« シンプルゆえに味わい深い傑作 | トップページ | Arcaのパーソナリティーが反映 »

2020年9月13日 (日)

マンウィズの良さと悪さ

Title:MAN WITH A "BEST"MISSION
Musician:MAN WITH A MISSION

ご存じ、頭はオオカミ、身体は人間という「究極の生命体」(という設定の)5人組から成るバンド、MAN WITH A MISSION。別名「オオカミバンド」としても知られる彼らたちも今年、結成10周年。比較的、結成後は早いタイミングでブレイクしたため、まだ10周年なんか…という感覚もないこともないんですが、今年は、その結成10周年を記念して、様々なアルバムがリリースされました。いままで、Bサイドベストとリミックス集がリリースされましたが、本作はその第3弾となるアルバム。全17曲入り(配信では全20曲入り)となるベストアルバムがリリースとなりました。

MAN WITH A MISSIONというと、デビュー直後から話題になっていたバンドのため、個人的にも比較的、デビュー直後のアルバムからチェックしてきたバンドではあります。ただ、彼らの曲の印象というと、曲単位ではカッコいい曲が少なくないものの、アルバム単位では悪くはないもののいまひとつ絶賛し切れない…そんな作品が続いていたような印象を受けます。具体的に言うと、全英語詞の曲については洋楽テイストも強くカッコよさを感じるものの、日本語詞の曲はどこか悪い意味でJ-POP的なベタさを感じて、いまひとつ面白味に欠ける…そんな印象を受けていました。

いままで漠然とそういう印象を抱えていた彼らでしたが、今回のベスト盤で、彼らの代表曲を網羅的に聴いて、そう感じてしまう理由がはっきりしたように思います。端的に言ってしまうとMAN WITH A MISSIONの楽曲はサウンドは非常にカッコいいのに、メロディーラインが良くも悪くもわかりやすいJ-POP的だから、という理由が大きいのではないでしょうか。

例えばサウンド面で言えば、「Rock Kingdom」などはゲストで参加した布袋寅泰のギターリフ主導のサウンドが非常にカッコいい楽曲。「Get Off of My Way」もファンキーなリズムとラップがカッコいいミクスチャーロックナンバーですし、「Hey Now」も疾走感あってスペーシーなエレクトロサウンドが、どこかBoom Boom Satellitesを彷彿とさせつつ、非常にカッコいいエレクトロロックに仕上がっています。このように今回のベスト盤にも非常にカッコいいサウンドを聴かせてくれる楽曲が並んでいます。

ただ一方で、例えば「higher」などもダイナミックなロックチューンでありつつ、メロディーラインは良くも悪くもわかりやすいJ-POP的なメロディーラインがインパクトに。「My Hero」もサウンド的にはへヴィーに聴かせるもののメロディーは哀愁感ありある種キャッチーな、売れ線のJ-POP的なフレーズと言えるでしょう。このようにサウンドはカッコいいのですが、メロディーラインが悪い意味で「ベタ」と感じさせるような曲が目立ちます。

もっともサウンドの面でもミクスチャーロックにしろエレクトロサウンドにしろ、決して目新しいものではなく、比較的よくありがちな「王道」なサウンドであり、見方によっては「ベタ」と捉えられるようなもの。そのため、ある意味、ベタなもの同士でメロディーラインとの相性もよく、それが彼らが比較的早い段階でブレイクした理由のようにも感じます。ただ、その「ベタさ」が、「耳馴染みやすい」という方向にころぶのか、それとも「よくありがちで平凡」という方向にころぶのかによって印象が大きく変わるように感じます。実際、英語詞の曲に関しては、洋楽テイストが強く出た結果、J-POP的な平凡な印象が薄れ「耳馴染みやすい」という利点がより強く出た一方、日本語詞の曲に関しては「よくありがちで平凡」という印象が強く出てしまった…それが彼らの曲が、曲単位ではカッコいいのにアルバム単位では今ひとつと感じてしまった大きな要因のようにも感じました。

今回のようなベスト盤であれば、彼らの曲の中でも特に優れた曲を並べていることもあり、カッコイイという印象が強く出た内容になっており、最後まで「平凡」という印象をあまり受けることなく、彼らのカッコよさだけを十分に感じるアルバムに仕上がっていました。もっとも、このベタさは「わかりやすい」という意味で、彼らの魅力の一つとも言えるわけで、必ずしも否定できる要素ではないと思うのですが…今度、彼らがどのように展開していくのか、10周年を迎えベスト盤でひとつの区切りを迎えた彼らの今後に注目しましょう。

評価:★★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire
Out of Control(MAN WITH A MISSION x Zebrahead)
Dead End in Tokyo European Edition
Chasing the Horizon
MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION
MAN WITH A "REMIX" MISSION


ほかに聴いたアルバム

立ち上がるために人は転ぶ/GAKU-MC

ここ最近、人生の応援歌的な曲が多いGAKU-MCですが、こういうアルバムタイトルを選ぶあたり、行き着くところまで行きついてしまった感もあります。タイトルだけで拒否感を抱く人も少なくないでしょうね。個人的にも若干、懸念をしながら聴き始めました。内容はHIP HOPというよりも爽やかなポップがメインという感じ。まさに人生の応援歌的な曲もあるのですが、さすがにそれなりに年齢を重ねている彼だけに、ただ不必要に頑張れというだけのような、一昔前の「青春パンク」のような露骨かつ単純な歌詞はありませんでしたが…ただ、あまりに漂白されたような歌詞に、鼻白んでしまうのは、ここ最近の彼の曲と同じ。一応アルバム毎に聴いてきたけど、そろそろ聴き続けるのは辛いかなぁ…。

評価:★★★

GAKU-MC 過去の作品
世界が明日も続くなら
ついてない1日の終わりに
Rappuccino

Tragicomedy/SHE'S

4枚目のフルアルバムである本作がいきなりベスト10ヒットを記録した4人組ロックバンド。いままでノーチェックだったのですが、ピアノロックバンドということで、ピアノロックが好きなこともありはじめてチェックしてみたのですが…率直に言うと、期待していたほどおもしろくありませんでした。確かにピアノの音色が主軸となっているサウンドではあるのですが、これといって聴かせるようなピアノのフレーズもなく、ポップで聴きやすいメロディーとはいえ、メロは平凡。悪くはないのですが、特段、これといって良さも感じられず。悪くはなかったので、次の作品も聴いてみてもいいかもしれないですが…うーん。

評価:★★★

|

« シンプルゆえに味わい深い傑作 | トップページ | Arcaのパーソナリティーが反映 »

アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« シンプルゆえに味わい深い傑作 | トップページ | Arcaのパーソナリティーが反映 »