良くも悪くもフェス向けバンド
Title:5
Musician:Mrs.GREEN APPLE
デビューアルバム「TWELVE」がいきなりベスト10ヒットを記録し、一気にブレイク。デビュー以来、数多くのロックフェスにも出演し、一躍人気バンドとなったMrs.GREEN APPLE。本作はそんな彼らのメジャーデビュー5周年を記念しての初のベストアルバムとなります。デビュー当初からブレイクしていたため、「デビュー5周年」と言われても、まだ5年目なのか…とすら思ってしまうのですが。ちなみに、ベスト盤のリリースと同時に、活動休止と事務所からの独立を発表。今後はフェーズ2に向けての新たなプロジェクト"Project-MGA"を立ち上げたそうで、このベスト盤リリースを機に、新たな活動をスタートさせた模様です。
さて、このMrs.GREEN APPLEというバンド、個人的にはデビューアルバム「TWELVE」からアルバムは一通りチェックはしてきていますが、彼らの印象としては良くも悪くもフェス向けのバンドだな、といったものだったりします。ほどよくロッキンなギターロックにとことんポップである意味わかりやすいメロディーライン。祝祭色もあり、盛り上がりそうなテンポのよいサウンドとリズム。ジャンル的にはオルタナ系の系譜をひいたようなギターロック路線ということになるのですが、具体的なルーツはわかりにくく、単なるポップバンドになっている…という点はある意味非常にJ-POP的。すいません、最初に「良くも悪くも」と言いましたが、「フェス向けバンド」というのは完全に悪い印象ですね。ここ最近、よくありがちなバンドというイメージは、正直デビュー時から今に至るまで持っています。
今回のベスト盤ではインディーズ時代のアルバムに収録されていたナンバーから、昨年7月にリリースされた配信限定シングル「インフェルノ」、さらに4月5月に先行配信リリースされた「アボイドノート」「PRESENT」に、ベスト盤のために書き下ろした新曲「Theater」までがリリース順に並べられています。
前半の作品に関しては、分厚いギターロック路線が、まだ今のMrs.GREEN APPLEらしさが確立されていないインディーズ時代の「スターダム」からスタート、「Speaking」「サママ・フェスティバル!」のようなシンセのサウンドを取り入れて爽快にまとめたポップチューンまで、徐々にMrs.GREEN APPLEらしさが確立していく感じが見て取れます。ただ、正直前半の作品に関しては、上に書いた、いわば「フェス向けのバンド」のネガティブなイメージがもろに出てしまった感が否めません。まあ、フェスでは盛り上がるんだろうけど…ということを考えてしまうような、無難なポップチューンの連続といったイメージ。メロディーラインもさほど凝っている感じもありませんし、サウンドも平凡。聴いていて、若干飽きてきてしまったのは否めません。
ただ、そんなイメージが変わったのが後半戦。特に「WanteD!WanteD!」あたりから賑やかな祝祭色が増して、フェス向け云々関係なく、純粋に明るく、聴いていて楽しくなるようなポップチューンがグッと増えてきたように感じます。疾走感があってポップなメロが楽しい「青と夏」や、ダイナミックなサウンドも心地よい先行配信曲「アボイドノート」など、純粋に聴いていて楽しめる曲が並んでいます。
以前聴いたオリジナルアルバムでも「ENSEMBLE」「Attitude」では、良い意味で彼らが祝祭色豊かなサウンドにグッといい意味で振り切れたような印象を受けていましたが、今回のベスト盤ではそのアルバムで感じた印象が正しかったことを、過去からの彼らの曲を通じて聴いたことで再確認できました。正直今でもなお、いろいろな意味で「フェス向けバンド」という印象はぬぐえないのですが、この方向性をさらに突き進めば、もっともっとおもしろいバンドになるのでは?新曲の出来も悪くないですし、これからの彼らの活躍に期待したいところ。現在活動休止中で次の活動はいつになるのかわかりませんが、次の活動が楽しみに感じるベスト盤でした。
評価:★★★★
Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
TWELVE
Mrs.GREEN APPLE
はじめてのMrs.GREEN APPLE
ENSEMBLE
Attitude
ほかに聴いたアルバム
機動戦士ガンダム 40th Anniversary Album ~BEYOND~
「機動戦士ガンダム」放送40周年を記念してリリースされた「ガンダム」へのトリビュートアルバム。「ガンダム」の主題歌・挿入歌を様々なミュージシャンがカバーするアルバムとなっています。SUZIGOが総合音楽プロデューサーということもあり、LUNA SEAをはじめ、GLIM SPANKY、水曜日のカンパネラのコムアイ、miwa、OAUなどかなり豪華なメンバーが参加しているのですが…SUGIZOメインということもあり、事実上、LUNA SEAのアルバムみたいな仕上がり。コムアイ参加の「水の星へ愛をこめて」も期待したのですが、名義はSUGIZO feat.コムアイということもあり、水カン色は皆無。まあ、LUNA SEAの抒情的な世界観や河村隆一の感情たっぷりのボーカルが妙に「ガンダム」の曲とマッチしている感はあり、LUNA SEAとの相性は悪くない感じ。そういう意味でLUNA SEAのファンにはお勧めしたいアルバムですが、そのほかのファンは過度な期待はできないかと。唯一、OAUの「HUMAN TOUCH」はOAUの世界にしっかりと引きずり込んだ感はありましたが。
評価:★★★★
サ上とロ吉と/サイプレス上野とロベルト吉野
サ上とロ吉のニューアルバムはタイトル通り、彼らが様々なミュージシャンとコラボした企画盤。ももクロのようなアイドルやヒブシスノマイクのキャラクターとまでコラボ。かなりバリエーションの広いコラボを繰り広げていますが、結果として、アイドルポップから南国風、音頭などなど、かなり様々な、いい意味で統一感のない楽曲が並んでいます。ポップで聴きやすく、いろいろと親和性のあるサ上とロ吉のラップだからこそ達成できた、そんなコラボアルバムでした。
評価:★★★★
サイプレス上野とロベルト吉野 過去の作品
WONDER WHEEL
YOKOHAMA LAUGHTER
サ上とロ吉のINMIX~non stop rental~
MUSIC EXPRES$
TIC TAC
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(紅)
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(白)
コンドル
大海賊
ドリーム銀河
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事
- 円熟味の増した傑作アルバム(2020.12.28)
- 自由度の高い音楽性(2020.12.27)
- いつもの彼女とは異なるサウンド(2020.12.26)
- Gotchの才が発揮されたソロ3枚目(2020.12.25)
- 今の時代を描いたミニアルバム(2020.12.22)
コメント