徴。清涼感あるボーカルを聴かせる「Mirrorball」や、ピアノをベースとしたシンプルなサウンドをバックに表現力豊かに聴かせる「Mad Woman」などといった、彼女のボーカリストとしての魅力が冴えた作品が並びます。デビュー当初はわずか16歳という若さも話題となった彼女も、今年で既に30歳。女性に対して年齢の話をするのは失礼ではあるのですが、既にベテランの域に達した彼女。しかし、そのキャリアがしっかり裏付けられたボーカルが実に魅力的でした。

さらにアルバムの中のひとつのハイライトと言えるのが4曲目の「Exile」でしょう。この作品はピアノをベースとしたサウンドでゆっくりと聴かせるミディアムチューンなのですが、Bon Iverがゲストボーカルとして参加。彼とのデゥオにより、彼女の清涼感ある歌越えとBon Iverの骨太なボーカルのバランスも実に見事。楽曲としてのスケール感もあり、強いインパクトのある作品に仕上がっています。

リリース以来、各所で大絶賛を受けている本作ですが、確かにそれも納得と言えるような傑作だった本作。個人的にも、最初聴いた時は、地味な作風にさほどピンと来なかったのですが、2度3度聴くうちに魅力にはまっていってしまい、今では彼女の最高傑作であり、年間ベストクラスの傑作ではないか、と思うほどに至っています。こういう地味目な作品をしっかりと聴かせるあたり、本当に実力のあるミュージシャンと言えるのでしょうね。彼女のすごさを見せつけた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover

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