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2020年9月29日 (火)

ZEPPET STOREの魅力のつまった2枚

ここのサイトでも何度か取り上げたことのあるロックバンドZEPPET STORE。1989年に結成、インディーズでライブ活動を中心に活動をしていたところ、その音楽がX JAPANのhideの耳に入り、その音楽性にほれ込んだ彼によって、ZEPPET STOREを売り出すためにレーベル「LEMONed」を設立。その後、1999年にはアルバム「CLUTCH」がベスト10ヒットを記録するなど人気を獲得しましたが、2005年にその活動に一度、幕を下ろします。

その後、2011年に再結成。継続的に活動を続けて2019年には、ついに結成30周年を迎えました。今回紹介するアルバムはその時にライブ会場限定でリリースされた、過去作のリメイクアルバム。いままでは通販などで限定的にリリースされていましたが、このたび、全国CDショップなどでもリリース。遅ればせながら、その音源を聴くことが出来ました。

Title:REMOVED
Musician:ZEPPET STORE

まずこちらはアコースティックなサウンドを主軸にしつつ、彼らの最大の持ち味であるメロディーラインの良さを前面に押し出したアレンジとなっているリメイクアルバムです。もともと、そのメロディーラインの良さに定評のあった彼らだけに、まさにZEPPET STOREというバンドの魅力を最大限に発揮した1枚。わずか7曲入り30分強の内容ですが、それだけの短さで簡単に聴けるがゆえに、むしろ幅広い方にZEPPET STOREの入門盤としてもお勧めしたい作品になっています。

まずアルバムの冒頭を飾るのが、彼らの代表曲の1曲である1998年にリリースされたシングル曲「ROSE」。私もリアルタイムで聴いて彼らの魅力にはまった1曲であるのですが、年数を書いていて、もうそんなに昔の曲なのか・・・とあらためて驚きました。オリジナルに加えて、哀愁感ただようギターの音色が入るなど、よりメランコリックさが増したアレンジになっており、そのメロディーの良さが、より印象に残るアレンジに。さらに「もっともっと」「遠くまで」と最もZEPPET STOREが「売り出された」頃の代表曲も並んでいます。どちらもリメイクということでオリジナルよりもアコースティックなサウンドが前に出て、より落ち着いた感じのアレンジとなっています。比較的ブレイクを目指してリリースされた楽曲だったということもあり、原曲はちょっと大味な感も否めないのですが、今回のリメイクで、よりメロディーラインの良さが前に出た感も。特に「遠くまで」はオリジナルよりも良いのでは?と思うほどの出来栄えとなっています。

アコースティック主体のアレンジの中、「NOTHING」はギターのホワイトノイズが全面に押し出されており、彼らのシューゲイザー系からの影響が垣間見れるアレンジに。さらにラストは英語詞の「GOLDEN HILL」を持ってきて、洋楽テイストのより強い曲で締めくくり。わずか7曲の内容ながらも、ZEPPET STOREというバンドの持つ、様々な音楽性を感じられる構成となっており、そういう意味でも入門盤としても最適な1枚だと思います。あらためてメロディーメイカーとしての彼らの魅力を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

Title:TRANSFORMED
Musician:ZEPPET STORE

で、こちらは彼らの作品をアンビエントやポストロック、音響系といったジャンルで大胆にリアレンジしたアルバム。メロディーラインの良さを前に押し出した「REMOVED」に対して、こちらは彼らの曲をガラリと作り替えた感のある作品になっています。「ANOTHER STORY」はピアノやストリングスを入れつつ、ドリーミーな作品に仕上げており、「CROSS」はギターノイズを前面に押し出したシューゲイザー的な作品に。「ANGEL WILL COME」はピアノで静かなアンビエント風の作品に、と、かなり挑戦的にアレンジされた楽曲が並びます。

その後もホワイトノイズで埋め尽くされた音響系のアレンジをふされた「声」、ドリーミーなエレクトロアレンジの「CRACKED VELVET」、打ち込みとストリングスで爽やかなアレンジとなった「between the sheets」など、全7曲入りながらも、様々なアレンジがほどこされた曲が並び、彼らの強い意欲を感じさせるアルバムになっています。

ただ一方で、あくまでもメロディーラインの良さはアルバム全体から感じることが出来ます。特に「TIGHTROPE」などは比較的シンプルでメロディーの良さを生かしたようなアレンジになっており、このアルバムでも彼らのメロディーの良さを感じさせてくれますし、なによりも他の曲にしても土台であるメロディーラインがしっかりしているからこそ、大胆なアレンジが生かされてくるのでしょう。入門盤的な「REMOVED」に比べると、こちらはどちらかというとファンズアイテム的な要素も強いのですが、それでもやはりしっかりとZEPPET STOREの魅力を感じさせてくれるアルバムになっていました。

正直、ZEPPET STOREというバンドは、一時期それなりに人気を獲得したものの、結局、大ブレイクすることなく、一度は解散。再結成後も残念ながらさほど話題にならず今まで至っています。ただこの2枚のアルバムを聴くと、やはりなぜ彼らがここまで大きなブレイクが出来なかったのが不思議で・・・。是非、いまからでも彼らを聴いたことない方には、彼らの魅力に触れてほしい、そう感じさせる2枚のアルバム。特に、「REMOVED」から聴いたことない方はまずは聴いて欲しい。それだけ魅力的な2枚のアルバムでした。

評価:★★★★★

ZEPPET STORE 過去の作品
SHAPE5
SPICE
REVERB


ほかに聴いたアルバム

Fly Moon Die Soon/黒田卓也

2014年に日本人としてははじめてアメリカのブルーノートと契約し、メジャーデビューしたジャズトランぺッター、黒田卓也の新作。最近では「報道ステーション」のテーマ曲に参加し、そのトランペットの音色を聴かせてくれたり、MISIAとのコラボでも話題となりました。そんな彼の最新アルバムですが、ジャズをベースとしながらも、ソウルやファンクなどの要素も強い楽曲になっており、かなりアグレッシブなサウンドが楽しめる内容に。「Sweet Sticky Thing」のようなメロウな歌モノもあり、ポップスな観点からも聴きやすい内容になっており、いい意味で幅広い層が楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

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