ケンモチヒデフミの挑戦
Title:たぶん沸く~TOWN WORK~
Musician:ケンモチヒデフミ
ご存じ水曜日のカンパネラのメンバーでありトラックメイカーであるケンモチヒデフミ。一時期、ほぼ毎年アルバムをリリースするという、怒涛のリリースラッシュが続いていた水曜日のカンパネラでしたが、こちらは2018年のEP「ガラパゴス」以来、ちょっとお休み状態(コロナ禍で休止中ですが、その前はライブ活動などは行っていたようですが)。一方、ケンモチヒデフミの方は昨年5月に、自身実に9年ぶりとなるソロアルバム「沸騰 沸く~FOOTWORK~」をリリース。さらに続けて、配信限定ですが、早くも次のアルバムをリリースしてきました。水カンはちょっとお休みのようですが、ケンモチヒデフミの創作意欲に全くの衰えはなさそうです。
前作に続いて彼が取り入れているジャンルが、Juke/Footworkという、アメリカ・シカゴを発祥とするエレクトロダンスミュージック。BPM160の三連符などを多用するリズム(Juke)に、ダンサーたちが足技を多用した高速リズムで踊る(Footwork)というスタイル。「今、注目を集めている」と書かれた記事が、既に8年くらい前の記事だったので、現時点での最先端のサウンド…という感じではないかもしれません。ただ、前作に続いて今回もJuke/Footworkを取り入れているように、彼にとっては、今、もっとも興味を持っているジャンル、ということなのでしょう。
もっとも今回のアルバム、「たぶん沸く」というタイトルの由来は、ケンモチヒデフミが「多分、これがFOOTWORKというものだろう」という音を取り入れた、ということから来ているそうで、彼にとっても手探り感、あるいは挑戦的な作品だったと言えるかもしれません。ただ一方で、今回、このアルバム評を書くにあたって、そのJuke/Footworkと言われる代表的なミュージシャンの曲を何曲か聴いたのですが、確かに今回のアルバムに収録されている曲は、いかにもJuke/Footworkの曲を並べたようなアルバム。例えば「Neptune」など、非常に速い3連ビートがさく裂されており、ある意味、Juke/Footworkらしさに忠実という点も、彼の手探り感を覚えることが出来ます。
ただ、そんな中でもしっかりとケンモチヒデフミの色を感じられる部分は少なくなく、先行シングルにもなった「Lolipop」は、「Lolipop!」というシャフトも心地よく(これ、何かの曲のサンプリングですよね?何の曲だったっけ…)、水カンでも感じられる彼らしいポピュラリティーと、どこか感じられるユーモアセンスが楽しいポップチューンになっています。
最後を締める「Masara Town」は女性ボーカルが入って、非常にメロウな作風になっているのも大きな特徴。このハイトーン気味の女性ボーカルとケンモチヒデフミ楽曲との相性の良さも感じられ、やはりこれを水カンでコムアイのボーカルで聴きたい…とも思えるような曲になっていました。とにかく全体的にJuke/Footworkの王道を行くようなリズムで、ケンモチヒデフミらしいポピュラリティーをしっかりと付与した上で、水カンのファンにも楽しめる、そんなアルバムに仕上がっていたように感じます。
そんな訳で、そろそろ水カンのアルバムが出ないかな、と思いつつ、ケンモチヒデフミの世界を楽しめた1枚。このサウンドは、次の水カンのアルバムに反映されるのでしょうか。そんな想像をしながら楽しめた1枚でした。でも、次は是非、水カンの新作を…!!
評価:★★★★★
ケンモチヒデフミ 過去の作品
沸騰 沸く~FOOTWORK~
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