« 原点回帰の新作 | トップページ | ジャニーズ系の新譜が2曲ランクイン »

2020年9月22日 (火)

徐々に個性を確立

Title:The Glow
Musician:DMA'S

ここ十年程度、このタイプのバンドは次々と出ていただけに、難なくコンスタントに3枚目までリリースしてきたことはちょっと驚きも感じられます。オーストラリアはシドニー出身の3人組バンドDMA'Sのニューアルバム。デビュー作「Hills End」で、明確なoasisのフォロワーとしてデビューし、大きな話題を呼んだバンドです。その節回しといい、ボーカルスタイルといい、あまりに「そのまんまoasis」といった感じの作品だっただけに、正直、大絶賛は出来なかったものの、oasisファンとしては素直に楽しめるアルバムになっていました。

そういうタイプのバンドは大抵、1枚目のアルバムは話題になるものの、2枚目以降はほぼ話題になることはなく、いつの間にか消えている…というのが世の常。DMA'Sもそんな筋道を辿っていくのか…そう思われたのですが、ただ実際は違いました。その後コンスタントに2枚目、そして3枚目となる本作もリリース。なんと本作では、イギリスのナショナルチャートで最高位4位を記録。本国への逆輸入に成功し、人気バンドへと躍進を遂げています。

おそらく彼らがこれだけ人気を確保した一番大きな理由は、2枚目3枚目と徐々にDMA'Sとしての個性を出してきたからではないでしょうか。1枚目はoasisっぽく、グルーヴィーなバンドサウンドを前に押し出したような曲が目立ちましたが、2枚目はあっさりとしたポップな曲調がメインに。そして3枚目になる本作も、バンドサウンド以上にポップなメロディーラインの魅力を前に押し出した作品が並びます。

タイトルチューン「The Glow」も疾走感のあるバンドサウンドに軽快なメロディーラインを聴かせる爽やかなポップチューンになっていますし、「Hello Girlfirend」もタイトルからも想像できそうな、ポップでキュートなメロが心地よいギターポップのナンバーに。特に今回のアルバムで聴いていて心地よかったのが「Round&Around」で、ポップでキュートなメロディーラインにコーラスラインを重ねるサウンドも心地よく、ほどよくノイジーなギターサウンドも非常に心地よいポップチューンに仕上がっています。

とにかく全体的にポップなメロディーが心地よい楽曲が並んでいます。もちろんoasisもその第一の魅力はポップなメロディーラインでしたが、彼らの場合は、ポップというよりもいい意味でのバブルガムポップ的な、キュートでインパクトのある、スウィートとも表現できそうなポップスが並びます。このoasisと彼らとの違いが良い意味でさらに際立ったのが今回のアルバムで、彼らの個性をしっかりとアルバムの中で表現できていた傑作になっていました。

ただ一方ではoasisをはじめとするブリットポップからの影響もしっかりと感じられます。もっとも顕著なのが1曲目の「Never Before」で、ノイジーでグルーヴィーなサウンドは、まさにoasis的。この曲に関してはねちっこい歌い方も、どこかリアム・ギャラガーからの影響を彷彿とさせます。アルバムの1曲目で、まずはブリットポップが好きなリスナー層をガッチリと抱え込む、そんな構成といった感じでしょうか。

また「Stragers」のようなメランコリックなメロディーラインをグルーヴィーなバンドサウンドにのせているこの楽曲も、ブリットポップからの影響を強く感じますし、リスナーによってはある種のノスタルジックな気持ちを掻き立てるようなポップスになっているかもしれません。ここで聴かせてくれるようなインパクトあるメロディーも彼らのメロディーメイカーとしての実力を感じさせます。ブリットポップのフォロワーという立ち位置とDMA'Sだけが持っている個性を上手く融合させた楽曲と言えるかもしれません。

oasisをはじめとするブリットポップからの影響をしっかりと残しつつ、一方ではDMA'Sとしての個性や実力をしっかり反映させることが出来た3枚目。徐々に人気が上がってきて、ついにはイギリス本国での人気を得ることにも成功した彼らでしたが、その理由はよくわかります。これだけしっかりとした魅力的なメロディーラインが書けるのであれば、今後、さらに彼らの人気は高まりそう。古き良きブリットポップの魅力を残しつつ、今後も彼らの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

DMA'S 過去の作品
Hills End
FOR NOW


ほかに聴いたアルバム

FIXTAPE/Popcaan

ジャマイカ出身のダンスホールシンガーによる新作。ちょっとギャングスタっぽい感じもするいかにもなジャケット写真になっていますが、作品自体はメランコリックなメロディーラインでテンポよく聴かせるレゲエがメイン。楽曲によっては爽快感あるメロやサウンドを聴かせる曲もあり、全体的にはいい意味での聴きやすさもあるレゲエチューンが展開されます。心地よくレゲエを楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

|

« 原点回帰の新作 | トップページ | ジャニーズ系の新譜が2曲ランクイン »

アルバムレビュー(洋楽)2020年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 原点回帰の新作 | トップページ | ジャニーズ系の新譜が2曲ランクイン »