大人の風格漂う
Title:Unfollow The Rules
Musician:Rufus Wainwright
アメリカのシンガーソングライター、ルーファス・ウェインライトのニューアルバム。直近作「Take All My Loves: 9 Shakespeare Sonnets」はシェイクスピアの詩集を基とした企画盤、前々作「Prima Donna」はオペラのアルバムだったので、純粋なポップスのニューアルバムとしては2012年の「Out of the Game」より、約8年ぶりの新作となったそうです。
その渋い雰囲気のジャケットの風貌といい、直近作がシェイクスピアだったりオペラだったりと、非常に小難しい感じの企画モノだったりと、イメージとしては「通好み」のミュージシャン、ちょっと手を出しがたい感も否定はできません。実際、今回のアルバムも、全12曲入りながら、4曲毎に区切られた「全3幕」という構成のアルバムになっていて、その凝った感じのアルバムの構成も、良くも悪くも、手を出しがたい感じに拍車をかけています。
その三幕からなる内容ですが、ブルージーな雰囲気を醸し出しつつ、重厚なコーラスラインが心地よい「Trouble In Paradise」からはじまり、アコギとストリングスで伸びやかに聴かせる「Damsel In Distress」、感情のこもったボーカルでゆっくりと聴かせるタイトルチューンの「Unfollow The Rules」など、比較的スケール感のあるサウンドでメロディアスに聴かせる曲が並びます。
第2幕はピアノをバックにメロディアスなポップチューンを聴かせる「Romantical Man」やカントリー調の「Peaceful Afternoon」などメロディーの人懐っこさ、キュートさにまず耳が行くようなインパクトあるナンバーが並びます。そして第3幕は「Early Morning Madness」や「Devils And Angels(Hatred)」などムーディーなピアノ曲がメイン。こちらは「大人の歌手」といったイメージのあるスタンダードポップ調の楽曲が並んでいます。
そんな訳で、3幕で構成された全12曲の楽曲。確かに第3幕目のムーディーなスタンダードポップ調の曲のようにジャケットの風貌と同様の「大人の雰囲気」が漂う楽曲も少なくありません。が、ただ、全体的にアルバムを聴き始める前に予感していたような小難しさは皆無。特に序盤から中盤にかけては、非常に人なつっこさを感じるポップなメロを聴かせてくれます。
全体的には確かに派手でインパクトのあるメロディーといった感じではありませんし、いわばしっかり聴かせる「大人のポップス」を聴かせてくれるタイプのシンガーソングライターであることは間違いありません。ただ、どの曲も基本的にはわかりやすいメロディーラインが流れるポップな楽曲ばかりという点は間違いありませんし、そういう意味での小難しさは皆無。非常に良質なポップチューンを私たちに届けてくれる傑作アルバムに仕上がっていました。
まさに「大人のポップス」を探している世代にはお勧めしたい1枚ですし、また、そうでなくても、ポップス好きならば気に入りそうな、気持ちよくポップな楽曲を楽しめる作品。お勧めです。
評価:★★★★★
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