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2020年8月21日 (金)

メロディアスな歌が魅力的

Title:Punisher
Musician:Phoebe Bridgers

今回紹介するのはアメリカはLA出身の女性シンガーソングライターによる約3年ぶりの新作。ミュージシャン名は日本人にとって非常に読みにくいのですが、これで「フィービー・ブリジャーズ」と読むそうです。2014年にiPhone 5sのCMに抜擢され、PIXIESの「Gigantic」をカヴァーし大きな話題になったとか。前作「Stranger in the Alps」も各種メディアで高い評価を得て、本作ではイギリスのアルバムチャートで6位を獲得するなど、大きな飛躍を遂げています。

実は彼女については以前、Julien Baker, Lucy Dacusと組んだユニットboygeniusのアルバムを取り上げたことがありますが、彼女のソロ作を聴くのは今回がはじめて。まずはそのボーカルに強く惹かれます。伸びやかなのですが、どこか切なさを感じるボーカルが大きな魅力。イントロ的な1曲目を経て、事実上の1曲目となる「Garden Song」は、まさにそんな彼女のボーカルを生かしたような、ダウナーに切なくメロディアスに聴かせる曲調が魅力的な楽曲に。文字通り、どこか幻想的な雰囲気も感じるミディアムチューン「Moon Song」も、彼女の切ないボーカルが胸をうつバラードナンバーになっています。

また、バンドサウンドにシンセサイザーの音色などを入れて分厚く聴かせるサウンドも魅力的。アルバム全体としてはオルタナ系のインディーロックからの影響を強く感じさせ、個人的にはそれが好みであるのですが、比較的、音数の多いサウンドが特徴となっていまう。例えば「Savior Complex」もアコースティックテイストでシンプルにスタートしつつ、途中からストリングスを取り入れて、サウンドのハーモニーが魅力的な作品になっていますし、特に続く「ICU」は、まさにバンドサウンドにギターノイズなども入れつつ、分厚くダイナミックに聴かせるミディアムチューン。サウンド面での彼女の魅力がいかんなく発揮されています。

ただ、そんな中でなによりも魅力的なのは、ポップでメロディアスで、いい意味で聴きやすい歌そのものではないでしょうか。日本人にとってはうれしいタイトル「Kyoto」などはまさにそんあメロの良さがいかんなく発揮された曲。ホーンも入って郷愁感も感じるギターサウンドに、ポップでインパクトのあるメロディーラインは日本人にも問題なく受け入れられそう。アコースティックテイストの強いトラッド風の「Graceland Too」などは、まさに彼女の書くメロディーラインの良さが存分に生かされた、切ないポップチューンとなっています。

サウンドやボーカルも非常に魅力的なのですが、まずはそれを含めて「歌」の部分を主軸に置いているアルバムで、本国アメリカよりもイギリスの方で売れているのも、こういうタイプのメロディアスなロックチューンが受け入れられやすいのかもしれません。PIXIESのカバーで登場したように、ポップなメロが魅力的なインディーロックバンド好きならば間違いなく気に入ると思うアルバム。おそらく日本でも人気が出そうな感じもします。本作もかなり評価がいいようで、これからますます注目が高まりそうな女性シンガーソングライター。これからの活躍にも要注目です。

評価:★★★★★

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