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2020年9月

2020年9月30日 (水)

根強く1位返り咲き

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事返り咲きで通算6度目の1位獲得です。

今週の1位はYOASOBI「夜に駆ける」。先週2位からワンランクアップで、2週ぶりの1位獲得。通算6度目の1位と、圧倒的な強さを見せつけています。You Tube再生回数は12週連続の1位、ストリーミング数も先週から変わらず2位をキープ。さらに今週、ダウンロード数が6位から1位に一気にランクアップしています。

2位にはV6「It's my life」が初登場でランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ラジオオンエア数40位、Twitterつぶやき数で9位を獲得。おなじみテレビ朝日系ドラマ「特捜9 Season3」主題歌。オリコンでは初動売上10万6千枚で1位初登場。前作「ある日願いが叶ったんだ」の9万4千枚(1位)からアップしています。

3位はBTS「Dynamite」が先週から変わらず3位をキープ。ストリーミング数は1位、You Tube再生回数2位は先週から変わらず。6週目のベスト10入りとなっています。

続いて4位以下の初登場曲です。9位にスターダストプロモーション所属のアイドル的人気を博する「ダンスロックバンド」DISH//「猫」が先週の15位からランクアップ。なんとランクイン22週目にして初のベスト10ヒットを記録しています。もともと2017年に、今をときめくあいみょんがDISH//に提供した楽曲。今年3月に、ミュージシャンの一発録りパフォーマンスを収録して話題のYou Tubeチャンネル「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンスが話題となり、徐々に人気を伸ばし、今週、You Tube再生回数6位のほか、ダウンロード数及びストリーミング数で10位を獲得し、見事ベスト10ヒットを記録しています。ちなみに、話題となった「THE FIRST TAKE」のヴァージョンも今週17位にランクインしており、両者合わせるともっと上位に食い込んできそう。ただ、You Tubeチャンネルで話題となった「THE FIRST TAKE」のヴァージョンはなぜかYou Tube再生回数が圏外。ここらへん、以前からYou Tube再生回数の集計方法に疑問を抱いていたのですが・・・なぜ?

さらにベスト10返り咲き組も1曲。LiSA「紅蓮華」が先週の11位から8位にアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。通算39週目のベスト10ヒットで、これで4度目のベスト10返り咲き。

今週の4位以下の初登場曲はこの1曲のみ。残りはロングヒット曲が並んでいます。

まず4位はNiziiU「Make you happy」。13週連続のベスト10入り。先週の5位からワンランクアップ。You Tube再生回数が先週の3位から変わらず、ストリーミング数も4位から3位にアップ。一方ダウンロード数は4位から5位にダウンし、総合4位という結果となっています。

5位にはあいみょん「裸の心」がこちらは4位からワンランクダウン。16週連続、通算17週目のベスト10入り。ダウンロード数、ストリーミング数共に3位から4位にダウン。またYou Tube再生回数も77位までダウンしています。

瑛人「香水」は7位から6位にワンランクアップ。22週連続のベスト10入り。You Tube再生回数は4位から5位にダウンしたものの、ストリーミング数は6位をキープ。ダウンロード数も7位から6位にアップ。さらにカラオケ歌唱回数は今週で11週連続の1位となっています。

7位は米津玄師「感電」が先週の8位からワンランクアップし、12週連続のベスト10入り。ダウンロード数は11位にダウンしましたが、ストリーミング数は5位をキープ。You Tube再生回数もここに来て6位から4位にアップしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年9月29日 (火)

ZEPPET STOREの魅力のつまった2枚

ここのサイトでも何度か取り上げたことのあるロックバンドZEPPET STORE。1989年に結成、インディーズでライブ活動を中心に活動をしていたところ、その音楽がX JAPANのhideの耳に入り、その音楽性にほれ込んだ彼によって、ZEPPET STOREを売り出すためにレーベル「LEMONed」を設立。その後、1999年にはアルバム「CLUTCH」がベスト10ヒットを記録するなど人気を獲得しましたが、2005年にその活動に一度、幕を下ろします。

その後、2011年に再結成。継続的に活動を続けて2019年には、ついに結成30周年を迎えました。今回紹介するアルバムはその時にライブ会場限定でリリースされた、過去作のリメイクアルバム。いままでは通販などで限定的にリリースされていましたが、このたび、全国CDショップなどでもリリース。遅ればせながら、その音源を聴くことが出来ました。

Title:REMOVED
Musician:ZEPPET STORE

まずこちらはアコースティックなサウンドを主軸にしつつ、彼らの最大の持ち味であるメロディーラインの良さを前面に押し出したアレンジとなっているリメイクアルバムです。もともと、そのメロディーラインの良さに定評のあった彼らだけに、まさにZEPPET STOREというバンドの魅力を最大限に発揮した1枚。わずか7曲入り30分強の内容ですが、それだけの短さで簡単に聴けるがゆえに、むしろ幅広い方にZEPPET STOREの入門盤としてもお勧めしたい作品になっています。

まずアルバムの冒頭を飾るのが、彼らの代表曲の1曲である1998年にリリースされたシングル曲「ROSE」。私もリアルタイムで聴いて彼らの魅力にはまった1曲であるのですが、年数を書いていて、もうそんなに昔の曲なのか・・・とあらためて驚きました。オリジナルに加えて、哀愁感ただようギターの音色が入るなど、よりメランコリックさが増したアレンジになっており、そのメロディーの良さが、より印象に残るアレンジに。さらに「もっともっと」「遠くまで」と最もZEPPET STOREが「売り出された」頃の代表曲も並んでいます。どちらもリメイクということでオリジナルよりもアコースティックなサウンドが前に出て、より落ち着いた感じのアレンジとなっています。比較的ブレイクを目指してリリースされた楽曲だったということもあり、原曲はちょっと大味な感も否めないのですが、今回のリメイクで、よりメロディーラインの良さが前に出た感も。特に「遠くまで」はオリジナルよりも良いのでは?と思うほどの出来栄えとなっています。

アコースティック主体のアレンジの中、「NOTHING」はギターのホワイトノイズが全面に押し出されており、彼らのシューゲイザー系からの影響が垣間見れるアレンジに。さらにラストは英語詞の「GOLDEN HILL」を持ってきて、洋楽テイストのより強い曲で締めくくり。わずか7曲の内容ながらも、ZEPPET STOREというバンドの持つ、様々な音楽性を感じられる構成となっており、そういう意味でも入門盤としても最適な1枚だと思います。あらためてメロディーメイカーとしての彼らの魅力を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

Title:TRANSFORMED
Musician:ZEPPET STORE

で、こちらは彼らの作品をアンビエントやポストロック、音響系といったジャンルで大胆にリアレンジしたアルバム。メロディーラインの良さを前に押し出した「REMOVED」に対して、こちらは彼らの曲をガラリと作り替えた感のある作品になっています。「ANOTHER STORY」はピアノやストリングスを入れつつ、ドリーミーな作品に仕上げており、「CROSS」はギターノイズを前面に押し出したシューゲイザー的な作品に。「ANGEL WILL COME」はピアノで静かなアンビエント風の作品に、と、かなり挑戦的にアレンジされた楽曲が並びます。

その後もホワイトノイズで埋め尽くされた音響系のアレンジをふされた「声」、ドリーミーなエレクトロアレンジの「CRACKED VELVET」、打ち込みとストリングスで爽やかなアレンジとなった「between the sheets」など、全7曲入りながらも、様々なアレンジがほどこされた曲が並び、彼らの強い意欲を感じさせるアルバムになっています。

ただ一方で、あくまでもメロディーラインの良さはアルバム全体から感じることが出来ます。特に「TIGHTROPE」などは比較的シンプルでメロディーの良さを生かしたようなアレンジになっており、このアルバムでも彼らのメロディーの良さを感じさせてくれますし、なによりも他の曲にしても土台であるメロディーラインがしっかりしているからこそ、大胆なアレンジが生かされてくるのでしょう。入門盤的な「REMOVED」に比べると、こちらはどちらかというとファンズアイテム的な要素も強いのですが、それでもやはりしっかりとZEPPET STOREの魅力を感じさせてくれるアルバムになっていました。

正直、ZEPPET STOREというバンドは、一時期それなりに人気を獲得したものの、結局、大ブレイクすることなく、一度は解散。再結成後も残念ながらさほど話題にならず今まで至っています。ただこの2枚のアルバムを聴くと、やはりなぜ彼らがここまで大きなブレイクが出来なかったのが不思議で・・・。是非、いまからでも彼らを聴いたことない方には、彼らの魅力に触れてほしい、そう感じさせる2枚のアルバム。特に、「REMOVED」から聴いたことない方はまずは聴いて欲しい。それだけ魅力的な2枚のアルバムでした。

評価:★★★★★

ZEPPET STORE 過去の作品
SHAPE5
SPICE
REVERB


ほかに聴いたアルバム

Fly Moon Die Soon/黒田卓也

2014年に日本人としてははじめてアメリカのブルーノートと契約し、メジャーデビューしたジャズトランぺッター、黒田卓也の新作。最近では「報道ステーション」のテーマ曲に参加し、そのトランペットの音色を聴かせてくれたり、MISIAとのコラボでも話題となりました。そんな彼の最新アルバムですが、ジャズをベースとしながらも、ソウルやファンクなどの要素も強い楽曲になっており、かなりアグレッシブなサウンドが楽しめる内容に。「Sweet Sticky Thing」のようなメロウな歌モノもあり、ポップスな観点からも聴きやすい内容になっており、いい意味で幅広い層が楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

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2020年9月28日 (月)

The Killersはなぜ売れないのか?

Title:Imploding the Mirage
Musician:The Killers

「The Killersはなぜ日本では売れないのか?」。The Killersを紹介する場合、よくこのような問いかけからスタートする紹介文をお目にかかります。アメリカはラスベガス出身の4人組ロックバンドThe Killersの、本作が6枚目となるニューアルバム。アメリカ本国よりもイギリスでブレイクし、今やイギリスで一番人気のあるロックバンドとなった彼ら。本作を含めてイギリスのナショナルチャートでは6作連続1位獲得という偉業を達成しています。一方ではアメリカでも十分な人気を確保しており、前作「Wonderful Wonderful」ではビルボードチャート1位を獲得。本作も8位にランクインしており、ほかにも各国のチャートで上位にランクイン。まさに世界規模の人気バンドとなっています。

彼らは以前から、スタジアムバンド的なスケール感と、日本人にもなじみやすくわかりやすいポップなメロを兼ね備えており、世界各国で人気を獲得するのも納得できる一方で、確かに日本でいまひとつブレイクしきれないのを不思議に考えるのも無理はありません。以前のアルバムはミディアムテンポのナンバーがメインだったのですが、今回のアルバムではアップテンポの曲もグッと増えて、いい意味でメロディーラインのフックも増した感もあります。アルバムの冒頭を飾る「My Own Soul's Warning」などはまさにそんな彼らの良さが前に出ているナンバー。わかりやすいポップなメロやシンセなどを使いニューウェーブの影響を感じつつ、ほどよく分厚いギターサウンドは洋楽リスナーでなくても素直に楽しめそう。続く「Blowback」「Dying Breed」などもおなじく、ポップなメロをシンセの入った分厚くスケール感あるサウンドで聴かせる楽曲。ポップなメロやスケール感は、COLDPLAYや、もっと言えばU2に通じるような部分も感じます。

スケール感あるポップな作品が並ぶ前半と比べて、バリエーションあるサウンドを聴かせる後半も魅力的。「Fire In Bone」では、より打ち込みのサウンドを前に出してきて、彼らの特徴であるニューウェーヴからの影響をより顕著に出してきています。「My God」は女性コーラスを入れてスケール感を出しているほか、後半では女性ボーカリストのWeyes Bloodがゲストとして参加。清涼感ある美しい歌声が楽曲の幅を持たしています。ラストのタイトルチューン「Imploding the Mirage」も疾走感あるシンセポップとなっており、80年代らしさを感じるナンバーで、ある種の懐かしさも感じる楽曲になっていました。

いままでも彼らの作品を何作か聴いてきましたが、そんな中でもさらにポップなメロディーラインのインパクトが増し、大物然としたスケール感がいい意味で増してきた本作。ある種、世界的な人気バンドとしての余裕すら感じさせます。ただ一方では日本でいまひとつ人気が出ていないとしたら、その理由もわからなくはありません。まずひとつは、あまりにも王道を行くバンドすぎて、洋楽を積極的に聴くような音楽ファンに対する訴求力が低いという点。RADIOHEADみたいな音楽ファンをくすぐるような実験的な音楽性もなければ、かといって一昔前のThe StrokesやWhite Stripesが出てきた時のような、「ロックンロールリバイバル」といったロケノンが喜んで飛びつきそうな物語性もありません。

一方でポップなメロディーラインという面では、特にいままでのアルバムではわかりやすいフックの効いたメロディーはあまりありませんでした。そういう意味でも普段、洋楽を聴かないようなリスナー層への訴求力も若干薄いのも事実。今回のアルバムではこのメロディーラインのインパクトはグッと増しましたが、かといって一度聴けば口ずさんでしまうような、日本人にとってわかりやすいメロディーや「サビ」は見受けられません。彼らの魅力はスケール感ある王道のスタジアムバンドといった感じなのですが、日本人にとっては、あえて彼らを選んで聴くという選択肢はちょっと薄いようにも感じてしまいます。

よくよく考えれば、かのCOLDPLAYも、デビュー作「Parachutes」はイギリスで大ヒットして一躍ブレイクしたものの、日本ではほとんど話題にならず、世界中でブレイクした2作目「A Rush of Blood to The Head」も日本での反応はいまひとつ。本格的にブレイクしたのは3作目の「X&Y」からとなっています。どうもこの手の王道路線のメロディーを聴かせるロックバンドは、日本人受けしそうなわかりやすいメロディーを書いていても日本人の反応はいまひとつのような感があります(ロックバンドに対して過度に「物語性」を求めるROCKIN'ONの弊害のようにも思えますが)。ただ、彼らも6枚目となり世界中でブレイクし、メロのわかりやすさもグッと増した感があります。そういう意味でも日本でもそろそろ本格的にブレイクしそうな予感も。個人的にもいままで聴いてきた彼らのアルバムの中で一番の出来だったようにも思います。彼らがフジやサマソニのヘッドライナーになる日も近いかも??

評価:★★★★★

The Killers 過去の作品
Day&Age
Wonderful Wonderful


ほかに聴いたアルバム

Down In The Weeds,Where The World Once Was/Bright Eyes

アメリカのインディーロックバンド、Bright Eyesのニューアルバム。フォークやカントリーからの影響を受けたシンプルなサウンドと美しいメロディーラインに定評のある彼らですが、本作はピアノやストリングスを取り入れ、スケール感の増したサウンドが特徴的。ただ、メランコリックに聴かせるメロディーラインは非常に魅力的で、スケール感の増したサウンドともピッタリとマッチし、非常に魅力的なアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

Lianne La Havas/Lianne La Havas

イギリスのシンガーソングライター、Lianne La Havasによる約5年ぶりとなるサードアルバム。しんみりムーディーな作風に、スモーキーな雰囲気のボーカルが魅力的。作風的には昔ながらのジャジーなポップスとなるのですが、重低音のリズムを強調したサウンドメイキングは今風な印象も。特にしんみりと感情を込めたボーカルが魅力的な1枚でした。

評価:★★★★★

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2020年9月27日 (日)

音楽の幅が広がる素敵なディスクガイド

今日は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回は、主にラジオのDJとしても活躍。音楽に対しても造詣が深く、様々な音楽関連の書籍の著者としても知られるピーター・バラカンの新たな書籍「Taking Stock-ぼくがどうしても手放せない21世紀の愛聴盤」です。

以前から、彼の著書は比較的多く読んできており、ソウル入門書の名著として名高い「魂(ソウル)のゆくえ」や、「ピーター・バラカンのわが青春のサウンドトラック」「ぼくが愛するロック名盤240」などを読んできました。ただ、これらの著書で彼の書籍を読んだことがある方はご存じかと思いますが、彼が紹介する「名盤」は、正直言って、一般的に日本で売られているロックの入門書的な名盤集に比べると、非常に癖の強いものになっています。

それは彼が紹介する「名盤」が、非常に彼の趣味趣向に寄り添ったものであることが大きな理由なのですが、さらに2つの大きな理由があって、それは(1)いかにもロック然としたハードロックを好んでおらず、一方でソウル、ブルース、カントリーといったルーツ志向の音楽、アフリカ音楽をはじめとしたワールドミュージックに強い興味関心を示している点。(2)生まれも育ちもイギリスであるため、日本における「ロック史観」に染まっていない点があげられます。そのため、一般的に「名盤」とされるようなアルバムがほとんど無視されていたり、一方では一般的にはあまり知られていなかったり、取り上げられなかったりするアルバムを大きく評価したりしています。

今回もそんな彼がセレクトしたディスクガイドなのですが、タイトル通り、21世紀以降のアルバムであり、かつ「愛聴盤」という選択方針の通り、基本的に一般的な「名盤」とされるアルバムではなく、あくまでも彼が愛してやまないアルバムが紹介されています。特に現在69歳となった彼の紹介している愛聴盤にはロックは皆無。ソウルやブルース、カントリー、そして大きな割合を占めるのがワールドミュージック、特にアフリカ音楽の紹介です。一般的にロックとカテゴライズされるようなアルバムも多く紹介されていますが、その多くはルーツ志向の強いロックを奏でるミュージシャンたちのアルバムとなっています。そのため、氏の嗜好を知らない人が、単純にここ20年のディスクガイドとしてこの本を手に取ると、少々戸惑ってしまうのではないでしょうか。

ただ、一方で一般的に日本でよく紹介されるようなロックや、あるいはRockin'Onあたりでよく紹介されるアルバムにちょっと食傷気味になってきたとしたら、音楽の幅を広げるのにこれだけ最適なガイドブックはないように思われます。おそらく一般的な日本のディスクガイドにはなかなか取り上げられることのない、しかし非常に優れたソウルやブラックミュージック、ルーツ志向のロック、ワールドミュージックのアルバムたちが列挙されています。おそらくここのアルバムを聴くことによって広がっていくであろう音楽の嗜好の幅を想像しながらワクワクしながらページをめくっていくのではないでしょうか。

しかし、ピーター・バラカンが優れているのは、これだけ売れ線とは異なるアルバムを取り上げつつも、そこにほとんどスノッブ臭を感じない点のように思われます。それは、彼が取り上げるアルバムが決して「知る人ぞ知る」的なマニアックなアルバムを取り上げて知識を見せびらかしているといった感はなく、むしろジャンルによっては意外と「ベタ」なアルバムを取り上げているからはないでしょうか。例えばアフリカ音楽でいえばTinariwenやスタッフ・ベンダ・ビリリといった、アフリカ音楽を聴き始めると、まず最初に出会いそうな有名処もきちんと紹介していたり、ソウル志向のミュージシャンとしてはAmy WhinehouseやMichael Kiwanukaといった、日本でも話題となったミュージシャンたちもきちんと取り上げています。結果として、ベテラン評論家でよくありがちな昔のミュージシャンたちを必要以上に絶賛し、逆に最近のミュージシャンたちは無視、といったことがなく、ベテランミュージシャンたちがやはり多いものの、一方でしっかり今のミュージシャンたちも抑えている点にバランスの良さも感じます。

また、彼の文章の語り口も非常に穏やかかつ平易な表現に終始しており、これも日本の評論家にありがちな妙に理屈っぽかったり、変な自分の思想性を反映させようとした文書はほとんどありません。音楽との出会いについては自分の経験も絡めて語っているものの、こちらについても変に感情論に走ることなく、すんなりと受け入れられる語り口がほとんど。そういう穏やかな語り口もまた、スノッブ臭を感じせない大きな要因でしょう。

最後には「The Big List」と題して彼の生涯の愛聴盤も紹介。さらになんと彼は2005年にアメリカのローリング・ストーン誌で企画した「史上最高のアルバム500枚」にも評者として参加し、アルバムに投票していたようで、そのリストも公表されています。このリストもなかなか興味深く読みつつ、聴いてみたくなるようなアルバムもチラホラ。ちょっと意外なアルバムもあったりして、個人的にはU2の「The Joshua Tree」が入っていたのは、ちょっと意外にも感じました。

正直言うと、基本カラーとはいえ、紹介されているアルバムは52枚のみで、全141ページというボリューム。これで1,700円というのは若干高く感じてしまいます。また、上にも書いた通り、紹介されているアルバムは彼の嗜好に沿ったものであるため、「入門書」的にはあまり向かず、少々人を選ぶ部分も否定はできません。ただ、このリストに紹介されているアルバムは非常に魅力的なのは間違いなく、私も興味を持ったアルバムから少しずつ聴いてみたいなぁ・・・そう強く感じさせるリストでした。最近、正直あまりおもしろいアルバムに出会えないなぁ・・・なんて思っちゃった人や、ロックに限らずいろいろな音楽を聴いてみたいな、と思っているような方は是非、手に取ってほしい一冊だと思います。きっと、新たな音楽との素敵な出会いが待っているはず。

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2020年9月26日 (土)

心地よいポップなメロが気持ちよい

Title:Songs For The General Public
Musician:The Lemon Twigs

心地よいメロディーラインのポップスというのは、聴いていて本当にウキウキしてきます。なんといっても難しいこと抜きに楽しめますし、ちょっと試聴する程度のつもりでも、一度プレイボタンを押したら最後、ついつい時間も忘れて聴き進めてしまいます。そして、今回紹介するのはまさにそんなアルバム。ブライアン・ダダリオ、マイケル・ダダリオという兄弟を中心として結成された4人組ロックバンド、The Lemon Twigs。2016年にリリースされたデビューアルバム「Do Hollywood」も大きな話題となり、その後、フジロックやサマソニにも来日を果たしている彼ら。その3枚目となるニューアルバムがリリースされました。

まずいかにも80年代のロックバンドを彷彿とさせるジャケット写真が目を惹く彼らですが、サウンド的にもまさに80年代的な軽快なポップチューンが並んでいます。1曲目「Hell on Wheels」も、ちょっとしゃがれ気味の声がいかにもロックスター然としつつ、ギターのアレンジといい、ストリングスやコーラスラインを入れてほどよく分厚くしたサウンドも80年代的。「Only a Fool」のフュージョンっぽいシンセのサウンドなど、まさに80年代そのままといった印象を受けます。

ただ、そんな80年代的なサウンドをバックにしつつ、一番魅力的なのはなんといっても冒頭に書いた通りの、ワクワクするようなメロディーラインでしょう。特に個人的に壺だったのが「No One Holds You(Closer Than The One You Haven't Met)」。冒頭のギターの入り方や軽快なピアノ、さらには微妙に半音で展開されるメロディーラインや絶妙に入るシャウトなど、完全にBilly Joel風。もう聴いていて本当に楽しくなってくる1曲。ほかにも「Live in Favor of Tomorrow」も非常に楽しいポップチューンになっていますし、「Fight」もシンセの音も軽快なポップチューン。なんとなくサウンドやメロは初期TM NETWORKを彷彿してしまう部分もあったりして…。

80年代的といってもサウンドは、もうちょっと時代を下った80年代後半から90年代のような印象。シンセなども用いてほどよく分厚くなったサウンドとポップなメロディーラインも大きな魅力なのですが、個人的には80年代後半から90年代前半あたりのJ-POPとほどよくリンクしそうなサウンドに感じました。具体的にはその頃のEPIC系のミュージシャンの匂いを感じます。上にもTM NETWORKの名前を出しましたが、初期の岡村靖幸、渡辺美里、バービーボーイズ、大江千里、小比類巻かほる、松岡英明...etc。ここらへんの名前にピンと来るようなアラフォー、アラフィフ世代には、おそらく間違いなく彼らのサウンド、メロディーラインは壺に入るのではないでしょうか。

また、加えて彼らの大きな魅力に感じたのが、ポップなメロディーラインを前に押し出しつつ、実は様々な音楽性も感じさせる部分ではないでしょうか。例えば「Hog」などはポップなメロディーにちょっと怪しげなサウンドが重なり、ゴシックロック、ドリームポップ的な要素も感じますし、「Leather Together」もポップなメロが流れつつ、ロックンロールなギターサウンドが前に出ている楽曲に。ラストを飾る「Ashamed」もラストはギターノイズが前に押し出され、サイケロック的な様相を見せています。単なる80年代的なポップという枠組みを超えた、実はロックバンド然とした部分も彼らの大きな魅力に感じました。

個人的にはかなり壺に入りまくりの非常に気持ちのよい傑作アルバム。私のようなアラフォー、アラフィフ世代にはかなり壺をついたサウンドだと思いますし、なによりもポップス好きにはたまらない1枚ではないでしょうか。ただちょっと気になるのは、バンドの中心となっているのが兄弟ということ。ジザメリのリード兄弟、oasisのギャラガー兄弟のように、兄弟が中心となるバンドは少なくありませんが、仲たがいしてしまうケースが少なくありません。彼らは末永く活動を続けてくれるとうれしいのですが…。ただ、本当にメロディーセンスのあるバンドで、聴いていて時間を忘れさせてくれるようなそんなアルバムでした。非常に素直に気持ちの良さを感じさせる傑作です。

評価:★★★★★

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2020年9月25日 (金)

大人の風格漂う

Title:Unfollow The Rules
Musician:Rufus Wainwright

アメリカのシンガーソングライター、ルーファス・ウェインライトのニューアルバム。直近作「Take All My Loves: 9 Shakespeare Sonnets」はシェイクスピアの詩集を基とした企画盤、前々作「Prima Donna」はオペラのアルバムだったので、純粋なポップスのニューアルバムとしては2012年の「Out of the Game」より、約8年ぶりの新作となったそうです。

その渋い雰囲気のジャケットの風貌といい、直近作がシェイクスピアだったりオペラだったりと、非常に小難しい感じの企画モノだったりと、イメージとしては「通好み」のミュージシャン、ちょっと手を出しがたい感も否定はできません。実際、今回のアルバムも、全12曲入りながら、4曲毎に区切られた「全3幕」という構成のアルバムになっていて、その凝った感じのアルバムの構成も、良くも悪くも、手を出しがたい感じに拍車をかけています。

その三幕からなる内容ですが、ブルージーな雰囲気を醸し出しつつ、重厚なコーラスラインが心地よい「Trouble In Paradise」からはじまり、アコギとストリングスで伸びやかに聴かせる「Damsel In Distress」、感情のこもったボーカルでゆっくりと聴かせるタイトルチューンの「Unfollow The Rules」など、比較的スケール感のあるサウンドでメロディアスに聴かせる曲が並びます。

第2幕はピアノをバックにメロディアスなポップチューンを聴かせる「Romantical Man」やカントリー調の「Peaceful Afternoon」などメロディーの人懐っこさ、キュートさにまず耳が行くようなインパクトあるナンバーが並びます。そして第3幕は「Early Morning Madness」「Devils And Angels(Hatred)」などムーディーなピアノ曲がメイン。こちらは「大人の歌手」といったイメージのあるスタンダードポップ調の楽曲が並んでいます。

そんな訳で、3幕で構成された全12曲の楽曲。確かに第3幕目のムーディーなスタンダードポップ調の曲のようにジャケットの風貌と同様の「大人の雰囲気」が漂う楽曲も少なくありません。が、ただ、全体的にアルバムを聴き始める前に予感していたような小難しさは皆無。特に序盤から中盤にかけては、非常に人なつっこさを感じるポップなメロを聴かせてくれます。

全体的には確かに派手でインパクトのあるメロディーといった感じではありませんし、いわばしっかり聴かせる「大人のポップス」を聴かせてくれるタイプのシンガーソングライターであることは間違いありません。ただ、どの曲も基本的にはわかりやすいメロディーラインが流れるポップな楽曲ばかりという点は間違いありませんし、そういう意味での小難しさは皆無。非常に良質なポップチューンを私たちに届けてくれる傑作アルバムに仕上がっていました。

まさに「大人のポップス」を探している世代にはお勧めしたい1枚ですし、また、そうでなくても、ポップス好きならば気に入りそうな、気持ちよくポップな楽曲を楽しめる作品。お勧めです。

評価:★★★★★

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2020年9月24日 (木)

あみょん、米津が2位3位。1位は・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週、あいみょん「おいしいパスタがあると聞いて」が初登場で2位、以前から上位にランクインを続けている米津玄師「STRAY SHEEP」が3位と、男女それぞれ人気のシンガーソングライターの曲が並びました。今週も、この順位は変わらず。2位あいみょん、3位米津玄師という結果に。ダウンロード数ではあいみょんが1位、PCによるCD読取数では米津玄師が1位と、それぞれ強さを発揮しています。

そんな2人のシンガーソングライターを下して1位を獲得したのは韓国の人気女性アイドルグループTWICE。彼らのベストアルバム第3弾「#TWICE3」がCD販売数1位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数7位で総合1位に輝きました。オリコンでも初動売上10万9千枚で1位初登場。直近作「&TWICE」の12万4千枚(1位)からダウン。ベスト盤としての前作「#TWICE」の20万枚(1位)からもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位には森口博子「GUNDAM SONG COVERS 2」がランクイン。「機動戦士ガンダムF91」のテーマ曲として歌われた「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」のヒットで、ガンダムとはかかわりの深い彼女。昨年8月、ガンダムの主題歌のみを集めたカバーアルバム「GUNDAM SONG COVERS」をリリースし、大ヒットを記録しました。本作はその第2弾となるアルバム。正直、若干「2匹目のどじょう」狙いな感じがしないでもないのですが、CD販売数で2位を記録。PCによるCD読取数は5位で、結果として総合順位4位とヒットを記録。オリコンでも初動売上3万2千枚で2位初登場。「GUNDAM SONG COVERS」の初動2万5千枚(3位)を超える結果となっています。

5位にはジャニーズ系男性アイドルグループA.B.C-Z「CONTINUE?」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数13位で総合順位では5位に。オリコンでは初動売上2万9千枚で4位初登場。前作「Going with Zephyr」の3万3千枚(2位)からダウンしています。

8位初登場はCHiCO with HoneyWorks「瞬く世界にiを揺らせ」。「アニソン」と「ボカロ」に特化したオーディション「ウタカツ!」でグランプリに選ばれた女性ボーカリストCHiCOと、ボカロPなどで活躍したクリエイターグループHoneyWorksとのユニット。CD販売数7位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数28位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上1万1千枚で7位初登場。前作「私を染めるiの歌」の初動1万5千枚(5位)からダウンしています。

9位には桜内梨子(逢田梨香子)from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Sakurauchi Riko First Solo Concert Album~Pianoforte Monologue~」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数26位。メディアミックス作品「ラブライブ!サンシャイン!!」から登場した架空のアイドルグループAqoursのメンバーによるソロ作。オリコンでは初動売上1万枚で8位初登場。

今週の初登場盤は以上。一方、帰り咲き組も1組。韓国で生まれた日本人女性アイドルグループNiziU「Make you happy」が先週の13位から10位にアップ。5週ぶりのベスト10ヒットとなり、ベスト10入りも通算8週としています。配信オンリーのアルバムなのですが、ダウンロード数が先週の6位から3位にアップしているのがベスト10返り咲きの大きな要因となっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年9月23日 (水)

ジャニーズ系の新譜が2曲ランクイン

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、ちょっと珍しい現象が。ジャニーズ系の新譜が2曲同時にランクインしています。

まず1位にKis-My-Ft2「ENDLESS SUMMER」がランクイン。テレビ朝日系ドラマ「真夏の少年~19452020」主題歌。タイトル通り、ラテンも入った軽快なサマーチューンになっており、正直言って、かなり時期外れな感が否めません。コロナの影響でリリースが延期された…という記載は探しても見つからず、なんで今頃感が否めないのですが…。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数3位、ラジオオンエア数27位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上18万4千枚で1位初登場。前作「Edge of Days」の16万7千枚(1位)よりアップしています。

さて、前述の通り今週はもう1枚、ジャニーズ系の新譜がランクインしており、6位にの配信限定シングル「Whenever You Call」がランクイン。ダウンロード数及びTwitterつぶやき数1位、You Tube再生回数9位、ストリーミング数52位にランクインし、総合順位は6位に。この曲、なんとかのアメリカのシンガーソングライターBruno Marsが作詞作曲及びプロデュースを手掛けた全英語詞のナンバーとなっています。

2位にはYOASOBI「夜に駆ける」が先週からワンランクダウン。You Tube再生回数は1位を維持したのですが、ストリーミング数が1位から2位にダウンしています。そして代わってストリーミング数で1位を獲得したのが先週の2位からのワンランクダウンとなったBTS「Dynamite」。You Tube再生回数は先週と変わらず2位。ダウンロード数は11位から5位にアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、前述の嵐以外ではまず9位にPerfume「Time Warp」がランクイン。CD販売数は2位、ラジオオンエア数は1位だったもののダウンロード数18位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数7位に留まり、総合順位はこの位置に。本作ももちろん中田ヤスタカ作詞作曲プロデュースによる軽快なエレクトロナンバー。結成20周年、メジャーデビュー15周年を締めくくるプロジェクト「Perfume 15th&20th anniv with you all」の第2弾となる作品だそうです。オリコンでは初動売上3万1千枚で2位初登場。前作「無限未来」の4万4千枚(4位)からダウン。

新曲はもう1曲。10位にMr.Childrenの配信限定シングル「turn over?」が入ってきました。TBS系ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」主題歌。ダウンロード数2位ながら、ストリーミング数は84位。ラジオオンエア数6位、Twitterつぶやき数35位で、総合順位は10位に留まりました。

続いてロングヒット曲ですが、まずはあいみょん「裸の心」が先週から変わらず4位をキープ。ダウンロード数は2位から3位にダウンしましたが、ストリーミング数は5位から3位にアップ。根強い人気を続けています。ただ、You Tube再生回数のみ52位と伸び悩んでいますが…。

5位はNiziU「Make you happy」が先週の3位からツーランクダウン。ストリーミング数は2位から4位にダウンしましたが、ダウンロード数は5位から4位にアップ。You Tube再生回数も先週から変わらず3位をキープしており、こちらも根強い人気を感じさせます。

瑛人「香水」は今週は6位から7位にダウン。ただダウンロード数7位、ストリーミング数6位、You Tube再生回数4位は先週から同順位をキープ。カラオケ歌唱回数も、今週も変わらず1位にランクインしています。

そして米津玄師「感電」は先週の5位から8位にダウン。ダウンロード数は8位から10位、ストリーミング数も4位から5位、You Tube再生回数も4位から6位と今週も軒並みダウン。通算11週目のベスト10ヒットとロングヒットを続けていますが、こちらはそろそろベスト10キープは厳しくなりそう。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年9月22日 (火)

徐々に個性を確立

Title:The Glow
Musician:DMA'S

ここ十年程度、このタイプのバンドは次々と出ていただけに、難なくコンスタントに3枚目までリリースしてきたことはちょっと驚きも感じられます。オーストラリアはシドニー出身の3人組バンドDMA'Sのニューアルバム。デビュー作「Hills End」で、明確なoasisのフォロワーとしてデビューし、大きな話題を呼んだバンドです。その節回しといい、ボーカルスタイルといい、あまりに「そのまんまoasis」といった感じの作品だっただけに、正直、大絶賛は出来なかったものの、oasisファンとしては素直に楽しめるアルバムになっていました。

そういうタイプのバンドは大抵、1枚目のアルバムは話題になるものの、2枚目以降はほぼ話題になることはなく、いつの間にか消えている…というのが世の常。DMA'Sもそんな筋道を辿っていくのか…そう思われたのですが、ただ実際は違いました。その後コンスタントに2枚目、そして3枚目となる本作もリリース。なんと本作では、イギリスのナショナルチャートで最高位4位を記録。本国への逆輸入に成功し、人気バンドへと躍進を遂げています。

おそらく彼らがこれだけ人気を確保した一番大きな理由は、2枚目3枚目と徐々にDMA'Sとしての個性を出してきたからではないでしょうか。1枚目はoasisっぽく、グルーヴィーなバンドサウンドを前に押し出したような曲が目立ちましたが、2枚目はあっさりとしたポップな曲調がメインに。そして3枚目になる本作も、バンドサウンド以上にポップなメロディーラインの魅力を前に押し出した作品が並びます。

タイトルチューン「The Glow」も疾走感のあるバンドサウンドに軽快なメロディーラインを聴かせる爽やかなポップチューンになっていますし、「Hello Girlfirend」もタイトルからも想像できそうな、ポップでキュートなメロが心地よいギターポップのナンバーに。特に今回のアルバムで聴いていて心地よかったのが「Round&Around」で、ポップでキュートなメロディーラインにコーラスラインを重ねるサウンドも心地よく、ほどよくノイジーなギターサウンドも非常に心地よいポップチューンに仕上がっています。

とにかく全体的にポップなメロディーが心地よい楽曲が並んでいます。もちろんoasisもその第一の魅力はポップなメロディーラインでしたが、彼らの場合は、ポップというよりもいい意味でのバブルガムポップ的な、キュートでインパクトのある、スウィートとも表現できそうなポップスが並びます。このoasisと彼らとの違いが良い意味でさらに際立ったのが今回のアルバムで、彼らの個性をしっかりとアルバムの中で表現できていた傑作になっていました。

ただ一方ではoasisをはじめとするブリットポップからの影響もしっかりと感じられます。もっとも顕著なのが1曲目の「Never Before」で、ノイジーでグルーヴィーなサウンドは、まさにoasis的。この曲に関してはねちっこい歌い方も、どこかリアム・ギャラガーからの影響を彷彿とさせます。アルバムの1曲目で、まずはブリットポップが好きなリスナー層をガッチリと抱え込む、そんな構成といった感じでしょうか。

また「Stragers」のようなメランコリックなメロディーラインをグルーヴィーなバンドサウンドにのせているこの楽曲も、ブリットポップからの影響を強く感じますし、リスナーによってはある種のノスタルジックな気持ちを掻き立てるようなポップスになっているかもしれません。ここで聴かせてくれるようなインパクトあるメロディーも彼らのメロディーメイカーとしての実力を感じさせます。ブリットポップのフォロワーという立ち位置とDMA'Sだけが持っている個性を上手く融合させた楽曲と言えるかもしれません。

oasisをはじめとするブリットポップからの影響をしっかりと残しつつ、一方ではDMA'Sとしての個性や実力をしっかり反映させることが出来た3枚目。徐々に人気が上がってきて、ついにはイギリス本国での人気を得ることにも成功した彼らでしたが、その理由はよくわかります。これだけしっかりとした魅力的なメロディーラインが書けるのであれば、今後、さらに彼らの人気は高まりそう。古き良きブリットポップの魅力を残しつつ、今後も彼らの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

DMA'S 過去の作品
Hills End
FOR NOW


ほかに聴いたアルバム

FIXTAPE/Popcaan

ジャマイカ出身のダンスホールシンガーによる新作。ちょっとギャングスタっぽい感じもするいかにもなジャケット写真になっていますが、作品自体はメランコリックなメロディーラインでテンポよく聴かせるレゲエがメイン。楽曲によっては爽快感あるメロやサウンドを聴かせる曲もあり、全体的にはいい意味での聴きやすさもあるレゲエチューンが展開されます。心地よくレゲエを楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

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2020年9月21日 (月)

原点回帰の新作

Title:Purple Noon
Musician:Washed Out

アメリカの男性ミュージシャン、アーネスト・グリーンによるソロプロジェクト、Washed Out。2011年にリリースされたアルバム「Within and Without」が高い評判を得て、一躍、注目を集めました。そこで話題となった音楽のジャンルが「チルウェイヴ」という音楽。チープな打ち込みをバックに、ノスタルジックなメロディーラインを載せている点が特徴的な音楽で、80年代的なシンセポップと、今風のHIP HOPが融合されている音楽、ということだそうです。

Washed Outというミュージシャンは、このチルウェイヴというジャンルを確立し、その後のシーンに大きな影響を与えたミュージシャンでした。ただ、その後は若干音楽性が変化し、特に前作「Mister Mellow」はダンスミュージックやHIP HOP寄りにシフトした作品になっていた……そうです。聴いていないので詳しくは知らないのですが…。

しかし、今回のアルバムはそんな彼が「原点回帰」ということで、デビュー作の方向性に近い、チルウェイヴの作品を作り上げてきました。まずその傾向は1曲目から顕著。「Too Late」はちょっとチープさを感じる打ち込みのリズムがまさに80年代的テイストで、ノスタルジックな雰囲気を感じる哀愁感漂うメロディーラインからして完全にチルウェイヴのイメージにピッタリ来ています。

さらに続く「Face Up」「Time to Walk Away」は、80年代的ながらも、どこか洒落た感のある打ち込みのサウンドとメロディーラインに、ここ数年、世界中で注目を集めているシティポップの要素を強く感じます。Washed Outが確立したチルウェイヴの音楽性は、まさにシティポップの要素を兼ね備えたような部分を強く感じるのですが、そのような音楽を、今から約10年前の2011年に、まだ80年代的なシティポップがほとんど注目されていないような時期に打ち出したWashed Outの先見性をあらためて今回のアルバムでは強く感じました。

またこのチルウェイヴの音楽の特徴とした「霧にかかったようなホワイトノイズ」という説明を見受けます。実際、デビュー作「Within and Without」でもこの霧にかかったようなサウンドという点が大きな特徴となっていました。ただ今回の作品に関しては、特に前半においてこの「霧にかかったようなサウンド」という特徴はあまり強くはありません。ただ、中盤の「Game of Chance」「Leave You Behind」は、まさにこの「霧にかかったようなホワイトノイズ」という特徴を兼ね備えた楽曲になっており、そういう意味ではしっかりとチルウェイヴの要素を踏まえた作品として仕上げていました。

そんな訳で、まさに原点回帰となった今回のアルバム。といっても個人的には彼のアルバムを聴いたのはそのデビュー作以来なので、彼のその後の変化は知らないのですが…。ただ、懐かしく、メランコリックで妙に人懐っこいメロディーラインは非常に魅力的。ほどよいノイズもまじり、非常に心地よさを感じる音楽になっていました。メロディーラインもいい意味でわかりやすく、日本人にとっても壺をついたようなメロディーと言えるのでは?良質なポップソングとしてお勧めできるアルバムでした。

評価:★★★★★

Washed Out 過去の作品
Within and Without


ほかに聴いたアルバム

Microphones in 2020/The Microphones

アメリカのロックバンドによるThe Microphones。1999年から活動を開始し、2003年に解散。ただし、その後は再結成で散発的な活動を続け、このたび実に約17年ぶりとなるアルバムとなったのが本作。とはいえ本作、約44分にも及び1曲のみが収録されているという作品。シングル…ではなく一応アルバム扱いのようですが。ただ、この手のアルバムでありがちな、非常にマニアックな聴きにくいアルバムといった感じではなく、終始メランコリックなメロディーが流れつつ、フォーキーな作風になったりノイズギターが入ったりと徐々に形式を変えつつ展開していくような内容に。44分という長さで聴きどころも多く、あっという間に楽しめるような作品でした。

評価:★★★★★

Twice as Tall/Burna Boy

ナイジェリアのシンガーソングライターによる5枚目のアルバム。Beyonceのアルバム「The Lion King:The Gift」への参加でも話題を集め、前作「African Giant」も傑作アルバムに仕上がっていました。それだけに期待して聴いた今回のアルバム。確かにアフリカ音楽やレゲエにHIP HOPなどを融合させた音楽性は非常にユニーク。ただ、全体的にはレゲエ的な要素も強く、メランコリックなメロディーが前に。良くも悪くも垢抜けた感はあり、アフリカの音楽と西洋音楽の融合というイメージは前作に比べると薄くなってしまった感もありました。欧米ポップ寄りにグッとシフトした1枚。この方向性が次回作以降、吉と出るか凶と出るか・・・。

評価:★★★★

Burna Boy 過去の作品
African Giant

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2020年9月20日 (日)

地球の真逆同士の音楽ながらも相性抜群

Title:民謡クンビエロ(フロム・トーキョー・トゥ・ボゴタ)
Musician:民謡クルセイダーズ&フレンテ・クンビエロ

「民謡しなけりゃ意味ないね!!」をキャッチフレーズに、福生在住のギタリスト、田中克海と民謡歌手、フレディ塚本を中心として結成されたバンド、民謡クルセイダーズ。日本の民謡を、カリブ、ラテン、アフリカ音楽などを融合させた独特の音楽性は大きな話題を呼び、2017年にリリースされたアルバム「エコーズ・オブ・ジャパン」は各所で大絶賛。一気にその知名度を上げる結果となりました。

今回のアルバムはコロンビア出身のミュージシャン、マリオ・ガレアーノによるクンビア・プロジェクト、フレンテ・クンビエロとのコラボによるアルバム。クンビアといえば南米コロンビアを代表する音楽のジャンルで、10年くらい前、エレクトロサウンドの要素を取り入れたデジタル・クンビアがクラブシーンを中心に、ちょっとしたブームになった記憶があります。今回のアルバムでは、日本の民謡と南米のクンビアを融合させた、彼らにしか出来ない音楽を展開しています。

クンビアといえば、前作「エコーズ・オブ・ジャパン」でも、「串本節」をクンビアでアレンジして聴かせてくれましたが、これが想像以上にピッタリとマッチしていた絶妙なアレンジとなっていました。今回のアルバムも日本の民謡と南米のクンビア、まさに地球の真逆の位置する地域の音楽ながらも不思議に相性のよさを感じさせる楽曲が並びます。

その相性の良さを感じさせるのがまさに冒頭を飾る「虎女さま/TORA JOE」でホーンセッションが軽快に響くラテンのリズムが終始鳴り響くナンバーながらも、張りのあるこぶしの利いた歌声で聴かせる日本の民謡のフレーズとピッタリマッチ。まったく異質な音楽であるはずなのに、その相性の良さを感じさせます。

続く「クンビア・デルモンテ・富士/CUMBIA DEL MONTE FUJI」は哀愁感たっぷりのダンスチューン。こちらは完全にクンビアに寄ったナンバーになっており、ちょっとエキゾチックな雰囲気のメランコリックなメロは歌謡曲テイストを感じさせるものの民謡的な部分はあまり濃くはありません。ただ、軽快なリズムには日本の音頭にも通じる部分があり、やはり日本とコロンビアが上手くブレンドされた楽曲になっています。

 軽快なマンボのリズムを聴かせる「マンボネグロ大作戦/MAMBONEGRO DAISAKUSEN」も楽しい雰囲気の楽曲ですし、ダビーなサウンドで湿度の高い雰囲気を醸し出しつつ、どこかコミカルな節回しが楽しい「オッペケペー節/ OPEKEPE」も、民謡とクンビアのリズムが見事に融合させた作品。「クンビア・デルモンテ・デ・東京/CUMBIA DEL MONTE DE TOKYO」は、手拍子と簡単なパーカッションのみをバックにみんなで歌っている楽曲。みんなで集まり音楽を心から楽しんでいる、そう感じさせるようなナンバーになっていました。

どの曲も、本当に日本の民謡とクンビアの相性の良さを感じさせるナンバーばかり。こういうアレンジが出来る民謡クルセイダーズとフレンテ・クンビエロのセンスの良さも光るアルバムなのですが、やはり地球の真逆に位置する人たちの音楽とはいえやはり人間。心地よく感じる節回しやリズムにはどこか共通するものがあるのでしょう。だからこそ、距離の離れた2つの音楽が、ここまで相性よく混ざりあうことが出来た・・・前作「エコーズ・オブ・ジャパン」でも感じたのですが、今回のアルバムでもまた、同じようなことを感じました。

言うまでもなく前作に引き続きの傑作アルバム。日本人が昔からなじんできた民謡の素晴らしさ、そして世界の音楽の素晴らしさをあらためて認識させてくれるアルバムでもありました。しかし、このアルバムもライブで聴いたら気持ちいいだろうなぁ。コロナ禍でなかなかライブにも足を運べませんが・・・コロナがおさまったら、彼らのライブ、是非、足を運んでみたいです。

評価:★★★★★

民謡クルセイダーズ 過去の作品
エコーズ・オブ・ジャパン


ほかに聴いたアルバム

HELLO EP/Official髭男dism

飛ぶ鳥落とす勢いのヒゲダンの新作は4曲入りのEP。4曲いずれもシングルカットされても不思議ではないインパクトある楽曲が並びます。表題曲「HELLO」はフジテレビ系「めざましテレビ」のテーマ曲に起用されているのですが、いかにも同番組で流れていそうな爽やかなナンバー。ほかの3曲も、いずれも大物然としたスケール感と、ある種の余裕を感じられる、しっかりと壺を抑えた完成度の高い楽曲が並びます。まさに脂がのりまくっている彼らの状況を反映された作品。いまだにアルバム「Traveler」がヒットを続ける彼らですが、来るべく次のアルバムもすごい作品になりそうな予感が…。

評価:★★★★★

Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
Traveler
TSUTAYA RENTAL SELECTION 2015-2018
Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館
Traveler-Instrumentals-

LIVE : live/AK-69

「AK-69の本質である「LIVE」(ライブ)と人生を表す「live」(リブ)をコンセプト」としたアルバムだそうです、AK-69の約1年半ぶりのニューアルバム。ただ、とはいえライブ志向の作品が並んだアルバム、といった感じではなく、良くも悪いもいつも通り、AK-69らしい作品が並びます。今時のトラップなリズムをほどよく取り入れつつ、メロウなラップや哀愁感ある歌モノを聴かせる内容。ちゃんとリスナーが期待するAK-69の壺を抑えたような作品になっており、こういうところが人気の秘訣なんだろうなぁ・・・と思ったりしたりして。

評価:★★★★

AK-69 過去の作品
THE CARTEL FROM STREETS
THE RED MAGIC
The Independent King
Road to The Independent King
THE THRONE
DAWN
無双Collaborations -The undefeated-
THE ANTHEM
ハレルヤ-The Final Season-

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2020年9月19日 (土)

期待のインディーロックバンド

Title:A Hero's Death
Musician:Fontaines D.C.

最近、ヒットシーンはすっかりHIP HOP系で埋め尽くされており、ロック系にはいまひとつ勢いがありません・・・・・・なぁんてことを言いたくなったりもするのですが、ちょっと待ってください。なにげに最近、おもしろいロックバンドは少なくありません。当サイトの私的アルバムランキングの上半期1位となったDoglegもそもそも注目のポストロックバンドですし、Mannequin Pussy、IDLESなどといったポストパンク組は、ここ数年、傑作アルバムを連発しており、なにげに注目すべきロックバンドは増えているように思います。

今回紹介するアイルランドはダブリン出身のロックバンド、Fontaines D.C.もそんな今、注目したいロックバンドの一組でしょう。デビューアルバムとなった前作「Dogrel」も大きな注目を集めたようですが、続く2作目である本作も、今年を代表する1枚となりそうな注目を集める傑作アルバムに仕上がっています。

サウンド的には、基本的に全編ダウナーな雰囲気のギターロック。ボーカルもかなり淡々とした歌い方になっており、全体的にはローファイ気味なインディーロックを奏でるバンドとなっています。アルバムの冒頭を飾る「I Don't Belong」などはまさにそんなローファイ気味なサウンドで淡々と奏でる、いかにもなインディーロック然としたような曲調。この荒削りなバンドサウンドは、ちょっと80年代のインディーロック的な部分も感じられ、バンドの大きな魅力にもなっています。

その後も「Televised Mind」「I Was Not Born」のような分厚いギターノイズを響かせながらも、疾走感あるバンドサウンドを聴かせるような楽曲や、「A Lucid Dream」や「Living In America」のようにエフェクトをかけたサウンドのかたまりを響かせて、サイケロックの様相も呈している楽曲などはロックが好きならかなり壺にはまるのではないでしょうか。

ローファイ気味で淡々とした作風ながらも、一方では意外なメロディーセンスも感じられるのもバンドの特徴で、中盤の「You Said」「Oh Such A Spring」で聴かせるようなメランコリックなメロディーラインも魅力的。最後を締めくくる「No」もミディアムテンポのノイジーなサウンドをバックに、意外とメロディアスでポップなメロディーラインをしっかりと聴かせてくれる歌モノの楽曲に仕上がっており、メロディーメイカーとしての才も垣間見れる作品となっています。

この荒々しい80年代のインディーロック的なサウンドに意外とポップなメロディーライン・・・ということで強い影響を感じさせるのがPixiesで、特に語るようなボーカルとへヴィーなギターサウンドのタイトルチューン「A Hero's Death」なんかは、完全にPixiesの影響を感じさせるような楽曲に。ほかにもSonic Youthあたりが好きなら、間違いなく気に入りそうなバンドだと思います。

そんな訳で、まだまだおもしろいロックバンドはたくさん出てきているんだなぁ、ということを実感させられる1枚。サウンド的には懐かしさと新しさが同居しているようにも感じる部分もあるのですが、勢いのあるギターサウンドは、今でも十分すぎるほど魅力的なノイズを響かせています。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Such Pretty Forks in the Road/Alanis Morissette

一時期に比べると、話題に上ることも減ってしまったアラニス・モリセット。久々の新譜と思いきや、実に約8年ぶり。とはいえ、イギリスのナショナルチャートではちゃんと8位にランクイン(米ビルボードでは16位)にランクインしており、一時期ほどの熱狂的な人気はないものの、確固たる人気も感じさせます。

そんな今回のアルバムは基本的にアラニスらしい楽曲。ミディアムテンポでスケール感を覚えるダイナミックな曲調を、彼女の力強く、かつねっちりと感情のこもったボーカルで歌い上げるスタイル。デビュー当初のイメージから変わらないアラニスのスタイルといった感じで、目新しさはない反面、安心して聴けるアルバムになっています。ただ、アラニスの歌声を久しぶりに聴くと、やはり日本の女性ボーカリストは直接的にしろ間接的にしろ彼女の影響下にある人が多いですね。今回のアルバムを聴くと、あきらかに椎名林檎や鬼束ちひろのボーカルスタイルのルーツとしてのアラニスの姿が感じられます。そういう意味でも、椎名林檎や鬼束ちひろのような、情熱系の女性シンガーが好きな方は、改めて本作をチェックしてもよいのでは?

評価:★★★★

Alanis Morissette 過去の作品
Flavors Of Entanglement

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2020年9月18日 (金)

2020年を代表する大ヒット盤

Title:STRAY SHEEP
Musician:米津玄師

今、おそらく日本で最も勢いがあり「売れている」ミュージシャンは米津玄師でしょう。このCDがほとんど売れなくなってしまった今、オリコンで初動売上87万9千枚という驚異的な売上をたたき出し、2週目でミリオンセールスを記録。なんといってもこのアルバム、ストリーミングが解禁されている状態の下でのこの記録となっており、本当に支持されるアルバムというのは、やはりストリーミングや配信ではなく、CDという形で持っておきたい…そう考える人がまだまだ多いという証拠でしょう。その中で、彼は、その音楽が多くの人たちから本当の意味で支持されているからこそ、これだけのメガヒットをたたき出すことが出来た、ということでしょう。

そして、間違いなく2020年を代表する大ヒット作となった本作ですが、その大ヒットも納得の、米津玄師のすごさを実感できるアルバムとなっていました。まず感じるのは、どの曲をシングルカットしても大ヒットしそうなインパクトあるメロディーライン、思わず聴き入ってしまう歌詞の世界、そしてしっかりと作られたサウンドの曲の連続となっており、まさに彼の勢いがそのまま体現化したアルバムとなっています。1曲1曲非常に完成度の高い楽曲は、ある種、大物然とした雰囲気を感じさせます。

前作「BOOTLEG」までは、基本的にオルタナ系のギターロックを主軸とした作品となっていたのですが、今回のアルバムは、「ギターロック」という、よくありがちなタイプのサウンド志向からは完全に脱却しています。和風なメロで妖艶さを感じる「Flamingo」、ホーンセッションを入れてムーディーでファンキーな「感電」、打ち込みを入れたエレクトロダンスチューン「PLACEBO」、ストリングスを大胆に入れてスケール感を出した「馬と鹿」、ストリングスとエフェクトかけたボーカルでダイナミックに仕上げた「海の幽霊」など、もともと雑食性嗜好の強かった彼ですが、その方向性は本作ではより顕著に、さらにより完成度の高い、バラエティー富んだ作風を作り上げています。

また、ボカロP出身のミュージシャンにありがちな、情報量過多で、早くの歌詞が聴き取りにくいスタイルも完全に脱却。まあ、前作「BOOTLEG」あたりから完全に脱却していたのですが、しっかりと言葉を噛みしめるように歌うスタイルもすっかりと定着し、それゆえに歌詞の世界観がより胸に響いてきますし、サウンド的にも無駄をそぎ落としたような構成がグッと多くなったような感じがします。その方向性がもっともよく出たのが、子供たちにとっての国民的大ヒットとなった「パプリカ」のカバーではないでしょうか。比較的賑やかな原曲と比べ、音を比較的シンプルにし、また噛みしめるようにしっかりと歌う米津玄師のスタイルが印象的な楽曲は、明るい雰囲気の原曲とは雰囲気がグッと異なり、エキゾチックのサウンドを聴かせつつ、大人の心にもしっかり響いてくる優れたセルフカバーに仕上がっています。

歌詞の世界観も、初期の作品に見受けられたファンタジックな雰囲気はほとんどなくなり、広い層にアピールできるような言葉を選んだ歌詞を綴っています。ファンタジックな雰囲気がなくなってしまったのは賛否ありそうですし、個人的にはここらへん、初期米津玄師の世界観もよかったんだけどな、とは思うのですが、ただ、初期から続く、社会に対して疎外されたような人の視点から歌われているというスタイルはしっかりと健在。そういう意味では初期の米津玄師とは変わらない方向性も感じられます。

2020年を代表する1枚として、いい意味でのスケール感と完成度を兼ね備えた、優れたポップスアルバム。彼のブレイク以降、ボカロP出身のミュージシャンが多くデビューしていますが、正直言って、格の違いを感じさせる境地に至ってしまった大傑作アルバムだったと思います。ただ一方、ちょっと気になるのが、サウンドはともかくメロディーラインに関して、マイナーコード主体の比較的、似たタイプの曲が多かったという点。ここらへん、現時点においては曲の勢いやクオリティーが勝っているだけに気にならないのですが、ただ、今度、この勢いにブレーキがかかった時にマイナスに作用しそうな感じがして気になります。ここらへん、もうちょっと吹っ切れて、米津玄師らしからぬメロディーの曲なんてのもあればおもしろいかも、とも思うのですが…。

そんな気になる点もあったものの、文句なく、今年を代表する傑作アルバムと言える1枚だったと思います。こういうアルバムがしっかりとヒットするあたり、日本のミュージックシーンも捨てたものじゃないですね。この勢いはまだまだしばらくは続きそうです。

評価:★★★★★

米津玄師 過去の作品
diorama
YANKEE
Bremen
BOOTLEG


ほかに聴いたアルバム

盗作/ヨルシカ

ボカロPとして活躍していたn-bunaとボーカリストsuisによるユニット、ヨルシカのニューアルバム。本作は「音楽を盗作する男」を主人公に、男の破壊衝動を形にした楽曲が収録されたコンセプトアルバム。ギターロックを中心に、レトロポップやジャズなどの要素を加えた、全体的には悲しげな雰囲気の歌詞とメロディーが特徴的。虚無的な歌詞が印象に残る「レプリカント」やアコギで郷愁感あふれる歌と歌詞が魅力的な「夜行」など、印象的な楽曲も少なくありません。コンセプトからして、この手のネット初ミュージシャンにありがちな、頭でっかちなスタイルなのが気になるところですが、まさに力作という表現がピッタリくるような作品に。ただ個人的には、アップテンポな曲にインパクトをつけるため、ハイトーンで疾走感あるサビを持ってくる、という一本調子は気になったところ。ボーカリストのsuisは、ちょっとハスキーさもある低音部を魅力的に出せるボーカリストだと思うので、もうちょっと低音で、しっかりと表現できるような楽曲の方が、より彼女の魅力が出るように思うんだけどなぁ。ここらへん、メロディーラインはもうちょっと練ってほしい感じがしました。

評価:★★★★

ヨルシカ 過去の作品
エルマ

IT'S ALL ME - Vol.1/AI

AIのデビュー20周年を記念してリリースされたミニアルバム。「IT'S ALL ME」というタイトル通り、ソウル、ラテン、ラップ、バラードなどミニアルバムながらも様々な要素を取り入れた音楽性が特徴的で、それにも関わらず、アルバム全体としてしっかりと「AI」らしさを感じさせるアルバムになっています。「Vol.1」というタイトルがついていますが、これ、第2弾第3弾もリリースされるのでしょうか?しっかりとAIの魅力を伝えるような内容になっていただけに、第2弾、第3弾も楽しみです。

評価:★★★★

AI 過去の作品
DON'T STOP A.I.
VIVA A.I.
BEST A.I.
The Last A.I.
INDEPENDENT
MORIAGARO
THE BEST
THE FEAT.BEST
和と洋
感謝!!!!! Thank you for 20 years NEW&BEST

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2020年9月17日 (木)

あいみょん新譜は惜しくも2位!

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

アルバムでは今年最大のヒットとなった米津玄師「STRAY SHEEP」。今週も先週からワンランクダウンながらも3位をキープ。オリコン週間アルバムランキングでも、3万9千枚を売り上げ3位にランクインするなど、まだまだ高い人気を維持しています。さて、昨年、この米津玄師とロングヒットを争ったのがあいみょんの「マリーゴールド」。今週は彼女のニューアルバム「おいしいパスタがあると聞いて」がランクインしてきて注目を集めましたが・・・残念ながらダウンロード数では1位を獲得したものの、CD販売数及びPCによるCD読取数は1位に留まり、総合順位でも2位という結果となりました。オリコンでも初動売上12万枚で2位初登場。前作「瞬間的シックスセンス」の6万1千枚(2位)の倍増近い結果となりました。

あいみょんの前作「瞬間的シックスセンス」は「マリーゴールド」や「今夜このまま」がヒットしている最中のリリースでありながら、予想より売上枚数が伸びず、意外な感じがすると同時に、あいみょん人気が、彼女自身に対してではなく、単なる曲に対する人気に留まっている感があり、これからの行方が危惧されました。しかし、今年に入って「裸の心」がロングヒットを獲得したり、この作品の売上が初動10万枚を超えてくるなど、ちゃんとあいみょん自身にもファンがついてきた感じがします。今後も続々とヒット作をリリースしてくる予感がします。

一方で、あいみょんを下して1位を獲得したのが韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「24H」。日本盤としては2枚目となるミニアルバム。CD販売数1位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数8位という結果ながらも、総合順位は1位となりました。オリコンでは初動売上24万7千枚で1位初登場。直近のアルバムは韓国盤「An Ode」で、同作の5万2千枚(2位)からアップ。国内盤の前作「WE MAKE YOU」の12万7千枚(2位)からもアップしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、4位にN/A「NO GOOD」がランクイン。元ジャニーズの錦戸亮と赤西仁のユニットによるデビューアルバム。こういうジャニーズ脱退組同士が組んで、ジャニーズ時代のグループとは全く関連ない新たなユニットを結成するというのは珍しい感があります。CD販売数は3位でしたが、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数11位で、総合順位は4位。オリコンでは初動売上3万7千枚で4位初登場。錦戸亮ソロの前作「NO MAD」の初動7万6千枚(3位)よりダウン。ただ、赤西仁の直近作のベスト盤「OUR BEST」の2万5千枚(1位)や、直近のオリジナルアルバム「THANK YOU」の2万枚(2位)からはアップしています。

6位には「FINAL FANTASY XIV:SHADOWBRINGERS-EP2」がランクイン。「FINAL FANTAXY XIV」の大型アップデートバッチ5.3「クリスタルの残光」に収録された曲をまとめた配信限定のミニアルバム。ダウンロード数2位にランクインし、総合順位でもベスト10入りしてきました。

7位と8位にはBABYMETAL「LEGEND - METAL GALAXY [DAY-1] (METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW)」「LEGEND - METAL GALAXY [DAY-2] (METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW)」が並んでランクイン。今年1月に幕張メッセで行われたワンマンライブ「METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW LEGEND – METAL GALAXY」を全編収録したライブアルバム。CD販売数はそれぞれ7位、8位、ダウンロード数は8位、9位、PCによるCD読取数は15位、16位といずれもDAY-1、DAY-2の順に並んでいます。オリコンではいずれも初動売上5千枚で9位、10位にランクイン。前作「METAL GALAXY」の7万3千枚(3位)からはダウン。

9位には韓国の男性アイドルグループSHINeeのメンバーであるテミンのソロアルバム「Never Gonna Dance Again : Act 1」がランクイン。韓国盤のため、ビルボードではダウンロード数4位のみのランクインでベスト10入りしています。オリコンでは初動売上5千枚で11位にランクイン。前作は国内盤の「FAMOUS」で、同作の初動売上5万枚(1位)からは大きくダウンしています。

最後10位にはスタァライト九九組「再生讃美曲」がランクイン。ミュージカルやアニメで展開しているメディアミックス作品「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の劇場盤「少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト ロンド・ロンド・ロンド」の主題歌を収録したCD。CD販売数6位、PCによるCD読取数46位で総合順位は10位に。オリコンでは初動売上7千枚で7位に初登場しています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年9月16日 (水)

通算5度目の1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

これで5度目の1位獲得となります。

今週の1位は先週の2位からワンランクアップでYOASOBI「夜に駆ける」が獲得。7月27日付チャート以来8週ぶりの1位獲得で、これで通算5度目の1位獲得となりました。ストリーミング数及びYou Tube再生回数は先週から変わらず1位。ただダウンロード数は4位から6位にダウンしています。ちなみに先週ベスト10入りしてきた「群青」も今週8位にランクアップ。今週も2曲同時ランクインとなっています。

2位には韓国の人気アイドルグループBTS「Dynamite」が先週の4位からランクアップ。2週ぶりのベスト3返り咲きとなりました。ダウンロード数は9位から11位にダウンしましたが、ストリーミング数3位、ラジオオンエア数2位は先週と同順位をキープ。ストリーミング数は4位から2位にアップしており、ロングヒットの兆しが見える結果となっています。

3位も韓国発の日本人女性アイドルグループNiziU「Make you happy」が7位から3位に一気にアップ。こちらは先日放送された日テレ系音楽番組「THE MUSIC DAY」でテレビ初パフォーマンス披露となった影響も大きい模様。You Tube再生回数は先週から3位をキープしているほか、ダウンロード数が13位から5位に一気にアップ。ストリーミング数も6位から2位とアップしており、これで11週連続のベスト10ヒットを記録しています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は初登場は1曲のみ。9位に名古屋を拠点とする男性アイドルグループBOYS AND MEN「Oh Yeah」が初登場でランクイン。CD販売数1位だったものの、PCによるCD読取数74位、Twitterつぶやき数61位、そのほかは圏外というチャート。完全にコロナ禍の今を意識した、前向きなメッセージソングとなっています。オリコン週間シングルランキングでは初動売上4万2千枚で1位初登場。前作「ガッタンゴットンGO!」の9万5千枚(1位)よりダウンしています。

さらに今週はベスト10返り咲きが1曲。Official髭男dism「Pretender」が先週の12位からランクアップし、10位にランクイン。4週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。特にストリーミング数が8位、You Tube再生回数が10位とまだまだ上位にランクインしており、根強い人気を感じさせます。

そして今週は、初登場曲が1曲だけということもあり、4位以下もロングヒット曲が並んでいます。まず4位にあいみょん「裸の心」が先週からワンランクアップ。これで自己最高位タイとなりました。特にダウンロード数が3週連続2位。ストリーミング数も先週から変わらず5位をキープしており、ヒットの大きな要因となっています。ただYou Tube再生回数のみが41位と伸び悩んでいるのが気になるところですが。

5位には米津玄師「感電」が先週の3位から2ランクダウン。You Tube再生回数は5位をキープしていますが、ダウンロード数は3位から8位、ストリーミング数も2位から4位と軒並みダウン。まだどちらも上位をキープしていますが、その動向が気にかかるところです。

瑛人「香水」は6位と先週から同順位をキープ。ただダウンロード数は6位から7位、ストリーミング数は4位から6位、You Tube再生回数も2位から4位と軒並みダウン。ただカラオケ歌唱回数が今週で9週連続1位獲得とがんばっています。確かに、カラオケに合いそうなタイプの曲ですからね…。

一方、LiSA「紅蓮華」はここに来て8位から7位とアップ。特にダウンロード数が7位から3位にアップしているほか、You Tube再生回数も20位から16位にアップ。まだまだ強さを感じさせる結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年9月15日 (火)

シンプルにメッセージを聴かせる

Title:12發
Musician:般若

2018年には初となるベストアルバム「THE BEST ALBUM」をリリース。さらに昨年は初となる日本武道館ワンマンを実施するなど、その人気を高め、着実に一歩ずつ前に進んでいるラッパー、般若。直近作「IRON SPIRIT」は筋トレをテーマとしたコンセプトアルバムだったので、純然たるオリジナルアルバムとしては「話半分」以来、約2年3ヶ月ぶり、ベスト盤リリース及び武道館ライブ実施後、初となるオリジナルアルバムとなっています。

基本的に般若のスタイルというと、サウンド的には時代の先端を行くようなエッジの効いたもの…といった感じではなく、むしろ比較的シンプルなサウンドながらも、しっかり日本語をかみしめるように、そのメッセージを綴るラップを聴かせるスタイルが特徴的。そのスタイルはアルバム毎に徐々に研ぎ澄まされていった感があるのですが、今回のアルバムもまさに、さらなるシンプルなサウンドでメッセージをしっかりと伝える、そんな般若のスタイルをさらに追及した1枚となっています。

そんな中でもこのアルバム、特に前半はユーモラスなラップを楽しめる作品が続いています。「SORIMACHI」はタイトルは、反町隆史の楽曲「POISON」から、「言いたいこと言えない世の中じゃPOSION」というキラーフレーズからスタートするコミカル、しかし反骨心はふれるナンバー。続く「イキそう」も、HIP HOPシーンに対して中指を立てるような彼らしいナンバーながらも、タイトルから想像できるようなエロ歌詞が展開し、ユニークで笑えるラップに仕上がっています。

続く「今はALONE」は、心が離れていこうとする恋人に対する切ないラブソングで、聴いていて心が切なくなるようなラップになっています……と思えば、続く「花金ナイトフィーバー」はタイトル通りのディスコチューンなのですが、結婚していながらも一夜のアバンチュールをもとめちゃうような不埒ものがテーマになっていて(笑)、ある意味、この2曲の振れ幅もまた、非常にユニークです。

ユニークな前半から変わって、後半はそのメッセージを聴かせる楽曲が並びます。「いつもの道」は…最初、よくわかりにくかったのですが、これ、長く飼っている愛犬へのメッセージですね。でも、家族の一員として犬を愛する気持ちは伝わってきます。さらにアルバムの中で間違いなく泣かせてくるのは「シングルマザー」。タイトル通り、シングルマザーとして育ててくれた母親への感謝の言葉を伝えるメッセージソング。母親へのメッセージ…と言われると、陳腐な感すらするかもしれませんが、シングルマザーとして子供を育てた母親のリアルを描いた歌詞はやはり胸に響きます。さらに仲間たちからのメッセージを綴った「最後のワンピース」に、最後は爽やかなトラックで締めくくる「手」で、前向きなメッセージを提示。コミカルな前半から一転、最後はしっかりと聴かせる楽曲を並べており、聴いた後にほどよい心地よさを感じさせる構成になっていました。

まさにコミカルな般若から、真面目な般若までバランスよく、しっかりと収録したアルバムで、彼の魅力をしっかりと伝えた1枚となっています。いままでのアルバムと比べて、決して目新しさはないかもしれませんが、それでも彼が伝えたいメッセージをしっかりと伝えた、ある意味、非常に真面目な1枚に感じました。タイトル通り、全12曲の内容なのですが、非常に内容の濃さを感じさせるアルバム。そのメッセージ、しかと受け取りました。

評価:★★★★★

般若 過去の作品
ドクタートーキョー
HANNYA
グランドスラム
THE BEST ALBUM
話半分
般若万歳II
IRON SPIRIT


ほかに聴いたアルバム

Funkvision/西寺郷太

NONA REEVESのボーカリストで、最近ではマイケル・ジャクソンやプリンスなどの80年代ポップミュージシャンの評論家としての活躍も目立つ西寺郷太のソロアルバム。昨年放送された、マイケル・ジャクソンの児童虐待について描いたドキュメンタリーの影響で、一時期はキング・オブ・ポップとして絶賛の嵐だったマイケルの取り上げ方が、再び微妙となる中、今回のアルバムでもマイケルの「P.Y.T.(Pretty Young Thing)」のカバーを収録するなど、変わらぬマイケル愛を感じます。今回はコロナ禍の中、自宅スタジオを活用して作られたアルバムということですが、それだけに比較的、シンセを中心としたシンプルなサウンドが目立ったように感じます。基本的には80年代ポップスを引き継いだ、彼の趣味性の高い方向性も特徴的。NONA REEVES楽曲以上に、彼の興味がストレートに反映されたアルバムになっていますが、好き勝手に作ったアルバムだっただけに、NONAの曲に比べると、全体的にインパクトは弱かったかな?良くも悪くも西寺郷太という個性が反映されたアルバムでした。

評価:★★★★

VINTAGE/G-FREAK FACTORY

このアルバムが、いきなりオリコンチャート9位にランクインしてきて、非常にビックリしました。え?G-FREAK FACTORYって、10年以上前にライブによく足を運んでいたころ、インディー系バンドのイベントで、よく名前を見かけたバンドだったよね?なんで今さら??と思いつつ、実際、結成から20年以上のキャリアを誇るベテランバンドなんですよね。途中、活動休止などもありつつ、徐々に人気を上げ、8枚目のアルバムで見事初となるオリコンでのベスト10ヒットを獲得したようです。

ただ名前だけは昔から知っていて、レゲエ系のバンド、ということも知っていたのですが、なにげに音をきちんと聴くのは今回がはじめて。楽曲としてはヘヴィーロックにレゲエのリズムを入れたスタイルのロックバンド。方向性はSiMに近いのでしょうが、楽曲的にはもうちょっと爽やかでポップな感じ。確かに、いい意味で野外ライブ向けのバンドといった感じがします。長年、活動を続けてきたバンドなだけに、尖った感じはないのですが、安心して楽しめるロックといった感も。コロナ禍でロックイベントがなかなか開催できないのは彼らにとって逆風でしょうが、ただ、これだけの楽曲を作っていれば、コロナ禍も乗り切れられそう。ベテランバンドですが、彼らの活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★

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2020年9月14日 (月)

Arcaのパーソナリティーが反映

Title:KiCk i
Musician:Arca

ベネズエラのトラックメイカーArca。Bjorkのアルバムのプロデュースで話題となり、さらにはKanye WestやFKA Twigsとの仕事も話題となり、一躍注目を集めるミュージシャンとして活躍しています。そんなArcaの約3年ぶりとなるオリジナルアルバムなのですが、まず、ジャケット写真に驚かされます。どこか日本のフィギュアみたいな感じもする武器に身を固め、こちらをじっと見つめる彼女・・・・・・って、あれ?Arcaって女性だったの?と思ってしまうのですが・・・今回、彼女は自らをノンバイナリー(性認識が男性・女性どちらにもはっきりと当てはまらないという考え)であると公言。今回、このようなジャケット写真を公表するに至ったようです。今回のアルバムもいきなり1曲目は「Nonbinary」という曲からスタートします。

ただもっとも、Arca自身、いままで音楽に対してそのパーソナリティーを前面に出してきたようなミュージシャンではありません。そういうこともあって今回、彼女がノンバイナリーとしてその姿をあらわしたとしても、さほどの違和感はありませんでした。ただ、今回のアルバムの特徴としては、彼女がノンバイナリーであることを公表し、それを前面に出したことによって、アルバムが非常にパーソナリティーな内容になったように感じます。

そのため、無機質的な感触が強かった以前のアルバムと比べると、楽曲として暖かみが増して、よりポップにシフトした印象を受けます。具体的に言うと、以前のアルバムに比べて「歌モノ」がグッと増えています。1曲目「Nonbinary」からして、おそらく彼女の独白であろうポエトリーリーディングのような語りが展開される楽曲になっていますし、「Calor」「Machote」のような彼女自身がその歌声を聴かせる楽曲も目立ちます。さらにラストを締める「No Queda Nada」では、彼女が伸びやかな歌声で歌い上げる荘厳な楽曲に仕上がっており、Arcaがボーカリストとして前面に出てきている楽曲になっています。

そのほかにも豪華なゲストボーカルが参加した「歌モノ」の曲が目立ちます。アルバムのハイライトとも言えるのが間違いなく、かのBjorkが参加した「Arterwards」で、荘厳なエレクトロサウンドを聴かせる、しっかりArcaらしさを押し出した曲であるのですが、Bjorkの感情たっぷりに歌い上げるボーカルが前面に出ており、完全にBjrokの楽曲になってしまっています…が、相手がBjrokでは仕方ないですね。このままではBjorkの曲として終わってしまうと思ったのか(笑)、最後はArca自身がボーカルで登場し、曲を締めくくりました。

他にもROSALIAが参加した「KLK」ではラテン調のビートを披露しつつ、軽快なポップチューンを聴かせてくれたりしつつ、逆に、「La Chiqui」ではSOPHIEがゲストボーカルとして参加し、幻想的な歌声を聴かせつつ、強烈なハイトーンビートでアバンギャルドな作風に仕上げてきたりと、歌モノをいれつつポップでまとめながらも、Arcaらしい挑戦心、アバンギャルドさはしっかりと健在していました。

セルフタイトルとなった前作「Arca」もポップな方向性にシフトした作品になっていましたが、今回の作品は、よりArcaというパーソナリティーを押し出し、さらなるポップに仕上げた作品に。ただもちろん、以前からのArcaらしさも健在で、彼女にしか作りえないような独特の「ポップス」に仕上がっていました。今後は、より彼女のパーソナリティーを反映した作風にシフトしていくのでしょうか。今後の方向性にも要注目です。

評価:★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant
Arca

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2020年9月13日 (日)

マンウィズの良さと悪さ

Title:MAN WITH A "BEST"MISSION
Musician:MAN WITH A MISSION

ご存じ、頭はオオカミ、身体は人間という「究極の生命体」(という設定の)5人組から成るバンド、MAN WITH A MISSION。別名「オオカミバンド」としても知られる彼らたちも今年、結成10周年。比較的、結成後は早いタイミングでブレイクしたため、まだ10周年なんか…という感覚もないこともないんですが、今年は、その結成10周年を記念して、様々なアルバムがリリースされました。いままで、Bサイドベストとリミックス集がリリースされましたが、本作はその第3弾となるアルバム。全17曲入り(配信では全20曲入り)となるベストアルバムがリリースとなりました。

MAN WITH A MISSIONというと、デビュー直後から話題になっていたバンドのため、個人的にも比較的、デビュー直後のアルバムからチェックしてきたバンドではあります。ただ、彼らの曲の印象というと、曲単位ではカッコいい曲が少なくないものの、アルバム単位では悪くはないもののいまひとつ絶賛し切れない…そんな作品が続いていたような印象を受けます。具体的に言うと、全英語詞の曲については洋楽テイストも強くカッコよさを感じるものの、日本語詞の曲はどこか悪い意味でJ-POP的なベタさを感じて、いまひとつ面白味に欠ける…そんな印象を受けていました。

いままで漠然とそういう印象を抱えていた彼らでしたが、今回のベスト盤で、彼らの代表曲を網羅的に聴いて、そう感じてしまう理由がはっきりしたように思います。端的に言ってしまうとMAN WITH A MISSIONの楽曲はサウンドは非常にカッコいいのに、メロディーラインが良くも悪くもわかりやすいJ-POP的だから、という理由が大きいのではないでしょうか。

例えばサウンド面で言えば、「Rock Kingdom」などはゲストで参加した布袋寅泰のギターリフ主導のサウンドが非常にカッコいい楽曲。「Get Off of My Way」もファンキーなリズムとラップがカッコいいミクスチャーロックナンバーですし、「Hey Now」も疾走感あってスペーシーなエレクトロサウンドが、どこかBoom Boom Satellitesを彷彿とさせつつ、非常にカッコいいエレクトロロックに仕上がっています。このように今回のベスト盤にも非常にカッコいいサウンドを聴かせてくれる楽曲が並んでいます。

ただ一方で、例えば「higher」などもダイナミックなロックチューンでありつつ、メロディーラインは良くも悪くもわかりやすいJ-POP的なメロディーラインがインパクトに。「My Hero」もサウンド的にはへヴィーに聴かせるもののメロディーは哀愁感ありある種キャッチーな、売れ線のJ-POP的なフレーズと言えるでしょう。このようにサウンドはカッコいいのですが、メロディーラインが悪い意味で「ベタ」と感じさせるような曲が目立ちます。

もっともサウンドの面でもミクスチャーロックにしろエレクトロサウンドにしろ、決して目新しいものではなく、比較的よくありがちな「王道」なサウンドであり、見方によっては「ベタ」と捉えられるようなもの。そのため、ある意味、ベタなもの同士でメロディーラインとの相性もよく、それが彼らが比較的早い段階でブレイクした理由のようにも感じます。ただ、その「ベタさ」が、「耳馴染みやすい」という方向にころぶのか、それとも「よくありがちで平凡」という方向にころぶのかによって印象が大きく変わるように感じます。実際、英語詞の曲に関しては、洋楽テイストが強く出た結果、J-POP的な平凡な印象が薄れ「耳馴染みやすい」という利点がより強く出た一方、日本語詞の曲に関しては「よくありがちで平凡」という印象が強く出てしまった…それが彼らの曲が、曲単位ではカッコいいのにアルバム単位では今ひとつと感じてしまった大きな要因のようにも感じました。

今回のようなベスト盤であれば、彼らの曲の中でも特に優れた曲を並べていることもあり、カッコイイという印象が強く出た内容になっており、最後まで「平凡」という印象をあまり受けることなく、彼らのカッコよさだけを十分に感じるアルバムに仕上がっていました。もっとも、このベタさは「わかりやすい」という意味で、彼らの魅力の一つとも言えるわけで、必ずしも否定できる要素ではないと思うのですが…今度、彼らがどのように展開していくのか、10周年を迎えベスト盤でひとつの区切りを迎えた彼らの今後に注目しましょう。

評価:★★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire
Out of Control(MAN WITH A MISSION x Zebrahead)
Dead End in Tokyo European Edition
Chasing the Horizon
MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION
MAN WITH A "REMIX" MISSION


ほかに聴いたアルバム

立ち上がるために人は転ぶ/GAKU-MC

ここ最近、人生の応援歌的な曲が多いGAKU-MCですが、こういうアルバムタイトルを選ぶあたり、行き着くところまで行きついてしまった感もあります。タイトルだけで拒否感を抱く人も少なくないでしょうね。個人的にも若干、懸念をしながら聴き始めました。内容はHIP HOPというよりも爽やかなポップがメインという感じ。まさに人生の応援歌的な曲もあるのですが、さすがにそれなりに年齢を重ねている彼だけに、ただ不必要に頑張れというだけのような、一昔前の「青春パンク」のような露骨かつ単純な歌詞はありませんでしたが…ただ、あまりに漂白されたような歌詞に、鼻白んでしまうのは、ここ最近の彼の曲と同じ。一応アルバム毎に聴いてきたけど、そろそろ聴き続けるのは辛いかなぁ…。

評価:★★★

GAKU-MC 過去の作品
世界が明日も続くなら
ついてない1日の終わりに
Rappuccino

Tragicomedy/SHE'S

4枚目のフルアルバムである本作がいきなりベスト10ヒットを記録した4人組ロックバンド。いままでノーチェックだったのですが、ピアノロックバンドということで、ピアノロックが好きなこともありはじめてチェックしてみたのですが…率直に言うと、期待していたほどおもしろくありませんでした。確かにピアノの音色が主軸となっているサウンドではあるのですが、これといって聴かせるようなピアノのフレーズもなく、ポップで聴きやすいメロディーとはいえ、メロは平凡。悪くはないのですが、特段、これといって良さも感じられず。悪くはなかったので、次の作品も聴いてみてもいいかもしれないですが…うーん。

評価:★★★

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2020年9月12日 (土)

シンプルゆえに味わい深い傑作

Title:folklore
Musician:Taylor Swift

今や、おそらくアメリカで最も人気のあるシンガーソングライターの一人となったテイラー・スウィフト。日本でも高い人気と知名度を誇る彼女ですが、そんな彼女の約1年ぶりとなるニューアルバム。リリース公表日がリリース日の1日前というサプライズリリースということでファンを驚かせましたが、突然のリリースにも関わらず、ビルボードチャートでは当然のように1位を獲得。大ヒットとなっています。

さてそんな今回のアルバムですが、プロデューサーとして以前からの盟友、ジャック・アントノフに加えてThe Nationalのアーロン・デスナーが参加。17曲中11曲をアーロンがプロデューサーとして参加しています。また、コロナ禍の中作成されたアルバムということで、作成は主にリモートによって作成されたようで、さらにほとんどの楽器をジャックとアーロンが演奏するという、ある意味、宅録的なアルバムに仕上がっています。

そんなアルバムということもあって、アルバム全体としては比較的、シンプルな作品として仕上がっています。カントリー色の強い「Seven」やアコギでフォーキーな作風に仕上がっている「Illicit Affairs」「betty」などといった曲もあり、ここらへんは以前からの彼女らしい曲調と言えるかもしれません。ただ、全体的にはカントリー、フォーク色の強い以前の彼女のアルバムのような作品…といった感じではありません。シンセが入って分厚い音を聴かせる「This Is Me Trying」や、ピアノとストリングスで幻想的に聴かせる「Epiphany」といったような、軽く幻想的な作風が本作のひとつの特徴となっています。

他にも打ち込みのリズムをバックにメロディアスに聴かせる「The Last Great American Dynasty」や、静かなギターサウンドをバックに伸びやかなボーカルで聴かせる「Peace」など、シンプルながらもしっかりとメロディーを聴かせるポップチューンがメイン。エレクトロサウンドを取り入れて比較的ポップで派手目な作品が多かった前作「Lover」と比べると「地味目」という印象すら受けるかもしれませんが、The Nationalのアーロン・デスナーがプロデューサーとして参加している影響でしょうか、インディーロックの色合いを強く感じるような作風となっています。そのため、地味という印象を受けるアルバムですが、その実、アルバムのバリエーションも豊かで、聴けば聴くほど味が出てくるような、味わい深い作風になっていたように感じます。

そんなシンプルな作風がゆえに、テイラーの表現力あふれるボーカルの魅力を味わえるのも本作の特徴。清涼感あるボーカルを聴かせる「Mirrorball」や、ピアノをベースとしたシンプルなサウンドをバックに表現力豊かに聴かせる「Mad Woman」などといった、彼女のボーカリストとしての魅力が冴えた作品が並びます。デビュー当初はわずか16歳という若さも話題となった彼女も、今年で既に30歳。女性に対して年齢の話をするのは失礼ではあるのですが、既にベテランの域に達した彼女。しかし、そのキャリアがしっかり裏付けられたボーカルが実に魅力的でした。

さらにアルバムの中のひとつのハイライトと言えるのが4曲目の「Exile」でしょう。この作品はピアノをベースとしたサウンドでゆっくりと聴かせるミディアムチューンなのですが、Bon Iverがゲストボーカルとして参加。彼とのデゥオにより、彼女の清涼感ある歌越えとBon Iverの骨太なボーカルのバランスも実に見事。楽曲としてのスケール感もあり、強いインパクトのある作品に仕上がっています。

リリース以来、各所で大絶賛を受けている本作ですが、確かにそれも納得と言えるような傑作だった本作。個人的にも、最初聴いた時は、地味な作風にさほどピンと来なかったのですが、2度3度聴くうちに魅力にはまっていってしまい、今では彼女の最高傑作であり、年間ベストクラスの傑作ではないか、と思うほどに至っています。こういう地味目な作品をしっかりと聴かせるあたり、本当に実力のあるミュージシャンと言えるのでしょうね。彼女のすごさを見せつけた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover

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2020年9月11日 (金)

不気味なジャケが目を惹くが・・・

Title:Flower of Devtion
Musician:Dehd

今回紹介するのは、シカゴ出身の3ピースインディーロックバンドのニューアルバム。「Dehd」と書いて、これで「デフド」と読むそうです。本作が3作目となるアルバムなのですが、まず目を惹くのは非常に奇妙なジャケット。非常に不気味で、妙な印象を見る人に与えるようなジャケットになっており、このアルバムを聴こうとする人に対して、期待と同時にある種の不安を与えるようなジャケットになっています。

このジャケットが故に、最初聴く前はサイケポップ、ノイズ、あるいはドローンなどといった、ある種、ポップからはちょっとかけ離れたような、そんな音楽ではないか、と思いながら、まずはアルバムを聴いてみました…その予想はまず1曲目から完全に裏切られました。スカスカなビートからスタートした1曲目「Desire」は、シャウト気味のボーカルが加わりつつ、ミディアムテンポのポップチューン。続く2曲目「Loner」もそうなのですが、完全に80年代ニューウェーヴ路線のポップチューン。スカスカのビートと懐かしさを感じるギターサウンドが非常に人懐っこい、ポップチューンになっていました。

この80年代ニューウェーヴ路線を主軸にしつつ、アルバムの中で微妙に様々なスタイルに展開していくのがユニーク。前半はスカスカなサウンドで軽快に聴かせるポップナンバーが並ぶのですが、中盤からはダウナー気味なサウンドにポップなメロディーラインというスタイルが特徴的で、どこかシューゲイザー系の匂いも感じさせる楽曲が耳を惹きます。「Mouth」などはダウナー気味なサウンドながらも、メロはキュートなポップ、というのはある種のシューゲイザーの王道といった感もしますし、「Flood」もリバーブを利かせたギターサウンドをダウナーに響かせつつ、メロはポップというシューゲイザーっぽい作風になっています。

さらに後半は、女性ボーカルEmily Kempf を前面に押し出しつつ、よりポップなメロディーを聴かせる曲が並びます。軽快なポップチューン「Nobody」から、パンキッシュながらもしっかりとポップなメロを聴かせる「No Time」など、後半はよりメロディーラインを聴かつつ、80年代的な懐かしさを感じさせるポップな楽曲が並んでいました。

またこれらの曲はどれもインパクトのあるメロディーラインを聴かせる点が特徴的。比較的わかりやすく、いい意味で人なつっこいポップなメロディーラインが特徴的で、その不気味なジャケットと反して、非常に聴きやすいアルバムになっていました。シューゲイザー系、あるいはドリームポップなどと言われる楽曲にも近いものがあり、そのタイプのバンドが好きならば気に入りそうなアルバム。不気味なジャケットが良きにしろ悪しきにしろ目を惹きますが…音楽な一級のポップチューンです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Healing Is A Miracle/Julianna Barwick

アメリカの女性シンガーソングライターによる新作。エレクトロサウンドをループさせることによる作曲が特徴的なミュージシャンだそうで、ジャンル的にはアンビエントフォーク。エレクトリックなサウンドを荘厳に聴かせつつ、ゆっくりと伸びやかなボーカルを聴かせるスタイルが特徴的。「In Light」ではシガーロスのヨンシーもゲストとして参加。終始、ゆっくりと聴かせる荘厳なサウンドに圧巻される作品でした。

評価:★★★★

Homegrown/Neil Young

ニール・ヤングが1975年に録音したものの、未発表となっており「幻のアルバム」と言われていた作品。ニール自身が管理する膨大なコレクションから掘り起こされるアーカイヴシリーズで、もともとマスターテープの損傷がひどく、リリースに耐えられないような内容だったものを、ニールのレコーディングエンジニアとしておなじみのジョン・ハンロンが、70年代当時のアナログなレストア/リマスター手法をとり、時間をかけてマスターを復元させたという作品。アコースティックなアレンジがメインとなる作品で、彼の歌声をしんみりと聴かせる作品。なぜ未発表だったか謎なほど完成度の高い作品が並んでいます。サウンド的にはさすがに70年代的でちょっと時代を感じさせる部分はあるものの、間違いなく傑作と言えるアルバムでした。

評価:★★★★★

Niel Young 過去の作品
Fork In The Road
Psychedelic Pill(Neil Young&Crazy Horse)
Storytone
The Monsanto Years(Neil Young+Promise Of The Real)
Peace Trail
The Visitor(Neil Young+Promise Of The Real)
Colorado(Neil Young&Crazy Horse)

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2020年9月10日 (木)

米津玄師、ついに陥落

今週のHot Albums

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今週、ついに米津玄師のアルバム「STRAY SHEEP」が1位から2位にランクダウン。5週目の連続1位記録はなりませんでした。とはいえ、5週連続1位というのは驚異的。今週もまだまだ2位にランクインしており、オリコン週間アルバムランキングでは5万枚の売上を記録しています。次はこのアルバムがどこまでロングヒットを続けるのかに注目です。

そしてそんな米津玄師に代わって1位を獲得したのがジャニーズ系男性アイドルグループKing&Prince「L&」。彼ら2枚目となるオリジナルアルバムで、CD販売数及びPCによるCD読取数で1位を獲得。総合順位も1位となりました。オリコンでも初動売上55万5千枚で1位初登場。前作「King&Prince」の初動46万8千枚よりアップしています。

3位にはB'zのギタリスト、松本孝弘ことTAK MATSUMOTO「Bluesman」が初登場。純然たるソロとして約4年ぶりとなるアルバムで、収録曲の「Actually」にはなんと氷室京介が作詞・ボーカルで参加し、話題となっています。CD販売数3位、PCによるCD読取数7位。オリコンでは初動売上2万5千枚で3位初登場。直近作はTak Matsumoto&Daniel Ho名義の「Electric Island,Acoustic Sea」で、同作の1万枚(7位)からはアップ。ソロアルバムの前作「enigma」の2万枚(4位)からもアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にRADWIMPS「夏のせい ep」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数14位。2020年に様々な媒体で発表した新曲4曲を収録した彼ら初となるEP盤。オリコンでは初動売上1万6千枚で4位初登場。前作は映画のサントラ盤でもあった「天気の子 complete version」で同作の初動売上3万5千枚(2位)よりダウン。オリジナルアルバムとしての前作「ANTI ANTI GENERATION」の7万7千枚(1位)からも大きくダウンしています。

5位初登場は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会「Just Believe!!!」。スマホゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」内に登場するアイドルグループによる3枚目のアルバム。CD販売数5位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数9位。オリコンでは初動売上1万4千枚で5位初登場。前作「Love U my friends」の2万枚(5位)よりダウンしています。

6位には声優雨宮天「Paint it,BLUE」がランクイン。声優アイドルグループTrySailにも所属している彼女ですが、ソロでは本作は3枚目となるアルバム。CD販売数8位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数29位。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「The Only BLUE」の1万枚(6位)よりダウン。

7位は男性アイドルグループ超特急のメンバー、松尾太陽によるソロデビューアルバム「うたうたい」が初登場でランクイン。全6曲入りのミニアルバム。新進気鋭のミュージシャンVaundyや大塚愛、堂島孝平に元GO!GO!7188のノマアキコといった豪華なメンバーが参加。オリコンでは初動売上5千枚で12位にランクインしています。

8位には4人組ガールズバンドSilent Siren「mix10th」がランクイン。タイトル通り、結成10周年を記念したオリジナルアルバム。CD販売数11位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数92位。オリコンでは初動売上7千枚で9位初登場。前作「31313」の1万1千枚(7位)よりダウンしています。

9位には「初音ミク『マジカルミライ2020』OFFICIAL ALBUM」が初登場。CD販売数7位、ダウンロード数30位。11月と12月に東京、大阪で予定されている初音ミクのライブイベント「マジカルミライ2020」のオフィシャルアルバム。いわゆるボカロPによる楽曲が多く収録。ちなみにご存じの通り、米津玄師ももともとはこの初音ミクを使用したボカロP出身なのですが、このアルバムに参加しているミュージシャンから、第2の米津玄師は生まれるのでしょうか?

最後10位にはSaucy Dog「テイクミー」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数24位、ストリーミング数45位。3人組ロックバンドによる本作が4枚目となるミニアルバム。オリコンでは初動売上6千枚で11位初登場。前作「ブルーピリオド」の3千枚(18位)よりアップしています。

そんな訳で今週のHot Albumsは以上なのですが、今週、なんとOfficial髭男dism「Traveler」が先週の8位から11位にランクダウン。昨年10月21日付チャートから続いていた連続ベスト10記録は47週で幕を下ろしました。とはいえ、ダウンロード数は8位、PCによるCD読取数は3位とまだまだ上位にランクインしているだけに、今後のベスト10返り咲きも十分可能性はありそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年9月 9日 (水)

ロングヒット曲の躍進が目立つ

今週のHot100

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まず今週1位はAKB48系が獲得。

1位初登場はAKB系、瀬戸内地域を中心に活動するアイドルグループSTU48「思い出せる恋をしよう」が獲得。CD販売数1位、ラジオオンエア数21位、PCによるCD読取数24位、Twitterつぶやき数40位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上16万3千枚で1位初登場。前作「無謀な夢は覚めることがない」の28万7千枚(1位)からダウンしています。

さて、今週、1位こそAKB系が確保したものの、強力な新曲がなかった影響もあり、全体的にロングヒット曲の躍進が目立ちました。まず2位はYOASOBI「夜に駆ける」が先週の4位からランクアップして再びベスト3入り。You Tube再生回数が1位をキープしたほか、ストリーミング数が2位から再び1位にランクアップ。ダウンロード数も9位から4位にアップするなど、全体的に上昇傾向となりました。さらに今週、YOASOBIの配信限定シングル「群青」が10位初登場。ダウンロード数では見事1位を獲得。ほかにストリーミング数16位、ラジオオンエア数23位、Twitterつぶやき数39位、You Tube再生回数67位を記録しています。ブルボン「アルファードミニチョコレート」CMソングにも起用された本作は、「月刊アフタヌーン」連載中の漫画「ブルーピリオド」にインスパイアされて作成された楽曲だそうです。これでYOASOBIは2曲同時ランクインとなりました。

さらに3位には米津玄師「感電」がこちらも先週の6位からランクアップし、3週ぶりのベスト3返り咲き。特にダウンロード数が7位から3位にアップ。これで9週目のベスト10ヒットとなっています。

続いて4位以下ですが、今週初登場は前述の「群青」1曲のみ。そのためロングヒット曲が目立っています。まずあいみょん「裸の心」が7位から5位にランクアップ。ダウンロード数が先週と変わらず2位をキープしているほか、ストリーミング数も6位から5位にアップ。ベスト10下位で長くヒットを続けていましたが、CDリリース直後にランクインした4位以来、11週ぶりのベスト5入りとなりました。

アイドル系としては珍しくロングヒットとなっているNiziU「Make you happy」も先週の9位から7位にアップ。You Tube再生回数が4位から3位にアップしたほか、ダウンロード数も20位から13位にアップ。通算10週目のベスト10ヒットとなりました。

またLiSA「紅蓮華」も先週の10位から8位にアップ。ベスト10ヒット記録を伸ばしています。ちなみに同曲は、先週のランクイン発表当初は11位だったようですが、先週当初8位にランクインした欅坂46「誰がその鐘を鳴らすのか?」の集計にミスがあったそうで、ランキングが修正となり、「紅蓮華」の順位がアップしたようです。ただ、ランキング修正って、確か以前にもあったような…なんか、ビルボード、この手のエラーが多くない?ランキングの信用問題にも関わるので、もっと慎重にしてほしいのですが。

そんな躍進が目立ったロングヒット曲の中、唯一ランクダウンとなってしまったのは、5位から6位にダウンした瑛人「香水」。ダウンロード数は3位から6位にダウンしています。ただストリーミング数は4位をキープしているほか、You Tube再生回数は3位から2位にアップしており、あまり失速した感はありません。まだまだロングヒットは続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年9月 8日 (火)

ユニークな視点から自らの体験を描く

Title:LIFE RECORDER
Musician:TOMOVSKY

直近作が、ライブで発表された音源を集めたライブアルバム的な企画盤だったので、オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなるTOMOVSKYのニューアルバム。毎回、身の回りの出来事をユニークな視点から切り取っている彼ですが、今回のアルバムも、まずはそんなTOMOVSKYらしい、独特の歌詞の世界がユニークなアルバムになっていました。

特に独特の視点という意味でユニークだったのが「AI」。まさに昨今話題のAIについてうたった歌なのですが

「AIはかわいそう
AIはおひとよし
いいコトも
悪いコトも
全部その中に
かかえてるんだから」
(「AI」より 作詞 大木知之)

と、彼なりの視点でAIに対して同情を加えている視点は非常にユニーク。「事故とか/あおり運転とか/もう見たくない」と歌う「ドライブレコーダー」みたいな、機械を擬人化したような曲はほかにもあり、ここらへんの彼らしい視点が非常にユニークでした。

ただ今回のアルバム、ユニークな視点以上に、「LIFE RECORDER」というタイトル通り、彼の身の回りに起きたような出来事を歌が目立ち、その最たるものが「MRI」からスタートする4部作。2018年末から患った股関節痛にまつわる体験を4曲にわたって歌われており、特に「寄り添う2人」からスタートする松葉杖3部作は、股関節痛の時の体験を歌にしているのですが、松葉杖を愛人として見立てている視点がまた、TOMOVSKYらしくユニークに感じます。

他に「登山部をやめたい」と歌いだけの、非常にシュールな「登山部」や、乱暴なドライバーや丁寧なドライバーに対する心境を歌った「くだれ(天罰編)」「くだれ(デザート編)」といったユニークな曲が並びます。一方で、「悲しすぎる未来」では「100年後/200年後/君はいない/もちろん僕もいない」と当たり前の内容を歌った歌詞ながらも、非常に切なさを感じさせるラブソング(?)になっていますし、「地球最後の日」も「地球最後の日は街じゅうにキスであふれた」と歌う、非常に暖かい視点の歌詞になっています。ここらへん、トモフのやさしさ、暖かさを感じますた。

また今回、サウンドに関しては全体的にチープな宅録的な曲が多かったように感じます。比較的シンプルなギターロックが多いのですが、レゲエ調の「ヘッドフォン」にしても、ディスコ風の「AI」にしても、打ち込みが妙にチープ。まあ、味といえば味なのですが、全体的にはチープな雰囲気のアレンジの楽曲が並んでいました。

そんな訳で相変わらずいつものTOMOVSKYらしいアルバムに仕上がっていた本作。ただ、歌詞的にもメロやサウンド的にも、彼のアルバムの中では若干インパクトは弱かったようにも思います。「え?そんな視点で?」という思わずクスっと笑ってしまうような曲もありませんでしたし…。ただ、本作もトモフらしい魅力にあふれているのは事実。このコロナ禍の中、世間が暗くなってしまうような中だからこそ、彼のような独特の視点の楽曲が重要になってくるような気がします。ファンならずとも今の世の中だからこそ楽しんでほしい1枚です。

評価:★★★★

TOMOVSKY 過去の作品
幻想
秒針
いい星じゃんか!
終わらない映画
BEST3
SHAAA!!!
FUJIMI
SHINJUKU TIME 2018-1
SHINJUKU TIME 2018-2


ほかに聴いたアルバム

THE BAND STAR/ハルカミライ

メジャー2作目で初のベスト10ヒットを記録し、現在、人気上昇中のパンクバンド、ハルカミライ。ミュージシャン名からして、いかにもひと昔前に流行ったような青春パンク風ですし、このミュージシャン名だけで拒絶反応を起こすような音楽ファンも少なくなさそう(苦笑)。そんなこともあって私自身もおそるおそるアルバムを聴いてみたですが、正直言うと、思ったよりは悪くはないかな、といった印象。楽曲的には王道のパンクロック路線で、後半になるとよりオルタナ系ギターロック路線が強くなり、予想していたようないかにもチープな青春パンク色はさほど強くはありません。最初、予想していたよりは楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★

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2020年9月 7日 (月)

懐かしいヒット曲を還暦の今にリメイク

Title:感謝還暦
Musician:サンプラザ中野くん

2018年にリリース30周年を迎えた「Runner」のリメイク盤をソロとしてミニアルバムでリリースした、爆風スランプのサンプラザ中野くん。その後、2019年には「大きな玉ねぎの下で」のリメイクをリリースしましたが、本作はその第3弾となるミニアルバムとなります。今回リメイクしたのは「無理だ!」「涙2」「45歳の地図」をリメイクしています。

そんな訳で、例のよって懐かしい気分で聴いてみた今回のアルバム。まず目立つのは「無理だ!決定盤(令和Ver.)」で、全7曲中、第一章から第三章までの3トラックを占めています。現実的にはありえない事象をコミカルに羅列したノヴェルティーソングで、今回はファンや、さらには芸人、有名人を含め様々な人にネタを募集。そのネタが収録されています・・・・・・まあ、若干「水増し」気味な感は否めないのですが(苦笑)、ユニークなネタの連続は聴いていてクスリと笑える部分も。ただ、ネタとして「お賽銭のキャッシュレス」というネタがあるんですが、ただ、結構あるみたいなんですよね、お賽銭のキャッシュレス・・・いいかどうかは別として。

ただ今回のアルバムで一番耳を惹いたのが「涙2(2020青春Ver.)」。シャウト気味で歌い上げるメランコリックなメロディーラインが印象的なのですが、この手の曲はサンプラザ中野くんのボーカルにピッタリしていますね。さらにこの曲、CDとして一般発売された大ヒットしたのは「LOVE Ver.」で、今回カバーした「青春Ver.」は、ヒットの要因となった進研ゼミのCMソングに採用されたのですが、進研ゼミの受講生向けに配賦されたCDにのみ収録され、いままで一切市販されてこなかったヴァージョン。今回、こういう形で聴けたのはうれしいファンも多いのではないでしょうか。

また「45歳の地図(還暦Ver.)」も印象的。「45歳の地図」の主人公が還暦を迎えた設定。ちなみに原曲の方は発表した年、まだサンプラザ中野は20代だったようですが、今回はリアルに還暦。原曲では「私の青春を返せ」と歌っていた主人公は「まだまだバリバリやらせろ」と、ある意味前向きになっているのですが、還暦を迎えた彼が歌うからこそ、原曲よりもリアル感が増しているような感があります。自分は、この45歳という年齢に近づいてきているんですが、ただ正直「青春を返せ」といった感はないですからね・・・・・・そういう意味で、原曲は、20代の若者が見た45歳の勝手な想像だったんですよね・・・。

ちなみ残り2曲は新曲で、彼の芸名の由来となり、解体が決まっている中野サンプラザに捧げるバラードナンバー「中野サンプラザよ」と、タイトル通り、還暦を迎えた自身についてコミカルに歌った「感謝還暦」の2曲。ちなみに「感謝還暦」は爆風スランプの盟友、パッパラー河合が作曲を手掛けており、完全に、事実上、爆風スランプの曲となっています。

そんな感じの全7曲入りのミニアルバム。ネタ曲に近い「無理だ!」がかなりの割合を占めますし、また、基本的には懐古趣味的な企画である点は間違いないのですが、そんな点を含めて、過去にリリースされた2枚のミニアルバムと同様、懐かしく聴くことが出来ました。また、以前の作品ではサンプラザ中野くんの声が全く出ていないことが気になっていたのですが、今回のアルバムは意外と声もはっきり出ていて、安心して聴くことが出来ました。昔、爆風スランプが好きだったのならば間違いなくお勧めできるアルバム。ちなみに、あと爆風スランプのヒット曲でめぼしいところは「リゾ・ラバ」と「旅人よ」くらい。次はこの2曲のリメイクか?

評価:★★★★

サンプラザ中野くん 過去の作品
Runner
大きな玉ねぎの下で

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2020年9月 6日 (日)

もう49歳ですか・・・

Title:49 Forty-Nine
Musician:久松史奈

1992年にシングル「天使の休息」が大ヒットを記録し、一躍注目を集めたシンガー、久松史奈。本作は、その彼女のデビュー30周年を記念してリリースされたベストアルバム。タイトルの「49 Forty-Nine」は彼女の年齢から取られた模様。ジャケット写真も、その彼女のかなり大人っぽい雰囲気が印象的です。「天使の休息」が流行った頃はかなりやんちゃという印象を受けていた(というか、実際、不良だったらしいし)彼女ですが、良い感じで年を重ねましたね。

以前、2012年にリリースされた「GOLDEN☆BEST」を聴いて、このサイトでも取り上げたことがあり、その時も書いたのですが、久松史奈というと私が高校時代に愛聴していたラジオ番組のパーソナリティーとして参加していたこともあり、親近感のあるミュージシャン。特に「天使の休息」がブレイクしたタイミングが、ちょうどそのラジオ番組を良く聴いていた時期と重なっており、このヒットはかなりうれしかったことを覚えています。

今回のベスト盤でももちろん、その「天使の休息」も収録。あらためて聴いてみたのですが、やはり素直にいい曲だなと感じます。メロディーラインにはインパクトがあり、一度聴くと思わず口ずさんでしまうようなキャッチ―さがあります。歌詞もほどよくリスナーに寄り添うような曲調になっており、応援歌的な要素はJ-POP風ながらもおしつけがましさはなく、素直に聴き入るポップスに仕上がっています。

ただ今回のアルバムで彼女の曲を通して聴くと、「天使の休息」や、その次にリリースされた「微笑みながら」のようなインパクトあるメロディーはあるものの、全体として久松史奈だけが持っているような個性が薄いように感じてしまいました。今回のベスト盤、1曲目「LADY BLUE」から10曲目「YES MY FRIEND」までが、BMGビクターでの、いわばメジャー時代の作品になるのですが、90年代のJ-POPそのままといった感じの楽曲で、率直にいって、これといった特色は薄い印象。久松史奈といえば「天使の休息」の一発屋というイメージも強いと思うのですが、確かに、これだと一発で終わってしまうよな…という感想を抱いてしまいました。

ちなみに前回聴いたベスト盤「GOLDEN☆BEST」は、そのBMGビクター時代のシングル曲とカップリング曲のみを収録したベスト盤でしたが、今回のアルバムはその後の活動も網羅しています。BMGを離れた後の彼女の曲は、以前の作品と比べると、グッとロック色が強くなった作品。作風としては、こちらもよくありがちなハードロックといった印象は否めなかったのですが、ただ、90年代的なサウンドに比べると、よりロックなバンドサウンドの方が彼女の歌声には合っているようにも感じます。最初からこの方向性なら、もうちょっと彼女の人気も変わったかも?

さらに今回は新曲として「Short Film」という曲と、さらに「天使の休息」を再録した「天使の休息2020」も収録されています。で、この「天使の休息2020」が、実に素晴らしいセルフカバーに仕上がっていました。30年近い歳月を経たその歌声は、すっかり「大人」になった彼女が感情たっぷりに歌い上げており、非常に優しさを感じます。1992年とは全く異なる、ボーカリストとして素晴らしい表現力を獲得した彼女の魅力を存分に感じます。歌詞の内容も含めて、大人になったからこそ心に響く曲になっており、原曲以上によく出来たセルフカバーだったのでは?とすら思えるような出来映えに仕上がっていました。

かつて「天使の休息」が好きだった方は、このセルフカバーを聴くだけでも価値はあるのでは、と思わせるようなベスト盤。いろいろと思うところもあるのですが、なんだかんだいっても懐かしさを感じながら聴くことが出来た1枚でした。久々に懐かしい気分に浸れたアルバム。ちなみに彼女は現在もコンスタントに音楽活動を続けている模様。これからも末永く、音楽活動を頑張ってほしいです!

評価:★★★★

久松史奈 過去の作品
GOLDEN☆BEST 久松史奈 SINGLE COLLECTION

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2020年9月 5日 (土)

ケンモチヒデフミの挑戦

Title:たぶん沸く~TOWN WORK~
Musician:ケンモチヒデフミ

ご存じ水曜日のカンパネラのメンバーでありトラックメイカーであるケンモチヒデフミ。一時期、ほぼ毎年アルバムをリリースするという、怒涛のリリースラッシュが続いていた水曜日のカンパネラでしたが、こちらは2018年のEP「ガラパゴス」以来、ちょっとお休み状態(コロナ禍で休止中ですが、その前はライブ活動などは行っていたようですが)。一方、ケンモチヒデフミの方は昨年5月に、自身実に9年ぶりとなるソロアルバム「沸騰 沸く~FOOTWORK~」をリリース。さらに続けて、配信限定ですが、早くも次のアルバムをリリースしてきました。水カンはちょっとお休みのようですが、ケンモチヒデフミの創作意欲に全くの衰えはなさそうです。

前作に続いて彼が取り入れているジャンルが、Juke/Footworkという、アメリカ・シカゴを発祥とするエレクトロダンスミュージック。BPM160の三連符などを多用するリズム(Juke)に、ダンサーたちが足技を多用した高速リズムで踊る(Footwork)というスタイル。「今、注目を集めている」と書かれた記事が、既に8年くらい前の記事だったので、現時点での最先端のサウンド…という感じではないかもしれません。ただ、前作に続いて今回もJuke/Footworkを取り入れているように、彼にとっては、今、もっとも興味を持っているジャンル、ということなのでしょう。

もっとも今回のアルバム、「たぶん沸く」というタイトルの由来は、ケンモチヒデフミが「多分、これがFOOTWORKというものだろう」という音を取り入れた、ということから来ているそうで、彼にとっても手探り感、あるいは挑戦的な作品だったと言えるかもしれません。ただ一方で、今回、このアルバム評を書くにあたって、そのJuke/Footworkと言われる代表的なミュージシャンの曲を何曲か聴いたのですが、確かに今回のアルバムに収録されている曲は、いかにもJuke/Footworkの曲を並べたようなアルバム。例えば「Neptune」など、非常に速い3連ビートがさく裂されており、ある意味、Juke/Footworkらしさに忠実という点も、彼の手探り感を覚えることが出来ます。

ただ、そんな中でもしっかりとケンモチヒデフミの色を感じられる部分は少なくなく、先行シングルにもなった「Lolipop」は、「Lolipop!」というシャフトも心地よく(これ、何かの曲のサンプリングですよね?何の曲だったっけ…)、水カンでも感じられる彼らしいポピュラリティーと、どこか感じられるユーモアセンスが楽しいポップチューンになっています。

最後を締める「Masara Town」は女性ボーカルが入って、非常にメロウな作風になっているのも大きな特徴。このハイトーン気味の女性ボーカルとケンモチヒデフミ楽曲との相性の良さも感じられ、やはりこれを水カンでコムアイのボーカルで聴きたい…とも思えるような曲になっていました。とにかく全体的にJuke/Footworkの王道を行くようなリズムで、ケンモチヒデフミらしいポピュラリティーをしっかりと付与した上で、水カンのファンにも楽しめる、そんなアルバムに仕上がっていたように感じます。

そんな訳で、そろそろ水カンのアルバムが出ないかな、と思いつつ、ケンモチヒデフミの世界を楽しめた1枚。このサウンドは、次の水カンのアルバムに反映されるのでしょうか。そんな想像をしながら楽しめた1枚でした。でも、次は是非、水カンの新作を…!!

評価:★★★★★

ケンモチヒデフミ 過去の作品
沸騰 沸く~FOOTWORK~

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2020年9月 4日 (金)

良くも悪くもフェス向けバンド

Title:5
Musician:Mrs.GREEN APPLE

デビューアルバム「TWELVE」がいきなりベスト10ヒットを記録し、一気にブレイク。デビュー以来、数多くのロックフェスにも出演し、一躍人気バンドとなったMrs.GREEN APPLE。本作はそんな彼らのメジャーデビュー5周年を記念しての初のベストアルバムとなります。デビュー当初からブレイクしていたため、「デビュー5周年」と言われても、まだ5年目なのか…とすら思ってしまうのですが。ちなみに、ベスト盤のリリースと同時に、活動休止と事務所からの独立を発表。今後はフェーズ2に向けての新たなプロジェクト"Project-MGA"を立ち上げたそうで、このベスト盤リリースを機に、新たな活動をスタートさせた模様です。

さて、このMrs.GREEN APPLEというバンド、個人的にはデビューアルバム「TWELVE」からアルバムは一通りチェックはしてきていますが、彼らの印象としては良くも悪くもフェス向けのバンドだな、といったものだったりします。ほどよくロッキンなギターロックにとことんポップである意味わかりやすいメロディーライン。祝祭色もあり、盛り上がりそうなテンポのよいサウンドとリズム。ジャンル的にはオルタナ系の系譜をひいたようなギターロック路線ということになるのですが、具体的なルーツはわかりにくく、単なるポップバンドになっている…という点はある意味非常にJ-POP的。すいません、最初に「良くも悪くも」と言いましたが、「フェス向けバンド」というのは完全に悪い印象ですね。ここ最近、よくありがちなバンドというイメージは、正直デビュー時から今に至るまで持っています。

今回のベスト盤ではインディーズ時代のアルバムに収録されていたナンバーから、昨年7月にリリースされた配信限定シングル「インフェルノ」、さらに4月5月に先行配信リリースされた「アボイドノート」「PRESENT」に、ベスト盤のために書き下ろした新曲「Theater」までがリリース順に並べられています。

前半の作品に関しては、分厚いギターロック路線が、まだ今のMrs.GREEN APPLEらしさが確立されていないインディーズ時代の「スターダム」からスタート、「Speaking」「サママ・フェスティバル!」のようなシンセのサウンドを取り入れて爽快にまとめたポップチューンまで、徐々にMrs.GREEN APPLEらしさが確立していく感じが見て取れます。ただ、正直前半の作品に関しては、上に書いた、いわば「フェス向けのバンド」のネガティブなイメージがもろに出てしまった感が否めません。まあ、フェスでは盛り上がるんだろうけど…ということを考えてしまうような、無難なポップチューンの連続といったイメージ。メロディーラインもさほど凝っている感じもありませんし、サウンドも平凡。聴いていて、若干飽きてきてしまったのは否めません。

ただ、そんなイメージが変わったのが後半戦。特に「WanteD!WanteD!」あたりから賑やかな祝祭色が増して、フェス向け云々関係なく、純粋に明るく、聴いていて楽しくなるようなポップチューンがグッと増えてきたように感じます。疾走感があってポップなメロが楽しい「青と夏」や、ダイナミックなサウンドも心地よい先行配信曲「アボイドノート」など、純粋に聴いていて楽しめる曲が並んでいます。

以前聴いたオリジナルアルバムでも「ENSEMBLE」「Attitude」では、良い意味で彼らが祝祭色豊かなサウンドにグッといい意味で振り切れたような印象を受けていましたが、今回のベスト盤ではそのアルバムで感じた印象が正しかったことを、過去からの彼らの曲を通じて聴いたことで再確認できました。正直今でもなお、いろいろな意味で「フェス向けバンド」という印象はぬぐえないのですが、この方向性をさらに突き進めば、もっともっとおもしろいバンドになるのでは?新曲の出来も悪くないですし、これからの彼らの活躍に期待したいところ。現在活動休止中で次の活動はいつになるのかわかりませんが、次の活動が楽しみに感じるベスト盤でした。

評価:★★★★

Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
TWELVE
Mrs.GREEN APPLE
はじめてのMrs.GREEN APPLE
ENSEMBLE
Attitude


ほかに聴いたアルバム

機動戦士ガンダム 40th Anniversary Album ~BEYOND~

「機動戦士ガンダム」放送40周年を記念してリリースされた「ガンダム」へのトリビュートアルバム。「ガンダム」の主題歌・挿入歌を様々なミュージシャンがカバーするアルバムとなっています。SUZIGOが総合音楽プロデューサーということもあり、LUNA SEAをはじめ、GLIM SPANKY、水曜日のカンパネラのコムアイ、miwa、OAUなどかなり豪華なメンバーが参加しているのですが…SUGIZOメインということもあり、事実上、LUNA SEAのアルバムみたいな仕上がり。コムアイ参加の「水の星へ愛をこめて」も期待したのですが、名義はSUGIZO feat.コムアイということもあり、水カン色は皆無。まあ、LUNA SEAの抒情的な世界観や河村隆一の感情たっぷりのボーカルが妙に「ガンダム」の曲とマッチしている感はあり、LUNA SEAとの相性は悪くない感じ。そういう意味でLUNA SEAのファンにはお勧めしたいアルバムですが、そのほかのファンは過度な期待はできないかと。唯一、OAUの「HUMAN TOUCH」はOAUの世界にしっかりと引きずり込んだ感はありましたが。

評価:★★★★

サ上とロ吉と/サイプレス上野とロベルト吉野

サ上とロ吉のニューアルバムはタイトル通り、彼らが様々なミュージシャンとコラボした企画盤。ももクロのようなアイドルやヒブシスノマイクのキャラクターとまでコラボ。かなりバリエーションの広いコラボを繰り広げていますが、結果として、アイドルポップから南国風、音頭などなど、かなり様々な、いい意味で統一感のない楽曲が並んでいます。ポップで聴きやすく、いろいろと親和性のあるサ上とロ吉のラップだからこそ達成できた、そんなコラボアルバムでした。

評価:★★★★

サイプレス上野とロベルト吉野 過去の作品
WONDER WHEEL
YOKOHAMA LAUGHTER
サ上とロ吉のINMIX~non stop rental~
MUSIC EXPRES$
TIC TAC
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(紅)
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(白)

コンドル
大海賊
ドリーム銀河

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2020年9月 3日 (木)

これでなんと4週連続

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

米津玄師の勢いが止まりません。

今週も1位は米津玄師のアルバム「STRAY SHEEP」。これで4週連続の1位となりました。今週もCD販売数、ダウンロード数、PCによるCD読取数全て1位獲得。オリコン週間アルバムチャートでも1位獲得。ただ、売上的にはさすがに7万7千枚までおちてきており、そろそろその座を新譜に明け渡すのか??

2位初登場はMCのR-指定とDJのDJ松永からなるユニット、Creepy Nuts「かつて天才だった俺たちへ」が獲得。CD販売数は4位に留まったものの、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数15位で、総合順位は2位。オリコンでは初動売上1万4千枚で5位初登場。前作「よふかしのうた」の7千枚からアップし、初のベスト10ヒットとなっています。Creepy NutsのMC、R-指定は、HIP HOP人気を高めたバラエティー番組「フリースタイルダンジョン」の2代目ラスボスを務めるなど知名度を上げ、Creepy Nutsの人気も同時に上がっていったようです。

3位は女優としても活躍している上白石萌音「note」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数25位。元チャットモンチーの橋本絵莉子、いきものがかりの水野良樹、RADWIMPSの野田洋次郎などが楽曲提供する豪華なラインナップに。オリコンでも初動売上1万6千枚で3位初登場。前作「i」の1千枚(27位)から大きくアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に刀剣男士 formation of 葵咲「ミュージカル『刀剣乱舞』~葵咲本紀~」がランクイン。ゲーム「刀剣乱舞」を元としたミュージカルで歌われた曲を集めたアルバム。上演されたのは昨年の8月~10月なのでコロナの前ですね。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数は25位に留まり、総合順位もこの位置に。オリコンは初動売上1万7千枚で2位初登場。同シリーズの直近作は刀剣男士 髭切膝丸 「ミュージカル『刀剣乱舞』 髭切膝丸 双騎出陣2019 ~SOGA~」で、同作の1万4千枚(3位)から若干のアップとなっています。

5位初登場は「MANKAI STAGE『A3!』MANKAI Selection Vol.1」で、こちらもイケメン役者育成ゲーム「A3!」の舞台化、MANKAI STAGEで披露された楽曲を収録したアルバムと、タイプ的には上の刀剣男士と全く同じようなコンセプトのアルバム。CD販売数6位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数24位。オリコンでは初動売上9千枚で7位初登場。同シリーズの前作「『MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~』MUSIC Collection」の4千枚(8位)からアップ。

6位にはゴールデンボンバーの鬼龍院翔のソロアルバム「うたってきりりんば」がランクイン。ファンからのリクエストに応じて、J-POPをカバーしたカバーアルバムで、西城秀樹「傷だらけのローラ」やプリプリの「M」のような懐かしいナンバーから、King Gnu「白日」やヒゲダンの「Pretender」のような最新のヒット曲まで様々な曲のカバーに挑戦しています。ちなみに事務所公式通販サイト限定かつ数量限定リリースとなっています。CD販売数5位、ダウンロード数40位。オリコンでは初動売上1万3千枚で6位初登場。ソロでの前作「個人資産」の8千枚(12位)よりアップしています。

7位にはESオールスターズ「あんさんぶるスターズ!! 5th Anniversary song『Walk with your smile』」が初登場。アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」の5周年特別楽曲「Walk with your smile」をゲーム内の各ユニットがそれぞれ歌っている曲を収録したアルバムで、配信限定でのリリース。ダウンロード数2位のみのランクインでしたが、総合順位は7位にランクインしてきました。

9位初登場はPEDRO「浪漫」。アイドルグループBiSHのアユニ・Dによるソロプロジェクト。CD販売数8位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数59位。オリコンでは初動売上7千枚で9位初登場。前作「衝動人間倶楽部」の4千枚(7位)からアップ。

今週の初登場組は以上。一方、ベスト10返り咲き組も1枚。10位に[Alexandros]「Bedroom Joule」が、以前配信先行リリースになった時にベスト10入りしていましたが、CDリリースに合わせてベスト100圏外からランクアップ。6月29日付チャート以来、10週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。CD販売数7位、PCによるCD読取数34位。オリコンでは初動売上9千枚で8位初登場。前作「Sleepless in Brooklyn」の3万9千枚(3位)からダウンしています。

最後、ロングヒット盤ですが、Official髭男dism「Traveler」は今週7位から8位にワンランクダウン。CD販売数は9位から15位にダウン。一方、ダウンロード数は9位から7位にアップしています。全体的に厳しい結果となってきており、来週もベスト10をキープできるでしょうか。注目されます。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年9月 2日 (水)

悲しきラストシングルがベスト3入り

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot 100、三浦春馬「Night Diver」がCDリリースに合わせて29位から2位にランクアップ。CD販売数は2位にランクアップしたほか、ダウンロード数も45位から6位にランクアップするなど、順位を大きく伸ばしました。ご存じとは思いますが、俳優として活躍していた彼ですが、7月18日に急逝。大きな衝撃が走りました。本作はその後リリースされた彼の2枚目のシングルで、おそらくラストシングルとなるであろう作品となります。先行配信により8月3日付チャートで4位にランクインしていましたが、このたび4週ぶりにベスト10に返り咲いています。ちなみにオリコン週間シングルランキングでは初動売上20万4千枚で2位初登場。前作「Fight for your heart」の初動9千枚(12位)より大きくアップしています。

さて今週の1位ですが、男性アイドルグループJO1「STARGAZER(OH-EH-OH)」が獲得。韓国で話題となったオーディション番組「PRODUCE 101」の日本版、「PRODUCE 101 JAPAN」から登場した男性アイドルグループの2枚目となるシングル。CDリリースに合わせて先週の75位から大きく順位を上げ、ベスト10入りしてきました。ある意味、韓国製の日本アイドルグループといった様相なのですが、似たように韓国のスタイルにのせて売り出した日本人アイドルグループNiziU「Make you happy」も今週10位にランクイン。9週連続ランクインとなっており、ロングヒットを記録しています。

「クールジャパン」みたいな言葉を生み出して、どこまで実態があるかわからない「海外での日本文化人気」を一部の日本人が妄信しているうちに、いつの間にか、その「クールジャパン」として売り出すはずだった国内のアイドル文化すら韓国に侵食されてきている現象は皮肉としか感じられません。この現象はまだまだ続きそうな感もします。

で、3位にはその韓国の男性アイドルグループBTS「Dynamite」が先週の7位からランクアップしてベスト3入り。ストリーミング数は今週1位を獲得。You Tube再生回数も7位から2位にランクアップしており、その人気のほどを感じます。

一方、今週初登場で8位にランクインしてきたのがAKB48系、欅坂46「誰がその鐘を鳴らすのか?」。配信限定のシングルでダウンロード数で1位を獲得。ただストリーミング数49位、ラジオオンエア数28位、Twitterつぶやき数27位で総合順位はこの位置で。ちなみに「欅坂」としてはこれがラストシングルだとか。ただ、解散ではなく改名しての再スタートだそうで、すごく小手先な宣伝手法に感じます。

今週、4位以下の初登場はこの1曲のみ。今週もロングヒット曲がズラリと並んでいます。まずはすっかりおなじみYOASOBI「夜に駆ける」瑛人「香水」。今週、「夜に駆ける」が3位から4位にダウン。一方「香水」が6位から5位にアップという結果となり、久々に両曲が並びました。「夜に駆ける」はYou Tube再生回数は1位をキープ。ただ、ストリーミング数は先週の1位から2位にダウンです。「香水」はストリーミング数が3位から4位、You Tube再生回数は2位から3位にダウン。一方、ダウンロード数が5位から4位にアップしています。

その2曲に続いたのが米津玄師「感電」。先週の5位から6位にダウン。You Tube再生回数は5位をキープしたものの、ストリーミング数は2位から3位、ダウンロード数は3位から8位にダウン。これで8週目のベスト10入りとはいえ、ストリーミング解禁の影響でもっと順位が伸びるかと思いきや、思ったほど伸びません。

逆に意外としぶとくロングヒットを続けているのがあいみょん「裸の心」。先週の9位から7位にランクアップしています。You Tube再生回数は今週、圏外となってしまいましたが、ダウンロード数は7位から3位にアップ。これで連続12週、通算13週目のベスト10ヒットとなり、まだまだロングヒットが続きそうです。

また先週まで10位にランクインしていたOfficial髭男dism「I LOVE...」は今週13位にダウン。代わって「HELLO」が11位から2ランクアップの9位にランクインし、2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。ただベスト10入りはこれが3週目。PCによるCD読取数1位、ラジオオンエア数8位など上位にランクインしているものの、ロングヒットの指標となるストリーミング数は16位、You Tube再生回数は43位と伸び悩んでおり、ちょっとロングヒットとなるのは厳しそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年9月 1日 (火)

ダーククイーンCocco

Cocco 生配信ライブ2020 みなみのしまのはなのいろ

会場 オンライン 日時 2020年8月31日(月)19:30~

コロナ禍の中続く配信ライブ。今回はCoccoの生配信ライブ。スタートすると、まずはどこかのスタジオから。まずは今回の生配信ライブが行われた経緯がCoccoから説明されました。こちらは事前に録画したものらしいですね。その後、場面は変わってライブハウスへ。静まりかえったステージの中に、まずは静かにメンバーが登場。最初はメンバーのクローズアップの画像が続き、そしておもむろにライブがスタート。黒いベールで黒い衣装に身を固めた、ダークな雰囲気のCoccoが登場。まずは最新アルバム「スターシャンク」から「花爛」からのスタート。まずはダークでヘヴィーな雰囲気でライブはスタートしました。

さらに同じくスターシャンクから「2.24」。こちらもダークな雰囲気のナンバー。そしてそこから一転、懐かしいナンバーの「濡れた揺籃」へ。懐かしい「クムイウタ」からの楽曲ですが、ヘヴィーでダークなサウンドの楽曲が続きます。その後も「ドレミ」「Ho-Ho-Ho」「Gracy Grapes」と、「スターシャンク」からの曲を中心にヘヴィーでダークな雰囲気な曲が並び、「ダーククイーン」のCoccoをまずは存分に見せつけるステージからスタートしました。

その後は、なぜかビブラフォンで静かに「ジングルベル」を演奏。この真夏になぜ??そのままピアノ1本の弾き語りで「take me home」へ。こちらは3月に配信で披露した曲のようです。途中、バンドサウンドも入りながら、静かに優しく歌い上げてくれます。さらにスターシャンクから「フリンジ」に。力強いバンドサウンドをバックに、しっかりと前を凝視しながら力強く歌いCoccoの歌声が非常に印象に残ります。

「スターシャンク」からのナンバーは続く来ます。続いては「くちづけ」。こちらも暗い照明の中、原曲よりもダイナミックなアレンジでのステージになります。「願い叶えば」も原曲に比べてダークな雰囲気に。さらにここで意外な展開で彼女の代表曲「強く儚い者たち」へ。こちらも原曲とはかなり異なるギターサウンドが前に押し出された、ガレージ色の強いアレンジに。ただCoccoの歌声は原曲と同じく強く優しい歌声を聴かせてくれ、原曲とはまた異なる味わいのあるステージとなっていました。

ここで楽曲は一転、アコースティックな作品で静かに聴かせる楽曲へ。こちらは新曲のようです。ここで彼女が頭につけていた黒いベールが、いつの間にか白いリボンに変わっていて、ちょっとしたお色直しです。その後は「ひばり」をゆっくりと優しく歌った後、新曲を披露。こちらは力強いバンドサウンドをバックに伸びやかな歌声を聴かせる曲、なのですが、CD音源だとまたアレンジが違ってきそうな…。続く「インディゴブルー」もよりヘヴィーでダイナミックさを増したアレンジに。彼女の力強い歌声に、負けじとバックの演奏にも力が入っていました。

そして最後も新曲「Rockstar」へ。これが最高にヘヴィーでロッキンなカッコいいナンバー。彼女のシャウトもさえまくります。この楽曲で思いっきりシャウトしまくり、最後は静かの舞台から去ります。終了時間が21時ちょっと前。ちょうど1時間半の配信ライブとなりました。

残念ながらアンコールはなしだったのですが、ただ、「スターシャンク」からの楽曲を中心に、「ダーククイーン」という自称そのものの、最初から最後までダークでヘヴィーな展開が続くステージ。楽曲も原曲より、よりヘヴィーでダークなアレンジとなっており、非常に聴き応えのあるステージでした。そしてこれ、なによりもライブハウスみたいな狭い会場で「密」になって聴きたかった!と思うような、とてもカッコいいステージで、90分があっという間に過ぎ去ったライブでした。

最初から最後までMCなしの18曲。ただ、Coccoのダークな世界を堪能でしたライブで、こういうライブを(チケット獲得戦なしに)気軽に楽しめるのも配信ライブならでは、といった感じでしょうか。でも、やはり次は生で見てみたい!ともかく、Coccoのカッコよさに聴きほれた90分でした。

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